綱引きは人数が増えるほど1人の力が落ちる。会議やグループLINEで"誰かがやる"が起きる心理

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大人数で一緒に作業すると、1人ひとりの頑張りは増える
個人の貢献が見えにくい集団作業では、1人あたりの努力が下がりやすい(社会的手抜き)。
- 対象
- 大学生など
- 規模
- 78研究のメタ分析ほか
- 研究の種類
- 実験+メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
綱引きや拍手の実験で、人数が増えるほど1人あたりの力は下がった。78の研究をまとめた分析でも確認。個人の貢献が見えないと「誰かがやる」が生まれる。
ひとことで言うとみんなでやると、こっそり手を抜いちゃう。名前が見えるとシャキッとする!
グループ課題で、なぜか一部の人だけが頑張っている。会議で「何か意見ある人?」と聞かれても、シーンとする。グループLINEで質問を送ったのに、既読だけ増えて誰も答えない。
あるあるですよね。これには、心理学ではっきり名前がついています。社会的手抜きです。
01100年以上前の綱引き実験
始まりは19世紀末、フランスの農業技術者マクシミリアン・リンゲルマンの実験でした。
人にロープを引かせて力を測ると、人数が増えるほど、1人あたりの力が下がっていく。8人で引いても、1人の力の8倍にはならなかったのです。この現象は「リンゲルマン効果」と呼ばれています。
でも、ここで疑問がわきます。人数が増えると、タイミングがずれて力がうまく合わさらないだけでは?
02目隠しして「みんなで引いている」と思わせた
つまり、力が落ちる原因の一部は、やる気そのものが下がることにあったのです。
1979年には、拍手や大声を出す実験でも同じことが確かめられました。グループで出す音は、人数が増えるほど1人あたりの音量が小さくなり、これは、協調のまずさだけでは説明できない努力の損失でした。

0378の研究で確認、ただし小さくできる
1993年、78の研究をまとめたメタ分析で、社会的手抜きはさまざまな作業で安定して起きることが確認されました。
同時に、手抜きが小さくなる条件も分かってきました。
- 一人ひとりの貢献が見えるとき(誰がどれだけやったか分かる)
- 作業が本人にとって意味がある・面白いとき
- 仲の良いメンバーや、大切に思うグループで作業するとき
- 自分の頑張りが結果に欠かせないと感じるとき
また、この分析では、手抜きの傾向は女性や東洋文化圏の参加者で、やや小さめだったことも報告されています。
04メールも「宛先が多いと」返事が減る
デジタルの世界でも同じことが起きます。
2002年の研究では、依頼メールを送る実験で、自分ひとりに宛てて送られてきたメールは、複数人に同時に送られてきたメールより、役に立つ返事が来やすかったのです。宛先が多いと、「誰かが答えるだろう」と責任が分散してしまうのです。
05まとめ
人は集団になると、ちょっとだけ手を抜いてしまう生き物です。でも、それは性格の問題ではなく、「自分の頑張りが見えない」仕組みの問題でもあります。
名前を呼ぶ、役割を分ける、一人ひとりの貢献を認める。それだけで、チームの力はぐっと引き出せます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSocial loafing is the tendency to put in less effort when working in a group.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In a tug-of-war, does everyone pull as hard as they can? Not really. When more people pull the rope, each person pulls less. This is called social loafing.
In one experiment, people wore blindfolds. They pulled less when they only thought others were pulling with them.
The same thing happens in group chats. When a question goes to everyone, nobody may answer. Asking one person by name helps.
68 words ・ CEFR A2
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綱引きで、全員が全力で引いているでしょうか?実はそうではありません。ロープを引く人が増えると、一人ひとりが引く力は小さくなります。これは社会的手抜きと呼ばれます。
ある実験で、人々は目隠しをしました。彼らは、他の人も一緒に引いていると思っただけで、引く力が小さくなりました。
グループチャットでも同じことが起こります。質問が全員に送られると、誰も答えないことがあります。1人の名前を呼んで頼むと効果があります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
集団になると一人ひとりが手を抜く「社会的手抜き」がテーマなので C。
Q2. What helps people answer in a group chat?
Asking one person by name helps. とあるので B。
Q3. In this passage, "blindfolds" are ...
目隠しをして周りが見えない状態にした実験なので、blindfold は「目隠し(の布)」。A。
Social loafing is the tendency to put in less effort when working in a group. In the late 19th century, the French engineer Maximilien Ringelmann found that as more people pulled a rope, each person pulled with less force. Was this just because people could not pull at the same time?
In a 1974 experiment, blindfolded people pulled alone but were told that others were pulling behind them. They still pulled less, so lower motivation was part of the cause. A 1993 analysis of 78 studies confirmed that social loafing happens in many kinds of tasks, but it becomes smaller when each person's contribution can be seen or when the task feels meaningful.
113 words ・ CEFR B1
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社会的手抜きとは、グループで作業するときに努力を減らしてしまう傾向です。19世紀末、フランスの技術者マクシミリアン・リンゲルマンは、ロープを引く人が増えるにつれ、一人ひとりの引く力が小さくなることを発見しました。これは単に、人々が同時に引けなかったからでしょうか?
1974年の実験では、目隠しをした人がひとりで引いていましたが、後ろで他の人も引いていると伝えられました。それでも彼らの引く力は小さくなったので、やる気の低下が原因の一部だったのです。78の研究をまとめた1993年の分析は、社会的手抜きが多くの種類の作業で起こることを確認しましたが、一人ひとりの貢献が見えるときや、作業が意味のあるものに感じられるときには小さくなりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Ringelmann find?
as more people pulled a rope, each person pulled with less force とあるので A。
Q2. Why was the 1974 experiment important?
ひとりで引いているのに他の人もいると思うだけで力が落ちたので、lower motivation was part of the cause とわかった。D。
Q3. According to the 1993 analysis, when does social loafing become smaller?
it becomes smaller when each person's contribution can be seen or when the task feels meaningful とあるので C。
Group projects in which a few people do all the work, meetings that fall silent, group chats where a question collects "read" marks but no answers: all may reflect social loafing, the tendency to exert less effort on collective tasks. The phenomenon traces back to Maximilien Ringelmann, a French agricultural engineer who observed in the late 19th century that individual pulling force declined as more people pulled a rope. Coordination problems could explain this, so a 1974 study separated the possibilities. Blindfolded participants who pulled alone but believed others were pulling with them still exerted less force, indicating a genuine loss of motivation.
A 1979 study found the same pattern for clapping and shouting, a loss beyond faulty coordination. In 1993, a meta-analysis of 78 studies confirmed that social loafing is robust across tasks, but it also identified moderators: loafing shrinks when individual contributions are identifiable, when the task is meaningful, when group members are valued, and when one's effort seems indispensable. The same diffusion of responsibility appears online: a 2002 study found that emails addressed to one person received more helpful replies than those sent to several recipients.
189 words ・ CEFR B2
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数人だけが全部の作業をするグループ課題、静まり返る会議、質問に「既読」はつくのに答えがないグループチャット。これらはすべて、集団の作業で努力を減らす傾向である社会的手抜きを反映しているのかもしれません。この現象はマクシミリアン・リンゲルマンにさかのぼります。このフランスの農業技術者は19世紀末、ロープを引く人が増えるにつれて一人ひとりの引く力が下がることを観察しました。これは協調の問題でも説明できるので、1974年の研究はその可能性を切り分けました。ひとりで引いているのに他の人も一緒に引いていると信じた目隠しの参加者は、それでも力を弱めており、本物のやる気の低下を示していました。
1979年の研究は、拍手や大声でも同じパターンを見出し、それは協調の失敗だけでは説明できない損失でした。1993年、78の研究のメタ分析は、社会的手抜きがさまざまな作業で頑健に起きることを確認しましたが、それを左右する要因も特定しました。手抜きは、個人の貢献が見分けられるとき、作業に意味があるとき、グループのメンバーが大切にされているとき、自分の努力が欠かせないと思えるときに小さくなります。同じ責任の分散はオンラインでも現れます。2002年の研究では、1人に宛てたメールは、複数の受信者に送られたメールよりも役に立つ返信を多く受け取りました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 1974 study help to show?
ひとりで引いているのに他者がいると信じただけで力が落ちたので、indicating a genuine loss of motivation。D。
Q2. Which of the following does NOT reduce social loafing, according to the 1993 meta-analysis?
貢献が見える・意味のある作業・大切なメンバー・努力が欠かせない、の4つが挙げられている。人数を増やすことは逆に手抜きを生むので D。
Q3. What does the 2002 email study suggest for group chats?
1人宛てのメールのほうが役に立つ返信を多く得たので、特定の人に宛てて頼むほうが良いと推論できる。B。
重要単語
- social loafingC1名詞(句)社会的手抜きSocial loafing is common in group projects.
loaf は「ぶらぶら怠ける」(パンの loaf とは別語源)。loafer はスリッポン靴の名前にも。 - diffusion of responsibilityC1名詞(句)責任の分散Diffusion of responsibility makes people wait for others.
diffuse(拡散する)の名詞形。傍観者効果の説明でも使われる重要語。 - contributionB2名詞貢献Make each person's contribution visible.
make a contribution to ~(~に貢献する)。動詞 contribute to ~ は「~の一因となる」の意味でも頻出。 - accountableC1形容詞説明責任があるPeople work harder when they feel accountable.
be accountable to 人 for 事。名詞 accountability(説明責任)は時事英語の頻出語。 - collectiveB2形容詞集団の、共同のCollective tasks need clear roles.
collect(集める)から。collective effort=共同の努力。individual(個人の)と対で。 - exertC1動詞(力・影響を)発揮する、及ぼすHe exerted all his strength to pull the rope.
exert effort / influence / pressure。exert oneself で「努力する」。 - indispensableC1形容詞不可欠なYour help is indispensable to the team.
in-(否定)+dispense with(~なしで済ます)+-able。essential とほぼ同義で入試頻出。
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綱引きは人数が増えるほど、1人あたりの力が下がるらしい。目隠しして「みんなで引いてる」と思わせただけでも力が落ちた。グループLINEで質問が流れるのも、会議で誰も発言しないのも、同じ"手抜き"の心理かも。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Ingham, Levinger, Graves & Peckham (1974) The Ringelmann effect: Studies of group size and group performance, Journal of Experimental Social Psychologydoi.org
- Latané, Williams & Harkins (1979) Many hands make light the work: The causes and consequences of social loafing, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Karau & Williams (1993) Social loafing: A meta-analytic review and theoretical integration, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Barron & Yechiam (2002) Private e-mail requests and the diffusion of responsibility, Computers in Human Behaviordoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












