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茶トラ猫の毛色の謎、ついに解明。犯人はDNAの小さな「欠け」だった

茶トラ猫の毛色の謎、ついに解明。犯人はDNAの小さな「欠け」だった

読む前に予想してみよう!

茶トラ猫のオレンジ色の遺伝子は、他の哺乳類と同じ毛色遺伝子で説明できた

研究カード(どんな研究?)
対象
家ネコ(茶トラ・サビ・ミケなど)
規模
多数の猫のゲノム・DNA試料
研究の種類
遺伝学的解析+皮膚組織の遺伝子発現解析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

茶トラ猫やミケ猫のオレンジ色は、X染色体上のARHGAP36という遺伝子の領域にある約5千塩基の「欠け」が原因だった。日米の2チームが同時に発表。

ひとことで言うと茶トラの毛の色は、遺伝子の小さな「欠け」で決まっていた!

もくじ
  1. 犯人は、遺伝子の中の「5000文字の欠け」
  2. 黒い色素を作る指令が弱まる
  3. 茶トラにオスが多く、ミケにメスが多い理由
  4. まとめ

ふわふわのオレンジ色の毛並み。茶トラ猫は、世界中で愛されている猫のひとつです。

でも、なぜ茶トラ猫はオレンジ色なのか、その原因となる遺伝子は、なんと長い間わかっていませんでした。オレンジ色を決める遺伝子が「X染色体の上にある」ことは古くから知られていたのに、肝心の正体がつかめなかったのです。

2025年5月、ついにその謎が解けました。しかも、アメリカと日本の2つのチームが、同じ日に同じ答えを発表したのです。

01犯人は、遺伝子の中の「5000文字の欠け」

スタンフォードのチームは、オレンジ色の毛が生える皮膚の細胞では、ARHGAP36という遺伝子がほかの色の毛の部分よりもずっと活発に働いていることを発見しました。ふつうの猫の色素細胞では、この遺伝子はほとんど働いていません。DNAの一部が欠けたことで、遺伝子の働きを調節する部分が変わり、色素細胞で遺伝子が「オン」になってしまうと考えられています。

02黒い色素を作る指令が弱まる

毛の色は、メラニンという色素で決まります。メラニンには大きく分けて、

  • 黒〜茶色のメラニン(ユーメラニン)
  • 黄〜オレンジのメラニン(フェオメラニン)

の2種類があります。

研究によると、ARHGAP36が色素を作る細胞で働きすぎると、黒っぽいメラニンを作る遺伝子たちの働きが弱まり、代わりにオレンジ系のメラニンが作られやすくなるようです。

黒い色素の「蛇口」が閉まり、オレンジ色が多く流れ出す
黒い色素の「蛇口」が閉まり、オレンジ色が多く流れ出す

03茶トラにオスが多く、ミケにメスが多い理由

この遺伝子がX染色体にあることが、猫の毛色の有名な「性別の偏り」を説明します。

  • オスはX染色体を1本しか持たないので、そこにオレンジの変異があれば全身オレンジ系(茶トラ)になりやすい
  • メスはX染色体を2本持ち、細胞ごとにどちらか1本がランダムにオフになる。そのため、片方のX染色体だけにオレンジの変異を持つメスは、オレンジの部分と黒の部分がまだらに混ざるサビ猫やミケ猫になる

ミケ猫がほぼメスばかりなのは、このしくみのため。今回の研究で、その主役の遺伝子が、ついに特定されたわけです。

この「欠け」は、世界の多くのオレンジ色の猫に共通して見られ、研究チームは、オレンジ色の起源は1回だけだった可能性を指摘しています。

04まとめ

身近な猫の毛色にも、つい最近まで解けなかった謎が隠れていました。

そして、そのナゾ解きに日本のチームも大きく貢献していたのは、ちょっとうれしいポイント。今度茶トラ猫を見かけたら、「DNAの小さな欠けがキミの色を作ってるんだね」と心の中で話しかけてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerScientists have long known that the gene for orange fur in cats is on the X chromosome, but they could not… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Scientists have long known that the gene for orange fur in cats is on the X chromosome, but they could not identify it. In May 2025, a team at Stanford University and a team at Kyushu University solved this mystery at the same time. Both found that orange cats lack about 5,000 letters of DNA in the region of a gene called ARHGAP36.

Because of this missing piece, the gene becomes active in pigment cells, and the cells make less dark pigment and more orange pigment. This also explains why orange cats are often male. Males have only one X chromosome, while females have two, so females with one orange copy often have patches of orange and black, like calico cats.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

猫のオレンジ色の毛の遺伝子がX染色体の上にあることは昔から知られていましたが、科学者たちはそれを特定できずにいました。2025年5月、スタンフォード大学のチームと九州大学のチームが、同時にこの謎を解きました。どちらのチームも、オレンジ色の猫ではARHGAP36という遺伝子の領域でDNAが約5000文字分欠けていることを見つけたのです。

この欠けた部分のせいで、その遺伝子が色素細胞で活発に働き、細胞は黒っぽい色素を少なく、オレンジ色の色素を多く作るようになります。これは、茶トラ猫にオスが多い理由も説明します。オスはX染色体を1本しか持たず、メスは2本持っているため、オレンジの遺伝子を1つ持つメスは、ミケ猫のようにオレンジと黒のまだら模様になることが多いのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What mystery did the two teams solve?

Q2. What happens because of the missing piece of DNA?

Q3. Why are cats with patches of orange and black, like calico cats, usually female?

重要単語

  • deletionC1
    名詞(DNAの)欠失、削除A small deletion in the DNA changed the fur color. delete(削除する)の名詞形。パソコンの Delete キーと同じ語。
  • pigmentB2
    名詞色素Melanin is the pigment that colors our hair. pigmentation(色素沈着)も一緒に。絵の具の「顔料」の意味でも使う。
  • chromosomeB2
    名詞染色体Female cats have two X chromosomes. chromo-(色)+some(体)。染色すると色がつくことから。発音は /ˈkroʊməsoʊm/(クロモソウム)。
  • mutationB2
    名詞突然変異The mutation appears only in domestic cats. mutate(変異する)の名詞形。ミュータント(mutant)と同じ語源。
  • inheritB2
    動詞(遺伝的に)受け継ぐKittens inherit coat colors from their parents. inherit A from B「B から A を受け継ぐ」。財産の「相続する」の意味も。名詞は inheritance。
  • independentB2
    形容詞独立した、別々のTwo independent teams reached the same answer. 研究では「別々に行われた」の意味。独立した研究が同じ結論に達すると、結果の信頼性が高まる。
茶トラ猫のオレンジ色、実は何十年も原因の遺伝子が分かっていなかったらしい。2025年、アメリカと日本の2チームが同時に、X染色体の遺伝子ARHGAP36の領域にある約5000文字分のDNAの「欠け」が犯人だと突き止めた。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Kaelin et al. (2025) Molecular and genetic characterization of sex-linked orange coat color in the domestic cat, Current Biologydoi.org
  2. Toh et al. (2025) A deletion at the X-linked ARHGAP36 gene locus is associated with the orange coloration of tortoiseshell and calico cats, Current Biologydoi.org
  3. Lyon (1961) Gene Action in the X-chromosome of the Mouse (Mus musculus L.), Naturedoi.org