原田先生の英語授業アイデア玉手箱

高校英語授業で実践する 「5~10分英語多読」超絶実践マニュアル【原田先生の英語授業アイデア玉手箱】

高校英語授業で実践する
「5~10分英語多読」超絶実践マニュアル

短時間でも継続的な多読活動により、生徒の英語力は飛躍的に向上します。このマニュアルでは、授業の帯活動として5~10分の多読を効果的に導入・継続するための具体的な方法を、ICT環境の有無を問わず実践できるよう包括的にまとめました。

1. 多読の進め方(導入手順・ルール設定・ICT・紙対応)

📌 導入の手順と短時間多読の効果

英語の授業に毎回5~10分の多読(Extensive Reading)の時間を設けることで、定期的な読書習慣を促し、英語力向上につなげることができます。まず教師が授業の冒頭に多読の目的を説明し、生徒全員が静かに英語の本を読む時間を確保しましょう。「授業の開始10分」を多読の帯活動にするだけでも、集中力や理解力の継続に十分高い効果が得られます。毎授業で10分間の多読を行えば週に合計40分読書することになり、楽しく継続する読書を通じて従来の指導法に匹敵する成果を上げることも可能です。

🔥 多読の基本ルール設定

📋 多読三原則
生徒には英語多読の基本ルールを事前に周知しましょう。キーワードは「やさしい本を辞書なしで楽しく読む」ことです。具体的には「辞書は引かない」「分からない所は飛ばす」「つまらなくなったらその本はやめる」という多読三原則を伝えます。
💫 読書の心構え
読書中に出てきた知らない単語はそのままにしてかまいません。いちいち辞書を引いたり単語を暗記しようとすると楽しい読書のリズムが壊れてしまい、かえって長続きしなくなります。分からない部分があっても気にせず先へ進み、内容がつまらなければ別の本に切り替えてよいと教えてください。

💻 ICT活用と紙の本利用の環境づくり

🖥️ ICT環境が整っている場合
オンラインで読める多読プラットフォームやデジタル教材の活用がおすすめです。例えば後述するXreadingなどを利用すれば、生徒は自分のスマホやタブレットで好きなレベルの本をいつでも読むことができ、読書量や速度も自動で記録されます。
📚 ICT環境がない場合
学校や教室にグレーデッドリーダー(Graded Readers)と呼ばれるやさしい英語の本を揃えておき、生徒に貸し出す仕組みを整えましょう。グレーデッドリーダーは薄く軽い冊子が多く持ち運びしやすいうえ、紙の本は画面と比べて目が疲れにくく長時間の読書に向いています。

2. 授業で使いやすいおすすめ多読サイト(無料/有料)

🆓 無料で使えるサイト

📖 Extensive Reading Central
学習者向けに書き下ろされたオリジナルの英語多読用コンテンツが多数公開されています。一部は朗読音声付きで、ネイティブが執筆した現代的な内容の短編も読めます。レベル別に読み物が揃っており、登録なしで利用可能です。
🎭 Storyline Online
絵本の読み聞かせ動画サイトです。俳優などが朗読する質の高い英語絵本の映像が公開されており、字幕をOFFにして視聴することで「聞く多読」にもなります。イラストと音声があるので、初心者の生徒でも内容を想像しやすく、集中して英語に触れることができます。
📰 News in Levels
世界のニュース記事を3段階の易しい英語にリライトして掲載しているサイトです。同じニュースを初級・中級・準上級レベルの英文で読めるため、自分のレベルで無理なく時事英語を読む練習ができます。音声も付属しているのでリスニング教材としても活用可能です。
🗞️ やさしく読める英語ニュース
英語教育協議会(ELEC)が提供する学習者向けニュースサイトです。日本や海外の時事ニュースを題材に、易しい英語文章と語注、音声、日本語要約が掲載されています。国内の話題も扱うため親しみやすく、ニュース記事を教材として取り入れたい場合に便利です。

💳 有料サービス

🌟 Xreading
学校採用例が多い日本発のオンライン多読プラットフォームです。22以上のシリーズから約1700冊ものグレーデッドリーダーが収録されており、生徒は好きな時に好きなだけ読むことができます。クラス全員が同時に同じタイトルを読むことも可能で、「持ち運べる図書館」といえる充実ぶりです。読書の記録管理機能も優秀で、教師は各生徒が読んだ冊数・語数・読書時間・理解度クイズの結果などを瞬時に把握できます。
🎓 Oxford Reading Club
オックスフォード大学出版局によるオンライン多読サービスで、Oxford Reading TreeやBookwormsといった有名シリーズを含む1000冊以上の書籍が読み放題です。月額制で学校導入も可能であり、パソコンやタブレットでアクセスして各自のペースで多読ができます。

3. 紙で使いやすい多読本・シリーズ(難易度別)

📚 初級~中級レベル

🪜 ラダーシリーズ(Ladder Series)
日本のIBCパブリッシング社による学習者向けリーダーシリーズ。英検4級レベル(単語1000語程度)から英検準1級レベル(語彙制限なし)まで5段階があり、古典からビジネスまで幅広いジャンルの物語が100冊以上揃っています。巻末に単語リストが付いているため辞書なしでも読みやすく、初級者の入門に最適です。
🎓 Cambridge English Readers
ケンブリッジ大学出版局のグレーデッドリーダー。語彙数250語のStarterから約3800語のLevel 6まで全7レベルがあり、すべて書き下ろしのオリジナルストーリーで構成されています。現代的で興味深いテーマの作品が多く、全タイトルに無料の音声ダウンロードが提供されています。
🐧 Penguin Readers(ペンギンリーダーズ)
ピアソン社の有名な多読シリーズ。200語レベルの超初級から3000語レベルの上級まで8段階に細分化されており、古典文学から伝記、映画のノベライズ版まで多彩なジャンルの本が揃っています。全冊にオーディオが付属し、イギリスの公式サイトからリスニング音声や理解度テスト、ワークシートをダウンロード可能です。

📖 中級~上級レベル

📘 Pearson English Readers
Penguin Readersと同じくピアソン社のシリーズで、レベル分けが英検3級程度から1級レベルまでの7段階と幅広いのが特徴です。古典の易しい翻訳版からオリジナルストーリーまでジャンルも豊富で、ほぼ全タイトルに音声やアクティビティノートが用意されています。
🦉 Oxford Bookworms Library
オックスフォード大学出版局の定番シリーズ。語彙250語レベルのStarterから2500語レベルのStage 6まで7段階に分かれ、ジャンルも伝記・ミステリー・SF・ノンフィクションなど多岐にわたります。コミック形式通常の文章形式読者参加型(インタラクティブ)形式の3種類のスタイルがあるのが特徴です。

🌱 超初心者向け素材

🌳 Oxford Reading Tree
幼児・児童向けのやさしい語彙の物語絵本で、高校生の初心者でもストーリーを楽しみながら基本表現を身につけられます。絵本は文字数こそ少ないものの、基本単語が繰り返し出現するため語彙の定着に役立ちます。
📚 東進ブックス大学受験 英文多読シリーズ
予備校講師による高校生向けの多読教材。英検準2級~センター試験基礎レベルのやさしい英語で書かれたドラマ仕立ての物語で、語句注が豊富についているため辞書なしで読み進められます。英文と和訳音声の両方がダウンロード提供されており、リスニング教材としても活用可能です。

4. 多読の心得(教師と生徒向け)

👨‍🏫 教師の心得:効果的な支援と心構え

🎯 基本的な姿勢
英語多読を指導する教師は、「読むこと自体が目的」である多読の特性を理解し、従来の精読指導とは異なるアプローチを取る必要があります。生徒一人ひとりのレベルに合った易しめの本を読むことを柔軟に認める姿勢が大切です。
📅 継続の重要性
多読の時間を授業の一部に組み込み、継続して実施する熱意を示すことが重要です。時間割に組み入れて定期的に読書の帯活動を行うことで、生徒は「学校として多読を重視している」と認識します。読書中は教師も教科書の解説やテスト対策から離れ、生徒と一緒に英語の本に没頭しましょう。
🚫 テストは基本的に行わない
適切なレベルの本を読んでいる限り詳細なテストで理解度を測る必要はなく、テストや小テストを多用すると読書そのものの楽しさが損なわれてしまいます。評価が必要な場合も、読んだ冊数や語数といった量的な指標を軸に、読書記録や簡単なコメントから様子を把握する程度に留めるとよいでしょう。

👩‍🎓 生徒の心得:楽しみながら継続するコツ

🎮 娯楽として楽しむ
「英語の本を読むときは勉強ではなく娯楽だと思って取り組んでほしい」ということです。多読を長く続ける秘訣は、とにかく自分が楽しめる本を、自分に合った易しいレベルで読むことに尽きます。
🔄 毎日コツコツの習慣
毎日コツコツ読む習慣をつけることも大切です。たとえ1日5~10分でも、継続することで読むスピードが上がり語彙も自然に増えていきます。中には「今日は1ページだけ…」という日があっても構いません。大事なのは英語に触れない日をなるべく作らず、「ちょっと時間が空いたら英語の本を読む」という習慣にしてしまうことです。
🤝 共有する喜び
読んだ本の内容を友達や先生と共有する喜びもぜひ味わってください。面白かった本や感動したストーリーについて話すことで、達成感が生まれますし次の読書への意欲が湧いてきます。多読は競争ではなく、自分のペースで楽しむものです。

5. 生徒にスムーズに多読をさせるアイデア・アクティビティ

📊 読書記録と管理

📝 読書記録表の活用
生徒一人ひとりに「多読記録表」や「読書通帳」を配布し、読んだ本のタイトル・語数・感想などを記入させます。市販の多読用読書記録手帳(SEG書店などで入手可)を使えば、YL(読みやすさレベル)や累積語数も書き込めて便利です。教師は毎週この記録をチェックし、各生徒の読書量や進捗を把握しましょう。

🗣️ 共有とコミュニケーション

👥 シェアタイム(共有の時間)
定期的に、生徒同士が読んだ本について話し合う時間を設けましょう。例えば毎週または隔週で数人の生徒に持ち回りで「おすすめの一冊」をクラスに紹介させたり、あるいはペアやグループで最近読んだ本のあらすじや感想を簡単に共有させたりします。発表は1人1分程度の短いもので十分です。
📋 ミニ・ブックレポート
読んだ本ごとに数行程度の超簡単な読書レポートや振り返りを書く活動も有効です。例えばプリントやノートに「Title(タイトル): ____」「My favorite character: ____ because ____」「Rating(評価): ★★★☆☆」のような項目を作り、生徒に埋めさせます。ポイントは決して詳しい要約や分析を課さないことです。

🏃‍♂️ モチベーション向上の工夫

🏁 読書マラソン・目標設定
生徒全員で一定期間に〇語(例えば10万語)読む「読書マラソン」企画を行ったり、学期ごとに各自の目標冊数・語数を決めて達成を目指したりするのも動機付けになります。達成状況は教室内に掲示した進捗チャート(バーやシールなど)で視覚化すると効果的です。
🏆 表彰と共有イベント
学期末や学年末に、多読に取り組んだ成果を表彰・共有する時間を作るのも良いでしょう。「最多語数賞」「最多冊数賞」「ベストブックレポート賞」「読書速度向上賞」などの賞を数種類用意し、達成者に賞状や小さな景品(しおりや英語のペンなど)を渡します。
📚 図書館・蔵書の充実と生徒の関与
多読プログラムを継続するには、読める本のラインナップを少しずつでも充実させていくことが大切です。学校図書館と協力し、新しく多読向けの洋書を購入してもらったり、地域図書館からの取り寄せ制度を活用したりしましょう。また、生徒を「多読委員」として本の貸出・返却の管理や、本棚の整理整頓、推薦本のポップ作成などに関わらせるのも良いアイデアです。

🎯 まとめ

短時間でも継続的な多読活動は、生徒の英語力向上に絶大な効果をもたらします。
ICT環境の有無にかかわらず、工夫次第で効果的な多読プログラムを実現できます。
「楽しく読む」ことを最優先に、生徒の英語学習に新たな風を吹き込んでください。

重要ポイント: 多読は「読むこと自体が目的」です。
テストや評価にとらわれず、生徒が「もっと読みたい!」と思える環境づくりに注力しましょう。