「ナマズが騒ぐと地震が来る」は本当? 700件の"動物の前兆"を調べた研究者の結論

読む前に予想してみよう!
動物の異常な行動を見れば、地震を予知できることが科学的に確かめられている
報告の多くは後から思い出した逸話で、予知に使える信頼できるデータはまだない。
- 対象
- 地震前の動物行動の報告
- 規模
- 180本の文献・700件以上の記録など
- 研究の種類
- 総説・観察研究
- 確かさ
- ★★☆☆☆
動物の異常行動の報告700件以上を調べた研究では、ほとんどが一度きりの思い出話。前兆の一部は小さな前震への反応かもしれない。今は予知に使えない。
ひとことで言うと動物が先に気づく可能性はゼロじゃない。でも予知にはまだ使えない!
「ナマズが暴れると、大地震が来る」
日本では昔から、こんな言い伝えがあります。江戸時代の1855年に起きた安政江戸地震のあとには、大ナマズが地震を起こすという「鯰絵(なまずえ)」が大流行しました。地下の大ナマズが暴れると地面が揺れる――地震の多い国ならではの想像力です。
ほかにも「地震の前に犬が吠えた」「鳥がいなくなった」といった話は世界中にあります。動物は本当に地震を予知できるのでしょうか。
01700件以上の「前兆」を集めて調べたら
「地震の前に犬が吠えていた」という話は、地震が起きたからこそ思い出されるものです。犬は地震がない日にも吠えています。地震がなかった日の記録と比べないと、本当に"異常"だったのかわからないのです。
02「前兆」の正体は小さな前震かもしれない
ヴォイトらの分析では、もう一つ興味深いことがわかりました。動物の"前兆"が報告された時間や距離の分布が、大きな地震の前に起きる小さな地震(前震)の分布とそっくりだったのです。

人間が気づかない小さな揺れや音に、感覚の鋭い動物が反応しているのかもしれません。もしそうなら、動物は地震を"予知"しているのではなく、すでに始まっている小さな地震を感じ取っていることになります。
03それでも「何か」を感じている例
一方で、注目された研究もあります。
- ヒキガエル(2010年):英国のグラントとハリデーは、イタリアのラクイラ地震(2009年)の時期に、たまたまヒキガエルの繁殖地を観察していました。震源から74km離れていたのに、地震の5日前からカエルが繁殖をやめていなくなり、地震後しばらくして戻ってきたのです
- 家畜(2020年):ドイツのマックス・プランク研究所のヴィケルスキらは、イタリアの農場で牛・犬・羊にセンサーをつけ、何か月も活動を記録しました。牛舎にいる間、地震の1〜20時間前に動物の活動がまとまって高まる傾向が見られたと報告しています
ただし、どちらも限られた地域での観察で、同じことが別の場所や別の地震でも起きるかは確かめられていません。
04なぜ言い伝えは消えないのか
- 大きな地震は強い記憶を残し、その前の「いつもと違うこと」を探してしまう
- 当たった話は語り継がれ、外れた話は忘れられる
- 小さな前震に反応している、という一部は本当かもしれない部分がある
信じてきた人がおかしいのではなく、人の記憶のクセと、本当に何かがあるかもしれないことが混ざっているのが、この話の難しさです。
05まとめ
- 動物の"前兆"の報告は多いが、ほとんどが一度きりの逸話
- 一部は、人が気づかない前震への反応で説明できるかもしれない
- カエルや家畜で興味深い観察はあるが、予知に使えるほど確かではない
判定は「ビミョー」。動物が"何か"を感じている可能性はあるけれど、ナマズに地震予知を任せる日はまだ来ていません。備えは、自分の手で。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAn old Japanese belief says that catfish become restless before big earthquakes.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japan, an old story says that catfish move wildly before a big earthquake. Can animals really know when an earthquake will come?
Scientists studied more than 700 reports of strange animal behavior. Most of them were stories that people remembered after the earthquake. Some animals may feel very small earthquakes that people cannot feel. But we still cannot use animals to predict earthquakes.
64 words ・ CEFR A2
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日本には、大地震の前にナマズが激しく動き回るという古い言い伝えがあります。動物は本当に地震がいつ来るかわかるのでしょうか。
科学者たちは、動物の奇妙な行動についての700件以上の報告を調べました。そのほとんどは、地震の後に人々が思い出した話でした。人間には感じられないとても小さな地震を感じている動物もいるかもしれません。しかし、私たちはまだ動物を使って地震を予知することはできません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
動物が地震を予知できるかを、報告の調査をもとに考えている文章なので B。
Q2. What were most of the reports?
Most of them were stories that people remembered after the earthquake. とあるので D。
Q3. In this passage, "predict" means ...
pre-(前に)+dict(言う)で「予測する・予知する」なので A。
An old Japanese belief says that catfish become restless before big earthquakes. In 2018, German researchers reviewed 180 studies covering more than 700 reports of unusual animal behavior before 160 earthquakes. Only 14 reports were based on data recorded continuously over time.
The rest were single observations, and many were remembered only after an earthquake happened. Without records from days with no earthquake, we cannot know whether the behavior was really unusual. The researchers also looked at the timing and distance of the reports. They matched the pattern of small foreshocks that often come before large earthquakes.
So the animals might have been reacting to small quakes that had already started. That is different from knowing about a quake in advance.
121 words ・ CEFR B1
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日本には、大地震の前にナマズが落ち着かなくなるという古い言い伝えがあります。2018年、ドイツの研究者たちは、160の地震の前に見られた動物の異常行動についての700件以上の報告を含む180の研究を調べました。時間を追って継続的に記録されたデータにもとづく報告は、14件だけでした。
残りは一度きりの観察で、多くは地震が起きた後になって思い出されたものでした。地震のない日の記録がなければ、その行動が本当にふだんと違ったのかどうかはわかりません。研究者たちは、報告の時期と距離にも注目しました。それらは、大地震の前によく起こる小さな前震のパターンと一致していました。
つまり、動物たちはすでに始まっていた小さな揺れに反応していたのかもしれません。それは、地震を前もって知ることとは別のことです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
継続的なデータは14件だけで、多くは後から思い出した一度きりの観察だったと述べているので B。
Q2. How many reports were based on data recorded continuously?
Only 14 reports were based on data recorded continuously over time. とあるので C。
Q3. Why do we need records from days with no earthquake?
Without records from days with no earthquake, we cannot know whether the behavior was really unusual とあるので A。比較対象が必要という考え方。
After the 1855 Ansei Edo earthquake, prints of a giant catfish shaking the ground became popular in Japan, and stories linking animal behavior to earthquakes are told around the world. To test such claims, researchers at the German Research Center for Geosciences reviewed 180 publications in 2018, covering more than 700 records and 160 earthquakes. Only 14 records came from continuous time series.
The rest were one-off observations, often recalled after the event. Without baseline data from quiet periods, there is no way to judge whether the behavior was truly abnormal. The review also found that the reported warning signs were spread in time and distance much like foreshocks. The animals may have been reacting to small tremors already under way rather than sensing future ones.
Two studies are harder to dismiss, although both come from a single region and neither has been repeated. In 2009, toads at a breeding site 74 kilometers from the L'Aquila earthquake in Italy abandoned it five days before the quake. A 2020 study that fitted farm animals in Italy with sensors found increased activity one to 20 hours before quakes.
186 words ・ CEFR B2
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1855年の安政江戸地震の後、日本では大ナマズが地面を揺らす様子を描いた絵が大流行しました。動物の行動と地震を結びつける話は、世界中で語られています。こうした主張を検証するため、ドイツ地球科学研究センターの研究者たちは2018年、160の地震に関する700件以上の記録を含む180の文献を調べました。継続的な時系列データにもとづく記録は14件だけでした。
残りは一度きりの観察で、地震の後になって思い出されたものも多くありました。地震のない平穏な時期の基準となるデータがなければ、その行動が本当に異常だったのかを判断する方法はありません。レビューではまた、報告された前兆が、時間と距離の点で前震とよく似た分布をしていることもわかりました。動物は、これから起こる地震を感じ取っていたのではなく、すでに始まっていた小さな揺れに反応していたのかもしれません。
簡単には片付けられない研究も2つあります。ただし、どちらも1つの地域のデータしか扱っておらず、再現もされていません。2009年、イタリアのラクイラ地震の震源から74キロ離れた繁殖地にいたヒキガエルが、地震の5日前にそこを離れました。また、イタリアで家畜にセンサーを取りつけた2020年の研究では、地震の1〜20時間前に活動が増えていました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
前兆報告の多くは弱い証拠で、目を引く2つの研究も1つの地域だけで再現されていないので、予知に使える段階ではない。C が正解。
Q2. What did the 2020 study of farm animals report?
found increased activity one to 20 hours before quakes とあるので D。5日前はヒキガエルの話。
Q3. What does the author suggest by pointing out that neither study has been replicated?
both come from a single region and neither has been repeated とあり、一つの地域の観察で再現されていない=他の地震でも同じことが起きるかわからない、という限界なので A。
重要単語
- earthquakeA2名詞地震Japan has many earthquakes every year.
quake と略すことも多い。aftershock(余震)、foreshock(前震)とセットで。 - precursorC1名詞前兆Scientists are looking for reliable precursors.
pre-(前に)+cursor(走るもの)。sign や warning のより学術的な言い方。 - foreshockC1名詞前震A small foreshock may come before a big earthquake.
fore-(前の)+shock。forecast(予報)、foresee(予見する)も同じ fore-。 - anecdotalC1形容詞逸話的なMost of the evidence is anecdotal.
名詞 anecdote(逸話)。anecdotal evidence は「個人的な体験談にもとづく弱い証拠」。 - predictB1動詞予測するNo one can predict the exact time of an earthquake.
pre-(前に)+dict(言う)。名詞 prediction、形容詞 predictable。 - replicateC1動詞(実験・結果を)再現するThe result has not been replicated yet.
科学では「同じ結果が再び得られるか」が重要。名詞 replication、replica(複製)も同語源。
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- よくある質問集「地震について」(気象庁)jma.go.jp
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「ナマズが騒ぐと地震が来る」という言い伝え。地震前の動物の異常行動の報告700件以上を調べた研究では、続けて記録したデータはたった14件で、残りは一度きりの観察。"前兆"の一部は小さな前震への反応かもしれないらしい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Woith et al. (2018) Review: Can animals predict earthquakes?, Bulletin of the Seismological Society of Americadoi.org
- Grant & Halliday (2010) Predicting the unpredictable; evidence of pre-seismic anticipatory behaviour in the common toad, Journal of Zoologydoi.org
- Wikelski et al. (2020) Potential short-term earthquake forecasting by farm animal monitoring, Ethologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












