深夜放送局からお届けする、中高英語教師のための授業アイデア&最新情報
たった3行の設定が、「答えを出すAI」を「問い返すAI」に変える
こどもとITの連載「EducAItion Times」(6月5日公開)が話題です。AIへの指示の冒頭に「答えを直接教えない/まず問い返す/ヒントは段階的に」というたった3行の前置きを加えるだけで、AIが「正解を即答する道具」から「考える余白を残してくれる伴走者」へと変わる——という極めて実践的な提案。英語授業なら、英作文添削AIに「直すべき箇所を指摘する前に、生徒自身が気づける問いを英語で返して」と設定するだけで、添削が対話型のライティング指導に変わります。生成AIに「思考を奪わせない」線引きは、設定の設計次第。明日の授業前に3行、書き足してみませんか。
🎙 On-Air 60(60秒ラジオキャスター)
対象:中学2年〜高校 | 時間:5分 | 準備:不要
▶ やり方:
① ペアで「キャスター」と「リスナー」に分かれる
② キャスターは “Good evening, this is Radio English!” で始め、今日のニュース・天気・部活の話題などを60秒間ノンストップで「生放送」する
③ リスナーは放送から聞き取った情報を1つメモし、放送後に “You said …!” と報告
④ 役割交代。締めの decoy フレーズ “Stay tuned!” まで言えたら満点
💡 ポイント:「止まらずに話し続ける」ことが目標なので、文法ミスはOKというルールを明示。流暢さ(fluency)特化の活動として効果絶大。話題は黒板に3つ提示しておくと迷子を防げます。
📶 Static Fill(電波ノイズ穴埋めリスニング)
対象:中学1年〜 | 時間:5分 | 準備:教科書本文のみ
▶ やり方:
① 先生が既習の本文や短い英文を音読する。ただし途中の単語を1つ「ザザッ」(ラジオの雑音のまね)に置き換える
② 例:“I ザザッ to the library yesterday.”
③ 生徒は文脈と文法から消えた単語を推測し、ペアで相談してから挙手で解答(→ went)
④ 慣れてきたら生徒が出題者になり、ノイズ入りの文を作って出し合う
💡 ポイント:実際のリスニングで聞き逃した部分を文脈で補う「推測力」のトレーニング。時制・前置詞・冠詞など、狙いたい文法項目をノイズにすれば文法復習にもなります。
❓ 注目ツール:QuestionWell
本文・YouTube動画・WebサイトのURLを入れるだけで、発問・選択肢問題・語彙リスト・ディスカッション質問・Exit Ticketまで一括生成してくれる教師専用AI。生成した問題はKahoot!やQuizizz、Google Formsなど主要ツールへワンクリックでエクスポートでき、出力言語の切り替えにも対応。リーディング教材から「考えさせる発問」を作る時間が劇的に短縮されます。教科書本文を貼り付けて、明日の内容理解Q&Aを作るところから試すのがおすすめ。
🗣 Speakable — スピーキング課題をAIが即時採点
先生が音読・Q&A・自由発話などのスピーキング課題を作成すると、生徒の録音回答に対してAIがその場でフィードバック+自動採点。発音・文法・語彙の改善点が即座に返るので、「録音を全部聞いて採点する」負担から解放されます。練習モードと評価モードの切り替え、ルーブリックに基づく採点、ポートフォリオでの成長記録にも対応。パフォーマンステスト前の「家庭での音読練習」に最適です。
🇯🇵 JAPAN | NEWS 1
「使わないリスク」が高まる教育AI — GoogleがEDIXで示した活用のリアル
こどもとITのEDIX東京2026レポート⑱(6月5日)。Googleと大学DXの講演では、AIの推論能力が数学オリンピック本選で金賞水準に達するなど急速に高度化するなか、「AIを使うリスク」よりも「使わないことで生徒の学習機会を失うリスク」に目を向けるべき段階に入ったと指摘。英語科でも「禁止か許可か」ではなく「どの場面で、どう使わせるか」の設計力が問われています。
🇯🇵 JAPAN | NEWS 2
日経BP、「学生AIリーダーズ大賞」の募集を開始 — 審査基準は”AIへの批判的理解”
日経BPが、学生によるAIを活用した優れた研究・学習を表彰する「学生AIリーダーズ大賞」の募集を開始しました(ICT教育ニュース・6月9日)。自然科学・社会科学の2部門で、各部門の最優秀賞は50万円。注目すべきは審査基準に「AI活用に対する批判的な理解度」や研究倫理が含まれている点。「AIをどう使ったか」だけでなく「AIの限界をどう理解しているか」が評価される——探究や英語のレポート指導でAI利用ルールを考える際の、良い物差しになりそうです。
🌍 GLOBAL | NEWS 3
米国で総額1,100万ドルの教師向けAI研修「AI PD Weeks」がこの夏スタート
米コンピュータサイエンス教師協会(CSTA)が、K-12教員数千人を対象とした大規模AI研修「AI PD Weeks」を6月〜8月に開始するとEducation Weekが報道。イリノイ・インディアナ・アイオワ・ミネソタ・ニュージャージー・サウスカロライナの6州で、1週間集中のハンズオン形式でAI指導の実践方略を学びます。2年目にはさらに4州へ拡大予定。教員研修への大型投資が続く米国の動きは、日本の校内研修のあり方にも示唆を与えます。
🔗 参考:Education Week — New $11M Effort Aims to Train Teachers in AI. How Does It Work?
🍚 Freerice
国連WFP運営の語彙クイズサイト。1問正解するごとに米10粒が寄付される仕組みで、「英語学習が社会貢献になる」体験を提供。語彙レベルは自動調整。
👄 Rachel’s English
アメリカ英語の発音指導の定番。口の形・舌の位置を映像で示しながら音素やリンキングを解説。リダクションの指導例が特に豊富で、音声指導の引き出しが増えます。
✅ Test-English
A1〜B2のCEFRレベル別に文法・語彙・リスニング・リーディングの練習問題を無料提供。解答後すぐ正誤と解説が出るので、習熟度別の自習課題に最適。
🧠 ESL Brains
実際の動画(TED・ニュース等)を軸にしたレッスンプラン集。ワークシート+スライド+指導手順がセットで、高校の発展的なディスカッション授業の素材探しに重宝。
🇿🇲 ザンビア:ラジオが先生だった国 — 「Learning at Taonga Market」の遺産
約70の言語が話されるザンビアでは、英語が公用語であり、小学校高学年からは英語が教授言語になります。この国の英語教育史で特筆すべきが、2000年代に全国展開されたラジオ授業「Learning at Taonga Market」。学校に通えない子どもたちのために、市場を舞台にした物語仕立てのラジオ番組で読み書きと英語を教える「双方向ラジオ授業(IRI: Interactive Radio Instruction)」です。番組は一方的に流れるのではなく、放送が問いかけ、数秒の間を置き、子どもたちが声に出して答える——この「ポーズ&レスポンス」の設計によって、ラジオだけでも驚くほど能動的な学びが成立しました。
🔑 明日から使えるテクニック:Radio Response
IRIの設計をそのまま帯活動に。先生がラジオDJになりきって英語で問いかけ、“Three seconds… your answer, everyone!” と3秒のポーズを置いてから、クラス全員が一斉に声に出して答えます。例:“What day is it tomorrow? … Three, two, one!” → 全員で “It’s Friday!”。挙手制と違い「全員が毎回口を動かす」のがポイント。テンポよく10問続ければ、発話量はいつもの数倍になります。
CH 07 | 24:30 | TONIGHT’S QUOTE FOR TEACHERS
“Through interaction, students can increase their language store as they listen to or read authentic linguistic material.”
やり取りを通してこそ、生徒は本物の言語材料を聞いたり読んだりしながら、自分の中の「ことばの蓄え」を増やしていくことができる。
— Wilga M. Rivers(応用言語学者・”Interactive Language Teaching” 編者)
週の後半戦に入る木曜の夜は、自分の授業の「受信状態」を点検する日。放送局の電波チェックにならって、3つの周波数を確認してみてください。
📻 TUNED IN(よく聞こえた):今週、生徒に一番「届いた」と感じた瞬間はいつでしたか? その場面で自分は何をしていたでしょう。
📵 STATIC(ノイズが入った):逆に、説明が空回りした・指示が通らなかった場面は? ノイズの原因は内容・タイミング・伝え方のどれだったでしょう。
🎚 NEXT FREQ(次に合わせる周波数):金曜の授業で1つだけ「チューニング」を変えるなら何を変えますか? 小さなダイヤル操作で十分です。
3分で書けるメモで構いません。週末を待たずに微調整する習慣が、月曜の授業を軽くします。
📎 PROGRAMME NOTES — 今号の参考リンクまとめ
📰 ニュース記事
・こどもとIT — たった3行の設定が変える、「答えを出すAI」から「問い返すAI」へ
・こどもとIT — 「使わないリスク」が高まる教育AI(EDIX東京2026レポート⑱)
・ICT教育ニュース — 日経BP「学生AIリーダーズ大賞」募集開始
・Education Week — New $11M Effort Aims to Train Teachers in AI
🛠 ツール・サービス
・QuestionWell — 発問・問題・語彙リストの一括生成AI
・Speakable — スピーキング課題のAI即時フィードバック
・Rachel’s English — アメリカ英語の発音指導リソース
— STATION SIGN-OFF —
📻 原田先生のニュースレター Vol.115 | 2026.06.11 THU
haradaeigo.com
本日の放送はここまで。このニュースレターが役に立ったら、ぜひ同僚の先生にもシェアしてください。Stay tuned! 🙌
