ぶつけた所をさすると痛みがやわらぐのはなぜ?「痛いの痛いの飛んでいけ」には科学的な裏づけがあった

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痛い場所をさすって痛みがやわらぐのは、ただの気のせいだ
実験で、痛い場所の近くに触れると痛みの評価や痛みの検出が弱まることが確かめられている。
- 対象
- 健康な成人
- 規模
- 8人〜44人
- 研究の種類
- 実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
さする信号が脊髄で痛みの通り道を一部ふさぐ「ゲート」の仕組みが提案されている。実験でも痛い場所の近くに触れると痛みが弱まり、ゆっくりなでるのが特に効いた。
ひとことで言うとさすると「さわった信号」が、痛みの信号の通り道を少しふさいでくれる!
机の角にすねをぶつけたとき、私たちは考えるより先に、その場所をさすっています。小さい子が転ぶと、大人は「痛いの痛いの飛んでいけ〜」となでてあげる。
答えを先に言うと、これはただのおまじないではありません。さすったときの「触った」という信号が、脊髄で痛みの信号の通り道を一部ふさぐという仕組みが提案されていて、実験でも痛い場所の近くに触れると痛みが弱まることが確かめられています。
011965年の大発明「ゲートコントロール説」
これが有名なゲートコントロール説。痛みは、体のどこかが傷つけば決まった量だけ脳に届く「一方通行の電線」ではなく、途中で調節されるものだ、という見方を広めた画期的な理論でした。

02実験で確かめた「痛い場所の近くが効く」
ぶつけた場所の「すぐそば」をさするのは、理にかなっていたわけです。
03「ゆっくりなでる」が特に効く
さわり方にもコツがありそうです。
皮膚には、やさしく、ゆっくりなでられる刺激によく反応する特別な神経(C触覚線維)があり、心地よさや安心感に関わっていると考えられています。親が子どもの背中をゆっくりさするのは、この神経にぴったりの速さなのかもしれません。研究では、不安が少なく落ち着いている人ほど効果が大きい傾向もありました。
04どんでん返し:「門」の細かい話は修正されてきた
ただし、1965年のゲートコントロール説が、そのまま正しかったわけではありません。
2013年の総説(Moayedi さんと Davis さん)は、この理論が痛みの研究を大きく前進させた一方で、脊髄の神経回路の細かい仕組みについては、その後の研究で修正が必要になったとまとめています。また、「痛いの痛いの飛んでいけ」には、触覚だけでなく、安心感・気そらし・言葉の力といった心理的な効果も重なっていると考えるのが自然です。
05まとめ
ぶつけた所をさすると痛みがやわらぐのは、触覚の信号が脊髄で痛みの通り道を少しふさぐという仕組みと、ゆっくりなでる心地よさ、そして安心感が合わさった効果だと考えられます。
「痛いの痛いの飛んでいけ」は、神経科学的にもなかなか優秀なおまじない。大切な人が痛がっていたら、ゆっくり、やさしくさすってあげてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen we bump into something, we often rub the painful spot without thinking.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When you hit your leg on a desk, you rub it right away. Does this really help? Yes, it does. In 1965, two scientists said that touch signals can partly close a "gate" for pain in the spinal cord, the bundle of nerves in your back.
Later experiments showed that touching near the painful spot makes pain weaker. Slow, gentle stroking works especially well. So when a child falls, rub the spot softly!
73 words ・ CEFR A2
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机に足をぶつけると、すぐにその場所をさすりますよね。これは本当に効くのでしょうか。はい、効きます。1965年、2人の科学者が、触った信号が脊髄(背中にある神経の束)の中にある痛みの「門」を一部閉じることができると言いました。
その後の実験で、痛い場所の近くに触れると痛みが弱くなることがわかりました。ゆっくりやさしくなでるのが特によく効きます。だから子どもが転んだら、その場所をそっとさすってあげましょう!
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ぶつけた所をさするのは本当に効くのか、という問いに答えているので A。
Q2. What kind of touch works especially well?
Slow, gentle stroking works especially well. とあるので D。
Q3. In this passage, "rub" means to ...
rub は「こする、さする」。手を前後に動かして触れる動作なので B。
When we bump into something, we often rub the painful spot without thinking. In 1965, two scientists proposed the gate control theory of pain. According to this idea, pain signals pass through a kind of gate in the spinal cord on their way to the brain. Signals from touch nerves can partly close this gate, so less pain gets through.
Later experiments supported the idea that touch reduces pain. In a 2014 study, touching the skin made laser heat pain feel weaker, and the effect was stronger when the touch was closer to the painful spot. A 2017 Swedish study of 44 people found that slow brushing reduced pain, while fast brushing and vibration did not.
116 words ・ CEFR B1
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何かにぶつかると、私たちは考えるより先に痛い場所をさすることがよくあります。1965年、2人の科学者が痛みの「ゲートコントロール説」を提案しました。この考えによると、痛みの信号は脳へ向かう途中で、脊髄の中にある一種の門を通ります。触覚の神経からの信号はこの門を一部閉じることができるので、通り抜ける痛みが少なくなるのです。
その後の実験は、触れることで痛みが減るという考えを支持しました。2014年の研究では、皮膚に触れるとレーザーによる熱の痛みが弱く感じられ、触れる場所が痛い場所に近いほど効果が強くなりました。2017年にスウェーデンで44人を対象に行われた研究では、ゆっくりブラシでなでると痛みが減りましたが、速くなでたり振動させたりしても効果はありませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ゲートコントロール説(理論)と、2014年・2017年の実験から、触れると痛みが減る仕組みを説明しているので C。
Q2. In the 2014 study, when was the effect stronger?
the effect was stronger when the touch was closer to the painful spot とあるので B。
Q3. Based on the passage, which is the best way to comfort someone who has bumped their arm?
痛い場所の近くに触れるほど効き、ゆっくりなでるのが効果的(速いなで方・振動は効果なし)なので D。
Bang your shin on a table and your hand goes straight to the spot. Research suggests the reflex does some good. In 1965, Melzack and Wall proposed the gate control theory. Pain signals, they argued, pass through a "gate" in the spinal cord, and input from large touch-sensitive nerve fibers activates inhibitory neurons that partly close it. The theory changed how scientists thought about pain.
Instead of a message delivered unchanged, pain became something that could be modulated along its route. A 2013 review noted that the theory's detailed spinal circuitry has needed revision, but the basic idea has stayed influential in pain research. In 2014, researchers at University College London delivered brief laser heat pain while touching the skin.
Volunteers rated the pain as weaker and were worse at judging its intensity, and touch closer to the painful site worked better. A 2017 Swedish study of 44 healthy adults found that slow brushing reduced heat pain, while fast brushing and vibration did not. The authors linked this to special nerves that respond to gentle stroking, although those nerves were not recorded directly. Reassurance and distraction probably help as well.
190 words ・ CEFR B2
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テーブルにすねをぶつけると、手はすぐにその場所へ向かいます。研究によれば、この反射には効果があるようです。1965年、メルザックとウォールはゲートコントロール説を提案しました。彼らの主張によると、痛みの信号は脊髄の「門」を通り、触覚を伝える太い神経線維からの入力が抑制性のニューロンを働かせて、門を一部閉じるというのです。この理論は、科学者の痛みの考え方を変えました。
痛みは、そのまま届けられるメッセージではなく、途中で調節されうるものになったのです。2013年のレビューは、この理論の脊髄回路の細部には修正が必要になってきたと指摘しましたが、基本的な考えは痛みの研究で影響力を持ち続けてきました。2014年、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、皮膚に触れながら短いレーザーの熱の痛みを与えました。ボランティアは痛みを弱く評価し、痛みの強さを見分けにくくなりました。
また、痛い場所の近くに触れるほど効果がありました。2017年にスウェーデンで健康な成人44人を対象に行われた研究では、ゆっくりブラシでなでると熱の痛みが減りましたが、速くなでたり振動させたりしても減りませんでした。著者たちはこれを、やさしくなでられることに反応する特別な神経と結びつけましたが、その神経を直接記録したわけではありません。安心感や気をそらすことも、おそらく役に立っているでしょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
理論と実験が「触れると痛みが減る」ことを支持する一方、the theory's detailed spinal circuitry has needed revision と細部の修正にも触れているので D。
Q2. According to the 2017 study, which reduced heat pain?
slow brushing reduced heat pain, while fast brushing and vibration did not とあるので A。
Q3. What does the word "modulated" most likely mean in the passage?
Instead of a message delivered unchanged と「変化せずに届く」と対比されているので、「途中で強さが調節される」の意味。C。
重要単語
- rubB1動詞こする、さするI rubbed my elbow after hitting it.
rub-rubbed-rubbed。rub it in「(失敗などを)しつこく言う」という口語表現もある。 - relieveB2動詞(痛みなどを)やわらげるTouch can relieve pain a little.
名詞 relief(pain relief=痛みの緩和)。be relieved「ほっとする」も頻出。 - spinal cordB2名詞(句)脊髄Pain signals travel through the spinal cord.
spine(背骨)の形容詞が spinal。cord は「ひも、コード」。 - gateA2名詞門The gate control theory explains how touch reduces pain.
空港の「搭乗口」も gate。比喩的に「入り口・関門」として使う。 - strokeB2動詞なでるShe gently stroked the child's arm.
名詞では「脳卒中」「(水泳・テニスの)ひとかき・ひと打ち」の意味もあり、多義語として入試頻出。 - inhibitC1動詞抑制する、妨げるTouch signals may inhibit pain signals.
名詞 inhibition、形容詞 inhibitory(抑制性の)。inhibit A from doing「Aが~するのを妨げる」。
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机の角にぶつけた所を思わずさするのは理にかなっていた。触った信号が、脊髄で痛みの信号の「門」を少し閉じるという説があり、実験でも痛い場所の近くに触れるほど痛みが弱まったらしい。ゆっくりなでるのが特に効くとか。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Melzack & Wall (1965) Pain Mechanisms: A New Theory, Sciencedoi.org
- Mancini et al. (2014) Pain relief by touch: A quantitative approach, Paindoi.org
- Liljencrantz et al. (2017) Slow brushing reduces heat pain in humans, European Journal of Paindoi.org
- Moayedi & Davis (2013) Theories of pain: from specificity to gate control, Journal of Neurophysiologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










