ウソ?ホント?検証ウソ

「静脈の血は青い」はウソ。血はずっと赤いのに、血管が青く見える"光と脳のトリック"

「静脈の血は青い」はウソ。血はずっと赤いのに、血管が青く見える"光と脳のトリック"

読む前に予想してみよう!

体の中を流れる静脈の血は青く、空気にふれると赤くなる

研究カード(どんな研究?)
対象
人の皮膚・血管モデル
規模
測定とコンピューター計算
研究の種類
光学実験・シミュレーション
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

人の血は酸素が少なくても暗い赤色で、青くはならない。皮膚ごしに血管が青く見えるのは、肌の中での光の吸収・散乱と、まわりの肌色と比べる脳の働きのせい。

ひとことで言うと血はいつも赤。青く見えるのは光と脳のしわざ!

もくじ
  1. 血の色を決めるのはヘモグロビン
  2. では、なぜ血管は青く見えるの?
  3. 最後の仕上げは「脳」だった
  4. 本当に「青い血」を持つ生き物もいる
  5. なぜ「静脈の血は青い」が広まったのか
  6. まとめ

「静脈の血は本当は青いんだよ。ケガをして空気にふれると、赤くなるんだって」

小学校のころ、こんな話を聞いたことはありませんか。手首の内側を見ると、たしかに血管は青っぽく見えます。教科書の血管の図でも、静脈は青、動脈は赤で描かれていることが多いですよね。

でも、これはウソです。人間の血は、体の中でも外でも、いつも赤いのです。

01血の色を決めるのはヘモグロビン

血が赤いのは、赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質のおかげです。ヘモグロビンは鉄を含んでいて、肺で酸素と結びつき、全身に運びます。

  • 酸素とたくさん結びついたヘモグロビン(動脈の血):明るい赤
  • 酸素を手放したヘモグロビン(静脈の血):暗い赤(えんじ色に近い)

色の濃さは変わりますが、青くなることはありません。病院で採血するとき、注射器に入る静脈の血も、暗い赤色をしています。空気にふれる前の、血管の中の血そのものです。

血液がどの色の光をどれだけ吸収するかは、医療用の光の研究でくわしく測られています(ボスハールトらの2014年のまとめなど)。血は青や緑の光を強く吸収し、赤い光はあまり吸収しないので、赤く見えるのです。

02では、なぜ血管は青く見えるの?

かんたんに言うと、こんな仕組みです。

  1. 赤い光は皮膚の奥まで届きやすい。深いところにある静脈まで届いた赤い光は、血に吸収されて戻ってきにくくなる
  2. 青い光は皮膚の浅いところで散乱されて戻ってくるので、血管の上でも、まわりの肌とあまり変わらない
  3. その結果、血管の上だけ「赤い光が少し足りない」状態になる
赤い光は奥まで届いて血に吸われ、青い光は浅い所で返ってくる
赤い光は奥まで届いて血に吸われ、青い光は浅い所で返ってくる

03最後の仕上げは「脳」だった

ただし、血管の上で返ってくる光は、実はそれほど青いわけではありません。ここで効いてくるのが、脳の色の感じ方です。

私たちの脳は、色を「まわりとの比較」で判断します。血管の上はまわりの肌色より赤みが少ないので、脳はそれを「青っぽい」と感じてしまうのです。同じ灰色でも、周りの色によって違う色に見える錯視と同じ仲間です。

04本当に「青い血」を持つ生き物もいる

ちなみに、世の中には本当に青い血を持つ生き物もいます。タコやイカ、カブトガニなどは、鉄ではなく銅を含む「ヘモシアニン」で酸素を運び、その血は酸素と結びつくと青くなります(コーツとデッカーの2017年の総説)。

人間の血が「本当は青い」というのは誤解ですが、青い血の世界も、ちゃんと地球上にあるのです。

05なぜ「静脈の血は青い」が広まったのか

  • 皮膚ごしに見える血管が、実際に青っぽく見える
  • 教科書や図鑑で、静脈を青く塗り分けて描くことが多い
  • 「酸素にふれると色が変わる」という話が、理科っぽくて納得しやすい

目で見た印象と、図の色分けが合わさって、もっともらしい説明が生まれてしまったのです。

06まとめ

  • 人の血は、酸素が少ない静脈の血でも暗い赤色
  • 血管が青く見えるのは、赤い光が奥で血に吸われることと、まわりの肌と比べる脳の働きのせい
  • タコやカブトガニなど、本当に青い血を持つ生き物もいる

判定は「ウソ」。青く見えるのは血ではなく、光と脳が作り出した"色"でした。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBlood in the veins is often thought to be blue and to turn red only when it meets air. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Blood in the veins is often thought to be blue and to turn red only when it meets air. In fact, human blood is always red. Hemoglobin, an iron-containing protein in red blood cells, is bright red when it carries a lot of oxygen and dark red when it carries less. Even the blood taken from a vein at a hospital is dark red.

In 1996, researchers studied why veins still look blue. They found that red light travels deep into the skin and is absorbed by the blood in the veins, while blue light is scattered back near the surface. Our brain then compares the vein with the surrounding skin and sees it as bluish.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

静脈の血は青く、空気にふれたときにだけ赤くなるとよく考えられています。実際には、人間の血はいつも赤いのです。赤血球の中にある鉄を含むタンパク質のヘモグロビンは、酸素をたくさん運んでいるときは明るい赤、少ないときは暗い赤になります。病院で静脈から採った血でさえ、暗い赤色です。

1996年、研究者たちは、それでも静脈が青く見える理由を調べました。その結果、赤い光は皮膚の奥まで進んで静脈の血に吸収される一方、青い光は表面近くで散乱されて戻ってくることがわかりました。そして脳が血管をまわりの皮膚と比べることで、青っぽく見えるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What happens to red light in the skin?

Q3. Why does the writer mention blood taken from a vein at a hospital?

重要単語

  • veinB2
    名詞静脈You can see the veins on the back of your hand. 反対は artery(動脈)。in the same vein は「同じ調子で」という比喩表現。
  • hemoglobinC1
    名詞ヘモグロビンHemoglobin carries oxygen in the blood. hemo-(血)+globin(たんぱく質)。英国つづりは haemoglobin。
  • absorbB2
    動詞吸収するBlood absorbs green and blue light strongly. be absorbed in ~ は「~に夢中になる」。名詞 absorption。
  • perceptionC1
    名詞知覚Color perception depends on the surroundings. 動詞 perceive。visual perception(視覚)など心理学の長文で頻出。
  • reflectB1
    動詞反射するSkin reflects more red light than blue light. 「反映する」「よく考える(reflect on)」の意味もある多義語。
  • penetrateC1
    動詞入りこむ、貫通するRed light penetrates deep into the skin. 名詞 penetration。市場への「浸透」にも使う(market penetration)。

4コマでわかる

「静脈の血は青い」はウソ。血はずっと赤いのに、血管が青く見える"光と脳のトリック"の4コマ漫画
「静脈の血は青くて、空気にふれると赤くなる」はウソ。人の血は酸素が少なくても暗い赤。腕の血管が青く見えるのは、赤い光が肌の奥まで入って血に吸われることと、まわりの肌色と比べる脳のクセのせいらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Kienle et al. (1996) Why do veins appear blue? A new look at an old question, Applied Opticsdoi.org
  2. Bosschaart et al. (2014) A literature review and novel theoretical approach on the optical properties of whole blood, Lasers in Medical Sciencedoi.org
  3. Coates & Decker (2017) Immunological properties of oxygen-transport proteins: hemoglobin, hemocyanin and hemerythrin, Cellular and Molecular Life Sciencesdoi.org