「クマに会ったら死んだふり」は半分だけ正解。"ふり"ではなく"急所を守る姿勢"だった

読む前に予想してみよう!
クマに出会ったら、すぐに地面に寝転んで死んだふりをするのが正しい
まずは落ち着いてゆっくり離れる。うつ伏せの防御姿勢は、襲われたときの最後の手段。
- 対象
- クマによる人身事故・撃退スプレー使用例
- 規模
- 死亡事故59件+スプレー使用83件
- 研究の種類
- 事例の分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
出会ってすぐ寝転ぶのは逆効果。まずは落ち着いてゆっくり離れる。襲われたときの最後の手段として、うつ伏せで首と頭を守る姿勢が勧められている。
ひとことで言うと会ってすぐ死んだふりはダメ。最後の手段は「首を守る」!
「クマに出会ったら、死んだふりをしなさい」
昔から日本でよく言われてきたアドバイスです。そのルーツの一つとして、イソップ物語の「熊と旅人」がよく挙げられます。旅人が地面に倒れて息をひそめると、クマはにおいをかいで去っていった――という話です。
では、現実のクマにも「死んだふり」は効くのでしょうか。調べてみると、答えは「半分だけ正解。ただし、使う場面と目的がまったく違う」でした。
01出会ってすぐ寝転ぶのは、おすすめされていない
まず大事なのは、クマを見つけた瞬間に寝転ぶのは正解ではないということです。
環境省と文部科学省が作った、子どもの安全のための保護者向けリーフレットでは、クマに出会ったときは、
- クマを見ながら、あわてず、ゆっくりその場を離れる
- 背中を見せて走らない(追いかけられることがある)
- 大声を出してクマを刺激しない
といった行動が勧められています。クマは時速40〜60kmほどで走れるとされ、人が走って逃げ切れる相手ではありません。
02最後の手段は「うつ伏せで首を守る」
それでもクマが向かってきて、襲われそうになったら。ここで登場するのが、「死んだふり」に似た姿勢です。

つまり、この姿勢の目的は「死んだと思わせてだます」ことではなく、顔や首、おなかといった急所を守ることなのです。リュックを背負ったままなら、背中の守りにもなります。
03「死んだふり」が逆効果になる場面
ところが、どんな場合でもこの姿勢が正解とは限りません。
カナダ・カルガリー大学のヘレロらは2011年、北米のアメリカクロクマによる死亡事故59件(死者63人)を分析しました。すると、状況を判断できた56件のうち49件(約9割)で、クマは人を"獲物"として襲っていたと判断されました。その多くはオスの単独のクマでした。
人を食べ物として狙っているクマに対して、じっと動かずにいるのは危険です。米国国立公園局も、アメリカクロクマに襲われたときは死んだふりをせず、逃げ場がなければ反撃するよう勧めています。クマの種類を問わず、テントの中で襲われたときや、つけ回されたあとに襲われたときは「死んだふりをせず、反撃を」としています。
04本当に頼りになるのは「準備」
アラスカで1985〜2006年に起きた、クマ撃退スプレーの使用例83件を分析した2008年の研究では、スプレーはヒグマの望ましくない行動を92%、クロクマでは90%止め、スプレーを持っていた人の98%が、近距離で遭遇してもけがをしなかったと報告されています。
もっとも効果的なのは、そもそも出会わないこと。鈴やラジオ、話し声で人の存在を知らせ、出没情報を確認することが基本です。
05まとめ
- クマを見てすぐに死んだふりをするのは勧められていない
- まずは背中を見せずにゆっくり離れる
- 襲われたときの最後の手段として、うつ伏せで首と後頭部を守る姿勢がある
- 獲物として狙われた場合など、じっとしていると危険な場面もある
判定は「ビミョー」。昔話の「死んだふり」は、現代では"急所を守る防御姿勢"として生き残っていました。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany Japanese people grew up hearing that you should play dead if you meet a bear.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japan, people often say, "If you meet a bear, play dead." But experts say you should not lie down right away.
First, stay calm and move away slowly. Do not turn your back or run, because bears can run very fast. If a bear attacks you, lie face down and cover the back of your head and neck with your arms. This protects the most important parts of your body.
71 words ・ CEFR A2
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日本ではよく「クマに会ったら死んだふりをしなさい」と言われます。しかし専門家は、すぐに寝転ぶべきではないと言います。
まずは落ち着いて、ゆっくりその場を離れましょう。クマはとても速く走れるので、背中を見せたり走ったりしてはいけません。クマに襲われたら、うつ伏せになり、両腕で後頭部と首を覆ってください。こうすると、体のいちばん大切な部分を守ることができます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
クマに会ったときにとるべき行動を順に説明しているので B。
Q2. What should you do first when you meet a bear?
First, stay calm and move away slowly. とあるので D。すぐに寝転ぶのは勧められていない。
Q3. In this passage, "protects" means ...
protect は「守る」。腕で頭と首を覆って大切な部分を守る、という文脈なので A。
Many Japanese people grew up hearing that you should play dead if you meet a bear. However, Japan's Ministry of the Environment says that lying down as soon as you see a bear is not the right first step.
Instead, you should watch the bear and move away slowly without turning your back or running. Only as a last resort, when a bear actually attacks, should you lie face down and cover the back of your head with your arms. The purpose is not to trick the bear but to protect your face, neck, and stomach. Experts also say the best plan is to avoid meeting bears at all, for example by wearing a bell so that bears know people are near.
122 words ・ CEFR B1
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多くの日本人は、クマに会ったら死んだふりをするべきだと聞いて育ちました。しかし環境省は、クマを見てすぐに寝転ぶのは正しい最初の行動ではないとしています。
そうではなく、クマを見ながら、背中を見せたり走ったりせずにゆっくり離れるべきです。クマが実際に襲ってきたときの最後の手段としてのみ、うつ伏せになって両腕で後頭部を覆います。その目的はクマをだますことではなく、顔や首、おなかを守ることです。専門家はまた、いちばん良いのはそもそもクマに出会わないことだとし、たとえば鈴をつけて人が近くにいることをクマに知らせる方法を挙げています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
Only as a last resort と The purpose is not to trick the bear but to protect ... が要点なので C。
Q2. According to the passage, what should you do with your arms if a bear attacks?
lie face down and cover the back of your head with your arms とあるので B。
Q3. Why do experts suggest wearing a bell in bear areas?
the best plan is to avoid meeting bears ... so that bears know people are near とあり、出会いを避けるためなので B。
In Japan, children often learn that if they meet a bear, they should lie down and play dead. Official advice today is more careful. Japan's Ministry of the Environment tells people who encounter a bear to stay calm, watch the animal and back away slowly without turning around. Running is pointless, since bears are far faster. Lying face down with both arms covering the back of the head and neck is meant only as a last resort, once an attack has begun.
Its purpose is to shield vital areas. It is not a trick. In some situations the posture may even be dangerous. A 2011 analysis of 59 fatal attacks by American black bears in North America found that, in 49 of the 56 cases that could be judged, the bear seemed to be treating the person as prey.
Against a bear that is hunting, lying still could cost a life, and U.S. park authorities advise fighting back. That study looked at a different species from Japan's Asiatic black bear, so its numbers may not carry over directly. The most reliable strategy starts long before a bear appears: making noise on the trail so that bears know people are coming.
200 words ・ CEFR B2
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日本では、クマに会ったら寝転んで死んだふりをしなさい、と子どものころに教わることがよくあります。今の公式の助言は、もっと慎重です。環境省は、クマに遭遇したら落ち着いて、クマから目を離さず、背中を見せずにゆっくり後退するよう呼びかけています。クマは人間よりはるかに速いので、走って逃げても意味がありません。うつ伏せになり両腕で後頭部と首を覆う姿勢は、襲われ始めたときの最後の手段にすぎません。
その目的は急所を守ることです。クマをだます作戦ではないのです。場面によっては、この姿勢が危険になることさえあります。北米のアメリカクロクマによる死亡事故59件を分析した2011年の研究では、判断が可能だった56件のうち49件で、クマは人を獲物として扱っていたとみられました。狩りをしているクマの前でじっとしていると命を落としかねず、米国の国立公園当局は反撃するよう勧めています。
この研究は日本のツキノワグマとは別の種を調べたものなので、その数字がそのまま当てはまるとは限りません。最も確実な対策は、クマが現れるずっと前から始まっています。歩きながら音を立てて、人が来ていることをクマに知らせることです。
4択リーディングクイズ
Q1. Which best summarizes the author's view?
うつ伏せの姿勢は最後の手段で危険な場面もあり、最後に The most reliable strategy starts long before a bear appears とまとめているので A。
Q2. In the 2011 analysis, in how many of the assessable cases did the bear seem to treat the person as prey?
in 49 of the 56 cases that could be judged とあるので C。59は死亡事故の総数、56は判断できた件数。
Q3. Why does the author mention that the research involved a different species?
so its numbers may not carry over directly と続くので、日本のクマにそのまま当てはめられないという限界を示している。D。
重要単語
- encounterB2名詞・動詞遭遇(する)A close encounter with a bear can be dangerous.
予期せず出会うイメージ。encounter a problem「問題に直面する」も頻出。 - predatorB2名詞捕食者Some bears attack people as predators.
反対は prey(獲物)。形容詞 predatory(捕食性の)。 - preyB2名詞獲物The bear treated the person as prey.
pray(祈る)と同音なので注意。fall prey to ~「~の餌食になる」。 - defensiveB2形容詞防御のLie face down in a defensive position.
動詞 defend、名詞 defense。反対は offensive(攻撃的な)。 - retreatB2動詞後退するRetreat slowly without turning your back.
re-(後ろへ)+treat(引く)。名詞で「避難所・保養所」の意味もある。 - last resortB2名詞(句)最後の手段Lying face down is only a last resort.
as a last resort「最後の手段として」の形で使う。resort は「頼るもの」。 - deterrentC1名詞抑止するもの、撃退剤Bear spray is an effective deterrent.
動詞 deter(思いとどまらせる)。nuclear deterrent(核抑止力)のように時事英語でも出る。
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「クマに会ったら死んだふり」は半分だけ正解。環境省は、まず背中を見せずにゆっくり離れ、襲われたときの最終手段としてうつ伏せで頭と首を守る姿勢を紹介している。"だます"より"急所を守る"が目的だったらしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- 国民向けのクマに関する情報(環境省)env.go.jp
- Staying Safe Around Bears(U.S. National Park Service)nps.gov
- Herrero et al. (2011) Fatal attacks by American black bear on people: 1900–2009, The Journal of Wildlife Managementdoi.org
- Smith et al. (2008) Efficacy of bear deterrent spray in Alaska, The Journal of Wildlife Managementdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












