模試の点数はあくまで「目安」
まず前提として、市販の問題集や模試に載っている換算表や予想スコアは、本番のスコアを保証するものではなく、学習の目安です。
TOEIC L&Rの本番のスコアは、正解数をもとに統計的な処理を経て算出されるとされています。一方で、問題集の換算表は、その問題集ごとに作られた目安であることが一般的です。つまり、同じ正解数でも、換算表と本番とで対応するスコアが異なることは十分にありえます。
公式問題集には参考スコア範囲の換算表が載っていますが、これも「このくらいの範囲になる目安」として使うのが適切です。
ポイント:模試の点数は「今の自分の位置をざっくり知るための物差し」。1回ごとの点数に一喜一憂するより、同じ物差しで変化を追うことに意味があります。
たとえば、同じ正解数でも、ある問題集の換算表では650点、別の問題集では620点と示されることがあります。どちらかが間違っているというより、それぞれの問題集が独自の目安を示していると考えましょう。
ずれが生まれる主な理由
模試と本番のずれには、いくつかの要因が考えられます。一般論として整理してみましょう。
1. 受験環境の違い
自宅で模試を解くときは、音声を自分のイヤホンで聞き、好きな姿勢で、休憩を挟むこともできます。本番は、会場のスピーカーやヘッドホンなど決められた環境で、2時間続けて解きます。音の聞こえ方や緊張感の違いは、リスニングの正答率に影響しやすい部分です。
2. 時間の厳しさ
自宅では、つい時間を少しオーバーしたり、途中で止めたりしがちです。本番では時間が厳密に管理されるため、リーディングの後半で差が出やすくなります。
3. 同じ問題への慣れ
一度解いた問題を再び解くと、内容や答えを覚えていることがあります。2回目以降の点数は、実力というより記憶の影響を受けていることも多いです。
4. 問題との相性
本番では、受験回によって話題や設問の傾向が少しずつ異なります。得意な話題が多い回もあれば、苦手な話題が多い回もあります。
5. 体調と集中力
睡眠不足や緊張など、当日のコンディションもスコアに影響しえます。
模試を本番に近づける解き方
模試の結果を本番の目安として使いたいなら、できるだけ本番に近い条件で解くことが大切です。
本番に近づけるチェックリスト
- 約2時間、途中で止めずに通しで解く
- リーディングの75分は、時間になったら必ず手を止める
- 解答用紙(マークシート)を用意し、本番と同じようにマークする
- 音声は、できればイヤホンではなくスピーカーで流す
- 本番と同じ時間帯に解く
特に時間を厳密に守ることは重要です。時間を少し延ばして解いた模試の点数は、本番のリーディングでは再現しにくくなります。
初見の問題で測る
実力の目安を知りたいときは、まだ解いたことのない模試を使いましょう。一度解いた問題は、復習用の教材として使い、スコアの目安には使わない、と役割を分けておくと混乱しません。
模試の結果を学習に生かす方法
模試の本当の価値は、点数そのものよりも、どこで点を落としたかがわかることにあります。
模試の後にやること
- パートごとの正答数を表にまとめる
- 間違えた問題を「知識不足」「聞き逃し・読み飛ばし」「言い換えに気づかなかった」「時間不足」に分類する
- 分類で一番多かったものを、次の1〜2週間の重点にする
自作の記録例
- Part 2:25問中19問正解(間違いは疑問詞の聞き逃しが中心)
- Part 5:30問中22問正解(語彙問題の失点が多い)
- Part 7:時間不足で最後の12問を塗り絵
この記録から、「Part 2の疑問詞の練習」「Part 5の語彙問題」「リーディングの時間配分」という3つの課題が見えてきます。点数が上がったか下がったかより、こうした課題の変化を追う方が学習の役に立ちます。
1週間の模試活用メニュー
1日目(休日):本番と同じ条件で通し
初見の模試を約2時間で解きます。時間は厳守です。
2日目:採点と分類
パート別の正答数を記録し、間違いを4つに分類します。
3日目:リスニングの復習
間違えた問題のスクリプトを確認し、聞き取れなかった部分を音読します。
4日目:リーディングの復習
間違えた問題の根拠を本文から探し、なぜ間違えたかを1行で書きます。
5日目:弱点パートの集中練習
分類で一番多かった課題に合わせて、同じタイプの問題を解きます。
6日目:解き直し
模試の間違えた問題を、答えを見ずに解き直します。
7日目:振り返り
次の模試までに取り組む課題を1つ決めて、手帳に書きます。
模試は「解いて終わり」にすると、点数を見て気分が上下するだけになってしまいます。1回の模試で1週間分の学習材料が取れる、と考えて使いましょう。
リスニングとリーディングで「ずれ方」は違う
模試と本番のずれは、リスニングとリーディングで出方が異なることがあります。自分の記録を見るときは、トータルだけでなくセクション別に比べてみましょう。
リスニングのずれ
リスニングは、音の環境の影響を受けやすいセクションです。自宅でイヤホンを使って聞くと、音がクリアに聞こえます。一方、本番では会場の環境で聞くため、同じ音声でも聞こえ方が違うと感じる人もいます。
対策として、練習のときにスピーカーで少し離れた場所から音声を流す、生活音がある環境で聞くといった工夫をすると、本番の環境に近づけることができます。
リーディングのずれ
リーディングは、時間の厳しさと疲れの影響を受けやすいセクションです。リスニングの約45分を終えたあとに75分のリーディングが続くため、リーディングだけを練習するときより集中力が落ちやすくなります。
リーディングだけを切り出して練習するのも有効ですが、本番の目安にしたいときは、リスニングから通しで解いたときの点数を基準にしましょう。
自作の記録例
- 模試(自宅・通し):リスニング 360/リーディング 320
- 本番:リスニング 330/リーディング 315
この例では、リスニングのずれが大きいので、「音の環境に慣れる練習」を増やすのが次の課題になります。このように、ずれ方を見ると、次に何をすべきかが見えてきます。
よくある失敗
失敗1:同じ模試を何度も解いて点数の上昇を喜ぶ
同じ問題の2回目以降の点数は、記憶の影響を受けやすいものです。復習としては有効ですが、実力の目安としては割り引いて考えましょう。
失敗2:模試の点数が低くて落ち込み、勉強をやめてしまう
模試の点数は目安です。低い点数が出たときこそ、課題がはっきりしたチャンスと考えましょう。
失敗3:本番の点数が模試より低かったことを「実力不足」と決めつける
環境や問題との相性など、さまざまな要因が影響します。1回の本番の結果だけで判断せず、複数回の結果や模試の記録を合わせて見るのがおすすめです。
模試と本番のずれを知っておくと、点数に振り回されずに学習を続けられます。次の模試は、本番と同じ条件で解くところから始めましょう。



