原田英語とっておきの話

「as is often the case with」のような構文は丸暗記でいい?疑似関係代名詞asの正体と、覚えた例文に理解を注ぐ5分の方法

教えて原田先生 / GRAMMAR × SLA
「as is often the case with」は
丸暗記のままでいいのか問題
例文で先に覚えてしまった人が、あとから「理解」を注ぐと何が起きるのか。
疑似関係代名詞のasを5分で解剖します。
Xで見かけた相談。「As is often the case with みたいなやつ、大抵まる暗記してしまっているのだけれど、ちゃんと理解した方がいいのかな。文法の勉強をちゃんとやる前に例文暗記で覚えてしまった」
先に答えを言います。その順番は、間違っていません。むしろ第二言語習得の研究が支持しているのは、そちらの順番です。ただし、丸暗記のまま置いておくと取りこぼすものがあります。そこだけ5分で回収しましょう。
1結論。その丸暗記は「正しい入口」です
「文法をやる前に例文で覚えてしまった」を、多くの人は失敗だと思っています。実際は逆です。言語というのは、ルールを先に習ってから使えるようになるものではなく、使えるかたまりを先に持ってから、あとで中身が見えてくるもの。順番として、あなたのやり方はまったく理にかなっています。
ただし、丸暗記だけで止めると「覚えた1個は使えるが、2個目には応用できない」という状態になります。ここに理解を5分だけ注ぐと、覚えた1個が一気に10個分の武器に化けます。この記事で言いたいのは、その一点だけです。
結論を3行で
01例文暗記から入ったのは正解。文法から入り直す必要はない
02理解は「あとから、覚えた例文の上に」注ぐ。所要時間は1項目5分
03理解の目的は暗記の代わりではなく、暗記の応用範囲を広げること
21分解剖。as is often the case with の正体
まずは代表例から。
As is often the case with him, he was late again.
彼にはよくあることだが、彼はまた遅刻した。
ここで、asのうしろだけを取り出して見てください。is often the case with him。isの主語がありません。文として欠けています。これが最大のヒントです。
このasは「疑似関係代名詞」
関係代名詞は本来、名詞を先行詞にとります。ところがこのasは、主節まるごとを先行詞にします。接続詞の顔をしながら関係代名詞の仕事をするので、学校文法では疑似関係代名詞(準関係代名詞)と呼びます。asが文頭に出ている場合は、受ける内容があとから来るので「後行詞」と表現されることもあります。リプ欄で正確に指摘していた方がいましたが、そのとおりです。
構造を分解するとこうなる
as関係代名詞の働き。isの主語の位置に入る
the case実情、事実。That is the case.(それが実情だ)のcase
with him誰について「よくある実情」なのかを限定する
先行詞he was late again という主節の内容そのもの
直訳すれば「彼についてしばしば実情であることだが、彼はまた遅刻した」。これを日本語らしくすると「彼にはよくあることだが」になります。訳を丸暗記していた人も、いま初めて訳の理由が見えたはずです。
一発で見分けるルール
asのうしろが不完全な文(主語や目的語が欠けている)なら疑似関係代名詞。完全な文なら接続詞。判定はこれだけで終わります。
接続詞の例:As he was tired, he went to bed early.(as節は完全=「〜なので」)
疑似関係代名詞の例:As is often the case with him, …(isの主語が欠けている)
3なぜ as なのか。核にあるのは「イコール」
「なぜwhichでもthatでもなく、asなんですか」。授業でよく出る質問です。答えはasという語そのものの性格にあります。
asの根っこにあるイメージは「同じ」「イコール」です。as tall as(同じくらい背が高い)、the same as(〜と同じ)、such as(〜のような)。どれも二つのものを重ね合わせています。関係代名詞のasも、もともとはこのsuch / the same / as と呼応する相関表現から育ってきた用法です。
相関のasから、節を受けるasへ
He is not such a fool as to believe it.(呼応するas)
She used the same method as I did.(呼応するas)
→ 相手役がなくても、単独で「前後の内容と重なることだが」と節全体を受けられるようになった。それが As is often the case with … の姿です。
だからこそ、このasの文には共通する匂いがあります。すでに知られていること、よくあること、繰り返されていることを持ち出すときに使われるのです。as is well known(よく知られているように)、as is often said(よく言われるように)が定番なのは偶然ではありません。asが「重ね合わせ」の語だから、重ねる相手として既知の事実を呼び出すわけです。
4as と which、どこが違うのか
主節全体を先行詞にとれる関係代名詞は、asのほかにwhichもあります。ここを整理しておくと、読解でも英作文でも迷いが消えます。
比較項目
as
which
置ける位置
文頭・文中・文末のどこでもよい
受ける内容のうしろだけ
運ぶ情報
既知・一般的な事実(よくある、知られている)
新情報・その場限りの個別コメント
日本語の感触
〜であるように、〜はよくあることだが
そしてそれは〜、それが〜だった
定型度
決まり文句が多く、覚えて使う側面が強い
中身は自由に作れる
例文
He was late, as is often the case.
He was late, which surprised us all.
同じ「彼は遅刻した」でも、asなら「いつものことだよね」というニュアンスが乗り、whichなら「それには全員が驚いた」と新しい展開が続きます。英作文でここを使い分けられると、採点者から見た印象がはっきり変わります。
試験で狙われるポイント
文頭に置けるのはasだけ。Which is often the case with him, he was late. は誤りです。空所補充でasとwhichが並んでいたら、まず「位置」を見る。それだけで正答率が跳ね上がります。
5「暗記が先、理解が後」が習得順序として正しい理由
ここからが本題です。「文法をやる前に例文で覚えてしまった」という後ろめたさは、まったく必要ありません。第二言語習得(SLA)と認知科学の知見は、むしろその順番を後押しします。
母語話者の言葉も、かなりの部分が「かたまり」でできている
定型表現(formulaic sequences)の研究では、私たちが日常で使う言葉のうち相当な割合が、その場で一語ずつ組み立てたものではなく、まとまりごと取り出されたものだと指摘されています。ネイティブが自然に聞こえるのは、文法が正しいからではなく、みんなが使っている組み合わせを、そのまま持っているからです。as is often the case with は、まさにその代表格です。
子どもも「丸ごと」から入る
用法基盤(usage-based)の考え方では、子どもは What’s that? を「疑問詞+be動詞+指示代名詞」として学びません。まず音のかたまりとして丸ごと覚え、使いながら What’s this? / Where’s that? と揺らし、そのうちに「=の部分は入れ替えられるらしい」と気づいていきます。具体例の蓄積が先、抽象ルールの発見が後。あなたがやった順番と同じです。
かたまりは、処理の負荷を下げる
リスニングや会話では、考える時間がありません。as is often the case with を7語として処理していたら間に合いませんが、1つのかたまりとして持っていれば、脳のワーキングメモリはほぼ消費されず、余った容量を内容理解に回せます。速く読める人・聞ける人は、頭がいいのではなくかたまりを大量に持っているのです。
結局、ルールから入っても最後はかたまりになる
技能習得の理論では、知識は「説明できる知識」から「考えずに動く知識」へ移行するとされます。文法から入った人も、練習を重ねて最終的にはかたまりとして自動化されます。つまりゴールは同じ場所。あなたはたまたま、その場所に近いところからスタートしただけです。
Chunks come first. Rules come to explain them.
かたまりが先にあって、ルールはそれを説明しに来る。文法は入場券ではなく、あとから届く取扱説明書です。
6理解を注ぐと起きる3つの変化
では理解はいらないのか。いります。ただし目的が違います。理解は暗記の代わりではなく、暗記の効き目を伸ばす添加剤です。具体的には次の3つが起きます。
変化① 忘れにくくなる
記憶は、意味のつながりが増えるほど引き出しやすくなります。the case が「実情」だと知り、asが「イコール」の語だと知った瞬間、その表現には手がかりが3本も4本も生えます。丸暗記は一本の細い糸ですが、理解を通すと網になります。忘れても、たどって戻れるようになるということです。
変化② 初見の変種で止まらなくなる
as is often the case with しか知らないと、入試問題で as is evident from the data や as was pointed out by the author が出た瞬間に固まります。しかし「asのうしろが不完全なら、主節を受けているだけ」と分かっていれば、初見でも読み飛ばせる。覚えた1個が、未知の変種にそのまま効くのが理解の最大の利益です。
変化③ 読解スピードが上がる
長文で As is … と出てきた瞬間、「これは挿入。主節はカンマの後」と即断できれば、目線が止まりません。構造判断のスピードは、そのまま読解時間の余りになります。共通テストのような時間との戦いでは、この差が点数に直結します。
注意したいこと
理解のために暗記を止めるのは、いちばんもったいない選択です。理解は使いながら、あとから、少しずつで構いません。文法書を最初のページから読み直す必要はありません。
7丸暗記推奨。as構文ファミリー12選
ここは遠慮なく覚えてください。構造が同じ仲間をまとめて入れておくと、理解のほうが勝手に追いついてきます。asのうしろで何が欠けているか(主格タイプ/目的格タイプ)だけ添えました。
1As is often the case with ~
〜にはよくあることだが
主格最頻出の型。人にも会社にも国にも使える万能形。まずこれを完全に自分のものに。
2As is usual with ~
〜にはいつものことだが
主格oftenをusualに替えただけ。頻度のニュアンスが一段強くなる。
3As is the case with ~
〜に当てはまることだが
主格oftenを外すと「同様に」という一般化の型に。論説文で多用される。
4As is well known,
よく知られているように
主格評論・エッセイの書き出しの定番。withを伴わない短縮型。
5As is often said,
よく言われるように
主格一般論を持ち出す前置き。saidは受動で主語が欠けている。
6As is shown in Figure 1,
図1に示されているように
主格資料説明の定型。英検やTEAPの要約・レポートで効く。
7As is evident from the data,
データから明らかなように
主格論証を一段アカデミックにする上位互換。使えると印象が変わる。
8As was expected,
予想どおり
主格時制はas節の中身に合わせて変える。asの正体を知らないと作れない形。
9As often happens,
よくあることだが
主格be動詞以外でも成立する好例。happensの主語が欠けている。
10As we all know,
誰もが知っているように
目的格knowの目的語が欠けているタイプ。会話でも書き言葉でも頻出。
11As you can see,
ご覧のとおり
目的格プレゼンや説明での最頻出フレーズ。seeの目的語が空いている。
12As I mentioned earlier,
先ほど述べたように
目的格ライティングで話をつなぐときの必需品。mentionの目的語が空いている。
12個をまとめて入れる意味
1個だけ覚えると「呪文」ですが、12個並べて覚えると共通点が勝手に浮かび上がります。asのうしろがいつも欠けている、意味はいつも「すでに知られていること」を持ち出している。これが、教わらずに理解が立ち上がる瞬間です。理解とは、暗記の量が臨界を超えたときに起きる現象でもあります。
8覚えた例文に理解を注ぐ「5分の3ステップ」
文法書を最初から読み直す必要はありません。すでに口から出てくる例文を1つ選び、そこに5分だけ手を入れます。手順は3つだけです。
STEP 1覚えている例文を、そのまま書き出す(30秒)
As is often the case with him, he was late again. 訳もセットで。ここでは何も考えません。すでに持っているものを目に見える形にするだけです。
STEP 2asの直後が完全か不完全かだけ確認(1分)
is often the case with him。主語がない、だから不完全、だから疑似関係代名詞。確認するのはこの一点だけで終わりです。文法用語を覚える必要すらありません。「欠けている=主節を受けている」と気づけば十分です。
STEP 3中身を1語だけ入れ替えて、自分用に作り替える(3分)
him を自分の話に替えてみます。As is often the case with me, I put off studying until the night before.(私にはよくあることだが、前の晩まで勉強を先延ばしにした)。この作り替えが成功した瞬間、その表現は暗記から「型」に昇格します。
As is often the case with beginners, she focused on rules before practice.
初心者にはよくあることだが、彼女は練習より先にルールに集中してしまった。
1日1個で構いません。3ステップ×5分を30個やれば、それはもう文法参考書1章分の理解を、自分の言葉で持っている状態です。
9リプ欄で出た疑問に、全部お答えします
元の投稿には、いろいろな立場からの返信がついていました。どれも一理あります。ひとつずつ整理します。
Q「英語は全部暗記」って、本当ですか?
半分は当たっています。ただし暗記の中身で結果が大きく変わります。単語と訳を1対1で覚えるだけの暗記は伸びが止まりやすく、文ごと・場面ごと覚える暗記は伸び続けます。同じ「暗記」でも、持ち帰れる情報量がまるで違うからです。全部暗記でいい、ただし文で覚える。ここだけ守ってください。
Q「文法は理解、慣用句は暗記」でいいですか?
よくできた整理だと思います。境界線を1つ足すなら「入れ替えが効くかどうか」。It’s raining cats and dogs. は入れ替えが効かないので暗記だけで十分。一方 as is often the case with は with のうしろが自由に替わる、つまり生産的な型です。生産的な型は、理解を入れておくと投資対効果が高い。この基準で仕分けてください。
Q文法をやる前に例文で覚えてしまいました。順番を間違えましたか?
間違えていません。むしろうらやましい入り方です。ルールから入った人は「知っているのに口から出ない」で長く苦しみます。あなたはすでに口から出る状態を持っている。そこに説明を足すほうが、圧倒的に速い。順番は変えなくていいので、いま持っているものに理解を後づけしてください。
Q疑似関係代名詞のasは、入試や英検で出ますか?
「これは疑似関係代名詞か」と名前を問う問題はほとんど出ません。出るのは読解と和訳と英作文です。長文で As is … が挿入されたとき主節を見失うか、和訳で「〜のように」と処理できるか、英作文で自分から使えるか。名前は不要、機能は必須。ここが試験での実態です。
Q理解にどこまで時間をかけるべきですか?
1項目5分で切り上げてください。理解は深く掘るほど気持ちよくなり、掘っているうちに覚える量が減っていくという本末転倒が起きます。5分で分からなければ付箋を貼って先へ。半年後、例文が10個たまった状態で読み返すと、あっさり腑に落ちます。理解は追いかけるものではなく、追いついてくるものです。
まとめ。暗記は入口、理解は出口
丸暗記か理解か、という二択で悩む必要はありません。
順番が「暗記→理解」であれば、両方とも手に入ります。
as is often the case with のasは疑似関係代名詞。主節まるごとが先行詞
見分けは一発。asのうしろが不完全なら関係代名詞、完全なら接続詞
asの核は「イコール」。だから既知の事実を持ち出す表現になりやすい
文頭に置けるのはasだけ。whichは受ける内容のうしろにしか来られない
例文暗記が先という順番は、習得のしくみから見ても正しい
理解は1項目5分。目的は覚え直しではなく、応用範囲を広げること
丸暗記してしまったあなたは、遠回りをしたのではありません。
いちばん近い場所から、すでに歩き始めています。
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