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「働かないアリ」は怠け者じゃなかった。働き者が疲れたときの“控え”だった

「働かないアリ」は怠け者じゃなかった。働き者が疲れたときの“控え”だった

読む前に予想してみよう!

アリの巣の働きアリは、全員がいつも一生懸命働いている

研究カード(どんな研究?)
対象
シワクシケアリ・ムネボソアリ類の飼育コロニー
規模
数十コロニー規模+シミュレーション
研究の種類
行動観察・除去実験・数理モデル
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

アリの巣には、ほとんど働かないアリがいる。でも働き者が疲れたり減ったりすると、彼らが代わりに動き出して巣を守る。

ひとことで言うと働かないアリは「控えの選手」。ピンチになると出番がくる!

もくじ
  1. アリにも「腰の重さ」の個性がある
  2. 働き者が休むと、サボり組が動き出した
  3. 海外の研究でも「控え要員」説を支持
  4. 人間の組織にも当てはまる?
  5. まとめ

「アリとキリギリス」の話では、アリはせっせと働く努力家の代表です。

ところが、実際にアリの巣を観察すると、ほとんど何もしていないアリがけっこういることが分かっています。

サボっている…と思いきや、そのアリたちこそが、巣を滅亡から救う「切り札」かもしれないのです。

01アリにも「腰の重さ」の個性がある

なぜ働かないアリが生まれるのでしょうか。カギは反応閾値(はんのういきち)という考え方です。

難しい言葉ですが、要するに「腰の重さ」のこと。

部屋が散らかっていたら、すぐ片づける人もいれば、かなり散らかるまで気にならない人もいますよね。アリにも同じような個性があって、ちょっとの仕事ですぐ動くアリと、仕事がかなりたまらないと動かないアリがいるのです。

仕事がそこそこの量なら、腰の軽いアリたちだけで片づいてしまう。だから腰の重いアリには出番が回ってこず、「働かないアリ」に見える、というわけです。

02働き者が休むと、サボり組が動き出した

では、なぜシミュレーションでは「全員が働き者」の巣のほうが早く滅びたのでしょうか。

ポイントは疲れです。全員が一斉に働くと、全員が一斉に疲れて休む瞬間がやってきます。でも、卵の世話のように一瞬も止めてはいけない仕事もある。そのとき誰も動けなければ、巣は大ダメージを受けてしまいます。

腰の重いアリがいれば、働き者がへとへとになったタイミングで、代わりに動き出してくれる。まさにベンチに控えるサブメンバーの役割です。

働き者が疲れたら、控えのアリたちの出番。
働き者が疲れたら、控えのアリたちの出番。

03海外の研究でも「控え要員」説を支持

アメリカ・アリゾナ大学のダニエル・シャルボノーさんたちも、北米のムネボソアリの仲間(Temnothorax rugatulus)で似た結果を報告しています(2017年『PLoS ONE』)。

よく働くアリを取り除くと、1週間ほどで、働いていなかったアリがその穴を埋めました。ところが逆に、働かないアリを取り除いても、その穴は誰も埋めなかったのです。巣は、働くアリの数は保とうとするけれど、働かないアリの数は保とうとしない、ということです。研究チームは、働かないアリは控えとして役に立つものの、すぐに補充が必要なほど大事な役目ではないのかもしれない、と考えています。

04人間の組織にも当てはまる?

長谷川さんは著書などで、効率だけを追い求めた組織は、いざという時にもろくなりうる、という趣旨の指摘をしています。

全員がいつもフル稼働している会社やチームは、一見すごく効率的。でも、急なトラブルが起きたとき、余力がどこにもありません。

05まとめ

アリの巣にいる「働かないアリ」は、怠け者ではなく、もしものときの控え選手でした。腰の重さがバラバラだからこそ、巣は長く続いていける。シミュレーションはそう示しています。

ムダに見えるものが、実は全体を支えている。小さなアリが教えてくれる、大きなヒントです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn any ant colony, some workers hardly work at all. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In any ant colony, some workers hardly work at all. Why? Each ant has a different threshold for starting a task. Ants with a low threshold begin working as soon as a little work appears, while ants with a high threshold wait until a lot of work builds up.

In 2016, Japanese researchers observed that when hard-working ants rested, inactive ants began to work instead. Their computer simulation also showed that colonies with a mix of thresholds survived longer than colonies where every ant was the same. This is because if all ants work at once, they all get tired at once, and some jobs, like caring for eggs, must never stop.

112 words ・ CEFR B1

和訳を見る

どんなアリの巣にも、ほとんど働かない働きアリがいます。なぜでしょうか。アリはそれぞれ、仕事を始めるための「閾値(いきち)」が違うのです。閾値の低いアリは少し仕事が出てくるとすぐに働き始めますが、閾値の高いアリは仕事がたくさんたまるまで待ちます。

2016年、日本の研究者たちは、よく働くアリが休むと、働いていなかったアリが代わりに働き始めることを観察しました。また彼らのコンピューターシミュレーションでは、閾値がばらばらな巣のほうが、全員が同じ巣より長く存続することが示されました。なぜなら、全員が一斉に働くと全員が一斉に疲れてしまい、卵の世話のように決して止めてはいけない仕事もあるからです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Which ants start working only when a lot of work builds up?

Q3. Why might a colony where all ants work equally hard be in danger?

重要単語

  • colonyB2
    名詞(アリなどの)集団、巣、植民地An ant colony may contain thousands of workers. 歴史では「植民地」。生物では同じ種の集団を指す。colonial(植民地の)。
  • thresholdC1
    名詞閾値(いきち)、反応が起こる境目Ants with a high threshold rarely start working. もとは「敷居」。pain threshold「痛みを感じる限界」など、「ここを超えると反応する境目」の意味で使う。
  • fatigueB2
    名詞疲労Fatigue can stop all the workers at the same time. 発音は /fəˈtiːɡ/。形容詞 fatigued「疲れ果てた」。
  • reserveB2
    名詞・動詞予備、控え/予約するInactive ants act as a reserve labor force. 動詞「予約する」が有名だが、名詞「蓄え・予備」も重要。nature reserve「自然保護区」。
  • division of laborC1
    名詞(句)分業Division of labor is common in social insects. 経済学(アダム・スミス)でも出る重要語。labor はイギリス綴りで labour。
  • inactiveB2
    形容詞活動していないMany workers in the colony were inactive. in-(否定)+active。physically inactive「運動不足の」。
  • simultaneousC1
    形容詞同時のSimultaneous exhaustion could leave eggs unattended. 副詞 simultaneously「同時に」は at the same time の硬い言い方。simultaneous interpretation「同時通訳」。

動画でもっと知る

アリの巣には、ほとんど働かないアリが一定数いるらしい。でも、働き者がいなくなると、サボっていたアリたちがちゃんと働き出す。全員が働き者の巣より、サボりがいる巣のほうが長続きするというシミュレーション結果も。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Hasegawa et al. (2016) Lazy workers are necessary for long-term sustainability in insect societies, Scientific Reportsdoi.org
  2. Charbonneau, Sasaki & Dornhaus (2017) Who needs 'lazy' workers? Inactive workers act as a 'reserve' labor force replacing active workers, but inactive workers are not replaced when they are removed, PLoS ONEdoi.org
  3. Charbonneau & Dornhaus (2015) Workers 'specialized' on inactivity: Behavioral consistency of inactive workers and their role in task allocation, Behavioral Ecology and Sociobiologydoi.org