ニシオンデンザメは400歳? 目のレンズを“タイムカプセル”にして年齢を測った研究

読む前に予想してみよう!
ニシオンデンザメの年齢は、背骨の「年輪」を数えて推定された
年輪のような成長線が数えにくいため、目のレンズの中心部を放射性炭素で年代測定した。
- 対象
- ニシオンデンザメのメス
- 規模
- 28匹(体長81〜502cm)
- 研究の種類
- 眼の水晶体の放射性炭素年代測定
- 確かさ
- ★★★☆☆
目のレンズの中心を放射性炭素で調べると、最大のメスは推定392歳。ただし誤差は±120年で「400歳確定」ではない。少なくとも272年は生きるとみられる。
ひとことで言うと北の海のサメは、なんと何百年も生きているらしい!
結論から言うと、ニシオンデンザメが「400歳近くまで生きる」可能性は高いものの、「400歳」とぴったり確定したわけではありません。 2016年の研究で、調べた中で最大のメスは推定392歳(誤差±120年)。幅をとっても少なくとも272歳とされ、脊椎動物で最も長生きと考えられています。
では、魚の年齢をどうやって何百年分も測ったのか。カギは、なんと目のレンズでした。
01ニシオンデンザメとは? 北極の海の「のんびり屋」
ニシオンデンザメは、北大西洋から北極海の冷たく暗い海にすむ大型のサメです。体長は5mを超えることもあり、泳ぎはとてもゆっくり。成長も非常に遅いことが知られていました。
ふつう、サメの年齢は背骨にできる「年輪」のような成長線を数えて調べます。ところがニシオンデンザメの体は骨がやわらかく、数えられる成長線がありません。何年生きているのか、長いあいだ謎だったのです。
02目のレンズは「生まれた年のタイムカプセル」
目のレンズの中心部は、お母さんのおなかの中にいるころに作られ、その後は一生入れ替わりません。つまり、生まれたときの炭素がそのまま閉じこめられた「タイムカプセル」なのです。
さらに研究チームは、1950〜60年代の核実験で大気中の放射性炭素が急増した「爆弾パルス」を時計として使いました。この印が見つかったのは体長220cm以下の小さなサメだけ。そこから「どのくらいの大きさなら何歳か」という成長の物差しを作り、大きな個体の年齢をさかのぼって推定したのです。

03なぜそんなに長生き? ゲノムに残るヒント
長寿の理由を探るため、最近はゲノム(全遺伝情報)の解読も進んでいます。2024年に公開された査読前の論文では、ゲノムの大きさは約65億塩基対と、ヒトの約2倍。DNAの傷を直す遺伝子が多く重複していることや、がんを防ぐタンパク質p53に独特の変化があることが報告されました。
2026年に『PNAS』誌に載った東京大学などの研究チームの解析でも、免疫の強化・がんへの抵抗性・DNA修復に関わる遺伝子に特徴が見つかっています。
さらに2026年の研究では、100年以上生きた個体の網膜に明らかな変性(劣化)の兆候は見られなかったと報告されました。暗い深海に合わせた視覚を、100年を超えても保っているようです。
04どんでん返し:「代謝が特別に低い」わけではなかった?
「冷たい海でじっとしているから長生き」と思いたくなります。ところが2020年、カナダの北極圏で実際の代謝(エネルギーの使い方)を測った研究では、確かに低い値ではあるものの、体の大きさと水温から予想される範囲内でした。ほかのサメと比べて飛びぬけて特別、とは言えなかったのです。
つまり長寿の秘密は「冷たさ」だけでは説明しきれず、遺伝子の働きなど複数の要因が重なっていると考えられます。ただし、ゲノムで見つかった特徴が本当に寿命を延ばしているのかは、まだ実験で確かめられていません。
05まとめ
ニシオンデンザメの「400歳」は、目のレンズという意外なタイムカプセルから読み取られた、誤差つきの推定値です。それでも少なくとも約270年。江戸時代に生まれたサメが、今も北極の海を泳いでいるかもしれません。
ほかの長生き生物についてはピラミッドより年上の木が、今もアメリカの山で生きている。地球の長寿ランキングもどうぞ。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Greenland shark lives in the cold, dark waters of the North Atlantic and the Arctic Ocean, where it…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
The Greenland shark lives in the cold, dark Arctic sea. It swims and grows very slowly. Scientists wanted to know its age, but its soft bones have no lines to count.
So they looked at the center of its eye lens. This part forms before birth and never changes. The biggest shark was about 392 years old. This number is not exact, but the shark lived at least 272 years.
70 words ・ CEFR A2
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ニシオンデンザメは、冷たく暗い北極の海にすんでいます。泳ぐのも育つのもとてもゆっくりです。科学者たちはその年齢を知りたいと思いましたが、やわらかい骨には数えられる線がありません。
そこで、目のレンズの中心を調べました。この部分は生まれる前にでき、その後ずっと変わりません。いちばん大きなサメは約392歳でした。この数字は正確ではありませんが、そのサメは少なくとも272年は生きていました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
とても長生きなサメの年齢を科学者がどう調べたかが全体のテーマなので B が正解。
Q2. Which part of the shark did the scientists study?
So they looked at the center of its eye lens. とあるので D。骨には数えられる線がなかった。
Q3. In the passage, "exact" means ...
exact は「正確な」。not exact なので「ぴったり正しいわけではない」という意味になり、A が正解。
The Greenland shark lives in the cold, dark waters of the North Atlantic and the Arctic Ocean, where it swims and grows very slowly. Scientists usually count growth lines in a shark's backbone to find its age, but this species has soft bones without such lines. In 2016, a research team used radiocarbon dating on the eye lenses of 28 female sharks.
The center of the lens forms before birth and never changes, so it works like a time capsule. The largest shark, which was about five meters long, was estimated to be 392 years old, with a margin of error of 120 years. The team also suggested that these sharks may need more than 150 years to become adults.
120 words ・ CEFR B1
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ニシオンデンザメは北大西洋と北極海の冷たく暗い海にすみ、そこでとてもゆっくり泳ぎ、ゆっくり成長します。科学者はふつう、サメの背骨の成長線を数えて年齢を調べますが、この種の骨はやわらかく、そのような線がありません。2016年、ある研究チームはメスのサメ28匹の目のレンズに放射性炭素年代測定を用いました。
レンズの中心は生まれる前にでき、その後まったく変わらないため、タイムカプセルのような役割を果たします。体長約5メートルの最大のサメは392歳と推定され、誤差は120年でした。チームはまた、このサメが大人になるまでに150年以上かかるかもしれないと示しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
目のレンズを使った放射性炭素年代測定で、長寿のサメの年齢を推定した話なので C。
Q2. Which sharks were studied in 2016?
used radiocarbon dating on the eye lenses of 28 female sharks とあるので A。392 は年齢、120 は誤差の数字。
Q3. What can we infer from the phrase "a margin of error of 120 years"?
誤差120年とは、実際の年齢が392歳から大きく上下しうるということ。よって D。C は誤差の意味と矛盾する。
The Greenland shark, a slow-moving giant of the North Atlantic and the Arctic, has a soft skeleton with no growth bands to count. So for a long time nobody could tell its age. In 2016, researchers turned to the core of the eye lens, which forms before birth and stays unchanged for life, and dated it with radiocarbon.
Nuclear bomb tests in the 1950s and 1960s had caused a spike in atmospheric radiocarbon, and the team used that spike as a time marker to build a model linking body length to age. The largest of the 28 females they examined came out at 392 years. The margin of error was 120 years either way, though, so the safer claim is a minimum of about 272 years.
Even that would make it the longest-lived vertebrate known. Genome studies have since pointed to unusual features in genes for DNA repair, immunity and cancer resistance, but no experiment has tested whether these traits extend its life. A 2020 study measured the sharks' metabolic rate and found it low, but within the range expected for an animal of their size in such cold water. So cold alone does not explain their long lives.
199 words ・ CEFR B2
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北大西洋と北極海をゆっくり泳ぐ巨体のニシオンデンザメは、やわらかい骨格をもち、数えられる成長帯がありません。そのため長いあいだ、その年齢は誰にもわかりませんでした。2016年、研究者たちは、生まれる前にでき一生変わらない目のレンズの中心部に目をつけ、そこを放射性炭素で年代測定しました。
1950〜60年代の核実験によって大気中の放射性炭素は急増しており、研究チームはその急増を時間の目印として使い、体長と年齢を結びつけるモデルを作りました。調べたメス28匹のうち最大の個体は、392歳という結果になりました。ただし誤差は前後120年あったため、「少なくとも約272歳」と言うほうが安全です。
それでも、知られている中で最も長生きする脊椎動物ということになります。その後のゲノム研究は、DNA修復、免疫、がんへの抵抗性に関わる遺伝子の珍しい特徴を指摘していますが、こうした特徴が寿命を延ばしているのかを確かめた実験はありません。2020年の研究では、このサメの代謝率を測ったところ、低くはあるものの、これほど冷たい水にすむこの大きさの動物として予想される範囲内でした。つまり、冷たさだけでは長寿を説明できないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
前半で年齢推定の方法、後半でゲノムや代謝など長寿の理由の候補を述べているので D。C は本文の結論と逆。
Q2. What role did the nuclear bomb tests play in the study?
the team used that spike as a time marker to build a model linking body length to age とあるので B。
Q3. What does the 2020 metabolism study suggest?
代謝は予想の範囲内で、So cold alone does not explain their long lives. とあるので C。遺伝子の効果は実験で確かめられていないので B は誤り。
重要単語
- longevityC1名詞長寿、寿命の長さThe Greenland shark is famous for its longevity.
long(長い)+ラテン語 aevum(時代・寿命)。life expectancy(平均寿命)とセットで覚えると長文で強い。 - radiocarbon datingC1名詞(句)放射性炭素年代測定Radiocarbon dating can estimate the age of old materials.
date には動詞で「年代を特定する」の意味がある。carbon-14 dating とも言う。考古学の長文で頻出。 - eye lensB1名詞(句)目の水晶体(レンズ)The center of the eye lens forms before birth.
lens の複数形は lenses。retina(網膜)、pupil(瞳孔)も一緒に覚えたい目の部位。 - vertebrateC1名詞脊椎動物Sharks, birds, and humans are all vertebrates.
vertebra(脊椎骨)から。反対語は invertebrate(無脊椎動物)。in- が「否定」を表す。 - sexual maturityC1名詞(句)性成熟(子どもを産める大人になること)This shark may reach sexual maturity after 150 years.
reach sexual maturity「性成熟に達する」が定番の形。mature(成熟した)の名詞形 maturity。 - margin of errorB2名詞(句)誤差の幅The estimate has a large margin of error.
margin は「余白・ふち」。数字の前後にある“ゆとり”のイメージ。世論調査の記事でも頻出。
公式・一次情報をチェック
- 論文全文:Fogg et al. 2026 ニシオンデンザメの視覚(NIH PubMed Central)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
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北極の海にすむニシオンデンザメ。目のレンズの中心を放射性炭素で調べたら、体長5mのメスは推定392歳だった。誤差は±120年あるけど、少なくとも272歳。大人になるまで150年以上かかるらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Nielsen et al. (2016) Eye lens radiocarbon reveals centuries of longevity in the Greenland shark (Somniosus microcephalus), Sciencedoi.org
- Yang et al. (2026) The Greenland shark genome: Insights into lifespan extremes and population dynamics, PNASdoi.org
- Sahm et al. (2024) The Greenland shark (Somniosus microcephalus) genome provides insights into extreme longevity, bioRxiv(査読前)doi.org
- Fogg et al. (2026) The visual system of the longest-living vertebrate, the Greenland shark, Nature Communicationsdoi.org
- Ste-Marie et al. (2020) A first look at the metabolic rate of Greenland sharks (Somniosus microcephalus) in the Canadian Arctic, Scientific Reportsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











