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乗り物酔いはなぜ起きる? 運転している人だけ酔わない理由と「脳が毒と勘違い」説

乗り物酔いはなぜ起きる? 運転している人だけ酔わない理由と「脳が毒と勘違い」説

読む前に予想してみよう!

車で本やスマホを見ると酔いやすいのは、目が疲れるからだ

研究カード(どんな研究?)
対象
成人の参加者
規模
22組(回転実験)
研究の種類
実験研究+レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

目が見る「止まった景色」と、耳の奥が感じる「揺れ」の食い違いが主犯とされる。運転手が酔いにくいのは、揺れを自分で予測・コントロールできるから。

ひとことで言うと目と耳の「ゆれ情報」がケンカすると、脳がこまって気持ち悪くなる!

もくじ
  1. 目と耳がケンカしている
  2. なぜ「吐き気」なのか? 毒検知説
  3. 運転手が酔わない理由は「コントロール感」
  4. どんでん返し:「食い違い説」にもライバルがいる
  5. まとめ

遠足のバスで、だんだん気持ち悪くなってくる。でも不思議なことに、運転している人はほとんど酔わない。

答えを先に言うと、乗り物酔いの主犯とされるのは、目が伝える情報と、耳の奥(内耳)が伝える「揺れ」の情報の食い違いです。運転手が酔いにくいのは、揺れを自分で起こしていて予測できるから。そして、なぜ食い違いで「吐き気」なのかについては、「脳が毒を食べたと勘違いしている」という大胆な説まであります。

01目と耳がケンカしている

耳の奥には、体の傾きや加速を感じる三半規管や耳石器という「揺れセンサー」があります。

車の中で本やスマホを見ていると、目は「止まっている」と伝えます。一方、耳の奥のセンサーは「揺れている、曲がっている」と伝える。脳は二つの矛盾した報告を受け取って混乱します。これを感覚の食い違い(感覚混乱)説といい、乗り物酔いの説明として最も広く使われています。

逆に、揺れていないのに画面の中だけが激しく動く3Dゲームや VR でも酔うのは、食い違いが逆向きに起きているからだと考えられます。

02なぜ「吐き気」なのか? 毒検知説

食い違いで混乱するのはわかるとして、なぜ吐き気なのでしょう。

ただしこれは今も仮説です。イギリスのゴールディング(Golding)さんの2006年のレビューでも、乗り物酔いの「しくみ(どう起きるか)」は比較的わかってきた一方、「なぜそんな反応があるのか」はまだ研究中だとされています。

目と耳の奥が、正反対の「揺れ情報」を脳に届けている
目と耳の奥が、正反対の「揺れ情報」を脳に届けている

03運転手が酔わない理由は「コントロール感」

自分でハンドルを切る人は、脳が「次はこう揺れる」と先回りして予測できます。予測どおりなら、食い違いは小さくてすみます。助手席より運転席、受け身の乗客より操作する人のほうが酔いにくいのはこのためと考えられています。

04どんでん返し:「食い違い説」にもライバルがいる

じつは感覚混乱説には、有力なライバルがいます。アメリカのリッチオ(Riccio)さんとストフレゲン(Stoffregen)さんが1991年に唱えた姿勢の不安定説です。

この説では、酔いの原因は感覚の食い違いではなく、揺れる環境で体の姿勢をうまく保てない状態が続くことだとします。実際、酔う前から体のふらつき方に違いが出るという研究もあり、論争は今も続いています。

05まとめ

乗り物酔いは、目と耳の奥の「揺れ情報」が食い違うことで起きると考えられています。運転手が酔わないのは揺れを予測できるから。なぜ吐き気なのかは「毒と勘違い説」などの仮説が議論中です。

次のドライブでは、スマホをしまって遠くの景色を見る。それだけで、脳のケンカを少しなだめられるかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMotion sickness is most often explained by a conflict between the senses. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Motion sickness is most often explained by a conflict between the senses. Inside the inner ear, there are sensors that detect tilting and speed changes. When you look at a phone in a moving car, your eyes report that everything is still, while your inner ear reports movement. The brain receives two opposite messages, and this mismatch seems to cause nausea. A reverse mismatch can happen in VR games, where the screen moves but your body does not.

Why are drivers rarely sick? In a 1991 experiment with 22 pairs of people, one person controlled a rotating device while the other experienced exactly the same movement passively. Those who were in control showed fewer symptoms, so having control itself seems to protect people.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

乗り物酔いは、感覚どうしの食い違いによって説明されることが最も多いです。内耳の中には、体の傾きや速さの変化を感じるセンサーがあります。動いている車の中でスマホを見ると、目は「すべて止まっている」と伝え、一方で内耳は「動いている」と伝えます。脳は正反対の2つの情報を受け取り、この食い違いが吐き気を引き起こすようです。VRゲームでは逆向きの食い違いが起こりえます。画面は動くのに体は動かないからです。

では、なぜ運転手はめったに酔わないのでしょうか。1991年の22組のペアを対象にした実験では、一方が回転する装置を操作し、もう一方はまったく同じ動きを受け身で体験しました。操作していた人のほうが症状が少なかったのです。操作すること自体が酔いを防ぐ助けになるようです。

4択リーディングクイズ

Q1. What does the passage mainly explain?

Q2. In the 1991 experiment, who showed fewer symptoms?

Q3. Based on the passage, which advice would most likely help a passenger?

重要単語

  • motion sicknessB1
    名詞(句)乗り物酔いI always get motion sickness on long bus trips. get motion sickness で「乗り物酔いになる」。car sickness / seasickness(船酔い)/ airsickness も同じ形。
  • inner earB2
    名詞(句)内耳(耳の奥)The inner ear helps us keep our balance. 聞こえだけでなく平衡感覚も担当。keep one's balance「バランスを保つ」とセットで。
  • conflictB1
    名詞食い違い、衝突A conflict between your senses can make you feel sick. 名詞は第1音節、動詞(conflict with ~「~と矛盾する」)は第2音節にアクセント。
  • predictB1
    動詞予測するDrivers can predict when the car will turn. pre-(前に)+dict(言う)。名詞 prediction、形容詞 predictable(予測できる)。
  • nauseaC1
    名詞吐き気Looking at a phone in a car can cause nausea. ギリシャ語 naus(船)が語源で、もとは「船酔い」。navy, navigate と同じ仲間。
  • hypothesisB2
    名詞仮説The poison idea is still only a hypothesis. 複数形は hypotheses。propose / test / support a hypothesis が定番のコロケーション。
乗り物酔いの主犯は、目と耳の奥の「揺れ情報」の食い違い。運転手が酔いにくいのは、揺れを自分で起こして予測できるから。実験でも、回転を自分で操作した人は、同じ回転を受け身で味わった人より症状が少なかったらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Treisman (1977) Motion Sickness: An Evolutionary Hypothesis, Sciencedoi.org
  2. Rolnick & Lubow (1991) Why is the driver rarely motion sick? The role of controllability in motion sickness, Ergonomicsdoi.org
  3. Golding (2006) Motion sickness susceptibility, Autonomic Neurosciencedoi.org
  4. Riccio & Stoffregen (1991) An Ecological Theory of Motion Sickness and Postural Instability, Ecological Psychologydoi.org