まず「構成」を教える:パラグラフの型
アカデミック・ライティングの土台は、パラグラフの構成です。文法より先に、1段落1主張という型を身につけさせると、その後の添削がぐっと楽になります。
基本の型は次の3つの要素です。
- トピック・センテンス:段落で言いたいことを1文で示す
- サポート:理由、具体例、データなどで支える
- コンクルーディング・センテンス:段落の要点を締める(短い段落では省略も可)
モデル段落の例です。
Online classes can help university students manage their time more flexibly. For example, students who have part-time jobs can watch recorded lectures at night. They can also pause and replay difficult parts. However, this flexibility only works when students plan their week carefully.
この例を使って、「どれがトピック・センテンスか」「どの文が具体例か」を学生に色分けさせると、構成を意識する目が育ちます。
エッセイへの広げ方
段落が書けるようになったら、序論(背景と主張)・本論(段落2〜3つ)・結論(主張の再提示)の5段落程度のエッセイへ広げます。本論の各段落のトピック・センテンスをつなげると、エッセイの要旨になることを確認させると、構成の意味が伝わります。
段階的提出で「最後に全部直す」をやめる
完成原稿を一度だけ提出させると、先生は構成・内容・文法のすべてを一度に直すことになり、学生はどこから直せばよいかわかりません。プロセス・ライティングの考え方で、提出を段階に分けましょう。
- アウトライン:主張と各段落のトピック・センテンスだけを提出
- 初稿:内容と構成へのコメントのみ(文法は直さない)
- 第2稿:ピアレビューを反映し、引用・根拠を補強
- 最終稿:文法・語法を中心にチェック
アウトラインの提出フォーマットの例です。
- Thesis: Universities should offer more courses taught in English.
- Body 1: It prepares students for international careers.
- Body 2: It attracts students from other countries.
- Counterargument: Some students may find it too difficult.
ポイント:段階ごとに「今回見るのはここだけ」と決めて伝えると、先生のコメント量も学生の混乱も減ります。
LMSで段階ごとに提出枠を作っておけば、提出状況の確認や、稿の比較も簡単です。
コード添削:直さずに記号で示す
すべての誤りを先生が正しい英語に書き換えると、学生は「直された文を写す」だけになりがちです。そこで、誤りの種類を記号で示し、直すのは学生という方法が役立ちます。
コードの例です(クラスで共通の一覧表を配布します)。
- VT:動詞の時制(verb tense)
- SV:主語と動詞の一致(subject-verb agreement)
- Art:冠詞
- WW:語の選択(wrong word)
- Frag:文として不完全(fragment)
- ?:意味がわかりにくい
例えば、学生の文 Many student thinks online class is convenient. には、student と thinks の部分に SV、class に Art(または数の問題)を付けます。学生は一覧表を見ながら Many students think online classes are convenient. と自分で直します。
コメントは「1つほめて、1つ具体的に」
- Your topic sentence is clear. Try adding one specific example in the second half.
- Good use of data. Could you explain why this number is important?
ポイント:コードは最初から全種類を使わず、学期前半は3〜4種類に絞ると、学生も使いこなせます。
ピアレビューを機能させる手順
ピアレビューは、「読み合ってください」だけでは「Good!」の一言で終わってしまいます。チェックリストと文型を与えることで、質の高いコメントが出てくるようになります。
進め方(約40分)
- 先生がモデル作文で、コメントの書き方を実演する(10分)
- ペアで原稿を交換し、チェックリストに沿って読む(15分)
- 文型を使ってコメントを書く(10分)
- 口頭で1〜2分、コメントを説明し合う(5分)
チェックリストの例です。
- Can you find the thesis statement? Underline it.
- Does each body paragraph have one main idea?
- Is there at least one example or reason for each idea?
コメントの文型です。
- I like the way you ...
- I was a little confused by ...
- It might be clearer if you ...
学生には、文法の誤りを探すより、内容と構成について質問することを求めましょう。英語力に差があるペアでも、「ここがわからなかった」という読み手の反応は十分に役立ちます。
大人数クラスで添削負担を減らす工夫
40人を超えるクラスで毎週全員の作文を細かく直すのは、現実的ではありません。負担を減らしつつ、学生の学びを落とさない工夫を組み合わせます。
- 共通の誤りは全体フィードバックにまとめる:多くの学生に見られた誤りを匿名の例文で5つほど取り上げ、授業の冒頭で解説する
- ルーブリックで評価する:構成・内容・言語・形式の4観点で段階評価し、コメントは各1文に絞る
- ローテーション添削:毎回、全体の3分の1の学生だけ詳しく見る(他の学生はピアレビューと全体フィードバック)
- コメントバンクを作る:よく書くコメントを保存しておき、LMSで貼り付けて一部を個別に調整する
- 自己チェック表を提出させる:学生が冠詞・時制・複数形などを自分で確認してから提出する
ポイント:添削の量を減らしても、フィードバックの回数を減らす必要はありません。「全体→ペア→個別」の3層で、学生は何度もフィードバックを受け取れます。
生成AIによる文法チェックを認める場合は、使ってよい範囲と、使ったことを申告する方法をシラバスに明記しておくと、評価の説明もしやすくなります。
半期の流れとよくある失敗
半期のモデル
- 第1〜3回:パラグラフの型、モデル分析、1段落を書く
- 第4〜6回:比較・原因と結果など段落の展開パターン
- 第7〜8回:エッセイ構成、アウトライン提出
- 第9〜11回:初稿、ピアレビュー、第2稿
- 第12〜13回:引用とパラフレーズ、参考文献の書き方
- 第14〜15回:最終稿、自己評価と振り返り
よくある失敗
- 初稿から文法を全部直してしまう:学生は構成を見直さなくなります
- コードを配っても、使い方を練習する時間を取らない
- ピアレビューのチェックリストが抽象的で、コメントが「Good」だけになる
- 返却したフィードバックを、学生が読んだかどうか確認しない
- 最終稿の評価基準を、提出後に初めて示す
返却したら、「フィードバックを読んで直した点を2つ英語で書く」という小さな課題を付けるのがおすすめです。フィードバックが次の原稿に確実につながります。



