間隔反復(スペースド・リピティション)とは
間隔反復とは、覚えたことを少しずつ間隔を広げながらくり返し復習する学習法です。英語では spaced repetition と呼ばれます。
土台になっているのは「間隔効果(spacing effect)」という現象です。同じ回数だけ復習するなら、一度にまとめて繰り返すより、時間をあけて分けたほうが長く記憶に残る――これは19世紀のエビングハウスの時代から知られ、その後も数多くの研究で確かめられてきました。
間隔反復は、この間隔効果を「毎日の単語学習」で使えるようにした方法です。代表的なものに次の2つがあります。
- ライトナー式(Leitner system):1970年代にドイツのセバスティアン・ライトナーが紹介した、単語カードを複数の箱に分けて管理する方法。覚えたカードは次の箱へ進み、忘れたカードは最初の箱に戻ります。
- アルゴリズム式:1980年代にポーランドのピョートル・ウォズニアックが開発したSuperMemoのように、答えたときの手応えから次の復習日を計算する方法。Ankiなどのアプリも、この流れをくんだ仕組みを使っています。
どちらも考え方は同じです。覚えているものは間隔をのばし、忘れたものは間隔を戻す。これで「覚えている単語を何度も見るムダ」と「忘れた単語を放置するムダ」の両方を減らせます。
ポイント:間隔反復は「全部を毎日見る」のではなく、「そろそろ忘れそうなものだけを見る」ための仕組みです。
そのまま使える復習スケジュール表
新しく覚えた日を「0日目」としたときの、基本のスケジュール表です。
- 1回目:1日後
- 2回目:3日後
- 3回目:7日後(1週間後)
- 4回目:14〜16日後(約2週間後)
- 5回目:30日後前後(約1か月後)
- 6回目:60〜90日後(2〜3か月後)
試験までの期間で間隔を変える
間隔の研究では、「どれくらい先まで覚えておきたいか」によって、ちょうどよい復習間隔が変わることが分かっています。大まかにいえば、本番が遠いほど間隔を長めに、近いほど短めにするのが基本です。
- 1週間後の小テスト:1日後 → 3日後 → 前日
- 1〜2か月後の定期テストや英検:1日後 → 3日後 → 1週間後 → 2週間後 → 直前
- 半年〜1年後の入試:上の基本表どおりに進め、2〜3か月ごとに「全体を一周する日」をつくる
結果によって次の間隔を変える
表はあくまで「予定」です。実際の復習では、答えたときの手応えで次の間隔を変えます。
- すぐ言えた → 予定どおり次の段階へ
- 思い出すのに時間がかかった → 同じ段階をもう一度
- 忘れていた → 1回目(1日後)に戻す
この調整こそが、間隔反復の心臓部です。
紙の単語帳・単語カードで実践する方法
単語カードなら「5つの箱」
ライトナー式をシンプルにした方法です。箱(封筒やクリップでもOK)を5つ用意します。
- 箱1:毎日見る
- 箱2:2〜3日おきに見る
- 箱3:週1回見る
- 箱4:2週間に1回見る
- 箱5:月1回見る
新しいカードはすべて箱1からスタート。答えられたら右の箱へ1つ進め、忘れていたら箱1に戻します。箱5で答えられたカードは「卒業」です。
市販の単語帳なら「日付メモ方式」
単語帳は1冊にまとまっているので、箱に分けられません。そこで、見開きごとに管理します。
- 見開きの右上に、初めて覚えた日を書く(例:9/29)
- その下に復習予定日を書く(9/30、10/2、10/6、10/13…)
- 復習が終わった日付に線を引く
- 忘れていた単語には小さく「・」をつけ、点が2つ以上の単語だけを抜き出して付箋に書く
付箋に抜き出した「苦手単語」は、箱1と同じ扱いで毎日見ます。
覚え方の工夫と組み合わせる
箱1に何度も戻ってくる単語は、覚え方そのものを変えるのがおすすめです。当サイトの『超絶ゴロ暗記 大学入試英単語500』(/studyhack/goro/)でゴロを探したり、『語源で覚える』(/studyhack/gogen/)で単語のパーツから意味を考えたりすると、「思い出すための手がかり」が増えます。
アプリで実践する方法(Ankiなど)
間隔反復アプリのいちばんのメリットは、復習日の計算を全部任せられることです。代表的なAnkiでは、カードの答えを見たあとに「もう一度・難しい・正解・簡単」のような評価ボタンを押すと、次にそのカードが出てくる日が自動で決まります。
使い始めのおすすめ設定
- 1日の新規カードは10〜20枚から:新規を増やすと、数日後に復習の量が一気にふくらみます。まずは少なめで始めて、毎日の復習が15〜20分で終わる量に調整しましょう。
- 評価は正直に:あやしいのに「正解」を押すと、忘れたころに次が来て、結局覚え直しになります。迷ったら厳しめに。
- カードは1枚1問:表に英単語、裏に意味と自作の例文、くらいがちょうどよい量です。
カードの作り方の例
- 表:reluctant
- 裏:気が進まない、しぶしぶの/She was reluctant to speak in front of the class.(彼女はクラスの前で話すのに気が進まなかった)
慣れてきたら、表に日本語、裏に英語の「逆向きカード」も作ると、書く・話すための単語力も伸ばせます。
なお、アプリによって復習間隔の計算方法や機能は異なり、アップデートで変わることもあります。細かい設定は、使っているアプリの公式ヘルプで確認してください。
ポイント:アプリは「毎日開く」ことが前提です。1日サボると翌日に復習がたまるので、通学中や寝る前など、開くタイミングを先に決めておきましょう。
間隔反復の1週間メニュー
紙でもアプリでも使える、1日20〜25分の1週間メニューです。
- 月:復習(予定分)10分 → 新規15語 10分 → 今日の新規を1回だけ見直し
- 火:復習10分 → 新規15語 10分
- 水:復習10分 → 新規15語 10分
- 木:復習10分 → 新規15語 10分
- 金:復習10分 → 新規15語 10分
- 土:新規なし。復習 +「忘れた」単語だけをもう一周(20分)
- 日:復習だけ(10分)。余裕があれば、今週の単語を使った英文を3つ作る
順番は「復習が先、新規があと」
疲れてくると新しい単語を覚える力は落ちますが、逆に復習を後回しにすると、予定がどんどんずれていきます。毎日のスタートは必ず復習から。時間がない日は新規をゼロにして、復習だけで終えてもかまいません。
週1回の点検
土曜日に、次のことをチェックしましょう。
- 毎日の復習は20分以内に収まっているか → 超えていたら新規を減らす
- 箱1(または「もう一度」)の単語が増えすぎていないか → 増えていたら覚え方を変える
- 1週間後の復習で7〜8割は言えているか → 言えていれば新規を少し増やしてもOK
よくある失敗と対策
失敗1:最初に飛ばしすぎる
1日50枚の新規カードを入れると、1週間後には毎日の復習が数百枚に及ぶこともあります。間隔反復は「あとから復習がやってくる」仕組みなので、新規の数は控えめが鉄則です。
失敗2:数日休んで復習の山に絶望する
アプリを開かない日が続くと、期限切れの復習がたまります。そんなときは新規を止め、1日の復習量の上限を決めて、数日かけて少しずつ減らしましょう。全部を1日で片づけようとしないのがコツです。
失敗3:カードをこなすこと自体が目的になる
「今日も○枚こなした」で満足して、単語を例文や長文で使わないままだと、試験で使える力につながりにくくなります。週に1回は、覚えた単語を使って自分の英文を書いてみましょう。
- I was reluctant to join the club at first, but now I love it.
こんな1文を書くだけで、単語が「知っている」から「使える」に近づきます。
失敗4:紙とアプリを両方中途半端に使う
どちらにも良さがありますが、管理場所が2つになると続きにくくなります。メインを1つ決め、もう一方は補助にしましょう。
今日やることは1つだけ。スケジュール表を単語帳の表紙の裏に書き写すか、アプリをインストールして10枚だけカードを作ってみてください。



