まずは自分の読む速度を測ろう
速読の練習を始める前に、やってほしいことがあります。それは、今の自分が1分間に何語読めるかを測ることです。この数字を WPM(words per minute)と呼びます。
WPMの測り方
- 語数がわかっている英文を用意する(問題集の長文には語数が書いてあることが多い)
- スマホのストップウォッチを押して、ふだんどおり読む
- 読み終えたら止めて、「語数 ÷ 秒数 × 60」で計算する
たとえば450語の文章を3分(180秒)で読んだなら、450 ÷ 180 × 60 = 150 WPM です。
語数がわからない場合は、1行の平均語数を数えて行数を掛ければ、おおよその語数が出ます。
目安になる数字
英語を母語とする大人が一般的な文章を黙読する速度は、200〜300語程度とよく言われます。学習者の場合、まずは 100 WPM前後から150 WPM を目指すのが現実的です。TOEICや大学入試の長文を時間内に読み切るには、およそ150 WPM以上がひとつの目安として語られることが多いです。
ポイント:速度だけを測っても意味はありません。読み終えたら、内容を2〜3文で言えるかも一緒にチェックしましょう。理解できていない150 WPMより、理解できている120 WPMのほうが価値があります。
記録のつけ方
測った数字は、ノートやスマホのメモに残しておきましょう。おすすめの項目は次の5つです。
- 日付
- 英文の種類(問題集の長文・ニュース・物語など)
- 語数と時間
- WPM
- 理解度の自己評価(◎・○・△)
英文の種類で速度は大きく変わります。物語は速く、説明文や論説文は遅くなりがちです。比べるときは、同じ種類・同じくらいの難しさの英文どうしで比べるのがフェアです。また、1回の数字に一喜一憂せず、数回分の平均で変化を見るようにしましょう。体調や集中力でも数字はかなり上下します。
速く読めない人に共通する3つの原因
英語を読むのが遅い原因は、だいたい次の3つに分けられます。
① 返り読みをしている
英文を読んでいて、文末まで行ってから主語に戻り、日本語の語順に並べ替えて訳していませんか。この「戻る動き」が多いと、同じ文を2回、3回読むことになり、当然時間がかかります。
② 知らない単語・構文で止まる
1文の中に知らない単語が2つも3つもあると、どうしても目が止まります。これは速読のテクニックというより、語彙と文法の土台の問題です。
③ 1語ずつ見ている
The / boy / who / was / sitting / on / the / bench … と1語ずつ目で追っていると、意味のかたまりがつかめず、処理が重くなります。速く読める人は、the boy who was sitting on the bench を「ベンチに座っていた少年」というひとかたまりで受け取っています。
自己診断チェック
次の項目のうち、当てはまるものを数えてみてください。
- 1文を読み終えたあと、主語の位置まで目が戻ることが多い
- 1ページに知らない単語が5個以上ある
- 読んでいる途中で、頭の中で日本語訳を完成させようとしている
- 音声を聞きながら英文を目で追うと、音声に置いていかれる
- 読み終えたあと、何の話だったかすぐに言えない
1つ目と3つ目が当てはまるなら①、2つ目なら②、4つ目と5つ目なら③の傾向が強いと考えられます。
自分がどれに当てはまるかで、優先する練習が変わります。②が大きい人は、速読練習よりも先に単語と文法を固めましょう。①と③が中心の人は、次に紹介する練習がそのまま効きます。
理解を保ったまま速くなる5つの練習
練習1:やさしい英文の「再読」
一度読んで内容を理解した英文を、もう一度、時間を計って読みます。2回目は必ず速くなるので、「この速さで英語を読むとこういう感覚なんだ」という体験ができます。3回目はさらに速く。速い処理の感覚を体に覚えさせる練習です。
練習2:レベルを下げた多読
自分の実力より明らかにやさしい本や記事を、止まらずにどんどん読みます。やさしい英文なら、返り読みも辞書も必要ありません。速く読むことに慣れるには、まず速く読める素材で練習するのが近道です。
練習3:チャンク(意味のかたまり)で読む
前置詞・接続詞・関係詞の前で区切る意識を持って読みます。
- I went to the library / after school / to return the book / I borrowed last week.
慣れないうちは鉛筆で軽く線を入れてもかまいません。
練習4:タイムプレッシャー読み
いつもの8割の時間を目標にして読みます。500語を4分で読んでいたなら、3分10秒を目標にする。少しだけ背伸びする設定がポイントです。
練習5:音声と同じ速度で読む
英文の音声を流しながら、音声より遅れないように目で追います。ナレーターの速度に引っ張られるので、返り読みをする余裕がなくなります。音声つきの教材や、音声付きのニュース記事が使えます。
ポイント:5つ全部を毎日やる必要はありません。練習1と練習2を軸にして、ほかは週に何回か取り入れるだけで十分です。
1週間の速読トレーニングメニュー
1日20分を想定したメニュー例です。
- 月曜:WPMを測定(400〜500語の文章)→ 記録ノートに書く
- 火曜:やさしい多読15分+チャンク読み5分
- 水曜:月曜の文章を再読(2回、各回のタイムを記録)
- 木曜:音声と同時に読む練習10分+やさしい多読10分
- 金曜:新しい文章でタイムプレッシャー読み(目標は月曜の8割の時間)
- 土曜:好きな洋書・記事を気楽に20分
- 日曜:新しい文章でWPMを再測定 → 月曜と比べる
1週間で劇的に変わることはありませんが、記録をつけていると、数週間単位で数字がじわじわ伸びていくのがわかります。この「伸びが見える」ことが、続けるための一番のエンジンになります。
よくある失敗と注意点
失敗1:目だけ速く動かして中身が入っていない
ページをめくるスピードは上がったのに、何が書いてあったか言えない。これは速読ではなく「眺め読み」です。読み終えたら必ず、内容を一言でまとめる習慣をつけましょう。
失敗2:難しすぎる英文で速読練習をする
大学入試の難関長文で速読練習をしても、止まる箇所が多すぎて練習になりません。速読練習はやさしい英文、精読練習は難しい英文と、役割を分けるのがコツです。
失敗3:「1分で1冊」系の速読術を信じる
読書研究では、理解を保ったまま何倍もの速度で読めるという「速読術」には懐疑的な見方が主流です。私たちが目指すのは、ムダな返り読みや止まりをなくして、自分の本来の処理速度に近づけることです。
失敗4:毎回全部を同じ速さで読む
試験では、設問に関係する部分はじっくり、例やエピソードはさっと、という緩急が大切です。この読み分けについては、スキミング・スキャニングの考え方も役立ちます。
まとめ:今日、1本だけ測ってみよう
英語の速読は、生まれつきのセンスではなく、練習で伸びる技能です。
- まずWPMを測って、自分の現在地を知る
- 遅い原因(返り読み・語彙不足・1語ずつ読み)を見極める
- やさしい英文の再読と多読で「速い感覚」に慣れる
- 理解チェックを必ずセットにする
今日やることはひとつだけ。手元の問題集から1本長文を選んで、タイマーを押して読んでみてください。その数字が、あなたの速読トレーニングのスタートラインです。



