映画・文学を使う意味:英語で「感じ、考える」
映画や文学を授業で使う意味は、英語の表現を学ぶことだけではありません。
- 文脈の中の英語:登場人物の関係や場面の中で、言葉がどう使われるかを学べる
- 解釈の多様性:同じ作品でも、読み手によって受け取り方が違う。その違いが話し合いの材料になる
- 感情を伴う学び:心を動かされた場面の言葉は、記憶に残りやすい
- 文化や社会への関心:作品の背景を知ることで、異なる時代や社会について考えるきっかけになる
大切なのは、作品を英語の教材としてだけでなく、作品として味わう時間を確保することです。そのうえで、言葉への注目や、話し合い・書く活動につなげていきます。
作品の選び方:長さ・難しさ・テーマ
作品選びは、授業の成否を大きく左右します。
映画の場合
- 短編映画から始める:数分から20分程度の短編なら、1回の授業で視聴と活動の両方ができる
- 台詞の少ない作品も選択肢に:映像から読み取ったことを英語で表現する活動に向いている
- 長編は場面を選ぶ:全編を見せるのではなく、テーマに関わる場面を選んで使う
文学の場合
- 短い作品や抜粋:短編小説、詩、長編の一章など
- 学生のレベルに合ったもの:レベル別に書き直された作品(Graded Readers)も選択肢になる
- 原作と映画の組み合わせ:同じ物語を文章と映像で比べる活動もできる
テーマの選び方
- 学生の生活や関心に近いテーマ(家族、友情、進路、アイデンティティなど)
- 話し合いが生まれやすい、答えが一つではないテーマ
作品を選んだら、教師自身が一度通して見る(読む)ことを忘れずに。授業で扱うのにふさわしくない表現や場面がないかも確認しておきましょう。
選んだ作品の点検メモの例
- 長さ:12分(授業内で2回見られる)
- 台詞の量:少なめ(映像から読み取る活動向き)
- テーマ:家族との別れ(話し合いが生まれやすい)
- 注意点:悲しい場面があるので、事前にひと言伝える
短編映画を使った90分授業の流れ
短編映画を使った授業の流れの例です。
- 予想(10分):タイトルと最初の場面の静止画を見せ、どんな話か予想する
- What do you think this film is about? Who is the main character?
- 1回目の視聴(10分):字幕なし、または英語字幕で全体を見る。まずは作品として楽しむ
- 理解の確認(10分):ペアで、登場人物、場面、出来事の流れを英語でまとめる
- 場面の分析(20分):印象に残った場面を1つ選び、その理由を話し合う
- The most memorable scene for me was ... because ...
- 2回目の視聴(10分):選んだ場面を中心にもう一度見る。表情や音楽、台詞にも注目する
- 話し合い(20分):答えが一つではない問いについてグループで話し合う
- Why do you think the character made that choice?
- What would you have done in the same situation?
- 書く(10分):自分の解釈を3〜5文で書く
1回目は楽しむ、2回目は分析するという区別をはっきりさせると、学生の集中が続きます。
文学作品を読む授業の活動例
文学作品を扱う授業では、あらすじの確認だけで終わらないよう、読みを深める問いを用意することが大切です。
読む前
- 作品のテーマに関わる問いについて、自分の経験を話す
- 例:Have you ever felt that you didn't belong somewhere?
読んでいる最中
- 各場面で、登場人物の気持ちを1語で表す(例:lonely, confused, relieved)
- 次の展開を予想してから、先を読む
読んだ後
- 視点を変えて書く:脇役の立場から、同じ出来事を日記の形で書く
- 結末を書き換える:別の結末を考え、その理由を説明する
- 作品と自分をつなぐ:作品のテーマについて、自分の考えを段落で書く
言葉に注目する活動
作品の中の印象的な表現を1つ選び、「なぜこの言葉が使われているのか」「別の言葉だったら印象はどう変わるか」を考えます。こうした活動は、言葉の選び方への感覚を育てます。
話し合いと書く課題への広げ方
作品を使った授業の成果を、話し合いや書く課題につなげる方法を紹介します。
話し合いの型
- Literature Circles(文学サークル):グループの各メンバーが役割(要約係、問い係、言葉係、つながり係など)を担当し、読んだ部分について話し合う
- 賛否の話し合い:登場人物の選択について、賛成・反対の立場に分かれて意見を出し合う
書く課題の例
- 短い感想文(150語程度):印象に残った場面と、その理由
- 作品の比較(300語程度):原作と映画、または2つの作品のテーマを比べる
- レビュー(200語程度):他の学生に作品を勧める文章。評価と理由を含める
学期を通した課題の例
学期の最後に、学生が自分で選んだ作品(短編映画や短編小説)を紹介するプレゼンテーションを行います。作品の選択を学生に任せることで、自分の関心に基づいて英語を使う経験ができます。
著作権についての基本的な注意
映画や文学作品を授業で使うときは、著作権への配慮が欠かせません。
押さえておきたい基本
- 日本の著作権法には、学校などの教育機関の授業で、一定の条件のもとで著作物を利用できる規定(第35条)があります
- ただし、利用できる範囲には条件があり、著作権者の利益を不当に害する場合は認められません
- オンライン授業などで著作物を送信する場合の扱いについては、授業目的公衆送信補償金制度(SARTRAS)の仕組みがあります
実践上の注意
- 市販のDVDや配信サービスの作品を授業で上映する場合、サービスの利用規約も確認する
- 作品の全文や全編をLMSに掲載するのは避け、必要な部分に限る
- 分からない場合は、所属大学の担当部署に確認する
著作権の扱いは制度の改正や運用の変更もありうるため、最新の公式情報や学内の指針を確認しましょう。
よくある失敗と、その立て直し方
1. 長編映画を全編見せて授業が終わる
視聴だけで時間を使うと、話し合いや書く活動の時間がなくなります。短編か、場面を選んで使いましょう。
2. 難しすぎる作品を選ぶ
教師が好きな作品でも、学生のレベルに合わないと理解で精一杯になります。レベルに合った作品を選ぶか、支援(語彙リスト、あらすじ)を用意しましょう。
3. 「正しい解釈」を押しつける
作品の解釈に唯一の正解はありません。根拠を示した解釈であれば、多様な読みを認めましょう。
まずは次の授業で、10分程度の短編映画を1本選び、「1回目は楽しむ、2回目は分析する」流れを試してみてください。



