大学教員の仕事の3つの柱
大学教員の仕事は、大きく分けて次の3つの柱で考えられることが多いです。
- 教育:授業、学生の指導、教材の作成、成績評価など
- 研究:論文の執筆、学会発表、研究費の申請、共同研究など
- 校務・社会貢献:委員会の業務、入試業務、学内行事、地域や学会での活動など
大学や職位によって、これらの比重は大きく異なります。教育を重視する大学もあれば、研究の成果を強く求める大学もあります。
まずは、自分の所属する大学が何を重視しているかを知ることが大切です。採用時の説明、就業規則、評価の仕組み、昇任の基準などを確認し、先輩の教員に話を聞いてみましょう。
ポイント:3つの柱を常に均等にする必要はありません。時期によって比重を変えながら、長い目で見てバランスを取るという考え方が現実的です。
1年目の優先順位:まず授業を安定させる
着任1年目は、新しい環境に慣れることで精一杯になりがちです。優先順位の考え方の例を挙げます。
最優先:授業を安定させる
- 担当科目のシラバスと、科目の位置づけ(必修か選択か、どの学年か)を確認する
- 同じ科目を担当する教員と、教材や評価の方針をすり合わせる
- LMSや学内システムの使い方を早めに覚える
次に:学内の仕組みを知る
- 所属する委員会の役割と、年間のスケジュールを把握する
- 研究支援、教育支援、学生支援などの部署の場所と役割を知る
そして:研究を止めない
1年目は研究の時間が減ることを前提に、研究を完全に止めないことを目標にします。
- 週に一度でも、研究のための時間を予定表に入れる
- 大学院時代の研究を論文にまとめる作業を少しずつ進める
1年目から完璧を目指すと、心身の負担が大きくなります。2年目以降に向けた土台作りの年と考えましょう。
研究時間を確保するための工夫
授業のコマ数が多い英語教員にとって、研究時間の確保は大きな課題です。次のような工夫が役立ちます。
時間の確保
- 研究の時間を予定として固定する:例「毎週水曜日の午前は研究の時間」と決め、会議などを入れないようにする(可能な範囲で)
- 小さな単位で進める:まとまった時間がとれなくても、30分で論文を1本読む、1段落書くなど、細切れの時間を使う
- 長期休暇を計画的に使う:夏休み・春休みの研究計画を、学期中に立てておく
教育と研究をつなぐ
英語教育の研究者にとって、自分の授業は研究のフィールドにもなりえます。
- 授業の工夫を、実践研究として計画し、記録を残す
- 授業で使った教材や活動を、学会で報告する
ただし、学生を対象とする研究では、所属機関の倫理審査や同意の手続きが必要になる場合があります。成績評価と研究への参加を切り離すなど、学生に不利益が生じない配慮を忘れないようにしましょう。
研究時間の記録をつける
1か月だけ、研究に使えた時間を毎日記録してみましょう。「思ったより少ない」「火曜日は全くとれていない」といった実態が見えると、どこを変えればよいかが分かります。記録は、上司や同僚に業務の調整を相談するときの材料にもなります。
学会や研究会を「ペースメーカー」にする
締め切りのない研究は後回しになりがちです。学会の発表申し込みや、研究会での報告を先に決めてしまうと、それが研究を進めるきっかけになります。
業績を記録し、見える形にする
日々の忙しさの中で、自分の仕事の記録はつい後回しになります。しかし、昇任の審査や、将来の異動の際には、業績を整理して示すことが求められます。
記録しておきたい項目
- 研究:論文、学会発表、研究費の採択、共同研究
- 教育:担当科目、開発した教材、授業改善の取り組み、学生の指導の実績
- 校務・社会貢献:委員会の役割、学会の役員や査読、地域での講演など
記録の方法
- 研究者データベースを更新する:researchmapなどに業績を登録しておくと、公開の業績一覧として使える
- ティーチング・ポートフォリオを作る:自分の教育の理念、方法、成果を、資料とともにまとめる文書。大学によってはFD(ファカルティ・ディベロップメント)の一環として作成の支援がある
月に一度の記録習慣
毎月の最後に15分だけ、その月の業績と取り組みをメモする時間をとりましょう。1年後に振り返ったとき、自分がしてきたことの多さに気づくはずです。
キャリアの選択肢と情報の探し方
大学教員のキャリアには、さまざまな道があります。任期付きの職から任期のない職へ移る、別の大学へ異動する、教育と研究の比重の異なる職に就くなど、一人ひとりの道は違います。
公募情報の探し方
- JREC-IN Portal:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営する研究者向けの求人情報サイト。大学教員の公募情報が多く掲載されている
- 学会のメーリングリストやウェブサイト:英語教育や応用言語学の学会で公募情報が共有されることがある
- 大学のウェブサイト:各大学の採用情報のページ
公募書類の準備
公募では、履歴書、業績書のほか、教育や研究の抱負、模擬授業などが求められることがあります。日頃から業績を記録しておくと、急な公募にも対応しやすくなります。
相談できる人を持つ
キャリアの悩みは、一人で抱え込まないことが大切です。大学院時代の指導教員、学会で知り合った研究者、学内の先輩教員など、率直に相談できる人を持っておきましょう。
1週間の時間の使い方の例
授業を週に8コマ担当する若手教員を想定した、1週間の時間の使い方の一例です。実際には、大学や担当科目によって大きく異なります。
- 月:授業3コマ。空き時間に翌日の授業準備
- 火:授業2コマ。午後は委員会と事務作業
- 水:午前は研究の時間(論文の執筆、データの分析)。午後は授業1コマと学生の面談
- 木:授業2コマ。空き時間に課題の採点とフィードバック
- 金:授業準備(翌週分をまとめて)、研究の時間(文献を読む)
- 土・日:原則として休む。必要な場合も、作業は半日までにする
時間を生むための工夫
- 同じ科目を複数クラス担当する場合、教材を共通化する
- 採点の基準を事前に決め、採点時間を短縮する
- メールの確認時間を1日2回などに決める
休む時間を先に確保することも、長く働き続けるためには欠かせません。
よくある失敗と、その立て直し方
1. 頼まれた仕事をすべて引き受ける
若手教員は、さまざまな仕事を頼まれやすい立場にあります。引き受ける前に、自分の時間と優先順位を確認し、必要なら先輩に相談しましょう。
2. 研究を「時間ができたら」と後回しにする
時間は自然にはできません。予定として研究時間を確保しましょう。
3. 一人で抱え込む
授業や学生の対応で悩んだときは、同僚や教育支援の部署に相談しましょう。多くの悩みは、先輩の教員も経験してきたものです。
まずは今週、予定表に「研究の時間」を1つ入れ、今月の業績と取り組みを15分でメモするところから始めてみてください。



