スコアの先にある「使う英語」
IELTSのスコアは、留学先で学ぶための英語力の目安です。ただし、実際の留学生活では、試験とは違う場面で英語を使うことになります。
試験と現地の違い
- 試験:時間と形式が決まっている。1回聞いて答える、決まったテーマについて書く
- 授業:90分の講義を聞き続ける。大量の文献を読む。数千語のレポートを書く。グループで議論する
- 生活:銀行や役所、病院、住まいのトラブルなど、専門用語の多い場面がある
- 人間関係:雑談、冗談、誘いの受け答えなど、試験には出ない会話
出発前にこれらの場面を想定して準備しておくと、現地での最初の数週間の負担がぐっと軽くなります。
ポイント:スコアはゴールではなくスタートライン。出発前の準備は「現地の場面」から逆算しましょう。
授業に備える①:講義を聞いてノートを取る
現地の授業では、長い講義を聞きながらノートを取る力が必要です。IELTSのリスニングPart 4(講義)の延長線上にある力ですが、実際の講義はずっと長く、脱線や質疑応答も含まれます。
ノートテイキングのコツ
- 講義の構成を示す言葉に注目する:First, ... / Another key point is... / To sum up, ...
- すべてを書き取らず、キーワードと矢印、略語で記録する
- 自分用の略語を決めておく:e.g.(例)、→(結果)、↑(増加)、govt(government)、info(information)
練習方法
- 大学の公開講義や、TEDなどの英語の講演動画を選ぶ
- 15〜20分、字幕なしでノートを取りながら聞く
- ノートだけを見て、内容を英語で3文に要約する
- 字幕をつけて見直し、聞き逃した部分を確認する
最初は5分から始め、少しずつ長くしていきましょう。
ポイント:ノートは「あとで要約できるか」が合格ライン。要約まで練習すると、聞く力と書く力が同時に伸びます。
授業に備える②:読む・書く・議論する
アカデミックな読み書き
大学の授業では、毎週多くの文献を読むことが求められることがあります。すべてを精読するのではなく、目的に応じて読み方を変える練習をしておきましょう。
- 論文の要旨(Abstract)と結論を先に読む
- 段落の最初の文で、論の流れをつかむ
- 必要な部分だけを精読する
ライティングでは、IELTSのTask 2で身につけた「主張→理由→例」の構成が役立ちます。加えて、引用のルール(他人の文章を使うときの出典の示し方)を知っておくことが大切です。多くの大学では、剽窃(plagiarism)に対して厳しい方針を取っています。
ディスカッション
授業では、意見を求められる場面が多くあります。IELTSスピーキングPart 3の練習が役立ちますが、議論では他人の意見に反応する表現も必要です。
- I agree with what you said about..., and I'd like to add that...
- That's an interesting point, but I see it a bit differently.
- Could you explain what you mean by...?
ポイント:議論に参加するコツは、長く話すことより「最初の10分で一言話す」こと。一度発言すると、その後も話しやすくなります。
生活に備える:場面別の英語
留学の最初の数週間は、手続きや買い物など、生活の立ち上げで英語を使う場面がたくさんあります。場面ごとに、よく使いそうな表現を準備しておきましょう。
準備しておきたい場面
- 住まい:入居時の確認、設備の故障の連絡
- 銀行・携帯電話:口座開設や契約の手続き
- 病院・薬局:症状を伝える、薬について質問する
- 大学の窓口:履修登録、書類の依頼
- 買い物・交通:切符や定期券、返品や交換
自作の表現例
- The heater in my room isn't working. Could someone come and have a look?
- I've had a sore throat and a slight fever since yesterday.
- I'd like to open a student account. What documents do I need?
- Could you tell me how to register for this course?
練習方法
場面ごとに、「言いたいこと」を日本語で3つ書き出し、英語にしてみましょう。オンライン英会話で、講師に店員や窓口の人の役をしてもらうロールプレイも効果的です。
ポイント:困ったときの一言「Could you say that again more slowly?」は、最初に覚えておきたい表現です。
人間関係に備える:雑談と自己紹介
授業や手続きの英語は準備しやすいですが、意外と困るのが雑談です。クラスメートとの会話、寮での何気ないやりとりは、試験ではあまり練習しない分野です。
準備しておきたいこと
- 30秒の自己紹介:名前、出身、専攻、趣味、留学の目的
- 日本について聞かれそうなこと:出身地のこと、日本の食べ物や文化、最近の出来事
- 会話を続ける質問:What are you studying? / How long have you been here? / Have you been to ... yet?
自作の自己紹介例
Hi, I'm Yuki. I'm from Hiroshima, in the west of Japan. I'm studying economics, and I'm here for one year as an exchange student. In my free time, I like playing the guitar and trying new cafés. Is there anywhere you'd recommend around here?
最後に質問で終わると、会話が自然に続きます。
聞き返しは恥ずかしくない
雑談では、知らない言い回しや速い話し方に出会うことがよくあります。分からないときは、Sorry, what does that mean? と素直に聞いてみましょう。聞き返すことが、会話を続けるきっかけにもなります。
ポイント:雑談の準備は「話すネタ」と「聞く質問」の両方を。質問を3つ持っているだけで、会話への不安はかなり減ります。
出発前3か月の練習メニューとよくある失敗
3か月のメニュー例
- 3か月前:講義動画で週3回のノートテイキング練習(1回20分)。生活場面の表現リスト作り
- 2か月前:英語の論文や記事を週2本読み、要約を書く。オンライン英会話でロールプレイ
- 1か月前:ディスカッションの練習(週2回)。自己紹介と雑談の練習。専攻分野の基本用語を英語で確認
毎日続けたいこと(15〜30分)
- 専攻分野に関する英語の記事や動画に触れる
- その日のニュースや出来事について英語で2〜3文話す
よくある失敗
- スコアを取った後に英語学習を止めてしまう:出発までの期間に英語力が落ちてしまうことがあります。
- 生活の英語を準備しない:最初の手続きでつまずくと、授業の準備にも影響します。
- 専攻分野の用語を知らない:日本語では知っている概念でも、英語の用語を知らないと授業で苦労します。
今日やることは、自分の専攻分野の基本用語を10個選び、英語で何と言うかを調べてノートに書くことです。それが、留学先の最初の授業への一番確実な準備になります。



