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月の裏側は、表とまったく別の顔をしている。しかも「暗黒面」ではなかった

月の裏側は、表とまったく別の顔をしている。しかも「暗黒面」ではなかった

読む前に予想してみよう!

月の裏側は、いつも真っ暗で太陽の光が当たらない

研究カード(どんな研究?)
対象
月の地殻と裏側の地質
規模
全球の重力観測+帰還試料
研究の種類
探査機データ+試料分析+理論
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

月はいつも同じ面を地球に向けている。裏側は黒い「海」がほとんどなく、クレーターだらけで地殻も厚い。なぜ表と違うのかは今も研究中。

ひとことで言うと月のうら側は、ウサギもようがなくて、でこぼこだらけなんだ!

もくじ
  1. なぜ月は裏側を見せないの?
  2. 裏側には「ウサギ」がいない
  3. 裏側は「皮」が厚かった
  4. 裏側への着陸と「お持ち帰り」
  5. まとめ

月を見上げると、いつも同じウサギの模様が見えますよね。実はこれ、偶然ではありません。月は、いつも同じ面を地球に向けているのです。

だから人類は何千年もの間、月の裏側を一度も見たことがありませんでした。そして1959年、探査機が初めて裏側を撮影したとき、そこにはまったく別の顔が待っていたのです。

01なぜ月は裏側を見せないの?

月は、約27日かけて地球のまわりを1周しています。そして、自分で1回転するのにかかる時間も、ちょうど同じ約27日。

公転と自転のペースがぴったり同じなので、月はいつも同じ面を地球に向けることになります。これを潮汐ロック(同期自転)といいます。

たとえるなら、相手の顔をずっと見つめながら、そのまわりを歩くようなもの。歩いている人は1周するあいだに体も1回転していますが、相手からは背中が見えません。

月が生まれたころは、もっと速く自転していたと考えられています。地球の引力によるブレーキで、長い時間をかけて今のペースに落ち着いたのです。

02裏側には「ウサギ」がいない

月の表側に見える黒っぽい部分は、海と呼ばれています。もちろん水があるわけではなく、大昔に溶岩が流れ出して固まった、黒い玄武岩の平原です。これがウサギの模様の正体です。

ところが、1959年にソ連の探査機ルナ3号が撮影した裏側には、この海がほとんどありませんでした。

  • 表側:黒い「海」が広い範囲をしめる
  • 裏側:「海」はごくわずか。白っぽい高地に、クレーターがびっしり

同じ月なのに、表と裏でまるで別の天体のようなのです。

表側(左)と裏側(右)。同じ月とは思えないほど違う(イメージ)
表側(左)と裏側(右)。同じ月とは思えないほど違う(イメージ)

03裏側は「皮」が厚かった

なぜこんなに違うのでしょう? 手がかりのひとつは、月の地殻(表面をおおう岩の層)の厚さです。

地殻が薄い表側では、地下のマグマが表面まで噴き出しやすく、黒い「海」がたくさんできた。いっぽう地殻が厚い裏側では、マグマが外に出にくかった──そう考えられています。

では、なぜ裏側の地殻だけが厚くなったのか? これについては、

  • 生まれたばかりの熱い地球が、表側だけを温めたため、裏側に岩の材料が集まった説(アメリカのロイらが2014年に学術誌『The Astrophysical Journal Letters』で提案)
  • 大昔に巨大な天体がぶつかって、表と裏の差が生まれた説

など、いくつかの仮説があり、まだ決着はついていません。

04裏側への着陸と「お持ち帰り」

裏側の探査は、とても難しいものでした。月そのものがじゃまをして、地球と直接通信ができないからです。

そこで中国は、月の向こう側に通信を中継する衛星を置き、2019年に探査機嫦娥4号(じょうが4号)で、人類初の月の裏側への着陸に成功しました。さらに2024年には嫦娥6号が、裏側の砂を初めて地球に持ち帰りました。

この砂の分析はすでに始まっていて、2024年に学術誌『Nature』に載った中国の研究チームの論文では、裏側の砂に含まれる玄武岩(溶岩が固まった岩)が約28億年前のものだと報告されました。裏側でも、かなり長いあいだ火山活動が続いていたことになります。こうした分析から、表と裏がなぜ違うのか、その答えに近づけると期待されています。

05まとめ

  • 月は自転と公転のペースが同じなので、いつも同じ面を地球に向けている
  • 裏側は黒い「海」がほとんどなく、クレーターだらけで、地殻も厚い
  • 「暗黒面」は誤解。裏側にもちゃんと昼が来る

いつも見ている月にも、まだ解けていない謎がある。次に月を見上げたら、「見えない側はどうなっているんだろう?」と想像してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Moon takes about 27 days to go around the Earth, and it also takes about 27 days to turn once on its axis. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Moon takes about 27 days to go around the Earth, and it also takes about 27 days to turn once on its axis. Because of this tidal locking, it always shows the same face to us. The dark patches we see are called "seas," but they are actually plains of dark rock formed by lava long ago. In 1959, the Soviet spacecraft Luna 3 photographed the far side. It found almost none of these seas, only bright highlands covered in craters.

Scientists have long asked why. In 2013, data from NASA's GRAIL mission showed that the crust is thin on the near side and thicker on the far side. Where the crust was thin, magma may have reached the surface more easily and formed dark lava plains.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

月は約27日かけて地球のまわりを回り、また約27日かけて自分の軸を中心に1回転します。この潮汐ロックのために、月はいつも同じ面を私たちに向けています。私たちに見える黒い模様は「海」と呼ばれていますが、実際には大昔に溶岩からできた黒い岩の平原です。1959年、ソ連の探査機ルナ3号が月の裏側を撮影しました。そこにはこの「海」がほとんどなく、クレーターにおおわれた明るい高地があるだけでした。

なぜなのか、科学者たちは長いあいだ疑問に思ってきました。2013年、NASAのGRAILミッションのデータから、地殻は表側で薄く、裏側で厚いことが示されました。地殻が薄い場所では、マグマが地表に出やすく、黒い溶岩の平原をつくったのかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. What are the "seas" on the Moon?

Q2. What did the GRAIL mission show?

Q3. What can we infer about why the near side has more "seas"?

重要単語

  • far sideB1
    名詞(句)(月の)裏側No one on Earth can see the far side of the Moon. 反対は near side(表側)。dark side という呼び方は「見えない側」の意味で、暗いわけではない。
  • tidal lockingC1
    名詞(句)潮汐ロック(同期自転)Tidal locking keeps one face of the Moon toward us. tidal(潮汐の)+lock(固定する)。be tidally locked「潮汐ロックされている」の形でも使う。
  • crustB2
    名詞地殻The crust is thicker on the far side. パンの「耳」やピザの「生地のふち」も crust。外側の硬い層というイメージ。
  • mareC1
    名詞(月の)海A lunar mare is a plain of dark lava. ラテン語で「海」。複数形は maria。marine(海の)、submarine(潜水艦)と同語源。
  • relay satelliteC1
    名詞(句)中継衛星A relay satellite sends signals from the far side. relay は「中継する」。運動会の「リレー」と同じく、次へ受け渡すイメージ。
  • basaltC1
    名詞玄武岩The dark seas of the Moon are made of basalt. 溶岩が冷えて固まった黒っぽい岩。発音は /bəˈsɔːlt/ または /ˈbæsɔːlt/。地学の英文で頻出。
  • unresolvedB2
    形容詞未解決のThe cause of the difference remains unresolved. un-(否定)+resolve(解決する)。remain unresolved「未解決のままである」は研究紹介の定番表現。

動画でもっと知る

月はいつも同じ面を地球に向けているから、地上から裏側は見えない。探査機が撮った裏側は、ウサギ模様の黒い「海」がほとんどなく、クレーターだらけの別の顔。しかも「月の暗黒面」は誤解で、裏側にもちゃんと昼が来るらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Wieczorek et al. (2013) The Crust of the Moon as Seen by GRAIL, Sciencedoi.org
  2. Roy, Wright & Sigurdsson (2014) Earthshine on a Young Moon: Explaining the Lunar Farside Highlands, The Astrophysical Journal Lettersdoi.org
  3. Zhang et al. (2024) Lunar farside volcanism 2.8 billion years ago from Chang'e-6 basalts, Naturedoi.org
  4. NASA, GRAIL (Ebb and Flow), NASA Sciencescience.nasa.gov