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2000年もつローマのコンクリート、長持ちの秘密は「わざと残したダマ」だった

2000年もつローマのコンクリート、長持ちの秘密は「わざと残したダマ」だった

読む前に予想してみよう!

古代ローマのパンテオンのドームは、鉄筋の入っていないコンクリートでできている

研究カード(どんな研究?)
対象
古代ローマのコンクリート試料と再現試料
規模
遺跡試料の分析+再現コンクリートのひび割れ実験
研究の種類
材料分析・室内実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

古代ローマのコンクリートに残る白いダマ(石灰のかたまり)は、ひび割れに水が入ると溶け出して隙間を埋める「自己修復の材料庫」だった可能性が示された。

ひとことで言うとローマのコンクリートは、ひびが入っても自分で治すしかけを持っていた!

もくじ
  1. ローマのコンクリートの材料
  2. ずっと「失敗の跡」だと思われていた白いダマ
  3. 「熱い混ぜ方」がダマを生んだ
  4. ダマが「ひび割れ」を治す
  5. 未来のコンクリートのヒントに
  6. まとめ

ローマにある古代の神殿パンテオン。直径約43mの巨大なドームは、約1900年前(ハドリアヌス帝の時代)に完成してから今も崩れずに建っています。しかも、鉄筋が1本も入っていないコンクリートでできているのです。上にいくほど軽い骨材(最上部は軽石)を使い、厚みも薄くするなど、重さを減らす工夫も重ねられていました。

一方、現代のコンクリートの建物は、数十年で修理や建て替えが必要になることも少なくありません。

古代ローマ人は、どうやってこんなに長持ちするコンクリートを作ったのでしょう? その秘密の1つが、2023年に発表された研究で見えてきました。カギは、コンクリートの中に残っていた白い小さな「ダマ」だったのです。

01ローマのコンクリートの材料

古代ローマのコンクリートは、主に次のような材料でできていました。

  • 石灰(せっかい):石灰岩を焼いて作る、白い粉。のりの役目をする
  • 火山灰:ナポリ近くのポッツォーリなどでとれた火山灰。石灰と反応してかたまる
  • 骨材:石やレンガのかけら

ローマ人は、火山灰と石灰をまぜると、水の中でもかたまる丈夫な材料になることを知っていました。港の防波堤など、海の中の建造物にもこのコンクリートが使われています。

2017年には、アメリカ・ユタ大学のマリー・ジャクソンらが、海の中のローマのコンクリートでは、海水がしみこんで火山灰と反応し、アルミナ質トバモライトという板状の鉱物が何百年もかけて育ち、すき間を埋めて強くしていることを報告しています。

02ずっと「失敗の跡」だと思われていた白いダマ

ローマのコンクリートを割ってみると、中に数ミリほどの白いかたまりが、あちこちに散らばっています。これは石灰のかたまり(ライムクラスト)です。

長い間、研究者たちはこれを「材料の混ぜ方が雑だったせいで残ったダマ」だと考えていました。パンケーキの生地に残った粉のダマのようなもの、というわけです。

でも、ある研究者たちは疑問を持ちました。「ローマ人は材料の品質にとてもこだわっていた。なのに、こんな『失敗』があちこちに残っているのはおかしくないか?」

白いダマ(石灰のかたまり)が、ひび割れを埋める材料庫になる
白いダマ(石灰のかたまり)が、ひび割れを埋める材料庫になる

03「熱い混ぜ方」がダマを生んだ

生石灰に水を加えると、化学反応でぐんぐん熱が出ます。この熱い状態で混ぜることで、反応が速く進み、白い石灰のかたまりが残りやすくなるのです。

つまり白いダマは失敗の跡ではなく、作り方のしるしだった可能性が高いのです。

04ダマが「ひび割れ」を治す

そして、ここからが一番の「マジか」ポイント。このダマが、コンクリートの自己修復に役立っているかもしれないのです。

コンクリートにひび割れができて、そこに雨水などがしみこむと、

  1. ひびの近くにある白いダマ(石灰)が、水に少しずつ溶け出す
  2. 溶けたカルシウムが、空気中の二酸化炭素などと反応して炭酸カルシウム(貝がらやチョークと同じ成分)の結晶になる
  3. その結晶が、ひび割れのすき間を埋めてふさいでしまう

研究チームは、この「ダマ入り」のコンクリートを現代の材料で再現し、わざとひびを入れて水を流す実験もしました。すると、ダマ入りのものは2週間ほどでひびがふさがり、水が通らなくなったのに対し、ダマなしのものはふさがらなかったのです。

2025年には同じ研究グループが、噴火で工事の途中のまま埋もれたポンペイの建設現場を分析し、ローマ人が実際に生石灰と火山灰を乾いたまま前もって混ぜ、あとから水を加えていた証拠を報告しています。

05未来のコンクリートのヒントに

現代のコンクリートの多くは、中に鉄筋を入れて強くしています。でも、ひび割れから水が入ると鉄筋がさびてふくらみ、コンクリートを内側から壊してしまうことがあります。

ひびを自分でふさぐしくみを取り入れられれば、建物の寿命をのばし、修理や建て替えに使う資源やエネルギー、そして二酸化炭素の排出を減らせるかもしれません。2000年前の知恵が、未来の環境問題を解くヒントになろうとしているのです。

06まとめ

  • 古代ローマのコンクリートは、石灰と火山灰を使い、2000年近く長持ちしてきた
  • 中の白いダマは、「熱い混ぜ方」で生まれたものだった可能性が高い
  • ダマはひび割れに入った水で溶け、結晶になってすき間をふさぐ
  • このしくみは、長持ちする未来のコンクリートづくりのヒントになる

「失敗の跡」だと思われていたものが、じつは最大の秘密だった。もしかすると、私たちが見過ごしている「ダマ」は、身のまわりにもまだまだ隠れているのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSome ancient Roman buildings, such as the Pantheon, have lasted for nearly 2,000 years, even though their… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Some ancient Roman buildings, such as the Pantheon, have lasted for nearly 2,000 years, even though their concrete contains no steel bars. Roman concrete was made from lime, volcanic ash, and pieces of rock or brick. It often contains small white lumps of lime, which experts long believed were signs of careless mixing.

In 2023, however, a team at MIT suggested that the lumps came from "hot mixing" with quicklime, which releases heat when water is added. In tests, when cracks formed and water flowed through, the lime dissolved and formed new crystals that filled the cracks within about two weeks. Concrete without the lumps did not heal.

108 words ・ CEFR B1

和訳を見る

パンテオンのような古代ローマの建物の中には、コンクリートに鉄筋が入っていないにもかかわらず、2000年近くもってきたものがあります。ローマのコンクリートは、石灰、火山灰、そして石やレンガのかけらから作られていました。その中には小さな白い石灰のかたまりがよく含まれていて、専門家たちは長い間、それを雑な混ぜ方の跡だと考えていました。

しかし2023年、マサチューセッツ工科大学(MIT)のチームは、このかたまりは、水を加えると熱を出す生石灰を使った「ホットミキシング(熱い混ぜ方)」によってできたものだと提案しました。実験では、ひび割れができて水が流れると、石灰が溶けて新しい結晶をつくり、約2週間でひびを埋めました。かたまりのないコンクリートは修復されませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. How long did it take for the cracks to fill in the tests?

Q3. Why did experts change their opinion about the lumps?

重要単語

  • concreteB1
    名詞コンクリートRoman concrete has lasted for about 2,000 years. 形容詞では「具体的な」(反対は abstract)。concrete example「具体例」は頻出。
  • durableB2
    形容詞長持ちする、耐久性のあるThe Pantheon is made of durable concrete. dur(続く)が語源。during、endure と同じ仲間。名詞 durability。
  • limeB2
    名詞石灰Lime reacts with volcanic ash to harden. 果物のライムと同じつづり。quicklime は「生石灰」。limestone は「石灰岩」。
  • crackB1
    名詞ひび割れWater seeped into the crack. 動詞では「ひびが入る・割る」。crack a joke「冗談を言う」、crack a code「暗号を解く」も。
  • self-healingC1
    形容詞自己修復のScientists are developing self-healing materials. heal(治る・治す)。health と同語源。
  • reinforceB2
    動詞補強するModern concrete is reinforced with steel bars. re-+inforce(力を加える)。unreinforced は「補強されていない=無筋の」。reinforced concrete「鉄筋コンクリート」。

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4コマでわかる

2000年もつローマのコンクリート、長持ちの秘密は「わざと残したダマ」だったの4コマ漫画
古代ローマのコンクリートに入ってる白いダマ、ずっと「混ぜ方が雑だった跡」と思われてたけど、実はひび割れを自分で埋める秘密兵器だったかもしれないらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Seymour et al. (2023) Hot mixing: Mechanistic insights into the durability of ancient Roman concrete, Science Advancesdoi.org
  2. Vaserman et al. (2025) An unfinished Pompeian construction site reveals ancient Roman building technology, Nature Communicationsdoi.org
  3. Jackson et al. (2017) Phillipsite and Al-tobermorite mineral cements produced through low-temperature water-rock reactions in Roman marine concrete, American Mineralogistdoi.org
  4. De Belie et al. (2018) A Review of Self-Healing Concrete for Damage Management of Structures, Advanced Materials Interfacesdoi.org