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【ノーベル賞技術】DNAを“検索して置換”するCRISPR、もう病院とスーパーに来ていた

【ノーベル賞技術】DNAを“検索して置換”するCRISPR、もう病院とスーパーに来ていた

読む前に予想してみよう!

ゲノム編集技術で作られた食品が、日本ですでに販売されている

研究カード(どんな研究?)
対象
ゲノム編集技術と承認された治療・食品
規模
基礎研究〜臨床試験(数十人規模)
研究の種類
実験研究・臨床試験・公的機関の情報
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

DNAの狙った場所を切って書き換えるゲノム編集CRISPR。2020年ノーベル化学賞。遺伝性の血液の病気の治療や、日本の食品にもすでに使われている。

ひとことで言うとCRISPRは、DNAという“文章”の「検索して置換」機能!

もくじ
  1. 細菌の「免疫の記憶」から生まれたハサミ
  2. すでに変わった3つのこと
  3. 便利すぎるからこその「ブレーキ」
  4. まとめ

パソコンで文章を書くとき、「検索して置換」を使ったことはありますか? 長い文章の中から1つの単語だけを見つけて、別の単語に書き換える機能です。

実は、生き物の設計図であるDNAに、これとそっくりなことができる技術があります。それがCRISPR(クリスパー)。

2020年にノーベル化学賞を受賞したこの技術は、研究室を飛び出して、すでに病院やスーパーにまで届き始めています。

01細菌の「免疫の記憶」から生まれたハサミ

CRISPRのルーツは、なんと細菌です。細菌はウイルスに攻撃されると、そのウイルスのDNAの一部を自分のDNAの中に“指名手配写真”として保存します。次に同じウイルスが来たら、その写真を頼りに見つけ出し、Cas9(キャスナイン)というハサミ役のタンパク質で切ってしまうのです。

それまでの遺伝子改変は、狙った場所を変えるのに大変な手間と時間がかかりました。CRISPRは「ガイド役を差し替えるだけ」で済むため、速く・安く・正確になり、世界中の研究室に一気に広まりました。

ガイドRNAが「検索」、Cas9が「切り取り」を担当する。
ガイドRNAが「検索」、Cas9が「切り取り」を担当する。

02すでに変わった3つのこと

1. 遺伝性の血液の病気の治療

2023年、鎌状赤血球症などの遺伝性の血液の病気に対して、CRISPRを使った治療が英国(11月)や米国(12月)で世界で初めて承認されました。患者自身の血液のもとになる細胞を取り出し、ゲノム編集してから体に戻す方法です。臨床試験では、重い痛みの発作をくり返していた患者の多くで、1年以上発作がなくなったと報告されています(Frangoul ら, 2024)。ただし、治療は大がかりで費用も非常に高く、誰もがすぐ受けられるものではありません。

2. 日本の食卓

日本では、ストレスを和らげる効果がうたわれる成分GABAを多く含むトマトや、身の量が多いマダイ、成長の早いトラフグなどが、国への届け出を経て流通しています。外から別の遺伝子を入れるのではなく、もともとある遺伝子の働きを止めるタイプの編集です。

3. 研究のスピード

「この遺伝子は何をしているのか?」を調べるため、遺伝子を狙って働かなくする実験が格段に簡単になりました。生命科学の研究そのものが加速しています。

03便利すぎるからこその「ブレーキ」

04まとめ

CRISPRは、細菌の免疫から生まれたDNAの「検索して置換」ツール。ノーベル賞からわずか数年で、治療薬や食品として私たちの身近に届き始めました。

どこまで書き換えていいのか――その答えを決めるのは、技術ではなく私たち社会です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCRISPR is a technology that lets scientists cut DNA at a chosen spot and change it, much like the "find and… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

CRISPR is a technology that lets scientists cut DNA at a chosen spot and change it, much like the "find and replace" function in a word processor. It comes from bacteria, which store pieces of virus DNA and later use a protein called Cas9 to cut the same virus when it attacks again.

In 2012, Emmanuelle Charpentier and Jennifer Doudna's team showed that this system could be used to cut any DNA simply by changing a guide RNA. They won the Nobel Prize in Chemistry in 2020. In 2023, a CRISPR treatment for sickle cell disease was approved in the UK and the US. In Japan, genome-edited tomatoes and fish are already on the market.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

CRISPRは、科学者がDNAを狙った場所で切って書き換えられるようにする技術で、ワープロの「検索して置換」機能によく似ています。それは細菌に由来します。

細菌はウイルスのDNAの断片を保存しておき、同じウイルスが再び攻撃してきたときに、Cas9というタンパク質を使ってそれを切るのです。2012年、エマニュエル・シャルパンティエとジェニファー・ダウドナのチームは、ガイドRNAを変えるだけで、この仕組みを使ってどんなDNAでも切れることを示しました。2人は2020年にノーベル化学賞を受賞しました。2023年には、鎌状赤血球症に対するCRISPRの治療が英国と米国で承認されました。日本では、ゲノム編集されたトマトや魚がすでに市場に出ています。

4択リーディングクイズ

Q1. Where does the CRISPR system originally come from?

Q2. How can scientists change the target that CRISPR cuts?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • genome editingC1
    名詞(句)ゲノム編集Genome editing can change a single letter of DNA. genome は gene(遺伝子)+-ome(全体)=「遺伝情報の全体」。genetic modification(遺伝子組み換え)と区別。
  • guide RNAC1
    名詞(句)ガイドRNA(狙う場所を示す目印)The guide RNA leads Cas9 to the right spot. guide は「案内する」。CRISPRでは「検索」役、Cas9 が「切り取り」役と覚える。
  • off-targetC1
    形容詞狙いから外れたScientists check for off-target cuts. on target「狙いどおり」の反対。off-target effects「標的外作用」は医療英語の定番。
  • inheritedB2
    形容詞遺伝性の、受け継がれたSickle cell disease is an inherited blood disorder. inherit(相続する・受け継ぐ)の過去分詞。heritable(遺伝しうる)、heritage(遺産)も同語源。
  • approveB1
    動詞承認するRegulators approved the first CRISPR therapy in 2023. approve of ~ は「~に賛成する」。他動詞の approve ~ は「(正式に)承認する」。名詞 approval。
  • condemnationC1
    名詞強い非難The experiment drew worldwide condemnation. 動詞 condemn(非難する・有罪を宣告する)。n は発音しない /kənˈdem/ に注意。
  • therapyB2
    名詞治療(法)Gene therapy may cure some inherited diseases. gene therapy(遺伝子治療)、physical therapy(理学療法)。treatment より専門的な響き。

動画でもっと知る

ワープロの「検索して置換」みたいに、DNAの狙った場所だけを書き換えるCRISPR。ノーベル賞から数年で、遺伝性の血液の病気の治療薬として承認され、日本ではゲノム編集トマトも売られているらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Jinek et al. (2012) A Programmable Dual-RNA–Guided DNA Endonuclease in Adaptive Bacterial Immunity, Sciencedoi.org
  2. The Nobel Prize in Chemistry 2020(Nobel Prize Outreach, 公式)nobelprize.org
  3. Frangoul et al. (2021) CRISPR-Cas9 Gene Editing for Sickle Cell Disease and β-Thalassemia, New England Journal of Medicinedoi.org
  4. Frangoul et al. (2024) Exagamglogene Autotemcel for Severe Sickle Cell Disease, New England Journal of Medicinedoi.org
  5. 消費者庁: ゲノム編集技術応用食品等caa.go.jp