単語帳と読書は役割が違う
単語帳と読書は、どちらも語彙を増やす方法ですが、役割が違います。
- 単語帳:たくさんの単語の「意味」を短時間で知る
- 読書:知っている単語の「使われ方」を何度も見て、深く身につける
単語帳で deal を「扱う」と覚えても、実際の英文では deal with a problem(問題に対処する)、a good deal(お買い得・かなり)、It's a deal.(それで決まり)など、さまざまな形で出てきます。こうした意味の広がりやコロケーションは、たくさん読む中で自然に身についていきます。
また、1つの単語に何度も出会うことで、単語帳で覚えた知識が「すぐわかる」レベルまで強くなります。単語帳が「出会いのきっかけ」なら、読書は「何度も再会する場所」です。
ポイント:単語帳で知った単語に、本の中で再会する。この組み合わせが、語彙を長持ちさせるいちばんの近道です。
語彙を増やすための本のレベル選び
読書で語彙を増やしたいとき、最も大切なのはレベル選びです。
知らない単語が多すぎると、語彙は増えにくい
知らない単語が1ページに何十個もあると、文脈から意味を推測する手がかりがなくなってしまいます。第二言語の読解研究では、文章の約98%の単語を知っていると、辞書なしでも内容を理解しやすいという結果が報告されています(Hu & Nation, 2000 などの研究)。
98%というと、100語のうち知らない単語が2語ほど。1ページ(約200〜300語)なら、知らない単語は数個程度ということです。
レベルの目安
- 多読用(楽に読む本):知らない単語が1ページに0〜2個程度。スラスラ読める。
- 語彙を伸ばす本:知らない単語が1ページに3〜5個程度。少し考えれば推測できる。
- 難しすぎる本:知らない単語が1ページに10個以上。辞書なしでは読めない。
語彙を増やす読書は、1と2の間が中心です。3のレベルは、精読の教材として少しずつ使いましょう。
本の例
- 学習者向けのグレーデッド・リーダーズ(レベル別に語彙が調整された本)
- 学習者向けの英語ニュースサイトや記事
- 好きなジャンルの児童書・YA小説
好きなジャンルや、日本語で読んだことのある話を選ぶと、内容が頭に入りやすく、続けやすくなります。
多読と精読の組み合わせ方
多読:たくさん読んで、再会の回数を増やす
多読は、やさしい英文をたくさん読む方法です。わからない単語があっても止まらず、話の流れを楽しみながら読み進めます。同じ単語に何度も出会うことで、知っている単語が「すぐわかる単語」に育っていきます。
精読:じっくり読んで、単語を深く知る
精読は、少し難しめの英文を1文ずつ丁寧に読む方法です。知らない単語を辞書で調べ、コロケーションや文の構造も確認します。
おすすめの組み合わせ
- 平日:多読を1日15〜20分(止まらず読む)
- 週末:精読を1回30分(1〜2ページをじっくり)
多読で「広く出会い」、精読で「深く知る」。両方をバランスよく続けると、語彙の数と深さの両方が伸びていきます。
精読で単語をメモするコツ
精読で出会った単語は、次のようにメモします。
- 単語:reluctant
- 出会った文:She was reluctant to leave her hometown.
- 意味:気が進まない、〜したがらない
- 後ろの形:be reluctant to +動詞の原形
「出会った文」をセットで残しておくと、あとで見たときに場面ごと思い出せます。
文脈から意味を推測する手順
読書中に知らない単語に出会ったら、辞書を引く前に、次の手順で推測してみましょう。
ステップ1:品詞を判断する
単語の位置や語尾から、名詞・動詞・形容詞のどれかを考えます。
ステップ2:プラスかマイナスかを考える
前後の内容から、よい意味か悪い意味かを判断します。
ステップ3:前後のヒントを探す
言いかえ(or、that is)、対比(but、however)、例(such as、for example)などのヒントを探します。
例
The room was so cluttered that I couldn't find my keys. There were books, clothes, and boxes everywhere.
- was の後ろなので形容詞
- 鍵が見つからなかった → マイナスの意味
- 本や服や箱があちこちに → 「散らかった」
実際に cluttered は「散らかった」という意味です。
推測したら、ときどき確認する
推測が外れることもあるので、何度も出てくる単語や、話の理解に必要な単語は、読み終わったあとに辞書で確認しましょう。多読中は止まらず、読み終わってから数語だけ調べるのがおすすめです。
よくある失敗
失敗1:難しすぎる本を選ぶ
「語彙を増やしたいから」と、知らない単語だらけの本を選ぶと、辞書を引く時間ばかりかかって、読書が苦しくなります。多読なら「スラスラ読める」レベルを選びましょう。
失敗2:知らない単語を全部調べる
1ページに10回辞書を引くと、話の流れがわからなくなり、読書の楽しさがなくなります。調べるのは、何度も出てくる単語や話の理解に欠かせない単語だけで十分です。
失敗3:単語メモを作って満足する
メモを作ったら、それを単語カードやアプリに入れて、日をあけて復習しましょう。メモは作るだけでは覚えられません。
失敗4:読書だけで単語帳をやめてしまう
読書だけで試験に必要な単語をすべてカバーするには、かなりの量を読む必要があります。試験対策では、単語帳で出会い、読書で再会する組み合わせが効率的です。
1週間の読書×語彙メニュー
1日15〜20分のメニューです。
- 月曜:本選び――知らない単語が1ページに2〜3個程度の本を1冊選ぶ。最初の数ページを読んでレベルを確認。
- 火曜:多読――止まらず15分読む。気になった単語に鉛筆で軽く印をつけるだけ。
- 水曜:多読――同じ本の続きを15分。印をつけた単語が再登場したら、もう一度印を足す。
- 木曜:推測練習――印が2つ以上ついた単語を3つ選び、文脈から意味を推測してから辞書で確認。
- 金曜:多読――続きを15分。
- 土曜:精読――気に入った1ページをじっくり読み、知らない単語を「出会った文」ごとメモする。
- 日曜:メモを単語カードへ――土曜のメモをカードやアプリに入れ、翌週から復習する。
ポイント:印が何度もつく単語は、その本で「よく使われる単語」。優先して覚える価値があります。
まとめ:単語と本の中で再会しよう
読書で語彙を増やすポイントです。
- 単語帳で出会い、読書で再会する
- 知らない単語が少なめの本を選ぶ
- 平日は多読、週末は精読
- 推測してから確認、出会った文ごとメモする
今日は、学習者向けの英語の記事か、やさしい英語の本を1つ選んで、10分だけ止まらずに読んでみてください。単語帳で覚えた単語に1つでも再会できたら、それが「生きた語彙」になった瞬間です。



