🔍
🎲 授業アクティビティ集中学校高校📖 約9分

音の変化クイズ ― "Did you" が「ディジュ」になるのを聞き分ける

知っているはずの語なのに聞き取れない――その犯人は、音がつながる・消える・変わる「音の変化」です。短いフレーズを聞いて何と言ったかを当てるクイズで、教科書の英語と実際の英語のギャップを埋めます。

⏱ 時間
5-10分
🧰 準備
少し
👥 形態
全体・ペア
🎯 技能
リスニング・発音
📶 CEFR
A2-B1
🛡️
このページのウラ取り 出典 4 件 ― 原田英語.comが集めて読んだ論文・専門書・公的資料。DOI・ISBN・公式ページは書誌データベースとも照合済み 原田英語.comと校閲担当が、主張と出典を1つずつ照合・AI(Codex)による独立チェック済み(2026-10-18) ウラ取りの仕組み →
音の変化クイズ ― "Did you" が「ディジュ」になるのを聞き分けるのイメージ
💡ねらい
  • 文字で知っている語が、ふつうの速さの英語ではどう聞こえるかを知る。
  • 音のつながりの中から、語の切れ目を見つける力を育てる。
  • 聞いた音を自分でも言ってみることで、聞き取りと発音をつなぐ。

音の変化クイズってなに?

ひとことで言うと、"Did you eat?" が「ディジュイート」のように聞こえるなど、音がつながる・消える・弱くなる・混ざって聞こえる英語の短いフレーズを聞いて、何と言ったかを当てるクイズです。

🎈たとえるなら

日本語でも、「〜ではない」は会話では「〜じゃない」になり、「すみません」が「すいません」と聞こえたりします。文字で知っている形と、実際に聞こえる形はちがうことがあります。知っている語が、つながるとどう聞こえるかを知って、語の切れ目を見つけられるようにするのが大事なところです。

ふつうの(文章の)ディクテーションとのちがい

聞いた英語を書くという点では、音の変化クイズもディクテーションの一種です。いわば「音の変化にしぼった、短いフレーズのディクテーション」です。

ふつうのディクテーション 音の変化クイズ
聞くもの 比較的長い文や文章のことが多い 音の変化を含む短いフレーズ(1回1パターンにしぼる)
目的 聞いた英語をできるだけ正確に書き取る 音の変化に気づき、語の切れ目を見つける
そのあと 答え合わせ 自分でも言ってみる・教科書本文で同じパターンを探す

やり方を3ステップで

  1. パターンを示す:今日のパターンを1つ決め、例を1つ聞かせる。
  2. 聞いて書く:フレーズをふつうの速さで聞いて書き、答え合わせのあと、ゆっくり→ふつうの速さで聞き比べる。
  3. 言って探す:ペアで音の変化つきで言ってみて、教科書本文で同じパターンを探す。

授業の流れ(分ごと)

時間 先生 生徒
0:00〜1:00 今日のパターンを1つ示し、例を1つ聞かせる 聞く
1:00〜4:00 クイズ8問をふつうの速さで1回ずつ 聞こえた音をメモし、英語で書く
4:00〜6:00 答えを見せ、もう一度聞かせる 答え合わせ・種類を選ぶ
6:00〜7:00 ゆっくり→ふつうの速さで聞き比べ 違いを確かめる
7:00〜9:00 "Say it to your partner." ペアで音の変化つきで言う
9:00〜10:00 教科書本文から同じパターンを探させる 本文に∪の印
音の変化クイズ ― "Did you" が「ディジュ」になるのを聞き分けるの教室の配置と動き方
🗺️ 教室の配置と動き方(イメージ)
👣手順
  1. 今日のパターンを1つ決める:例「子音+母音がつながる(an apple)」「t の音が変わる(get up。主に北米英語)」「you がくっつく(did you)」など。1回1パターンが基本(慣れたら混ぜる)。使う音声が北米英語かイギリス英語かも、先生が把握しておく。
  2. 例を1つ聞かせる:板書した英語を見せずに聞かせ、「何と言った?」と聞く。正解を見せて「あ、そう聞こえる」を体験させる。
  3. クイズ(8問):その変化を含む短いフレーズ(下の素材から同じパターンのもの)を、ふつうの速さで1回ずつ聞かせる。A〜D の4種類が混ざったワークシートの8問は、4つを学んだあとのまとめの回に使う。生徒は聞こえた英語を書く(難しければカタカナでメモしてから英語に、または3択から選ぶ)。
  4. 答え合わせ:正解の英文を見せてから、もう一度聞く。まとめの回では、ワークシートで変化の種類(A〜D)を選ばせる。1つのフレーズに変化が重なることも多いので、いくつ選んでもよいことにする。ただし、t+母音のつなぎ目で t の音が変わった所(get up など)は C だけにして、A とは重ねて数えない、と最初に決めておくと、答えがぶれません。
  5. ゆっくり→ふつう:同じフレーズを、1語ずつ区切った読み方とふつうの速さで聞き比べる。
  6. 言ってみる:ペアで、そのフレーズを音の変化つきで言い合う。
  7. 本文で探す:教科書本文から同じパターンを探して∪の印をつける。次の音読で意識させます。
🗣️先生の英語(そのまま使える)
TListen. What did I say? Write it down. ... "Did you eat?"
Sディジュ ... "Did you"?
TYes! It sounds like one word, right? But it's two words.
TLet's listen slowly first. "Did ... you ... eat?" Now at natural speed.
TNumber 2. Ready? ... "Get up!"
Sゲラップ?
TGood ear. In American English, this "t" often sounds like a quick "d."
TYour turn. Say it to your partner the natural way.
TFind another example in today's text. Where do the words join together?
TWhen you read aloud next time, try to join these words.
🏫そのまま使える素材

パターン別のフレーズ集です(すべて短い日常表現。カタカナは気づきのための目安)。

A つながる(子音+母音)

  1. an apple(アナポー)
  2. Take a look.(テイカルック)
  3. Come on in.(カモニン)

B 消える・弱くなる 4. bread and butter(ブレッドンバター) 5. a cup of tea(アカッパティー) 6. I'll ask him.(アイラスキム)

C t の音が変わる(主に北米英語で、母音にはさまれた t が、舌で上の歯ぐきを軽くはじく短い音になり、「ラ」や「ダ」に近く聞こえる。イギリス英語などでは t をはっきり言うことも多い。t をのどで止める音や、t が落ちる変化もあるが、これは別の変化なので、ここでは扱わない) 7. Get up!(ゲラップ) 8. Not at all.(ナラロー) 9. What are you doing?(ワラユドゥーイン)

D 混ざって別の音に聞こえる(話す速さや人によって、はっきり言うこともある) 10. Did you eat?(ディジュイート) 11. Could you help me?(クジュヘルプミー) 12. Nice to meet you.(ナイストゥミーチュー)

教科書でよく出る組み合わせ(探すときのヒント) 13. want to / going to / have to 14. a lot of / kind of / out of

🔁アレンジ
  • 小学校:説明はせず、歌やチャンツの中の「つながって聞こえる所」を一緒にまねる程度に("Stand up" "Sit down" など)。
  • 中学:教科書の会話文で、先生がふつうの速さで読み、つながっている所に生徒が∪を書きこむ。1年生は an apple / come on など短いものから。
  • 高校:リスニング問題で聞き取れなかった箇所をスクリプトで確認し、どの音の変化が原因だったかを分類する。
  • 大人数クラス:答えは3択で、指で1・2・3を一斉に出す。正答率の低いフレーズだけ聞き直します。
  • 苦手な生徒が多いクラス:書かせずに3択で選ばせる。1回に扱うのはパターン1つ・フレーズ5つまでにします。
  • オンライン・タブレット:フレーズの音声を個別に配り、各自が聞いた英語を入力フォームへ。よくある聞き間違いを次の授業で紹介します。
📊評価のポイント
  • 知識・技能:音の変化を含むフレーズを聞いて、もとの英語を書ける。自分でも音の変化つきで言える。 聞き取れなかった原因を、変化の種類と結びつけて説明できることも、ここに入ります(音についての知識)。
  • 思考・判断・表現:この短いクイズだけでは見にくい観点です。見るなら、会話や説明の音声を聞いて、音の変化を手がかりに話の要点や話し手の意図をつかむ課題を別に用意します。
  • 主体的に学習に取り組む態度:聞き取れなかった箇所をふり返り、聞き直し方や練習のしかた(区間リピート、ゆっくり→ふつう、言ってみる)を選び直して、もう一度聞いて確かめようとしているか。1回のクイズでは決めず、ふり返りの記録などから単元を通して見ます(この観点は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見るものです 1)。

下の表は、クイズ8問の結果を見る診断の目安です(3観点の総合評価の表ではありません)。「聞き取り」と「種類の説明」は別の力なので、別々に記録します。

段階 聞き取り(8問中、英語で書けた数) 種類の説明(答え合わせのあと)
A 6問以上 どの変化か、例を挙げて説明できる
B 4〜5問 種類は選べるが、説明はあいまい
C 3問以下 種類を選べない

採点では、つづりの小さなまちがい(例:chek it out)は、聞こえた音を正しく表していれば正解にします。聞き取りの力を見る活動なので、つづりの力で段階が下がらないようにするためです。研究で使われた書きとりテストでも、つづりのテストではないとして、音の形を正しく表した小さなつづりの誤りを正解として採点しています 2。

定期テストのリスニングで聞き取れなかった箇所の分析に、この分類を使わせると、テスト直しが「次の練習」につながります。

⚠️よくあるつまずきと対処
  • カタカナで覚えて終わる → 「ディジュ」はあくまで気づきのための目安。最後は必ず音声で確認し、自分でも言ってみます。
  • 規則を一度に全部教えてしまう → 音の変化の種類は多いので、1回1パターン。教科書に出てきたものから。
  • 書けない生徒が手を止める → カタカナのメモ→英語、の2段階を認める。3択にしても構いません。
  • 音読でも無理に変化させて不自然になる → まずは「聞いてわかる」ことが目標。自分の発音では、無理につなげなくても通じることも伝えます。
  • 先生の発音に自信がない → 読み上げツールの音声や、区間リピートで切り出した教材の音声を使います。ただし、音声によってはねらいの変化が起きていないこともあるので、授業の前に先生が聞いて、ねらいの変化が実際に聞こえるものだけを使います。正解をそろえるため、全員に同じ音声を聞かせます。
🔬なぜ効く?

外国語のリスニングがうまくいかない原因として見落とされがちなのが、音の流れの中で語の切れ目が分からないという問題です。音声学の基本を使えば、どこで聞き取りが崩れるかを分類・予測でき、それに合わせた簡単な練習を用意できる、と、第二言語のリスニングを研究する John Field(ジョン・フィールド)氏は2003年の論文で提案しています 3。

日本の大学生130人を調べた研究では、耳で聞いて分かる基本1,000語レベルの語彙と、音の流れから語を切り出す力の2つを合わせると、TOEIC のリスニング得点の個人差(ばらつき)の34%、英検準2級のリスニング得点の個人差の38%を統計的に説明できました 2。得点そのものの3〜4割という意味ではなく、学生どうしの得点のちがいのうち、この2つの力で説明できた割合です。文字で知っている語を増やすだけでなく、「音で知っている」状態にすることが大事だ、ということです。

また、日本の大学の必修英語の授業で、音を聞き取るための活動6種類をまとめて加えたクラス(21人)と、加えなかったクラス(32人)を比べた小規模な研究では、ディクテーションとリスニング試験の伸びで、活動を加えたクラスが上回りました 4。ただし、クラスを無作為に分けた実験ではなく、2つのグループは担当の先生もちがいます。6種類をまとめて行ったので、このページの音の変化クイズだけの効果を示したものでもありません 4。

ただし、この日本の大学生130人の研究は「関係がある」ことを示したもので、音の変化クイズをすれば得点が上がると直接示したものではありません 2。「聞き取れない原因に気づく」きっかけとして使い、たくさん聞く活動と組み合わせましょう。

❓ よくある質問

Q. 音の変化は、一度にいくつ教えればいいですか?

1回1パターンが基本です。「子音+母音がつながる(an apple)」「t の音が変わる(get up。主に北米英語)」「you がくっつく(did you)」などから1つ選び、教科書に出てきたものから扱います。慣れたら混ぜてもかまいません。

Q. 聞こえた英語を書けない生徒には?

カタカナでメモしてから英語に、の2段階を認めます。3択にしてもかまいません。ただし「ディジュ」のようなカタカナは気づきのための目安です。最後は必ず音声で確認し、自分でも言ってみます。

Q. 音読でも、音をつなげて読ませるべきですか?

まずは「聞いてわかる」ことが目標です。音読で無理に変化させると不自然になることがあります。自分の発音では、無理につなげなくても通じることも伝えておきます。聞いたあとは、教科書本文から同じパターンを探して印をつけ、次の音読で意識させます。

Q. 先生の発音に自信がなくてもできますか?

できます。読み上げツールの音声や、区間リピートで切り出した教材の音声を使います。ただし、ねらいの変化が起きていない音声もあるので、授業の前に先生が聞いて、変化が実際に聞こえるものだけを使います。同じフレーズを1語ずつ区切った読み方と、ふつうの速さで聞き比べさせると、違いがはっきりわかります。

Q. 音の変化を知ると、リスニングは伸びますか?

日本の大学生の研究では、耳で聞いて分かる基本語彙と、音の流れから語を切り出す力を合わせると、リスニング得点の個人差(ばらつき)の34〜38%を統計的に説明できました 2。ただし関係を示した研究で、クイズで得点が上がると直接示したものではありません。たくさん聞く活動と組み合わせます。

🎁 玉手箱で使えるツール

原田英語の「英語の先生の玉手箱」の無料ツール。登録なしで授業にそのまま使えます。

📑 出典(4件)

本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。

  1. 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
  2. Lange, K., & Matthews, J. (2020). Exploring the relationships between L2 vocabulary knowledge, lexical segmentation, and L2 listening comprehension. Studies in Second Language Learning and Teaching, 10(4), 723-749. doi:10.14746/ssllt.2020.10.4.4 ✔ DOI照合済日本の大学生130人。耳で知っている語彙と語の切れ目を聞き分ける力で、リスニング得点の3〜4割が説明できた
  3. Field, J. (2003). Promoting perception: Lexical segmentation in L2 listening. ELT Journal, 57(4), 325-334. doi:10.1093/elt/57.4.325 ✔ DOI照合済音のつながりで語の切れ目がわからなくなる問題と、その練習を提案した論文
  4. Siegel, J., & Siegel, A. (2015). Getting to the bottom of L2 listening instruction: Making a case for bottom-up activities. Studies in Second Language Learning and Teaching, 5(4), 637-662. doi:10.14746/ssllt.2015.5.4.6 ✔ DOI照合済日本の大学のリスニング授業で、音を聞き取るボトムアップ活動を加えた群が伸びた

最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら