リスニングを「指導」にする3段階
リスニングの授業は、次の3段階で設計すると考えやすくなります。
- 前活動(pre-listening):聞く内容への準備。話題への興味、背景知識、聞くポイントの確認
- 中活動(while-listening):目的を持って聞く。概要をつかむ、具体的な情報を拾う、など回ごとに目的を変える
- 後活動(post-listening):聞いた内容を使う。話す・書く・音声との照合など
特に大切なのは、1回目と2回目で聞く目的を変えることです。同じ問いで何度も聞かせるより、「1回目は全体」「2回目は細部」と目的を分けると、生徒は聞き方を意識するようになります。
ポイント:前活動がないリスニングは、準備運動なしで走らせるようなもの。1〜3分の前活動でも、聞き取りやすさは大きく変わります。
自作スクリプトで見る3段階の授業例
中学2〜3年を想定した、自作の短い会話で考えます。
スクリプト(オリジナル)
A: Hi, Ken. Are you free this Saturday?
B: In the morning, I have soccer practice. But I'm free after two.
A: Great. I'm going to the new library in the station building. Do you want to come?
B: Sure. What time should we meet?
A: How about three, in front of the ticket gate?
B: OK. I'll bring my math homework. I need help with it.
前活動(3分)
- "Look at the picture. Where are they? What are they talking about? Guess with your partner."
- 予想されるキーワードを板書(Saturday, library, meet)
中活動 1回目:概要(2分)
- "Listen. What are they going to do this Saturday? Just one sentence."
中活動 2回目:細部(3分)
- "Listen again. Write the time and the place they will meet."
- 表を配り、「いつ」「どこで」「持っていくもの」を埋めさせる
中活動 3回目:確認(2分)
- ペアで答えを比べ、違うところだけ意識して聞く。"Check your answers with your partner. Listen for the part you disagree on."
後活動(8分)
- スクリプトを配って聞きながら黙読し、聞き取れなかった部分に下線
- 会話をペアで音読したあと、曜日や場所を自分たちに置きかえて会話を作る
"Change the day and the place. Make your own plan with your partner."
1時間の時間配分モデル
リスニングを中心にした時間の目安です(50分授業のうち20分)。
- 0〜3分 前活動:絵・題名・キーワードで予想
- 3〜5分 1回目:概要をつかむ
- 5〜8分 2回目:具体的な情報をメモする
- 8〜10分 3回目:ペアで確認し、違う部分を集中して聞く
- 10〜13分 スクリプト確認:聞き取れなかった部分を見つける
- 13〜20分 後活動:音読・会話の置きかえ・感想を書く
聞き取れなかった部分をスクリプトで確認するとき、なぜ聞き取れなかったのかを分類させると効果的です。
- 単語を知らなかった
- 知っている単語だが、音がつながって聞こえなかった
- 速くて追いつけなかった
この分類を続けると、生徒は自分の弱点を把握し、家庭学習でどこを練習すればよいかが見えてきます。
40人クラスでの工夫
音響環境を整える
教室の後ろの席まで音がはっきり届くか、授業前に確認しておきます。スピーカーの位置を教室の中央寄りにする、窓を閉めるなど、小さな工夫で聞き取りやすさが変わります。
答えの共有は一斉に
"Hold up your worksheet. Show me your answer for number two." のように、答えを一斉に見せる方法をとると、全員の理解状況を短時間で把握できます。指で選択肢の番号を示すのも有効です。
ペア確認で「聞き取れた生徒」を活用
1回目で聞き取れた生徒と、聞き取れなかった生徒がペアで話すと、聞くべきポイントが共有されます。ただし答えを教えるのではなく、"Tell your partner where the answer was, not the answer itself." と伝えると、もう一度聞く意味が生まれます。
苦手な生徒への配慮
2回目の前に、ワークシートにヒント(頭文字や選択肢)を載せた版を用意しておき、必要な生徒に配ると、全員が活動に参加できます。
高校では「目的別の聞き方」を明示する
高校になると、スピーチ、ニュース風の説明、講義のような長めの音声も扱います。長い音声ほど、「何のために聞くのか」を明示しないと生徒は途中で集中が切れてしまいます。
聞き方の種類を、生徒に分かる言葉で名前をつけておくと便利です。
- 全体をつかむ聞き方:"Listen for the main idea. Don't worry about every word."
- 特定の情報を拾う聞き方:"Listen only for numbers and names."
- 話し手の考えを聞く聞き方:"Is the speaker for or against the idea? Listen for words like 'but' and 'I think.'"
長い音声では、段落ごとに一度止めて「今の部分を一言で言うと?」とペアで確認する方法もあります。"Pause. Tell your partner the main point of that part in one sentence." のように、止める箇所を事前に決めておくと、授業の流れがスムーズです。
メモの取り方も指導の対象です。キーワードだけを書く、矢印や記号を使うなど、例を一度見せるだけで、生徒のメモは見違えるほど整理されます。
よくある失敗
- 同じ問いで何度も聞かせる:生徒は飽きてしまい、集中が続きません。→回ごとに目的を変える。
- 前活動なしでいきなり流す:話題が分からず、最初の数秒で置いていかれる生徒が出ます。→絵や題名で予想させるだけでもOK。
- 答え合わせで終わる:正解・不正解の確認だけでは、次に生かせません。→聞き取れなかった理由を分類させる。
- 後活動がない:聞いた内容を使わないと、記憶に残りにくくなります。→音読や会話の置きかえで、聞いた英語を口に出す。
ポイント:リスニングの授業は「聞かせる」だけでなく「どう聞いたか」を振り返らせる時間があってこそ、指導になります。
今週から始める一歩
いきなり全部の段階を整えなくても大丈夫です。次の順番で、1つずつ加えてみてください。
- 次のリスニングで、1回目と2回目の問いを別にする
- 流す前に、絵や題名で30秒だけ予想させる
- スクリプトを配り、聞き取れなかった理由を3つに分類させる
- 聞いた会話をペアで置きかえて話す後活動を入れる
リスニングは、生徒が「聞き方」を意識した瞬間から伸び始めます。まずは次の授業で、1回目の問いを「概要だけ」にしてみましょう。



