心理学ウソ

「愛着スタイル診断」で人間関係は一生決まる? 心の"クセ"はタイプ分けできなかった

「愛着スタイル診断」で人間関係は一生決まる? 心の"クセ"はタイプ分けできなかった

読む前に予想してみよう!

愛着スタイルは子どもの頃に決まり、大人になってからは変わらない

研究カード(どんな研究?)
対象
成人の調査回答・乳児期〜19歳の追跡研究
規模
複数の研究とサンプルを統合・分析
研究の種類
調査・メタ分析・分類の統計解析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

SNSで人気の「愛着スタイル診断」。でも研究では、人はタイプに分かれるより「不安」と「回避」の2つの目盛りの組み合わせに近く、関係の中で変わりうる。

ひとことで言うと心のクセは「タイプ」じゃなくて「目盛り」。しかも変わることもある!

もくじ
  1. 始まりは赤ちゃんの研究
  2. 実は「タイプ」ではなく「目盛り」だった
  3. 子どもの頃の経験で一生決まる?
  4. まとめ

「あなたは"不安型"です」「"回避型"の人とは相性が悪い」——。

SNSや動画で、愛着スタイル診断を見かけたことはありませんか? 恋愛や友人関係でのクセを「安定型」「不安型」「回避型」などに分けるもので、海外でも大人気のテーマです。

でも、「自分は〇〇型だから、ずっとこうなんだ」と思い込むのはちょっと待って。研究をたどると、タイプ分けにはかなり無理があることが分かってきました。

01始まりは赤ちゃんの研究

愛着(アタッチメント)理論は、もともと赤ちゃんと養育者のきずなの研究から生まれました。赤ちゃんが不安なときに、安心できる人のもとへ戻れるかどうか。その経験が、人との関わり方の"ひな形"になると考えられています。

これを大人の恋愛に応用したのが、1987年のヘイザンとシェイバーの研究です。新聞に載せた「恋愛アンケート」の回答をもとに、大人も安定・回避・不安の3つのスタイルに分けられると提案しました。この新聞アンケートの回答では、安定型が約56%と最も多く、回避型が約25%、不安型が約19%でした。

この研究は大きな反響を呼び、「愛着スタイル」という考え方が広まるきっかけになりました。

02実は「タイプ」ではなく「目盛り」だった

その後の研究で、大人の愛着は2つの目盛りで測るのが主流になりました。

  • 不安:「嫌われたらどうしよう」「見捨てられるかも」と心配する度合い
  • 回避:人に頼ったり、心を開いたりするのを避ける度合い

つまり、「不安型」と「安定型」のあいだにくっきりした境界線はありません。血液型のように分けるのではなく、身長のようなものだと考えたほうが近いのです。

人の心は「箱」に分けるより「目盛り」で表すほうが近い
人の心は「箱」に分けるより「目盛り」で表すほうが近い

ちなみに、愛着は恋人との関係だけの話ではありません。親、友達、先生など、相手によって不安や回避の度合いが違うこともよくあります。「友達には頼れるけど、家族には甘えにくい」といったように、関係ごとに違う顔を持っているのが普通なのです。

03子どもの頃の経験で一生決まる?

「愛着は子どもの頃に決まる」という話もよく聞きます。

複数の追跡研究をまとめた分析では、赤ちゃんの頃から19歳くらいまでの愛着の安定性は「中程度」でした。昔の経験の影響は残るけれど、すべてが決まってしまうわけではないのです。

さらに最近の理論研究では、恋愛パートナーとの安心できる経験が、愛着の安定を高めうると論じられています。自分を信じて頼らせてくれる人と過ごすうちに、「人は信頼していいんだ」という心のひな形が少しずつ書き換わっていく、という考え方です。

04まとめ

愛着スタイル診断は、自分の人間関係のクセに気づく入り口としてはおもしろいものです。でも研究によれば、人はきれいなタイプには分かれず、関係の中で変わりうる存在です。

「〇〇型だから仕方ない」ではなく、「今はこういう傾向がある。じゃあどうしよう?」と考える。それが、科学的にも前向きな使い方です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAttachment theory began with studies of the bond between babies and the people who care for them. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Attachment theory began with studies of the bond between babies and the people who care for them. In 1987, two researchers applied the idea to adult love. Using answers to a newspaper survey, they suggested adults could be grouped into three styles called secure, avoidant, and anxious. About 56 percent of the people who answered chose the secure style.

Later research, however, found that attachment is better measured with two scales, anxiety and avoidance. A 2015 statistical study showed that the data fit continuous scales better than separate types, whether people were thinking about parents, friends, or partners. In addition, attachment is only moderately stable from childhood to adulthood. Experiences with trustworthy romantic partners may help people feel more secure.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

愛着理論は、赤ちゃんと世話をしてくれる人とのきずなの研究から始まりました。1987年、2人の研究者がこの考えを大人の恋愛に応用しました。新聞のアンケートへの回答を使って、彼らは大人を安定型・回避型・不安型の3つのスタイルに分けられると提案しました。回答者のおよそ56%が安定型を選びました。

しかしその後の研究で、愛着は「不安」と「回避」という2つの目盛りで測るほうが適切だと分かりました。2015年の統計的な研究は、親・友達・恋人のどれについて考えた場合でも、データは別々のタイプよりも連続した目盛りによく当てはまることを示しました。さらに、愛着は子ども時代から大人になるまでの間で、中程度にしか安定していません。信頼できる恋愛パートナーとの経験が、人がより安心感を持つ助けになるかもしれません。

4択リーディングクイズ

Q1. Where did attachment theory first come from?

Q2. What did the 2015 study show?

Q3. What can we infer from the last two sentences?

重要単語

  • attachmentB2
    名詞愛着、心のきずなBabies form an attachment to the people who care for them. attach(くっつける)の名詞形。メールの「添付ファイル」も attachment。
  • anxietyB2
    名詞不安She felt anxiety before the speech. 形容詞 anxious。be anxious about ~「~を心配する」/be anxious to do「~したがる」の区別は入試頻出。
  • avoidanceC1
    名詞回避、避けることAvoidance of problems can make them bigger. 動詞 avoid は後ろに動名詞(avoid doing)をとる。不定詞にしないのが文法問題の定番。
  • dimensionB2
    名詞次元、(測るための)軸Height is one dimension of size. 3D は three-dimensional。研究では「性格の次元」のように「測る軸」の意味で使う。
  • categoryB1
    名詞分類、区分These books belong to the same category. 動詞 categorize(分類する)、形容詞 categorical(分類的な・断定的な)。
  • moderatelyB2
    副詞ほどほどに、中程度にThe results were only moderately stable. moderate(適度な)+-ly。moderate exercise「適度な運動」も頻出。
SNSで大人気の「愛着スタイル診断」。でも研究者が統計で調べると、人は「安定型」「不安型」みたいなタイプにはきれいに分かれず、2つの連続した目盛りで表せるらしい。しかも大人になってからの人間関係で変わることもある。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Hazan & Shaver (1987) Romantic love conceptualized as an attachment process, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Fraley (2002) Attachment stability from infancy to adulthood: Meta-analysis and dynamic modeling of developmental mechanisms, Personality and Social Psychology Reviewdoi.org
  3. Fraley et al. (2015) Are adult attachment styles categorical or dimensional? A taxometric analysis of general and relationship-specific attachment orientations, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  4. Arriaga et al. (2018) Revising working models across time: Relationship situations that enhance attachment security, Personality and Social Psychology Reviewdoi.org