グループ活動と協同学習の違い
グループで座らせて課題を与えることと、協同学習は同じではありません。協同学習の考え方では、うまく機能するグループに共通する要素として、次のようなものがよく挙げられます。
- 互恵的な相互依存:一人ひとりの貢献がないとグループの課題が完成しない
- 個人の責任:誰が何をしたかが見える。誰かに任せきりにできない
- 対面での積極的な関わり:互いに説明し合い、助け合う
- 社会的スキル:聞く、質問する、励ますといった関わり方を練習する
- 振り返り:グループの進め方を振り返り、次に生かす
英語の授業に置き換えると、「全員が英語を口にしないと完成しない課題」を作ることが核心です。
ポイント:「話し合って」ではなく、「誰が・何を・どの順で話すか」を決めておくのが協同学習の型です。
型① シンク・ペア・シェア
最も手軽で、毎時間でも使える型です。
手順
- Think:問いに対して一人で考える(30秒〜1分)。メモを書いてもよい。
- Pair:ペアで考えを伝え合う(1〜2分)。
- Share:何組かがクラス全体に共有する。
英語での指示例
- Think about this question by yourself for thirty seconds.
- Now, tell your partner your idea.
- Could you share what your partner said?
最後の Share で「パートナーの意見を紹介して」とするのがコツです。自分の意見を全体で言うのは緊張しますが、パートナーの意見なら言いやすく、しっかり聞く必要も生まれます。
使える問いの例
- 本文を読んだ後に:How did the main character feel at the end?
- 導入で:What is your favorite season? Why?
- 文法導入で:この2つの文の違い、気づいたことは?(日本語で考えてもよい)
型② ラウンドロビンとナンバード・ヘッズ
ラウンドロビン
4人グループで、順番に一人ずつ発言していく型です。
- 先生がお題を出す(例:Say one thing you can do in the morning.)
- 1番の人から時計回りに一人一つずつ答える
- 前の人と同じことは言えないルールにすると、しっかり聞くようになる
語彙の復習にも使えます。「動物の名前」「過去形の動詞」など、カテゴリを決めて順番に言うだけでも、全員が英語を口にする時間が確実に生まれます。
ナンバード・ヘッズ・トゥギャザー
グループのメンバーに1〜4の番号をつけ、問題について全員で相談した後、先生がランダムに番号を指名して答えさせる型です。
- 先生が問いを出す(例:Why did Ken go to the library?)
- グループで相談し、全員が答えられるようにする
- 先生が「Number 3, please stand up.」と言い、各グループの3番が答える
誰が当たるかわからないので、得意な生徒は苦手な生徒が答えられるよう説明し、苦手な生徒も真剣に聞くようになります。個人の責任とグループの協力が自然に組み合わさる型です。
型③ ジグソー
長めの英文や、複数の情報を扱う単元で力を発揮するのがジグソーです。
手順
- 教材を4つのパートに分ける(例:ある国の文化を「食べ物」「祭り」「学校」「言葉」の4つで紹介する英文)
- ホームグループ(4人)で、一人一つずつ担当パートを決める
- 同じパートを担当する人同士が集まり、エキスパートグループを作る。一緒に読み、内容を確認し、説明の準備をする
- ホームグループに戻り、一人ずつ自分のパートを説明する
- 最後に、全パートの情報が必要な課題に取り組む(例:クイズに答える、どの国に行きたいか理由をつけて話す)
英語での説明の型
ホームグループで説明する時、苦手な生徒のために型を用意しておくと安心です。
- My part is about ___.
- The main point is ___.
- One interesting thing is ___.
- Do you have any questions?
うまくいかせるコツ
エキスパートグループの段階で、説明に使うメモを全員が書けているか確認します。ここで理解があいまいなまま戻ると、ホームグループで説明できず、その生徒が気まずい思いをしてしまいます。
教科書の1時間に型を組み込む例
協同学習の型は、特別な単元だけのものではありません。普段の教科書の授業に、次のように組み込めます。
50分の流れの例(中学2年・物語文の課)
- 帯活動(5分):ラウンドロビンで前回の単語を復習。「前回の課に出てきた動詞の過去形を順番に」
- 導入(5分):シンク・ペア・シェア。Have you ever lost something important? What was it?
- 本文理解(15分):個人で読んだ後、ナンバード・ヘッズで内容確認の問いを3つ
- 音読(10分):全体→ペアで交互に1文ずつ→ペアで役を分けて会話部分を読む
- 表現活動(10分):本文の登場人物に一言アドバイスを書き、シンク・ペア・シェアで共有
- 振り返り(5分):今日わかったことを一文で書き、グループで見せ合う
この流れなら、先生が話す時間を抑えつつ、生徒一人ひとりが英語を声に出す場面が何度も生まれます。すべての型を毎時間使う必要はなく、1時間に1〜2個で十分です。
よくある失敗と対処法
- すぐ日本語の雑談になる
英語で言うべき部分を明確にしておきます。「説明は日本語でもいいけれど、最初と最後の一文は英語で」など、現実的なルールから始めましょう。
- 一人が全部やってしまう
役割を割り振ります。例えば、Leader(進行)、Reader(読み上げ)、Writer(記録)、Reporter(発表)。役割は毎回交代させます。
- 時間が足りなくなる
各ステップに時間を明示し、タイマーを見せます。You have two minutes. と言ってからスタートする習慣をつけると、生徒も時間を意識します。
- 振り返りを省略してしまう
最後の1分で、グループのよかった点を一つ書かせるだけでも、次回の関わり方が変わります。例:Our group listened to each other well.
- 型の説明に時間がかかりすぎる
新しい型は、最初は日本語で丁寧に説明し、慣れてきたら英語の短い指示だけで回せるようにします。同じ型を何度も使うことで、説明の時間がどんどん短くなります。
1か月で型を定着させる導入プラン
型は、繰り返し使ってはじめて生徒が自分で動けるようになります。1か月で定着させるプランの例です。
- 1週目:毎時間シンク・ペア・シェアを1回入れる。問いは簡単なものでよい
- 2週目:シンク・ペア・シェアに加え、単語の復習でラウンドロビンを始める
- 3週目:本文の内容理解でナンバード・ヘッズを導入する
- 4週目:少し長めの読み物でジグソーに挑戦する
毎週の最後に、生徒に「どの型が一番話しやすかったか」を聞いてみてください。クラスによって合う型は違うので、その声をもとに使う頻度を調整しましょう。
ポイント:協同学習の型は、先生の「仕組みづくり」によって全員に英語を使う必然性を生み出すものです。まずはシンク・ペア・シェアから、明日の授業に1回入れてみてください。



