新出語は全部同じ重さで扱わない
教科書の新出語リストには、数十語が並ぶこともあります。そのすべてを同じ時間をかけて扱うのは現実的ではありません。
まず、新出語を次の2つに分けてみましょう。
- 発信語彙(話す・書くで使えるようにしたい語):日常的でよく使う語、今後の単元でも繰り返し出る語
- 受信語彙(読んで分かればよい語):本文の内容上必要だが、使う場面が限られる語
たとえば、ある単元の新出語が「volunteer, collect, garbage, community, recycle, plastic, environment, local」だったとします。collect や local は今後も自分のことを話すときに使えるので発信語彙に。garbage や plastic は意味が分かれば十分な場面も多いので、受信語彙として軽く扱う、といった判断ができます。
ポイント:時間をかけるのは発信語彙に絞る。受信語彙は本文の中で意味が取れればOKと割り切ると、授業に余裕が生まれます。
新出語の扱い方:1時間の中の流れ
ここでは、本文に入る前の語彙パートを12分で行う例を紹介します。
0〜3分:音と文字の確認
フラッシュカードやスライドで、教師の後に続いて発音します。
- "Listen and repeat."
- "Only the girls / Only the boys / Only this row."
同じ語を3回ほど繰り返しますが、読む人を変えると単調になりません。
3〜6分:意味の確認
日本語訳を与えるだけでなく、絵・ジェスチャー・既習語での言い換えを使います。
- "Collect means 'take many things and put them together.' For example, I collect stamps."
- "Local means 'near your home or in your town.'"
6〜9分:スピード確認
カードを英語→日本語、日本語→英語の順で素早く見せ、全員で答えます。後半は一瞬だけ見せる、半分隠すなど、難易度を上げます。
9〜12分:ペアで使う
発信語彙を使って短い文を言い合います。
- "Use 'collect' and tell your partner one thing you collect or want to collect."
- "Tell your partner about one local place you like."
このあと本文を読むと、生徒は「さっきの単語だ」と気づきながら読めます。
定着のカギは「再会」の回数
単語が定着するには、時間をあけて何度も出会うことが大切だといわれています。1回の授業で完璧にしようとするより、次の授業、その次の授業で再び出会わせるほうが効果的です。
再会のさせ方の例です。
- 次の授業の導入:前回の新出語から5語を選び、意味を隣の人とクイズし合う
- 本文の音読のとき:新出語だけ空欄にしたプリントで音読する
- 小テストの1問:前の単元の語を1〜2問混ぜる
- 教師の英語の中で:Teacher Talk の中で意図的に使う(例:"Please collect your worksheets.")
自作の復習用ミニ活動例
"I say the Japanese. You say the English. Ready? 集める。" → "Collect!"
"Now, make a sentence with 'local.' Start with 'In my town…'"
このような短い活動なら1〜2分でできるので、毎時間の冒頭や終わりに組み込みやすいです。
高校では「意味の広がり」と「組み合わせ」を教える
高校の教科書では、中学で習った単語が別の意味で出てくることが増えます。たとえば "run" は「走る」だけでなく「経営する」、"cover" は「覆う」だけでなく「扱う・取材する」という意味でも使われます。
こうした多義語は、新出語リストには載らないことも多いため、本文の中で意識的に取り上げたいところです。
多義語の扱い方の例
- "You know 'run' means 'move fast.' But look at line 5: 'She runs a small café.' What does 'run' mean here?"
- 核となるイメージ(run=止まらずに動き続ける)を示し、「店を動かし続ける=経営する」とつなげる
コロケーション(語の組み合わせ)
単語を単体で覚えるより、よく一緒に使われる組み合わせで覚えると、書くときに使いやすくなります。
- make a decision / take a break / pay attention to
- heavy rain / strong coffee / a high price
"Which verb goes with 'a decision'? make, do, or take?" のような選択クイズは、1〜2分でできる復習活動として便利です。
新出語を扱う際に、本文中のコロケーションを1〜2個だけ抜き出して板書しておくと、ライティングの時間にそのまま活用できます。
40人クラスでの工夫
人数が多いと、一斉に言わせても「口を動かしていない生徒」に気づきにくくなります。
- 読む人を細かく切り替える:「窓側の2列」「メガネをかけている人」「今月誕生日の人」など、グループを変えながら発音させると、全員が当事者になります。
- ペアで役割を決める:A がカードを持って出題、B が答える。1分で交代。教師用のカードを縮小印刷した「ペア用カード」を用意しておくと便利です。
- ミニテストはペア採点:単語テストを隣同士で交換して採点すると、40人分の採点時間を減らせます。答えは教師が読み上げます。
- 苦手な生徒には「最初の2語」から:全部覚えようとして挫折する生徒には、「今日は発信語彙のうち2つだけ使えるようにしよう」と目標を小さくします。
よくある失敗
- 日本語訳の一対一対応で終わる:collect=集める、だけを覚えると、使い方が分かりません。→例文を1つセットで示す。
- 新出語の説明が長くなる:語源や派生語まで全部話すと時間が足りなくなります。→発信語彙の中でも特に大事な1〜2語に絞る。
- 授業後に二度と出てこない:定着しないまま次の単元へ。→次の授業の導入や小テストで必ず再会させる。
- 発音練習が教師のコピーだけ:意味を考えずにリピートするだけでは記憶に残りにくいです。→意味確認のあとに、もう一度発音させる。
ポイント:「教える」より「出会わせる回数を増やす」。語彙指導は、1回の完成度より再会の仕組みで決まります。
1週間の語彙サイクル例
単元の中で、次のようなサイクルを回すと無理なく定着につなげられます。
- 1時間目:新出語の導入(音・意味・ペアで使う)、本文を読む
- 2時間目:導入で前時の語を5語クイズ、本文の音読で再会
- 3時間目:新出語を使った自己表現(2〜3文を書く)
- 4時間目:小テスト(今回の語+前単元の語を少し)
- 翌週:新しい単元の導入時に、前単元の語を2〜3語だけ再び使う
このサイクルを意識するだけで、同じ時間でも単語への「接触回数」が増えます。まずは次の単元で、発信語彙と受信語彙を分けるところから始めてみてください。



