精読と多読は「別の力」を育てる
まず、2つの読み方の違いを整理しておきましょう。
精読で伸びる力
精読は、やや難しい英文を、辞書や文法の知識を使って、1文ずつ正確に理解する読み方です。
- 複雑な構文を分析する力
- 単語の正確な意味や使い方の知識
- 和訳や内容説明の問題で得点する力
- 「なんとなく」ではなく「根拠をもって」読む姿勢
多読で伸びる力
多読は、やさしい英文を、辞書を使わずに、たくさん読む読み方です。
- 英語を英語のまま、前から理解する力
- 読むスピード
- 基本語彙を瞬時に理解する力(知っている単語が「すぐわかる単語」になる)
- 長い英文を読むことへの抵抗感のなさ
たとえるなら、精読は「顕微鏡で細部を見る練習」、多読は「たくさん歩いて体力をつける練習」です。顕微鏡だけでは長い距離を歩けないし、歩くだけでは細かい構造は見えません。
ポイント:精読で「わかる」ようになった文法や単語を、多読で何度も目にすることで「すぐわかる」に変えていく。この往復が、読む力を伸ばす基本の流れです。
どちらかに偏ると起きること
精読ばかりの場合
学校や受験勉強では、どうしても精読に偏りがちです。すると、次のような状態になりやすくなります。
- 1文ずつなら正確に訳せるのに、長文になると時間が足りない
- 文を読むたびに頭の中で和訳してしまう
- 知っている単語なのに、文章中で出てくると一瞬考え込む
- 英語を読むこと自体が「疲れる作業」になる
多読ばかりの場合
一方、多読だけを続けていると、次のような壁に当たることがあります。
- なんとなくわかるけれど、細部を聞かれると答えられない
- 複雑な構文の文になると、急に意味がとれなくなる
- 自分のレベルより少し上の本に、なかなか進めない
- 読めるけれど、書いたり話したりするときに正確な文が作れない
自己診断チェック
次のどちらに当てはまるものが多いか、数えてみてください。
- A:長文を読み終えるのに時間がかかる/英文を読むと疲れる/和訳しないと不安
- B:大意はわかるが細部があいまい/難しい構文で止まる/文法問題が苦手
Aが多い人は多読を増やす、Bが多い人は精読を増やす、というのが配分を考える出発点になります。
レベル別の時間配分の目安
ここで紹介する割合は、あくまで編集部がおすすめする目安です。自分の状態に合わせて調整してください。
初級(中学英語の復習が必要な段階)
精読 6:多読 4
中学レベルの文法と基本語彙がまだ不安定な段階では、まず基礎を固める精読の比重を高めにします。ただし、多読もゼロにはしないこと。絵本やごくやさしい本を毎日少しでも読むと、学んだ文法が生きた英語の中でどう使われるかを体感できます。
中級(高校英語を学習中・英検準2級〜2級程度)
精読 5:多読 5
基礎がひと通りそろってきたこの段階が、多読の効果が最も感じやすい時期です。精読で新しい構文を学びつつ、多読で読む量を一気に増やしましょう。
上級(英検準1級以上・難関大受験レベル)
精読 4:多読 6、または目的に応じて調整
基本的な読解力がある段階では、多読で読む量と速さを伸ばすことが重要になります。ただし、難関大の和訳問題や英検1級の語彙など、精度が求められる目標がある場合は、精読の比重を一時的に上げます。
目的別の調整
- 試験直前期:精読と過去問演習の比重を上げる
- 長期休み:多読の比重を上げ、読む量をまとめて稼ぐ
- 英語が嫌いになりかけているとき:多読(しかも好きな本)の比重を上げて、読む楽しさを取り戻す
精読と多読をつなぐ「中間の練習」
精読と多読は、ばらばらにやるより、つなげたほうが効果が上がります。おすすめの「つなぎ方」を3つ紹介します。
① 精読した英文を多読のように読み直す
精読で構造を分析した英文を、数日後に「辞書なし・止まらず・前から」読み直します。一度理解した英文なので、多読と同じ感覚で読めるはずです。これで、精読の成果が「速く読める力」に変わります。
② 多読で気になった1文だけ精読する
多読中に「なんとなくしかわからなかった文」に出会ったら、付箋を貼っておきます。読書を終えてから、その1文だけを文法的に分析します。全部を精読する必要はありません。1冊につき1〜2文で十分です。
③ 同じテーマで両方読む
たとえば精読で環境問題の長文を読んだら、多読でも環境をテーマにしたやさしい読み物を読んでみる。同じ分野の語彙に、難しさの違う英文で何度も出会えます。
精読の手順(ひとこと版)
精読のやり方がわからない人は、次の順番を目安にしてください。
- まず辞書なしで1回通して読み、わからない部分に印をつける
- 印の部分について、主語と動詞を見つけ、修飾関係を確認する
- 知らない単語を調べ、文脈に合う意味を選ぶ
- 全体をもう一度読み、内容を自分の言葉で説明できるか確かめる
たとえば The problem that many researchers have tried to solve is still unclear. なら、主語は The problem、動詞は is。that 以下は problem を説明する関係詞節、とわかれば、「多くの研究者が解決しようとしてきた問題は、いまだにはっきりしない」と正確に理解できます。
精読と多読を回す1週間メニュー
中級レベルの人が1日30分で取り組む場合の例です。
- 月曜:精読20分(長文1本を分析)+多読10分
- 火曜:多読30分(やさしい本を止まらずに)
- 水曜:精読15分(月曜の長文の復習と、新しい構文の確認)+多読15分
- 木曜:多読30分。気になった文に付箋を貼る
- 金曜:精読15分(木曜の付箋の文を分析)+月曜の長文を多読のように読み直す15分
- 土曜:多読を好きなだけ(30〜60分)
- 日曜:休み、または1週間の振り返り(読んだ語数、精読した英文の数を記録)
平日の合計で見ると、精読と多読がおよそ半々になります。
よくある失敗
多読の本で精読してしまう
多読用のやさしい本を読みながら、つい1文ずつ訳してしまう人がいます。それでは多読の良さである「量」と「速さ」が得られません。多読の時間は多読、精読の時間は精読と、モードを切り替えましょう。
精読に難しすぎる英文を選ぶ
精読の教材は「少し難しい」くらいが理想です。1文に知らない単語が3つも4つもあるような英文では、分析する前に単語調べだけで時間が終わってしまいます。
どちらかをやめてしまう
忙しくなると、精読か多読のどちらかを完全にやめてしまいがちです。時間がない日は「多読5分だけ」「精読1文だけ」でも構いません。ゼロにしないことが、バランスを保つ一番のコツです。
まとめ:「わかる」と「すぐわかる」の往復を
精読と多読のバランスの取り方をまとめます。
- 精読は正確さ、多読は量と速さを育てる
- 自分の弱点(遅い・不正確)に合わせて配分を決める
- 精読した英文を多読のように読み直し、多読で気になった文を精読する
今日は、自分がAタイプ(遅い)とBタイプ(不正確)のどちらに近いかを考えて、明日からの配分を1つ決めてみてください。



