なぜ録音が発音改善に効くのか
話しているとき、私たちは自分の声を「空気を通った音」と「頭の骨を通って伝わる音」の両方で聞いています。そのため、自分が思っている発音と、相手に聞こえている発音にはズレがあります。録音した自分の声を聞くと「え、こんな声?」と驚くのはこのためです。
録音して聞き直すと、次のようなことに気づけます。
- 思っていたより、音の上下が平坦
- L と R の区別ができていない
- 単語の最後に余計な母音がついている(「グッド」→ good「グッドォ」)
- 全部の単語を同じ強さで読んでいる
- 途中で止まる所が多い
つまり、録音は自分を「聞き手」の立場に置くための道具です。先生やネイティブスピーカーにチェックしてもらう機会がなくても、録音とお手本の比較で、多くのことを自分で直せます。
録音のもう1つの効果:成長の記録
録音は、過去の自分との比較にも使えます。1か月前の録音と今の録音を聞き比べると、成長がはっきりわかります。これは、やる気を保つうえでも大きな力になります。
ポイント:録音は「自分専用の発音の先生」。しかも24時間、無料で付き合ってくれます。
スマホでの録音のやり方とコツ
特別な機材は必要ありません。スマホのボイスメモ(録音)アプリで十分です。
録音の準備
- 静かな場所を選ぶ:テレビやエアコンの音が少ない部屋で
- スマホは口から20〜30cmくらい:近すぎると息の音が入り、遠すぎると声が小さくなります
- お手本の音声とスクリプトを用意:30秒〜1分程度の短い素材がおすすめ
録音の手順
- お手本の音声を2〜3回聞く
- スクリプトを見ながら、何回か練習で音読する
- 本番のつもりで1回録音する
- すぐに聞き直さず、先にお手本をもう一度聞く
- 自分の録音を聞く
ファイル名のつけ方
後から聞き比べるために、ファイル名に日付と素材名を入れておきましょう。
- 例:「2026-09-28_教科書L3」
素材の選び方
- 教科書の本文や会話文
- 学習者向けの短いニュースや会話音声
- 自分が話したい内容の例文(自己紹介など)
最初は、お手本の音声があるものを選ぶのが大切です。お手本がないと、何をどう直せばいいかわかりにくくなります。
お手本との比べ方:3つの視点で聞く
録音を聞くときは、一度に全部チェックしようとせず、3つの視点に分けて聞くのがコツです。
視点1:個々の音
- L と R、TH、V と B などの苦手な子音
- /æ/(cat)と /ʌ/(cup)などの母音の区別
- 単語の最後に余計な母音がついていないか(book が「ブック」、dog が「ドッグ」になっていないか)
視点2:リズムと強勢
- 内容語が強く、機能語が弱くなっているか
- 単語の強勢の位置は正しいか(hotel、event など)
- 全部を同じ強さ・同じ長さで読んでいないか
視点3:イントネーションとなめらかさ
- 文末の上げ下げは合っているか
- 音の幅が小さすぎないか
- 不自然な所で止まっていないか
- 音の連結(Check it out など)ができているか
比べ方のテクニック
- 1文ずつ交互に聞く:お手本1文→自分1文、と交互に聞くと違いがわかりやすい
- 速度を落とす:再生速度を0.75倍にすると、細かい音の違いに気づきやすい
- 1回に直すのは1〜2か所:全部直そうとすると混乱するので、今日の課題を絞る
ポイント:「今日は視点2だけ」のように、1回の録音で見るポイントを決めると、効率よく改善できます。
音声入力を使った「伝わるか」チェック
もう1つ便利なのが、スマホやパソコンの音声入力(音声認識)機能を使ったチェックです。
やり方
- スマホのメモアプリなどで、音声入力の言語を英語に設定する
- 練習したい英文を読み上げる
- 画面に表示された文字が、読みたかった英文と一致しているか確認する
使い方のコツ
たとえば、次の自作例文を読んでみます。
- I really like reading books on the train.
もし「I really like leading books」と表示されたら、reading の R が L に聞こえている可能性があります。「light」と「right」、「think」と「sink」など、苦手なペアを含む文で試すと、自分の発音がどう認識されているかがわかります。
注意点
- 音声認識は、文脈から単語を推測する機能があるため、多少不正確な発音でも正しく表示されることがあります。「表示された=完璧な発音」とは限りません。
- 逆に、周囲の雑音やマイクの状態で誤認識されることもあります。
- あくまで補助的なチェックとして使い、お手本との比較をメインにしましょう。
発音チェックアプリも選択肢に
発音を評価してくれるアプリやサービスもあります。点数やフィードバックが出るものは、ゲーム感覚で続けやすいのが良い点です。ただし、評価の基準はサービスによって違うので、点数だけにとらわれず、お手本との比較と組み合わせて使いましょう。
1週間メニュー(1日15分)
録音練習を習慣にするための1週間メニューです。
- 1日目:30秒の素材を選び、練習なしでそのまま録音(「ビフォー」の記録)
- 2日目:1日目の録音を、視点1(個々の音)で聞き、直したい音を1つ決めて練習→再録音
- 3日目:視点2(リズムと強勢)でチェック。内容語に印をつけて練習→再録音
- 4日目:視点3(イントネーションとなめらかさ)でチェック。文末に↘↗を書いて練習→再録音
- 5日目:音声入力で、苦手な音を含む文が正しく表示されるか確認
- 6日目:通して何回か練習した後、「アフター」として録音
- 7日目:1日目の「ビフォー」と6日目の「アフター」を聞き比べ、改善した点と次の課題をメモ
1か月続けるなら
- 毎週1本、新しい素材で同じサイクルを回す
- 月末に、1か月前の録音と聞き比べる
- 1つの素材を「定点観測用」にして、毎月同じ文を録音する
同じ文を毎月録音していくと、自分の発音の変化がはっきりわかります。数か月分たまると、「こんなに変わったんだ」と実感できるはずです。
ポイント:ビフォーとアフターを残すことが、録音練習のいちばんの楽しみです。
よくある失敗と続けるコツ
よくある失敗
- 自分の声が恥ずかしくて聞かない:最初は誰でも違和感があります。数回聞けば慣れるので、まずは聞いてみましょう。
- 録音するだけで聞き直さない:録音は聞き直して比べてこそ意味があります。
- 一度に全部直そうとする:1回の練習で直すのは1〜2か所。小さな改善を積み重ねましょう。
- お手本なしで録音する:比べる基準がないと、何を直せばいいかわかりません。
- 長い素材を選ぶ:3分の素材を録音すると、聞き直すだけで疲れてしまいます。30秒〜1分が目安です。
- 完璧を目指しすぎる:目標は「通じる・伝わる発音」。ネイティブと完全に同じ発音を目指さなくても大丈夫です。
続けるコツ
- 録音する時間を決める(例:夜の歯みがきの後に5分)
- 録音ファイルを1つのフォルダにまとめておく
- 改善した点を、ノートに1行だけでも書いておく
- 友達と録音を送り合って、お互いにコメントし合うのも楽しい方法です
録音は、最初の1回がいちばんハードルが高い練習です。でも、一度やってみると、自分の発音の「クセ」が驚くほどよくわかります。今日はまず、教科書の1文を録音して聞いてみることから始めてみましょう。



