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第13章|素材と道具の使いこなしコラム2026-09-282026-10-10 更新

大学の英語授業でのCALL・LMS活用法|課題設計と運用のコツ

LMS(学習管理システム)は、多くの大学で資料配布や課題回収の道具として使われています。しかし、英語授業ではそれだけではもったいない場面がたくさんあります。この記事では、CALL(コンピュータ支援言語学習)の視点から、LMSを英語学習の場として活かすための課題設計と運用のコツを紹介します。

01CALLの考え方:道具より「学習の設計」

CALL(Computer-Assisted Language Learning)は、コンピュータを使った言語学習全般を指す言葉です。歴史は長く、ドリル練習から始まり、今ではオンラインでの協働学習や生成AIの活用まで幅広い実践が含まれます。

CALLで大切なのは、「どのツールを使うか」より「どんな学習を起こしたいか」を先に決めることです。

  • 語彙の定着を促したい → 間隔を空けた自動採点の小テスト
  • 話す量を増やしたい → 音声の録音提出
  • 書いたものを読み合わせたい → フォーラムでのピアフィードバック
  • 授業外に英語に触れさせたい → 動画や記事へのリンクと短い課題

Moodle、Google Classroom、Microsoft Teams、各大学独自のシステムなど、LMSの種類によってできることは少しずつ違います。まずは自分の大学のLMSで何ができるかを、学内の支援窓口やマニュアルで確かめておきましょう。

CALLの視点で生教材を選ぶTESOL International Association|CALL-IS Webinar: Authentic Materials for Second Language Acquisition: Sources and Resources

使い方:CALLの視点で生の教材を選ぶことを扱うウェビナーです。この節の「どんな学習を起こしたいか」を先に決める考え方で、授業外に触れさせる教材を選び直します。

02LMSのコース画面を「週単位」で整理する

学生がLMSで迷わないことは、学習を続けるための前提条件です。資料や課題が一つのページに並んでいると、学生は何をすればよいか分からなくなります。

おすすめの構成

  • 最上部:シラバス、評価方法、連絡の方法、よくある質問
  • 週ごとのブロック:各週に次の4つを同じ順番で置く
  1. 今週の目標(1〜2文)
  2. 授業資料
  3. 授業前の課題(予習)
  4. 授業後の課題(復習)と締め切り

毎週同じ型にすると、学生は2〜3週目から迷わなくなります。

今週の目標の書き方の例

  • This week, you will be able to describe a graph using trend verbs (rise, fall, remain stable).

目標を英語で書く場合も、学生のレベルに合わせたやさしい表現にし、必要なら日本語を添えましょう。

Google ClassroomをLMSとして使うGoogle for Education|Google Workspace for Education: Using Google Classroom as an LMS

使い方:Google Classroom をLMSとして使う方法の紹介です。使っているLMSが違っても、この節の週ごとの4つのブロックを作る操作の参考にします。

03音声提出で「話す量」を増やす

大人数の授業では、一人ひとりが話す時間を確保するのが難しいものです。LMSの課題機能や録音できるツールを使えば、授業外に全員が話す機会を作れます。

課題の例:1分間の自己紹介から研究紹介へ

  • 第2週:1分で自己紹介(趣味と専攻)
  • 第5週:1分で専攻分野の面白さを説明
  • 第10週:2分で自分が興味を持っている研究テーマを紹介

評価の工夫

すべての音声を細かく採点すると、教師の負担が大きくなります。次のように工夫しましょう。

  • 提出したかどうかを基本の評価にする
  • 学期に2回だけ、簡単なルーブリックで詳しくフィードバックする
  • 全体に共通する課題(例:語尾の子音が落ちる、文の区切りが分かりにくい)を授業でまとめて扱う

学生は自分の録音を聞き直すことで、話し方の癖に気づくことができます。提出前に一度聞き直してから出すことをルールにするのもおすすめです。

04LMSと組み合わせる外部ツールと、選ぶときの確認点

LMSの機能だけで足りない場合は、外部ツールを1つだけ足すのが運用を複雑にしないコツです。目的ごとの候補と使い方です。

目的ツール使い方と注意点
語彙の間隔反復Quizlet毎週の新出語のカードを教師が作り、LMSにリンクを置く。一部の学習モードは有料
授業内の確認クイズKahoot!授業の冒頭5分で前週の復習。結果をLMSの小テストの出題に反映する
話す練習の自己点検Speak & ImproveケンブリッジのAIに英語で話してレベルの目安を知る。音声提出の前の練習として紹介する
書く練習の自己点検Write & Improve英作文のレベル判定とフィードバックが返る。提出前の自己点検用に紹介する
音声のやりとりVocaroo録音してリンクで送れる。リンクを知る人は誰でも聞けるため、学生の音声提出にはLMSの機能を優先する

外部ツールを選ぶときの確認点

  1. 学生のアカウント登録が必要か、必要なら大学のメールで登録できるか
  2. 学生の音声や作文がどこに保存されるか(学内の個人情報の方針に合うか)
  3. 無料の範囲で課題が完結するか(有料機能を前提にしない)
  4. スマホだけでも課題を終えられるか

AIを使うツールを課題に組み込む場合は、評価の対象(AIの判定か、学生の取り組みか)と、使ってよい範囲をシラバスで明示しておきましょう。

05自動採点の小テストを「間隔反復」に使う

LMSの小テスト機能は、語彙や文法の定着に役立ちます。ポイントは、一度解いたら終わりにしないことです。

作り方の手順

  1. 毎週の新出語から10問を作る(意味の選択、つづり、コロケーションの選択など)
  2. 問題を「問題バンク」に登録し、週ごとにカテゴリーを分ける
  3. 小テストは「今週の問題7問+過去の問題3問」をランダムに出題する設定にする
  4. 何度でも受験できるようにし、最高点を記録する

こうすると、学生は毎週、前の週の内容にも自然と触れることになります。

問題の例

  • 次の空所に入る動詞を選びなさい。 The study ___ a significant difference between the two groups.(found / made / did)
  • conduct の意味として最も適切なものを選びなさい。

自動採点に任せられる部分は任せ、教師の時間は発話や作文へのフィードバックに回すのがLMS活用の基本的な考え方です。

Googleフォームで小テストGoogle for Education|EDU in 90: Quizzes in Google Forms

使い方:Googleフォームで小テストを作る短い解説です。LMSに問題バンクの機能がない場合に、前週の問題を混ぜた小テストを作る代わりの方法として確かめます。

061週間の運用サイクルの例

LMSを使った英語授業の、1週間の運用例です(週1回、90分の授業を想定)。

  • 授業の3日前:翌週の資料と予習課題を公開する(公開日時を予約設定しておくと楽です)
  • 授業の前日:予習課題の締め切り。提出状況をLMSで確認し、未提出者の傾向を把握する
  • 授業当日:予習課題で多かった誤りを冒頭5分で共有。授業後に復習課題を公開
  • 授業の2日後:フォーラムで学生同士のコメントを促すリマインダーを送る
  • 授業の5日後:復習課題の締め切り。自動採点の結果を確認し、翌週に扱う点をメモする

時短のコツ

  • よく使うお知らせ文や課題の説明文はテンプレートにしておく
  • 前年度のコースをコピーして、日付だけ直す
  • 締め切り時刻は毎週同じにする(例:毎週金曜23:59)

運用の型が決まると、授業準備の時間が毎週少しずつ減っていくのを実感できるはずです。

07アクセシビリティと公平性への配慮

LMSを使った授業では、すべての学生が同じ条件で学べるかにも気を配る必要があります。

確認しておきたいポイント

  • 端末と通信環境:スマホだけで課題に取り組む学生もいます。長い文章の入力や大きなファイルのアップロードが必要な課題は、スマホでも可能か確かめましょう
  • 資料の形式:画像だけのPDFは、読み上げソフトで読めないことがあります。可能な範囲でテキストを含む形式にします
  • 動画と音声:字幕や文字資料を併せて用意できると、聴覚に困難のある学生や、静かな場所で視聴できない学生にも役立ちます
  • 締め切りの柔軟性:通信トラブルや体調不良に備え、提出の猶予や代替手段の方針を決めておきます

配慮が必要な学生への対応は、所属大学の障害学生支援の窓口と連携することが基本です。教員が一人で判断せず、学内の仕組みを使うことを意識しましょう。

こうした配慮は、特定の学生のためだけでなく、すべての学生にとって使いやすい授業につながります。

高等教育でのUDLUDL On Campus|UDL in Higher Education

使い方:高等教育でのUDL(学びのユニバーサルデザイン)を扱う動画です。この節の確認ポイントに加えて、資料の形式や提出方法に選択肢を持たせる工夫を考えます。

08よくある失敗と、その立て直し方

1. 課題を増やしすぎる

LMSでは課題を簡単に追加できるため、気づくと学生の負担が大きくなっていることがあります。1週間の課題は合計で何分かかるかを計算し、単位に見合った量か確認しましょう。

2. ピアフィードバックが「Good!」だけになる

学生同士のコメントが形だけになるのはよくあることです。次のようなコメントの型を示しましょう。

  • One thing I liked: ...
  • One question I have: ...
  • One suggestion: ...

3. 締め切りの管理が教師任せ

リマインダーや未提出者への連絡を毎回手作業で行うと続きません。LMSの自動通知機能を確認し、使えるものは使いましょう。

4. システムの不具合で課題が出せない

提出方法が一つしかないと、トラブルのときに困ります。代わりの提出方法(メール添付など)をあらかじめシラバスに書いておくと安心です。

まずは次の授業のコースページを、週ごとに同じ型で整理し直すところから始めてみてください。

ピア添削で書く力を伸ばすBritish Council | TeachingEnglish|Teaching tips: How to encourage peer editing & correction

使い方:ピア添削で書く力を伸ばすための指導のヒントです。フォーラムのコメントが形だけになるとき、この節のコメントの型と合わせて手順を見直します。

このコラムで使うサイト・アプリ

もっと見たい人へ

オンライン授業の設計を計画するUSC Center for Teaching Excellence|Design: Planning an Online Course
イマーシブリーダーで読みやすくMicrosoft Education|What is the Immersive Reader?

今日やること

よくある質問

LMSの操作が苦手な学生にはどう対応すればよいですか?

初回の授業で、実際に課題を1つ提出する練習を全員で行うのが効果的です。操作方法をまとめた短い資料や画面の動画をコース上部に置いておくと、質問が減ります。

音声提出の課題で、学生が原稿を読み上げるだけになってしまいます。

最初は原稿を読んでもかまいません。段階的に、キーワードのメモだけを見て話す、何も見ずに話す、と条件を変えていくと、自然に即興で話す力が育ちます。

生成AIで課題を済ませる学生への対策は?

AIの利用をすべて禁止するより、使ってよい範囲と使い方を明示するほうが現実的です。音声提出や授業内の活動など、学習の過程が見える課題を組み合わせることも有効です。

読了ボーナス

最後まで読んだあなたに、目から鱗をもう1枚

ホント?ウソ?10問チャレンジ目から鱗をぜんぶ見る

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