ビジネス英語は「全部かたい」わけではない
ビジネス英語というと、「Dear Sir or Madam」から始まるかたい文章をイメージするかもしれません。でも実際の職場では、同僚同士のカジュアルな言い回しもよく使われます。
こうした職場特有の決まり文句を ジャーゴン(jargon) と呼びます。本来は「専門用語」という意味ですが、ここでは「職場でよく使われる言い回し」くらいに考えてください。
ビジネス英語の register(丁寧さ)は、ざっくり次の3段階です。
- フォーマル:取引先への正式なメール、契約書、プレゼンの冒頭
- ビジネスカジュアル:社内メール、同僚とのチャット、打ち合わせ
- カジュアル:休憩中の雑談
この記事の表現の多くは ビジネスカジュアル に入ります。社内では自然でも、初めての取引先への正式なメールでは、もう少しかための表現を選ぶのが安心です。
ポイント:ビジネス英語でも、相手と場面に合わせて丁寧さを調整するのは日本語と同じです。
連絡・共有の表現:touch base・loop in・heads-up
touch base(連絡を取る、軽く確認する)
「Let's touch base next week.(来週また連絡を取り合いましょう)」。野球で塁(ベース)に触れることから来ていると言われます。
loop in(〜を話に加える、情報共有の輪に入れる)
「Can you loop me in on the emails?(メールのやりとりに私も入れてもらえますか?)」
heads-up(事前の知らせ、注意喚起)
「Just a heads-up: the meeting starts 10 minutes late.(先にお知らせ:会議は10分遅れて始まります)」
FYI(For your information)
「ご参考までに」。メールの冒頭や転送メールによく使われます。ただし、少し事務的・そっけなく聞こえることもあるので、目上の人には「I thought this might be useful.」などと添えると丁寧です。
ping(軽く連絡する)
「I'll ping you when it's ready.(準備できたら連絡します)」。チャットツールの普及とともによく使われるようになった表現です。
会話例:社内チャット
- A: Hi Mia, just a heads-up. The client moved the deadline to Friday.
- B: Thanks for letting me know. Can you loop in Ken, too?
- A: Sure. Let's touch base tomorrow morning.
- B: Sounds good. I'll ping you after my first meeting.
会議でよく聞く表現:on the same page・circle back
on the same page(認識がそろっている)
「Just to make sure we're on the same page...(認識をそろえておくと…)」。会議のまとめでとてもよく使われます。
circle back(あとでその話に戻る)
「Let's circle back to this later.(この件はあとで改めて話しましょう)」。時間が足りないときや、情報がそろっていないときに使います。
take this offline(この場ではなく別途話す)
「Let's take this offline.(この件は会議のあとで個別に話しましょう)」。オンラインでなく「オフライン」という意味ではない点に注意しましょう。
action items(やるべきこと、宿題)
会議で決まった各自のタスク。「Let's go over the action items.(やることを確認しましょう)」
ballpark figure(おおよその数字)
「Can you give me a ballpark figure?(ざっくりした数字でいいので教えてもらえますか?)」
bandwidth(余力、対応できる余裕)
もとは通信の帯域幅の意味ですが、「I don't have the bandwidth this week.(今週は手が回りません)」のように、人の余裕を表すのにも使われます。
使いすぎ注意!ジャーゴンの落とし穴
ジャーゴンは便利ですが、使いすぎると逆効果になることがあります。英語圏でも、こうした言い回しを多用する話し方は「中身がない」「わかりにくい」と感じる人がいます。
たとえば次の文を見てください。
- ✕ Let's leverage our synergy to move the needle and circle back offline.
- ○ Let's work together to improve the results. We can talk more after the meeting.
上の文は、ジャーゴンを詰め込みすぎて何を言いたいのかわかりにくくなっています。下の文のほうが、ずっと伝わりやすいですね。
第二言語話者との会話では特に注意
国際的なチームでは、英語を母語としない人も多くいます。ジャーゴンやイディオムは、英語が母語でない人には伝わりにくいことがあります。シンプルな英語で話すことは、それ自体が相手への思いやりです。
ポイント:ジャーゴンは「聞いてわかる」ことが最優先。自分で使うのは、よく聞く定番のものだけで十分です。
よくある失敗と注意点
- 取引先への初めてのメールで FYI や heads-up を使う
関係ができていない相手には、「Please note that〜」「I would like to inform you that〜」など、ややかための表現が安心です。
- take this offline を誤解する
「インターネットを切って話そう」ではなく、「会議とは別に話そう」の意味です。
- ASAP を多用する
「As soon as possible」の省略ですが、相手を急かしている印象を与えることがあります。「by Friday」のように具体的な期限を示すほうが親切です。
- 自分の英語力以上のジャーゴンを使う
意味やニュアンスが不確かな表現を使うと、誤解のもとになります。迷ったらシンプルな英語を選びましょう。
1週間の練習メニュー
学生の人も、将来のアルバイトや就職に向けて知っておくと役立つ表現ばかりです。
- 1日目:連絡・共有の表現(touch base, loop in, heads-up, FYI)の意味をノートにまとめる
- 2日目:会議の表現(on the same page, circle back, action items)で例文を作る
- 3日目:各表現を「シンプルな英語」に言い換える(touch base → talk / contact)
- 4日目:会話例をA役・B役で音読する
- 5日目:ビジネス英語の学習動画を10分見て、出てきた表現をメモする
- 6日目:架空の社内チャットを英語で4行書く
- 7日目:覚えた表現を「社内OK」「取引先にも使える」「使わないほうがいい」に分類する
3日目の言い換え練習が特に重要です。ジャーゴンと普通の英語を両方知っていれば、相手に合わせて選べるようになります。



