ポスターセッション ― 同じ発表を、聞き手を替えて何度もくり返す
全員の前で1回だけ発表するより、教室の各所にポスターを貼り、訪れた聞き手に何度も説明する方が、一人ひとりが話す機会がぐっと増え、同じ説明をくり返すうちに、その場で話しやすくなることが期待できます。質問への即興の受け答えも自然に練習できます。
- ⏱ 時間
- 30-50分
- 🧰 準備
- しっかり
- 👥 形態
- グループ(3〜4人)
- 🎯 技能
- スピーキング・やり取り
- 📶 CEFR
- A2-B2

- 同じ内容を、聞き手を替えて何度も説明することで、くり返しの中で表現を磨く。
- 聞き手の質問にその場で答える、即興のやり取りを体験する。
ポスターセッションってなに?
ひとことで言うと、班ごとに作ったポスターを教室に貼り、発表者はポスターの前に立って、回ってくる聞き手に同じ内容を何度も説明する発表のしかたです。
文化祭の展示の説明係です。お客さんが来るたびに同じ説明をくり返すうちに、どこでつまずくか、どう言えば伝わるかがわかってきて、説明がなめらかになります。しかも毎回お客さんが新しいので、くり返しても飽きにくい。聞き手が替わることで、同じ説明のくり返しに自然な目的が生まれるのがポイントです。
全員の前での発表とのちがい
| 全員の前で1人ずつ発表 | ポスターセッション | |
|---|---|---|
| 聞き手 | クラス全員(1回だけ) | 2人ずつ、何度も入れかわる |
| 1人が説明する回数 | 1回 | 4回(前半または後半) |
| 質問 | 時間が限られ、出にくい | 毎回その場で受けて答える |
やり方を3ステップで
- 作る:前の時間に、絵・図・キーワード中心のポスターを班で作る。
- 説明する:前半は各班の半分がポスターの前で発表者、残り半分が訪問者として回る(3分×4回)。
- 入れかえてふり返る:後半は役割を入れかえ、最後に「1回目と4回目で何が変わった?」を話し合う。
授業の流れ(分ごと)
※ポスター作りは前の1〜2時間で行い、本時はセッションのみ(50分)。
| 時間 | 活動 | 先生のポイント |
|---|---|---|
| 0:00〜5:00 | 掲示・やり方の説明 | 前半・後半の役割を確認 |
| 5:00〜10:00 | 班内で最終練習 | 3分の説明を2人で分担して通しで |
| 10:00〜24:00 | 前半セッション(説明3分×4回+途中の移動30秒×3回=13分30秒) | 説明3分・移動30秒。最後の30秒で役割交替と移動 |
| 24:00〜38:00 | 後半セッション(役割交替) | 同じ流れ |
| 38:00〜45:00 | ふり返り | 1回目と4回目の違い |
| 45:00〜50:00 | 全体共有 | 良かった質問・説明を紹介 |

- テーマとポスター作り(前時1〜2時間):例「日本の行事を紹介する」「SDGs の課題と解決策」。ポスターは絵・図・キーワードが中心で、英文は見出し程度に。
- 掲示と説明(5分):全班のポスターを教室の壁や黒板に間隔をあけて貼る。4人班なら、前半の発表者2人・訪問者2人を決めて板書。訪問者ペアごとに最初のポスターを1つずつ割り当てて板書する(例:1班の訪問者は2班のポスターから、2班の訪問者は3班のポスターから)。全ペアの開始位置がばらけるので、1つのポスターに聞き手が集まらない。
- 説明の練習(5分):班の中で、3分の説明(質疑をふくむ)を通して練習する。発表者が2人のときは、説明の前の部分と後ろの部分で分担し、毎回2人とも話すようにする。
- 前半セッション(3分×4回):各班の発表者2人がポスターの前に立ち、訪問者2人がペアで回る。訪問者は時間ごとに、全ペアが同じ方向(例:右どなり)の次のポスターへ動く。訪問者は最低1つ質問し、シートに記入。
- 後半セッション:役割を入れかえて、同じ流れをくり返す。
- ふり返り(7分):「1回目と4回目で、何が変わった?」を班で話し合い、シートに書く。
- 全体共有(5分):良かった質問・わかりやすかった説明を数人に紹介してもらう。
テーマ例
- Japanese festivals(日本の行事紹介)
- Our town's best spots(町のおすすめスポット)
- Food from around the world(世界の料理)
- Great people in history(偉人紹介)
- My dream job(夢の職業調べ)
- School trip report(修学旅行の報告)
- Animals in danger(絶滅危惧種)
- Ways to reduce plastic waste(プラスチックごみを減らす方法)
- Survey results of our class(クラスアンケートの結果)
- Our research project(探究の成果、高校)
ポスターの構成(4つの枠) 11. Title → What is it? → Interesting facts(図・写真)→ Our message 12. 英文は見出しとキーワードのみ。説明は口で。
- 小学校:「好きな国」や「行ってみたい場所」の絵ポスターで、This is ... . You can ... . の2〜3文。訪問者は Nice! とシールを貼る。
- 中学:修学旅行・職場体験の報告などに。説明は1分30秒から。質問カードを訪問者に配ると、質問が出やすい。
- 高校:探究の成果発表と組み合わせる。質疑の時間を長めにとり、データや根拠を問う質問を出させる。
- 大人数クラス:40人なら4人ずつ10班。10枚のポスターを同時に開き、各班の2人が発表者、2人が訪問者に。訪問者20人が2人1組(10ペア)になり、ペアごとに別々の最初のポスターを割り当てて同じ方向へ回るので、各ポスターの聞き手は1回に2人ずつになる。前半と後半で役割を入れかえる。全員の前での発表より、一人あたりの発話量がずっと多くなる。
- 苦手な生徒が多いクラス:説明を班の中で分担し、1人1枠(30秒)だけ担当にする。ポスターの絵を指さしながら話せば、言葉が少なくても伝わる。
- オンライン・タブレット:スライド1枚をポスターにして、ブレイクアウトルームごとに発表者を置く。訪問者は部屋を移動する。
- 知識・技能:テーマについて、既習の語句や文で正しく説明できているか。
- 思考・判断・表現:聞き手に合わせて、図を指しながらわかりやすく説明し、質問にその場で答えているか。くり返しの中で説明を改善しているか。
- 主体的に学習に取り組む態度:訪問者として質問・コメントをし、発表者として、受けた質問やふり返りをもとに改善点を見つけ、次の回で説明のしかたを調整しようとしているか(改善の結果の大きさではなく、調整しようとする過程を見る)。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 説明(思考・判断・表現) | 図や具体例を効果的に使い、要点を聞き手にわかりやすく伝えている | 図を使い、必要な要点をおおむね伝えている | 要点を伝えるのに支援が必要(読み上げるだけで聞き手に要点が伝わりにくい など) |
| 質疑(思考・判断・表現) | 質問に理由や例をつけて答える | 短く答える | 答えられない |
| 改善の工夫(態度) | 受けた質問やふり返りから改善点を具体的に見つけ、次の回で試している | 改善点を見つけている | 改善点を考えていない |
メモを見ながら話すこと自体は減点しません。メモなどの支えを使っても、聞き手に要点が伝わっていれば「説明」は達成と見ます。
- ポスターに英文をびっしり書いて読み上げになったら → 英文は見出しとキーワードだけ、を条件にする。作る段階で先生がチェックする。
- 訪問者が聞くだけになったら → 「質問を最低1つ」「シートに一言コメント」など、訪問者の役目を決める。
- 1回目に時間を使いすぎたら → 時間はタイマーで区切り、どの発表者も同じ回数(4回)説明できるようにする。
- 人気のポスターに訪問者が集中したら → 訪問者ペアごとに最初のポスターを割り当て、「次は右どなりのポスターへ」と移動の順番を固定する。
- 説明が毎回同じで改善がないときは → 2回目のあとに30秒の「作戦タイム」を入れ、受けた質問の答えを説明に入れるよう促す。
ポスターセッションの強みは「くり返し」です。日本の大学生(英語学習者)32人が、聞き手を毎回替えながら同じ話すタスクを続けて6回くり返した研究では、くり返すうちにその場で話す速さが上がり、上がり方は最初の3回で最も大きく、5回目まで続きました 1。これは同じ時間の中での「その場の伸び」を調べたもので、長く続く力として定着するかを確かめたものではありません。発表者が新しい聞き手に何度も説明するポスターセッションは、この「くり返し」を自然な目的のある形で組みこめます。
専門英語(ESP)の授業で、伝える課題にくり返しを組みこんだ研究では、英語力が大きく違う2人の学習者がどちらも、内容をくり返し使う機会から恩恵を受けていました。同じタスクでも、学習者によって伸びる部分が違ったと報告されています 2。
さらに、ポスター発表のあとに自分の発話を文字起こしし、流暢さ・正確さ・複雑さの簡単な指標でふり返らせた実践も報告されています 3。発表を録音しておき、録音と文字起こしとつなげると、自分の発話をくわしくふり返り、次の改善目標を立てられます。応用として、1回目と4回目の両方を録音して比べると、くり返しでどこが変わったかを自分で確かめられます(これはこのページの提案で、研究で効果を比べたものではありません)。
❓ よくある質問
Q. 英語のポスターセッションは、どう進めますか?
ポスターは前の1〜2時間で作り、本時の50分はセッションだけにします。各班の半分が発表者としてポスターの前に立ち、残り半分が訪問者として3分ごとに回ります。前半4回が終わったら役割を入れかえ、最後に「1回目と4回目で何が変わった?」をふり返ります。
Q. 同じ発表を何度もくり返す意味はありますか?
あると考えられます。日本人英語学習者32人が同じ話すタスクを続けて6回くり返した研究では、その場で話す速さが上がり、上がり方は最初の3回で最も大きく、5回目まで続きました 1。ただし長く続く力になるかを調べた研究ではありません。毎回新しい聞き手に説明するので、くり返しに自然な目的が生まれます。
Q. ポスターの英文を読み上げるだけになってしまいます。
ポスターの英文は見出しとキーワードだけ、を条件にし、作る段階で先生がチェックします。絵・図・キーワードが中心のポスターにすると、図を指しながら自分の言葉で説明するようになります。
Q. 40人のクラスでもできますか?
できます。40人なら4人ずつ10班にし、10枚のポスターを同時に開きます。各班の2人が発表者、2人が訪問者になり、訪問者は2人1組で、ペアごとに割り当てた別々のポスターから回り始め、全ペアが同じ方向へ動くので、各ポスターの聞き手は1回に2人ずつです。前半と後半で役割を入れかえます。全員の前で1人ずつ発表するより、一人あたりの発話量がずっと多くなります。
Q. 訪問者が聞いているだけになってしまいます。
「質問を最低1つ」「シートに一言コメント」など、訪問者の役目を決めます。人気のポスターに訪問者が集中しないよう、訪問者ペアごとに最初のポスターを割り当て、「次は右どなりのポスターへ」と移動の順番を固定します。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Lambert, C., Kormos, J., & Minn, D. (2017). Task repetition and second language speech processing. Studies in Second Language Acquisition, 39(1), 167-196. doi:10.1017/S0272263116000085 ✔ DOI照合済日本人英語学習者32人が3種類の話すタスクを6回ずつくり返した研究。話す速さの伸びは最初の3回が最大で、5回目まで続いた
- Lynch, T., & Maclean, J. (2000). Exploring the benefits of task repetition and recycling for classroom language learning. Language Teaching Research, 4(3), 221-250. doi:10.1177/136216880000400303 ✔ DOI照合済ESP(専門英語)の授業で、伝える課題に「くり返し」を組みこんだ研究。レベルの違う学習者がそれぞれ別の面で伸びた
- Stillwell, C., Curabba, B., Alexander, K., Kidd, A., Kim, E., Stone, P., … (2010). Students transcribing tasks: Noticing fluency, accuracy, and complexity. ELT Journal, 64(4), 445-455. doi:10.1093/elt/ccp081 ✔ DOI照合済ポスター発表のあとに自分の発話を文字起こしし、流暢さ・正確さ・複雑さの簡単な指標でふり返らせた実践の報告
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






