ラーテルと鳥の「ハチミツ泥棒コンビ」は証拠が薄かった。本当に鳥と組んでいたのは人間だった

読む前に予想してみよう!
ミツオシエは、ラーテル(ミツアナグマ)をハチの巣まで案内することが科学的に確かめられている
人間を案内することは実験で確かめられているが、ラーテルを案内するという話には信頼できる観察記録がほとんどない。
- 対象
- ノドグロミツオシエと、ケニア・モザンビーク・タンザニアのはちみつ採り
- 規模
- 数十〜数百回の案内(各研究)
- 研究の種類
- 野外での行動観察・音声を使った比較実験
- 確かさ
- ★★★★☆
ミツオシエという鳥は人をハチの巣へ案内し、合図の声で案内される確率は約2倍に。一方「ラーテルを案内する」話には確かな証拠がほとんどない。
ひとことで言うと人を呼んでハチの巣まで道案内する鳥がいる。人の合図もわかっている!
ラーテル(ミツアナグマ)は、「世界一怖いもの知らずの動物」としてネットで人気者です。そのラーテルについて、こんな話をよく聞きます。
「ミツオシエという鳥がラーテルをハチの巣まで案内し、ラーテルが巣を壊したら、鳥がおこぼれの蜜ろうを食べる。最強のタッグだ」
ところが、研究者たちが記録を調べてみると、この話にはしっかりした証拠がほとんどありませんでした。代わりに、科学的にはっきり確かめられたのは、鳥と人間のタッグだったのです。
01「ラーテルとのコンビ」はどこまで本当?
ミツオシエ(ノドグロミツオシエ)は、アフリカにすむ、ムクドリくらいの大きさの鳥です。ハチの巣の中の蜜ろう(みつろう)を食べる、珍しい鳥です。でも、自分では硬い木の中の巣を壊せません。
1990年、南アフリカの鳥類学者ディーンさんたちは『Conservation Biology』で、ミツオシエの「案内」についての記録を見直しました。その結果、ラーテルを案内するという話は、多くが言い伝えや又聞きにもとづくもので、信頼できる観察記録はほとんどないと指摘しました。
ラーテルは夜に活動することが多く、ミツオシエは昼の鳥です。いっしょに行動する場面がそもそも少ないのでは、という見方もあります。今のところ、「ラーテルとのタッグ」は「ありえなくはないが、確かめられていない話」です。
02人間との協力は「本物」だった
一方、人間との協力については、しっかりした研究があります。
1989年、フセイン・イサックさんとハインツ=ウルリッヒ・ライヤーさんは『Science』で、ケニアのボラン族のはちみつ採りの人たちとミツオシエを調べた結果を発表しました。人々は「鳥の飛び方や止まる高さ、鳴き方で、巣の方向や距離がわかる」と話しており、鳥の行動を分析すると、その言い伝えは実際に当たっていました。
人が呼べば鳥が応え、鳥が案内すれば人が巣を見つけて煙でハチをおとなしくさせ、巣を割って蜜を採る。残った蜜ろうは鳥のごちそうになります。野生の動物と人間が、お互いに合図を送り合って協力する、世界でもとても珍しい例です。

03鳥は「人間の方言」を聞き分けていた
2023年、スポッティスウッドさんとアメリカのブライアン・ウッドさんは、さらに面白い発見を『Science』に発表しました。
タンザニアのハッザの人たちは、モザンビークとはまったく違う口笛のような合図を使います。実験すると、それぞれの地域のミツオシエは、地元の人たちの合図の方によく反応しました。鳥は生まれつき決まった声に反応するのではなく、その土地の人間の合図を学んでいると考えられます。
人間の文化(合図)と鳥の行動が、地域ごとに組み合わさっている。まるで「方言」のような関係です。
04まとめ
「ラーテルと鳥の最強タッグ」はロマンのある話ですが、確かな証拠はまだありません。一方で、鳥と人間が合図を送り合ってハチの巣を探すという、もっと驚くべき協力は本当にありました。
都市化や砂糖の普及で、伝統的なはちみつ採りは減りつつあります。この不思議な協力関係が、これからも続いていくといいですね。
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音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The honeyguide is a small bird in Africa. It likes to eat beeswax, but it cannot break open bees' nests. People often say it leads honey badgers to the nests, but there is little proof of this.
However, the bird really leads people to the nests. People in Mozambique use a special call. When people used this call, the birds guided them about twice as often. Then the people share the beeswax.
72 words ・ CEFR A2
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ミツオシエはアフリカにすむ小さな鳥です。蜜ろうを食べるのが好きですが、ハチの巣を壊して開けることはできません。この鳥がラーテルを巣まで連れて行くとよく言われますが、その証拠はほとんどありません。
しかし、この鳥は本当に人間を巣まで連れて行きます。モザンビークの人々は特別な呼び声を使います。人々がこの呼び声を使うと、鳥が案内してくれる回数はおよそ2倍になりました。そして人々は蜜ろうを分けてあげるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
人間をハチの巣へ案内する鳥ミツオシエの話なので A。
Q2. What happened when people used the special call?
the birds guided them about twice as often とあるので C。
Q3. In this passage, "proof" means ...
proof は「証拠」。何かが本当だと示す事実なので D。there is little proof は「証拠がほとんどない」。
A popular story says that a bird called the honeyguide leads honey badgers to bees' nests and then eats the beeswax they leave behind. However, when researchers checked the records in 1990, they found that this story was based mostly on hearsay, with very few reliable observations.
On the other hand, the bird's partnership with humans is real. In 2016, Claire Spottiswoode and her team tested a special call used by Yao honey hunters in Mozambique. When they played this call, the chance of being guided by a honeyguide rose from about 33 percent to about 66 percent. The chance of finding a nest also increased, from about 17 percent to about 54 percent.
114 words ・ CEFR B1
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よく知られた話では、ミツオシエという鳥がラーテルをハチの巣まで案内し、ラーテルが残した蜜ろうを食べると言われています。しかし1990年に研究者たちが記録を調べたところ、この話はほとんど又聞きにもとづいていて、信頼できる観察はごくわずかしかないことがわかりました。
一方、この鳥と人間との協力関係は本物です。2016年、クレア・スポッティスウッドさんのチームは、モザンビークのヤオ族のはちみつ採りが使う特別な呼び声を試しました。この呼び声を流すと、ミツオシエに案内される確率は約33パーセントから約66パーセントに上がりました。巣を見つける確率も、約17パーセントから約54パーセントに増えました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did researchers find about the honey badger story in 1990?
based mostly on hearsay, with very few reliable observations とあるので D。
Q2. How much did the chance of finding a nest increase?
巣を見つける確率は from about 17 percent to about 54 percent とあるので B。33→66%は案内される確率。
Q3. What does the passage suggest about the honeyguide and humans?
the bird's partnership with humans is real とあり、実験でも確かめられているので A。
Honey hunters in Mozambique use a special call when they want a bird to lead them to a bees' nest. In 2016, Claire Spottiswoode's team tested how well it works. The Yao hunters' call doubled the probability that a honeyguide would guide them and roughly tripled their chance of finding a nest. The signaling is reciprocal, from bird to human and from human to bird. Earlier, in 1989, researchers working with Boran honey gatherers in Kenya had confirmed that the hunters' claims about reading the bird's flight and calls were accurate.
Then, in 2023, Spottiswoode and Brian Wood showed that honeyguides in Tanzania and in Mozambique each respond more strongly to the local human signal. The birds appear to learn a regional human dialect, although no one has directly observed that learning. The honeyguide's other famous partner is on much weaker ground. Images of the bird leading a fearless honey badger to a hive are widely shared online.
But in 1990, ornithologists reviewing the literature concluded that most reports were anecdotes or second-hand accounts. That does not prove badger guiding never happens. Some have noticed an awkward detail, though: badgers are often nocturnal, and honeyguides are active by day.
199 words ・ CEFR B2
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モザンビークのはちみつ採りは、鳥にハチの巣まで案内してもらいたいとき、特別な呼び声を使います。2016年、クレア・スポッティスウッドさんのチームは、その効き目を調べました。ヤオ族のはちみつ採りの呼び声によって、ミツオシエに案内してもらえる確率は2倍になり、巣を見つける確率はおよそ3倍になりました。合図は双方向で、鳥から人へ、人から鳥へと送られます。それより前の1989年には、ケニアのボラン族のはちみつ採りと調査した研究者たちが、鳥の飛び方や鳴き声を読み取れるという彼らの主張が正確であることを確かめていました。そして2023年、スポッティスウッドさんとブライアン・ウッドさんは、タンザニアとモザンビークのミツオシエがそれぞれ地元の人間の合図により強く反応することを示しました。
鳥は地域ごとの人間の「方言」を学んでいるようです。ただし、その学習の様子を直接観察した人はいません。ミツオシエのもう1つの有名な相棒の話は、ずっと根拠が弱いものです。この鳥が怖いもの知らずのラーテルをハチの巣へ案内する画像は、ネットで広く共有されています。しかし1990年、文献を見直した鳥類学者たちは、報告の多くが逸話か又聞きだったと結論づけました。
だからといって、ラーテルの案内が決して起こらないと証明されたわけではありません。ただ、気になる点を指摘する人もいます。ラーテルは夜行性であることが多いのに、ミツオシエは昼に活動するのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main contrast in the passage?
人間との協力は1989年・2016年・2023年の研究で裏づけられている一方、ラーテルとの話は on much weaker ground とされているので B。
Q2. What did the 2023 study find?
honeyguides in Tanzania and in Mozambique each respond more strongly to the local human signal とあるので D。
Q3. Why does the writer say the 1990 review does not prove that badger guiding never happens?
That does not prove badger guiding never happens. とあり、信頼できる記録がないことと、起こらないと証明されたことは別だという論理なので C。
重要単語
- mutualismC1名詞相利共生The honeyguide and humans have a mutualism.
mutual(相互の)+-ism。mutual understanding「相互理解」も頻出。 - guideA2動詞・名詞案内する、案内人The bird guides people to the bees' nest.
guide A to B「AをBへ案内する」。lead A to B とほぼ同じ形で使える。 - beeswaxC1名詞蜜ろうHoneyguides eat beeswax left behind by people.
bee's + wax(ろう)。ろうそくやリップクリームの原料にもなる。 - anecdoteC1名詞逸話、うわさ話The honey badger story is based mainly on anecdotes.
形容詞 anecdotal evidence は「体験談レベルの証拠」。科学的証拠と対比される。 - signalB1名詞・動詞合図(する)Hunters use a special signal to call the bird.
sign(しるし)の仲間。reciprocal signaling は「双方向の合図」。 - reciprocalC1形容詞相互の、互恵的なThe study showed reciprocal signaling between birds and people.
re-(戻る)+pro-(前へ)が語源で「行ったり来たり」。reciprocal relationship「持ちつ持たれつの関係」。
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アフリカのミツオシエという鳥は、人間をハチの巣まで道案内するらしい。決まった合図の声を出すと、案内される確率が約33%→66%に倍増。地域ごとの「方言」の合図まで聞き分ける。有名な「ラーテルを案内する」話は証拠が薄い。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Isack & Reyer (1989) Honeyguides and Honey Gatherers: Interspecific Communication in a Symbiotic Relationship, Sciencedoi.org
- Dean, Siegfried & Macdonald (1990) The Fallacy, Fact, and Fate of Guiding Behavior in the Greater Honeyguide, Conservation Biologydoi.org
- Spottiswoode, Begg & Begg (2016) Reciprocal signaling in honeyguide-human mutualism, Sciencedoi.org
- Spottiswoode & Wood (2023) Culturally determined interspecies communication between humans and honeyguides, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












