試験範囲は「通訳ガイドテキスト」
観光庁の「全国通訳案内士試験ガイドライン」では、通訳案内の実務の筆記試験について次のように定められています(2026年9月時点で確認)。
- 内容:通訳案内の現場で求められる基礎的な知識。例として、旅行業法や通訳案内士法など業務と密接に関係する法令の基本的な内容や、訪日外国人旅行者の旅程の管理に関する基礎的な内容など
- 試験範囲:原則として、令和7年4月に観光庁より発行された「通訳ガイドテキスト(初版)」
- 方式:多肢選択式(マークシート方式)
- 試験時間:20分、問題数は20問程度
- 満点:50点、原則30点が合格基準点
観光庁の報道発表によると、このテキストは、それまでの「観光庁研修テキスト」を改訂して名称を変えたもので、2025年度の試験から「通訳案内の実務」の試験範囲になっています。改訂では、観光情勢などの最新情報が反映され、高付加価値旅行者への対応やコミュニケーションなど、実務に関する章が追加されたと説明されています。
テキストは観光庁のホームページでPDFとして公開されています。まずはダウンロードして、目次に目を通すところから始めましょう。
ガイドラインが示す4つの柱
ガイドラインの「試験全体について」の部分では、通訳案内の実務で問う内容として、次の4つが挙げられています。
- 通訳案内を行うにあたって必要となる関係法令に関する知識
- 旅程管理の実務に関する知識
- 訪日外国人旅行者の国別・文化別の特徴等に関する知識
- 災害発生時等における応急的な医療対応や危機管理に関する知識
テキストを読むときは、今読んでいる章がこの4つのどれに当たるかを意識しましょう。ノートを4つのブロックに分けてまとめると、知識が整理しやすくなります。
まとめ方の例
- 【法令】全国通訳案内士の名称の扱い、登録、研修の義務など
- 【旅程管理】集合・移動・食事・宿泊の各場面で確認すべきこと
- 【国別・文化別】食習慣や宗教上の配慮など、旅行者の背景に応じた注意点
- 【危機管理】けがや急病、地震などが起きたときの対応の流れ
ポイント:テキストの章立てとガイドラインの4つの柱を対応させると、「どこが出そうか」が見えやすくなります。
テキストの読み方:3周で仕上げる
テキストは一度読んだだけでは覚えきれません。おすすめは、目的を変えて3周読む方法です。
1周目:全体をつかむ(精読しない)
見出しと太字、図表だけを追って、どんな内容が書かれているかをつかみます。わからない言葉があっても立ち止まりません。
2周目:ノートにまとめる
4つの柱ごとに、「誰が・いつ・何をする」の形で要点を書き出します。たとえば「ガイドは集合時に人数と体調を確認する」のように、行動の形にすると覚えやすくなります。
3周目:問題を作る
各章を読んだら、自分で○×問題を3つ作ります。
- 全国通訳案内士の資格がなければ、有償で外国語の観光案内をしてはいけない。(→×。2018年の法改正以降、資格がなくても有償で案内できる。ただし名称は使えない)
問題を作る作業は、内容を深く理解していないとできません。これが強力な想起練習になります。
旅程管理と危機管理は「場面」でイメージ
旅程管理や危機管理の問題は、文字で覚えるより、具体的な場面を思い浮かべると理解しやすくなります。
場面の例1:集合時間に1人来ない
- まず何をするか?(連絡をとる、他の参加者への説明、待つ時間の判断など)
- 誰に報告するか?
- 次の予定への影響をどう調整するか?
場面の例2:参加者が体調不良を訴えた
- 本人の状態をどう確認するか?
- 医療機関の情報をどう得るか?
- ほかの参加者のツアーをどう続けるか?
テキストに書かれている手順や考え方を、このような場面に当てはめて考えてみましょう。「自分がガイドならどうするか」を想像すると、選択肢の中から適切な対応を選びやすくなります。
英語でも準備を
場面ごとに、英語のひと言も用意しておくと、口述試験や現場で役立ちます。
- Are you feeling all right? Would you like to sit down for a while?
- I'll call the hotel and ask them to arrange a doctor.
医療や安全に関わる対応は、テキストや公的機関の情報に沿って考えることが大切です。自己流の判断で覚えないようにしましょう。
1週間メニューと過去問の注意点
1週間メニュー(1日20〜30分の例)
- 月:テキストの目次を読み、4つの柱に章を振り分ける
- 火:【法令】の章を読んでノートにまとめる
- 水:【旅程管理】の章
- 木:【国別・文化別の特徴】の章
- 金:【危機管理】の章
- 土:各章について自作の○×問題を3つずつ作って解く
- 日:過去問の実務を20分で解き、間違えた箇所をテキストで確認
過去問の注意点
JNTOのホームページでは筆記試験の過去問題(一部)が公開されています。ただし、試験範囲のテキストは2025年度から「通訳ガイドテキスト(初版)」になりました。それより前の年度の過去問は、旧テキストが範囲だったことを意識して使いましょう。出題の形式や雰囲気をつかむには役立ちますが、内容は必ず最新のテキストで確認することが大切です。
よくある失敗と、得点源にするコツ
失敗1:「常識で解ける」と思って準備しない
実務の問題は一見常識で答えられそうに見えますが、テキストに沿った正確な知識が問われます。なんとなくの判断で選ぶと、似た選択肢で迷ってしまいます。
失敗2:旧テキストや古い情報で勉強する
試験範囲が変わったことを知らずに、古い参考書だけで勉強するのは危険です。必ず観光庁が公開している最新のテキストを使いましょう。
失敗3:配点が小さいからと後回しにする
50点満点の科目ですが、30点に届かなければ筆記全体が不合格です。範囲がはっきりしている分、しっかり準備すれば得点源にしやすい科目でもあります。
免除について
JNTOの2026年度施行要領では、通訳案内の実務には他の検定による免除はありません。免除の対象になるのは、前年度にこの科目の基準点に達した人や、ほかの外国語で全国通訳案内士試験にすでに合格している人などに限られます(2017年度以前の合格者は、観光庁研修を修了している場合に限り実務も免除)。
ポイント:今日はテキストのPDFをダウンロードして、目次を4つの柱に振り分けるところまでやってみましょう。
テキストの知識を口述と現場につなげる
通訳案内の実務は、筆記試験だけの科目ではありません。ガイドラインでは、口述試験も「通訳案内の実務」として、外国語の能力に加えて日本地理・日本歴史・一般常識・通訳案内の実務の正確な知識を活用して行われる、現場で必要なコミュニケーション能力を判定するとされています。
つまり、テキストで学んだ旅程管理や危機管理の考え方は、口述試験の質疑応答でも生きてくる可能性があります。たとえば、プレゼンのあとに試験委員から案内の場面に関する質問をされたとき、ガイドとして適切な受け答えができるかどうかは、テキストの理解度にかかっています。
練習アイデア
- テキストの場面を1つ選び、英語で「自分ならこう対応する」と30秒で話す
- 旅行者役と案内役に分かれて、家族や友人とロールプレイをする
- 国別・文化別の配慮を、英語でひと言ずつ言えるようにする(例:Some of our guests may not eat pork for religious reasons, so I'll check the menu in advance.)
筆記のための知識を、声に出して使える知識に変えていくと、一石二鳥の勉強になります。



