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【やさしい英文de多読!】<39>Swearing Makes You Stronger? The Surprising Science of Bad Words 悪口を言うと筋力アップ?——汚い言葉の意外な科学 ~英文を楽しく&音声つきで読もう!~

原田英語マン
原田英語マン
今日のテーマは「悪口を言うと筋力アップ?——汚い言葉の意外な科学」です。重いものを持ち上げるとき、思わず出る汚い言葉。実はあれ、科学的に「正しい」行動だったのかもしれません。2025年末にアメリカ心理学会が発表した最新研究をもとに、スウェアリング効果の不思議に迫ります。

📖 英文(224 words)

Have you ever shouted a bad word when you hit your toe? Most people do. But scientists have found something amazing: swearing can actually make your body stronger. This is called the “swearing effect.”

In 2018, researchers at Keele University in England did an experiment. They asked people to squeeze a hand grip as hard as possible. Some people repeated a swear word, and others said a normal word like “table.” The result was shocking. People who swore were about 8 percent stronger. In another test on exercise bikes, swearing improved power by about 4.5 percent.

Why does this happen? At first, scientists thought swearing triggered the fight-or-flight response—the body’s emergency mode. But heart rates did not change. So they looked deeper. A 2025 study in the journal American Psychologist found the real reason. Swearing puts your brain into a state called “disinhibition.” This means you stop holding back. You feel more confident, more focused, and less afraid of pain. Your brain removes its own brakes.

There is one important rule: fake swear words do not work. Saying “sugar” or “fudge” has no effect. Your brain knows the difference. Only real taboo words can unlock this hidden power.

This research even won an Ig Nobel Prize in 2010—a funny award for surprising science. The researcher, Dr. Richard Stephens, started this work after he hit his hand with a hammer and noticed that swearing helped with the pain. Sometimes great science starts with a simple “ouch!”

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📝 重要語句

swearing:悪態をつくこと
using rude or offensive words(無礼な言葉や不快な言葉を使うこと)
squeeze:握る
to press something firmly with your hand(手で何かをぎゅっと押すこと)
hand grip:握力計
a device that measures how strongly you can squeeze(どれだけ強く握れるかを測る器具)
experiment:実験
a test done to learn something new(新しいことを学ぶために行うテスト)
shocking:衝撃的な
very surprising in a strong way(非常に強く驚かされるような)
fight-or-flight:闘争・逃走反応
the body’s automatic response to danger(危険に対する体の自動的な反応)
disinhibition:脱抑制
a state where you stop holding yourself back(自分を抑えるのをやめた状態)
confident:自信がある
feeling sure about yourself and your abilities(自分や自分の能力に確信を持っている)
taboo:タブー
something that society says you should not do or say(社会が「してはいけない」と定めていること)
unlock:引き出す
to make something available that was hidden before(隠れていたものを使えるようにすること)

🇯🇵 日本語訳

足の指をぶつけたとき、思わず悪い言葉を叫んでしまったことはありませんか? 多くの人がそうだと思います。ところが科学者たちは驚くべきことを発見しました——悪態をつくと、実際に体の力が強くなるというのです。これは「スウェアリング効果」と呼ばれています。

2018年、イギリスのキール大学の研究者たちがある実験を行いました。被験者に握力計をできるだけ強く握ってもらい、一方のグループには汚い言葉を、もう一方のグループには「テーブル」のような普通の言葉を繰り返してもらいました。結果は衝撃的でした。悪態をついた人たちは、握力がおよそ8パーセントもアップしたのです。別のエアロバイクを使った実験でも、悪態をつくことでパワーが約4.5パーセント向上しました。

なぜこんなことが起きるのでしょうか? 当初、研究者たちは悪態が「闘争・逃走反応」——体の緊急モード——を引き起こすのではないかと考えました。しかし、心拍数に変化はありませんでした。そこでさらに深く調べたところ、2025年に学術誌『アメリカン・サイコロジスト』に掲載された研究で、本当の理由が明らかになりました。悪態は脳を「脱抑制」と呼ばれる状態に導くのです。つまり、自分にブレーキをかけるのをやめる状態です。自信が増し、集中力が高まり、痛みへの恐怖が薄れる。脳が自分自身のブレーキを外してくれるのです。

ただし、一つ大事なルールがあります。偽物の悪い言葉では効果がないのです。「シュガー」や「ファッジ」と言っても意味がありません。脳はその違いをちゃんと見抜いています。本物のタブーな言葉だけが、この隠されたパワーを引き出せるのです。

この研究は2010年にイグ・ノーベル賞も受賞しました——驚きの科学に贈られるユーモアあふれる賞です。研究者のリチャード・スティーブンス博士は、金槌で手を打ってしまったとき、悪態が痛みを和らげることに気づいたのが研究のきっかけだったそうです。偉大な科学は、時にシンプルな「痛っ!」から始まるものなのですね。

🤬 コラム:「悪い言葉」の知られざるパワー

悪態——できれば使いたくないし、使えば眉をひそめられる。でも、人間がこれほど普遍的に悪い言葉を持っているのには、ちゃんと理由があるようです。スウェアリング効果の研究は、「汚い言葉」が持つ意外な力を次々と明らかにしています。

🔸 痛みに耐える時間が50%も延びる

スティーブンス博士の最初の実験(2009年)では、氷水に手を浸けて我慢する時間を測定しました。悪態をついたグループは、普通の言葉を言ったグループより約50パーセントも長く耐えることができたのです。この研究がイグ・ノーベル平和賞を受賞したのは、「汚い言葉が平和(=痛みからの解放)をもたらす」というユーモアからでした。ただし注意点があります。日常的に悪態をつく人ほど効果が薄れるという後続研究も出ています。つまり、悪い言葉は「ここぞ」というときに取っておくのが賢い使い方なのです。

🔸 テニス選手の「叫び声」も同じ原理

テニスの試合でプロ選手がボールを打つたびに大声を上げるのを見たことがあるでしょう。実はこれも同じメカニズムが働いています。研究によると、打球時に声を出すとボールの威力が19〜26パーセントも向上するそうです。声を出すことで脳の抑制が外れ、体が本来持っている力をフルに発揮できるようになるのです。悪態とテニスの叫び声は、一見まったく違うものに見えて、脳科学的には「兄弟」のような存在なのかもしれません。

🔸 次の研究テーマは「告白」と「スピーチ」

スティーブンス博士のチームは現在、悪態の効果が筋力以外にも応用できるか研究を進めています。具体的には、人前でのスピーチや、好きな人に声をかけるときなど、「ためらい」が障壁になる場面です。悪態が脳のブレーキを外すなら、緊張する場面でも一歩踏み出す力を与えてくれるかもしれない——そんな仮説を検証中です。

スティーブンス博士はこう語っています。「悪態はカロリーゼロ、薬物フリー、コストもかからない。いつでも使えるパフォーマンス向上ツールなのです」。もしかすると将来、大事なプレゼンの前に小声で一言つぶやくのが、最強のルーティンになる日が来るかもしれません。ただし、くれぐれも周りに聞こえないように……。

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