トマトは野菜か果物か? 決着をつけたのはアメリカの最高裁判所だった

読む前に予想してみよう!
植物学の分類では、トマトは果実(フルーツ)のなかまに入る
花のめしべの根元がふくらんで種を包んだものが「果実」。トマトはまさにそれにあたる。
- 対象
- トマトの植物学的分類と法律上の扱い
- 規模
- 植物学の定義+1893年の米最高裁判決
- 研究の種類
- 判例・植物学の総説
- 確かさ
- ★★★★★
植物学ではトマトは「果実」。でも1893年、アメリカ最高裁は「税金の上では野菜」と判断した。答えは「どの立場で見るか」で変わる。
ひとことで言うと植物の先生は「果物」、料理の人やお役所は「野菜」と呼ぶよ!
サラダにのっているトマト。ケチャップになるトマト。あなたはトマトを「野菜」だと思いますか? それとも「果物」?
じつはこの問題、19世紀のアメリカで、なんと最高裁判所まで持ちこまれたことがあるのです。
しかも争いの理由は、トマトの味でも栄養でもなく、税金でした。今日は、トマトをめぐるちょっと笑える、でも奥の深い話をお届けします。
01植物学では「トマト=果実」
まず、植物の世界のルールから見てみましょう。
植物学でいう果実とは、花のめしべの根元にある「子房(しぼう)」という部分がふくらんで、中の種を包みこんだもののことです。
トマトを輪切りにすると、ゼリー状の部分にたくさんの種が入っていますよね。これは、トマトが花のあとにできる、まさに「種を包んだ袋」だという証拠。だから植物学では、トマトはれっきとした果実です。
この理屈でいくと、キュウリ、ナス、ピーマン、カボチャも、植物学的には全部「果実」になります。ちなみに植物学では、トマトは果実の中でも、果肉がやわらかく水分の多い「液果(ベリー)」のなかま。一方、私たちが「ベリー」と呼ぶイチゴは、植物学ではベリーではありません。

021893年、トマトは裁判所へ
さて、舞台は19世紀末のアメリカです。
当時のアメリカでは、1883年の関税法によって、外国から輸入する野菜には10%の税金(関税)がかかる一方、果物(生の果実)には税金がかからないという決まりがありました。
そこで、トマトを輸入していたニックス家は考えました。「トマトは植物学的には果物なんだから、税金を払う必要はないはずだ!」。そして、税金を取り立てたニューヨーク港の役人ヘッデンを相手に、1887年に裁判を起こしたのです。
判決の決め手になったのは、食べ方です。トマトは、スープやメインの料理といっしょに食卓に出されるもので、果物のようにデザートとして食べることは普通ない。だから法律上は野菜、というわけです。
結果は、ニックス家の負け。トマトは「税金の上では野菜」と認められました。
03答えは「立場」で変わる
この話のポイントは、どちらかが間違っているわけではない、ということです。
- 植物学者から見れば、トマトは果実
- 料理人や八百屋から見れば、トマトは野菜
- 法律や役所は、それぞれの目的に合わせて決める
同じものでも、見る人の目的によって分け方が変わるのです。
04ヨーロッパでは「ニンジンが果物」に?
分類のふしぎは、トマトだけではありません。
EU(ヨーロッパ連合)のジャムに関するルール(2001年の指令)では、トマトやルバーブの茎、ニンジンやサツマイモ、キュウリ、カボチャなども「ジャムの原料としての果物」に数えるという決まりがあります。ポルトガルのニンジンジャムのように、こうした材料のジャムが作られてきたことが背景だとよく説明されます。
「果物」や「野菜」は、自然が決めたルールというより、人間が使いやすいように作ったラベルなのです。
05まとめ
- 植物学では、種を包んだトマトは「果実」
- 1893年、アメリカ最高裁は「税金の上では野菜」と判断した
- 決め手は「デザートではなく、食事として食べる」こと
- 日本ではイチゴやスイカも「野菜」として分類されることがある
「トマトは野菜?果物?」と聞かれたら、こう答えてみてください。「植物学的には果物、法律的には野菜。どっちで答えようか?」と。きっと会話が盛り上がるはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn botany, a fruit is the part of a plant that grows from the ovary of a flower and holds the seeds.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Is a tomato a fruit or a vegetable? Scientists who study plants say it is a fruit, because it grows from a flower and has seeds inside.
But in 1893, the highest court in the US said it was a vegetable. Why? There was a tax on vegetables. The court said people eat tomatoes with meals, not as dessert. So the answer depends on who you ask.
67 words ・ CEFR A2
和訳を見る
トマトは果物でしょうか、それとも野菜でしょうか?植物を研究する科学者は、トマトは花から育ち、中に種があるので果物だと言います。
しかし1893年、アメリカの最高裁判所はトマトは野菜だと言いました。なぜでしょう?野菜には税金がかかっていたのです。裁判所は、人々はトマトをデザートとしてではなく食事といっしょに食べると述べました。つまり、答えは誰に聞くかによって変わるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
トマトは果物か野菜か、という問いがテーマなので C。
Q2. Why did the court say a tomato was a vegetable?
people eat tomatoes with meals, not as dessert とあるので B。
Q3. In this passage, "depends on" means ...
depend on は「~次第である」。誰に聞くかによって答えが変わる、という意味なので D。
In botany, a fruit is the part of a plant that grows from the ovary of a flower and holds the seeds. By this definition, tomatoes, cucumbers, and even pumpkins are fruits. In the 1880s, however, the United States charged a 10 percent tax on imported vegetables but not on fruits.
A family that imported tomatoes argued that tomatoes were fruits and took the case to court. In 1893, the Supreme Court decided against them. It said that in ordinary language, people treat tomatoes as vegetables, because they are served with main dishes rather than as dessert. Neither answer is wrong; it depends on the purpose.
106 words ・ CEFR B1
和訳を見る
植物学では、果実とは植物のうち花の子房から育ち、種を包んでいる部分のことです。この定義によれば、トマト、キュウリ、さらにはカボチャも果実です。しかし1880年代、アメリカでは輸入される野菜には10%の税金がかかりましたが、果物にはかかりませんでした。
トマトを輸入していたある一家は、トマトは果物だと主張し、裁判を起こしました。1893年、最高裁判所は一家の訴えを退けました。ふつうの言葉づかいでは、トマトはデザートではなくメインの料理といっしょに出されるので、人々は野菜として扱っている、と述べたのです。どちらの答えも間違いではありません。目的によって変わるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
最終文 Neither answer is wrong; it depends on the purpose. が主旨なので A。
Q2. Why did the family want tomatoes to be called fruits?
a 10 percent tax on imported vegetables but not on fruits とあり、果物なら税金を払わずにすむからなので D。
Q3. Based on the court's reasoning, how would it probably classify a food that is usually eaten as dessert?
裁判所は「デザートではなく食事として出される」ことを野菜の根拠にした。逆にデザートとして食べるものは果物と扱うと推論できるので B。
Whether a tomato is a fruit or a vegetable has no single answer, as an 1893 United States Supreme Court case famously showed. Botanically, a fruit is a structure that develops from a flower's ovary and encloses seeds, which makes tomatoes, cucumbers, and squash fruits; tomatoes are even classified as berries, unlike strawberries.
Under the Tariff Act of 1883, however, imported vegetables carried a 10 percent duty while fruits did not, so the Nix family, tomato importers, sued the tax collector of the port of New York. Writing for the Court in Nix v. Hedden, Justice Horace Gray acknowledged the botanical facts but held that the law should follow the ordinary meaning of words: in common usage, tomatoes are served with soups and main courses rather than as dessert, so they are vegetables.
The case is still cited as a classic example of interpreting legal language by everyday usage. Other classification systems are similarly purpose-driven. Japan's agricultural statistics treat strawberries and watermelons as vegetables, while an EU directive on jams counts carrots and sweet potatoes as fruit. The word "vegetable" itself has no botanical definition at all.
187 words ・ CEFR B2
和訳を見る
トマトが果物か野菜かには、ただ一つの答えはありません。1893年のアメリカ最高裁判所の有名な裁判がそれを示しました。植物学的には、果実とは花の子房から発達して種を包む構造のことで、トマト、キュウリ、カボチャは果実になります。
トマトは、イチゴとは違って「液果(ベリー)」に分類されるほどです。しかし1883年の関税法のもとでは、輸入野菜には10%の関税がかかる一方、果物にはかかりませんでした。そこで、トマトを輸入していたニックス家は、ニューヨーク港の税の徴収官を訴えました。ニックス対ヘッデン事件で法廷意見を書いたホレス・グレイ判事は、植物学上の事実を認めつつも、法律は言葉のふつうの意味に従うべきだとしました。
一般的な使い方では、トマトはデザートではなくスープやメインの料理といっしょに出されるので、野菜だというのです。この裁判は今も、法律の言葉を日常の用法で解釈する代表例として引用されています。ほかの分類も同じように目的によって決まっています。日本の農業統計ではイチゴやスイカが野菜として扱われ、EUのジャムに関する指令ではニンジンやサツマイモが果物に数えられています。「野菜」という言葉そのものに、植物学的な定義はまったくないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
植物学・法律・統計・EUのルールなど、目的によって分類が変わることを示しているので C。
Q2. On what basis did Justice Gray decide the case?
the law should follow the ordinary meaning of words とあるので A。植物学上の事実は認めたうえで退けている。
Q3. Why does the author mention Japan's statistics and the EU jam rules?
Other classification systems are similarly purpose-driven. の具体例として挙げているので D。
重要単語
- botanicalC1形容詞植物学のIn botanical terms, a tomato is a fruit.
botany(植物学)の形容詞。botanical garden「植物園」。in ~ terms「~の観点から言えば」。 - ovaryC1名詞子房(植物)、卵巣A fruit develops from the ovary of a flower.
ラテン語 ovum(卵)が語源。oval(卵形の)と同じ仲間。 - tariffC1名詞関税Importers had to pay a tariff on vegetables.
duty も「関税」の意味で使う。impose a tariff on ~「~に関税を課す」は経済ニュースの頻出表現。 - Supreme CourtB2名詞(句)最高裁判所The Supreme Court decided the case in 1893.
supreme は「最高の」。Justice は最高裁の「判事」の肩書きとして使う。 - classificationB2名詞分類Classification depends on the purpose.
classify(分類する)の名詞形。classify A as B「AをBに分類する」。 - ordinaryB1形容詞ふつうの、日常のThe court used the ordinary meaning of the word.
反対は extraordinary(並外れた)。extra-(外の)+ordinary で「ふつうの外」。
公式・一次情報をチェック
このネタ、誰かに教えたくなった?
トマトが野菜か果物か、アメリカでは最高裁判所まで争われたらしい。理由はまさかの「税金」。判決の決め手がちょっと面白い。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
- Nix v. Hedden, 149 U.S. 304 (1893), United States Reports(米国議会図書館)tile.loc.gov
- Gillaspy, Ben-David & Gruissem (1993) Fruits: A Developmental Perspective, The Plant Celldoi.org
- Giovannoni (2004) Genetic Regulation of Fruit Development and Ripening, The Plant Celldoi.org
- Council Directive 2001/113/EC relating to fruit jams, jellies and marmalades and sweetened chestnut purée, EUR-Lex(EU)eur-lex.europa.eu
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











