HSP(繊細さん)は科学的にどこまでわかっている? 「約3割」という研究も

読む前に予想してみよう!
HSPは医師が診断する病気の名前である
HSPは心理学の研究で使われる性格特性の考え方で、精神医学の診断名ではない。
- 対象
- 大学生など
- 規模
- 906人(米国の大学生)ほか数百人規模
- 研究の種類
- 質問紙調査(潜在クラス分析など)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
HSPは病名ではなく「刺激への感じやすさ」という性格の特徴。感受性は低・中・高の3グループに分かれ、高い人は約3割という研究があるが、まだ議論も多い。
ひとことで言うとHSPは病気じゃなくて「感じやすさ」のちがい。いい面もある!
大きな音や人混みで、すぐにぐったりしてしまう。人のちょっとした表情の変化に気づいてしまう。
そんな自分を「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」、日本では「繊細さん」と呼ぶ人が増えました。本もたくさん出ていますよね。
では、HSPは科学的にどこまでわかっているのでしょうか? 実は、わかっていることと、まだ議論中のことがはっきり分かれています。
01HSPは「病名」ではない
まず大事なポイントから。HSPは医学の診断名ではありません。
もとになったのは、アメリカの心理学者アーロン夫妻が1997年に発表した研究。音や光、人の気持ちなどの刺激を深く処理しやすく、そのぶん刺激が多いと疲れやすいという性格の特徴を「感覚処理感受性(SPS)」と名づけ、27項目の質問紙を作りました。
つまりHSPは、身長や外向性と同じような「誰もが持っている特徴の、高い側」のこと。病気や障害とはちがいます。
02「繊細さん」は何割いる?
よく「5人に1人」と言われますが、研究によって数字は変わります。
タンポポはどこでもたくましく育ち、ランは環境しだいで美しくも、弱くもなる。そんな花のたとえで呼ばれています。
日本人を対象にした2021年の研究(矢野さん・大石さん)でも、同じように3グループに分かれる結果が報告されています。
ただし、「3割」という数字はグループ分けの統計手法や、どこで線を引くかで変わります。「5人に1人」と「3人に1人」のどちらが正しいというより、感受性はなだらかに連続していると考えた方が実態に近いでしょう。

03感じやすさは「悪いこと」だけじゃない
感受性が高い人は、つらい環境ではダメージを受けやすい。でもその逆に、良い環境やサポートからも、より大きく恩恵を受けやすいという考え方があります。
心理学では「差次感受性」と呼ばれます。たとえるなら、高性能なアンテナ。雑音も拾いやすいけれど、良い音楽もくっきり聞こえる、というイメージです。
04ただし、まだ議論も多い
「良い環境からより大きく恩恵を受ける」という部分は、子どもを対象にした一部の研究で示されているものの、大人のHSPについての証拠はまだ限られています。
一方で、批判的な研究もあります。2021年にドイツの研究者ヘルヴィヒさんとロートさんが発表した研究では、HSPの質問紙の点数は、ビッグファイブなどの既存の性格特性とかなり重なり、「人の感情を読み取る力」との関係も、神経症傾向(不安の感じやすさ)と開放性でほぼ説明できてしまうと報告されました(ビッグファイブについてはこちらの記事)。
「HSPは本当に新しい性格の特徴なのか、それとも既存の特徴の組み合わせなのか」は、まだ決着がついていないのです。また、ネットの簡易チェックは研究用の質問紙とは別物のことも多く、結果をうのみにするのは危険です。
05まとめ
HSPは病名ではなく、感じやすさという性格の特徴。感受性が高い人は約3割という研究もあり、決してめずらしくありません。
ただし、科学的にはまだ「議論中」の部分も多い。ラベルに振り回されず、自分のアンテナの扱い方を知る道具として使うのがよさそうです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people now describe themselves as "highly sensitive persons," or HSPs.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some people get tired quickly in loud or crowded places. They also notice small changes in other people's faces. They are sometimes called "highly sensitive people," or HSPs.
Being an HSP is not an illness. It is a part of a person's personality. In a U.S. study, about 31% of college students were in the most sensitive group. But scientists are still discussing what this trait really is.
68 words ・ CEFR A2
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うるさい場所や混んだ場所ですぐに疲れてしまう人がいます。そういう人は、他人の表情の小さな変化にも気づきます。彼らは「ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)」と呼ばれることがあります。
HSPであることは病気ではありません。それはその人の性格の一部なのです。アメリカの研究では、大学生の約31%が最も感受性の高いグループに入っていました。しかし、この特徴が本当は何なのか、科学者たちはまだ議論しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
HSPとは何か、どのくらいいるか、まだ議論中であることを説明しているので C。
Q2. About how many college students were in the most sensitive group in the American study?
about 31% of college students were in the most sensitive group とあるので C。
Q3. The passage says being an HSP is "not an illness." This means it is ...
illness は「病気」。not an illness で「病気ではない」なので A。
Many people now describe themselves as "highly sensitive persons," or HSPs. The idea comes from a 1997 study by the American psychologists Elaine and Arthur Aron, who described a personality trait of processing sounds, lights and other people's feelings deeply. It is not a medical diagnosis.
In 2018, researchers analyzed data from 906 American college students and found three groups: low sensitivity (about 29%), medium (about 40%) and high (about 31%). They compared these groups to dandelions, tulips and orchids. Some researchers believe sensitive people are affected more by both bad and good environments. However, a 2021 German study found that HSP scores overlap a lot with existing traits such as neuroticism, so the debate continues.
116 words ・ CEFR B1
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今では多くの人が自分を「ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)」と表現しています。この考え方は、アメリカの心理学者エレイン・アーロンとアーサー・アーロンによる1997年の研究から来ています。彼らは、音や光、他人の感情を深く処理するという性格特性を記述しました。これは医学的な診断ではありません。
2018年、研究者たちはアメリカの大学生906人のデータを分析し、3つのグループを見つけました。感受性が低いグループ(約29%)、中くらい(約40%)、高い(約31%)です。彼らはこれらのグループをタンポポ、チューリップ、ランにたとえました。感受性の高い人は、悪い環境からも良い環境からもより強く影響を受けると考える研究者もいます。しかし、2021年のドイツの研究では、HSPの得点が神経症傾向のような既存の特性と大きく重なることがわかり、議論は続いています。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, what is HSP?
a personality trait of processing ... deeply とあり、It is not a medical diagnosis. とも書かれているので D。
Q2. Which group was the largest in the 2018 study?
低い約29%、中くらい約40%、高い約31% なので、最大は中くらいのグループ。C。
Q3. Why does the debate about HSP continue?
HSP scores overlap a lot with existing traits such as neuroticism とあり、新しい特性と言えるか不明なので B。
Dandelions, tulips and orchids. Those were the nicknames researchers gave to three groups they found in a 2018 analysis of 906 American college students, sorted by how sensitive they were. Roughly 31 percent landed in the most sensitive group, and a 2021 study found a similar pattern among Japanese participants. The idea goes back to 1997, when Elaine and Arthur Aron proposed a trait they called sensory processing sensitivity.
People high in it process stimuli deeply, and they are easily overwhelmed when stimulation is intense. Being a "highly sensitive person," or HSP, is a matter of personality and not a psychiatric diagnosis. Some researchers argue that sensitive people are not just more vulnerable but also respond more strongly to good surroundings. The evidence that sensitive adults gain more from supportive environments is thin so far.
The 31 percent figure also depends on the statistical method and on where the cut-off points are drawn, and many analyses suggest that sensitivity runs along a continuum instead of falling into separate types. A 2021 German study raised a further question. HSP scores overlapped heavily with familiar traits such as neuroticism and openness, so the trait may not be as new as it seems.
200 words ・ CEFR B2
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タンポポ、チューリップ、ラン。これは、2018年にアメリカの大学生906人を感受性の高さで分析した研究者たちが、見つかった3つのグループにつけたあだ名です。およそ31%が最も感受性の高いグループに入り、2021年の研究も日本人の参加者で同様のパターンを見いだしました。この考えは1997年にさかのぼります。この年、エレインとアーサー・アーロンが「感覚処理感受性」と呼ぶ特性を提唱しました。
この特性が強い人は、刺激を深く処理し、刺激が強いと圧倒されやすいのです。「ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)」であることは性格の問題であって、精神医学の診断ではありません。感受性の高い人は単に傷つきやすいだけでなく、良い環境にもより強く反応すると主張する研究者もいます。しかし、感受性の高い大人が支援的な環境からより多くの恩恵を受けるという証拠は、今のところ乏しいものです。31%という数字も、統計手法や区切りをどこに置くかによって変わります。
また多くの分析は、感受性は別々のタイプに分かれるのではなく、連続体の上に広がっていると示唆しています。2021年のドイツの研究は、さらなる疑問を投げかけました。HSPの得点が、神経症傾向や開放性といったおなじみの特性と大きく重なっていたのです。そのため、この特性は見かけほど新しいものではないのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the author's main purpose?
研究で分かったこと(3つのグループ、約31%など)と、まだ根拠の弱いこと(数字の不安定さ、既存の特性との重なりなど)を分けて述べているので D。
Q2. According to the passage, why might the figure of "about 31%" be unreliable?
The 31 percent figure also depends on the statistical method and on where the cut-off points are drawn とあるので A。
Q3. Which statement would the author most likely agree with?
最終文で HSP scores overlapped heavily with ... neuroticism and openness, so the trait may not be as new as it seems と述べているので C。
重要単語
- sensitiveB1形容詞敏感な、感じやすいMy skin is sensitive to strong sunlight.
be sensitive to ~ の形で。sensible(分別のある)との混同は入試の定番ひっかけ。 - stimulusC1名詞刺激(複数形 stimuli)A loud noise is a strong stimulus.
ラテン語由来で複数形が stimuli になる点に注意。動詞 stimulate(刺激する)。 - overwhelmedB2形容詞圧倒された、いっぱいいっぱいのI felt overwhelmed by all the homework.
動詞 overwhelm(圧倒する)の過去分詞。overwhelming majority=「圧倒的多数」も頻出。 - diagnosisB2名詞診断Only a doctor can give a diagnosis.
dia-(通して)+gnosis(知ること)。複数形 diagnoses。動詞 diagnose。 - susceptibilityC1名詞影響の受けやすさChildren differ in their susceptibility to stress.
形容詞 susceptible は be susceptible to ~(~の影響を受けやすい)の形で長文頻出。 - traitB2名詞特性、特徴Kindness is one of her best traits.
personality trait(性格特性)の形でよく出る。発音は /treɪt/。 - continuumC1名詞連続体Sensitivity may lie on a continuum.
continue と同語源。「はっきりした区切りがなく、なだらかにつながったもの」。on a continuum の前置詞 on に注意。
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「HSP(繊細さん)」は病名ではなく、刺激への感じやすさという性格の特徴。900人超の調査では、感受性が高いグループは約3割。しかも感じやすい人は、悪い環境だけでなく良い環境からも影響を受けやすいらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Aron & Aron (1997) Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Lionetti et al. (2018) Dandelions, tulips and orchids: evidence for the existence of low-sensitive, medium-sensitive and high-sensitive individuals, Translational Psychiatrydoi.org
- Yano & Oishi (2021) Replication of the three sensitivity groups and investigation of their characteristics in Japanese samples, Current Psychologydoi.org
- Hellwig & Roth (2021) Conceptual ambiguities and measurement issues in sensory processing sensitivity, Journal of Research in Personalitydoi.org
- Greven et al. (2019) Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda, Neuroscience & Biobehavioral Reviewsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










