英語プレゼン指導のコツ|大学授業の構成・表現・質疑応答・評価
英語プレゼンの授業でよく見る光景があります。原稿をスライドに貼り、下を向いて読み上げ、質問が来ると固まってしまう――。これは学生の英語力の問題というより、指導の順番の問題であることが多いのです。この記事では、構成から表現、スライド、リハーサル、質疑応答、評価までを、大学の授業で回せる手順にして紹介します。

01プレゼン指導は「構成」から始める
英語の表現や発音の練習から始めたくなりますが、先に教えたいのは聞き手が迷わない構成です。構成がしっかりしていれば、英語が多少たどたどしくても内容は伝わります。
基本の3部構成です。
- Introduction:あいさつ、テーマ、なぜ大切か、発表の流れの予告
- Body:ポイントを2〜3つ。各ポイントに理由と具体例
- Conclusion:要点のまとめ、聞き手へのメッセージ、質問の受付
構成を考える段階では、英語で文章を書かせる前に、キーワードだけのアウトラインを作らせます。
- Topic: Why students should use the university library more
- Point 1: Quiet space to focus
- Point 2: Free access to databases
- Point 3: Support from librarians
- Message: Try one new library service this month
ポイント:「ポイントは3つまで」と制限すると、学生は情報を選ぶ過程で、自分が本当に伝えたいことを考えるようになります。
02モデル発表に使える動画と、構成分析の手順
第1回の「モデル発表を見て構成を分析」には、学生向けに作られたアカデミック・プレゼンの動画と、TED の講演が使えます。
| 教材 | 特徴 | 使い方 |
|---|---|---|
| 下の大学の発表指導動画 | 大学の語学センターが学生向けに作ったもの | 期待する発表の水準を共有する。日本の大学生に近い状況のものから見せる |
| TED | 講演を字幕つきで見られる | 短い講演を選び、導入・本論・結論の境目とサインポスティング表現を書き出させる |
| American Rhetoric | 歴史的な名スピーチを音声と原稿で | 原稿があるので、構成を示す表現を原稿の上で探す練習に使う |
モデル分析ワークシート(20分)
- 1回目は内容だけを聞き、主張を1文で書く
- 2回目は Introduction・Body・Conclusion の切れ目で手を挙げる
- 聞こえたサインポスティング表現を、場面別の表(始める・次に進む・まとめる)に書き込む
- 自分のアウトラインに、使いたい表現を3つ書き写す
使い方:アカデミック・プレゼンとは何かを約1分で示す動画です。第1回の冒頭で見せ、一般的なスピーチとの違いを学生にペアで考えさせる問いにつなげます。
使い方:アジアの大学の学生向けに作られた発表の導入動画です。日本の大学生に状況が近いので、モデル分析ワークシートの1本目に使います。
03サインポスティング表現を「型」として渡す
サインポスティングとは、発表のどこにいるのかを聞き手に示す道案内の表現です。英語のプレゼンでは特に重視され、これが入るだけで発表がぐっと聞きやすくなります。
場面別の表現例
始める
- Today I'm going to talk about ...
- My presentation is divided into three parts.
次に進む
- Let's move on to my second point.
- Now I'd like to turn to ...
例を示す・強調する
- Let me give you an example.
- This is the most important point.
スライドに注目させる
- As you can see in this graph, ...
- Please take a look at the left side of the slide.
まとめる
- To sum up, ...
- The key message I want you to remember is ...
これらを1枚の表にして配布し、アウトラインのどこに入れるかを学生に書き込ませます。内容の英語は自分で考え、つなぎの表現は型を使うという役割分担にすると、英語が苦手な学生でも発表全体の形が整います。
使い方:プレゼンの流れに沿った表現を学ぶレッスンです。サインポスティング表現の表を作る前に見て、場面別の表現を補います。
04スライド作りの原則:「読む」から「見せる」へ
スライドに文章をびっしり書くと、学生はそれを読み上げ、聞き手もスライドを読むことに集中してしまいます。スライドは原稿ではなく視覚資料だと伝えましょう。
スライドのルール例
- 1枚に伝えることは1つ
- 文章ではなくキーワードか短いフレーズで
- 文字は教室の後ろから読める大きさに
- 図や写真を使う場合は出典を示す(著作権への配慮も指導する)
- 枚数の目安は「発表時間(分)+2枚」程度に抑える
例えば、次のような書き換えを見せるとわかりやすいです。
- 変更前:The university library has many databases that students can use for free, and it is very useful.
- 変更後:Free databases — journals & e-books
発表者用のメモは、スライドとは別にカードやノートに書かせます。メモには文章ではなく、キーワードとサインポスティング表現だけを書くと、顔を上げて話す習慣がつきやすくなります。
05リハーサルと質疑応答の練習
リハーサルの3段階
- ひとりで録画:スマホで1回録画し、時間と「えー」の回数を確認する
- ペアで練習:聞き手はチェックリストで1つだけ改善点を伝える
- 小グループで本番形式:3〜4人の前で発表し、質問を必ず1つもらう
ペアで使うフィードバックの文型です。
- Your introduction was clear. Maybe you can slow down a little in Point 2.
- I liked your example. Could you look at the audience more often?
質疑応答は「型」と「予想」で準備する
質疑応答が怖いのは、何を聞かれるかわからないからです。事前に予想質問を3つ書き、答えを準備させましょう。答えに詰まったときの表現も教えておきます。
- That's a good question. Let me think for a moment.
- Could you say that again, please?
- I'm not sure about that, but I think ...
- I haven't looked into that yet, but it's an interesting point.
ポイント:「わからない」と正直に言える表現を持っていると、学生は質問を怖がらなくなります。
使い方:優れたスピーチに共通する考え方を語るトークです。リハーサルの前に見せ、「伝えたいことを1つに絞る」視点で自分の発表を見直させます。
06大人数クラスでの運営と評価
30〜40人のクラスで全員が教室の前で発表すると、それだけで数回分の授業が終わってしまいます。発表の場を分散させる工夫が必要です。
- 教室内で4〜5グループに分かれ、同時に発表する
- 先生は各グループを巡回し、評価は録画提出で補う
- 前半組と後半組に分け、聞き手は評価シートに記入する
- ポスター形式にして、聞き手が回る方式にする
ルーブリックの観点例
- 構成:導入・本論・結論が明確か
- 内容:主張に理由と具体例があるか
- 言語:サインポスティング表現を適切に使っているか
- 伝え方:聞き手を見て、聞き取りやすい速さで話しているか
- 質疑応答:質問に誠実に答えようとしているか
聞き手用の評価シートは、観点を2つ程度に絞り、「よかった点を1つ」「質問を1つ」書く欄を設けると、記入に追われず発表に集中できます。集めたシートは発表者に返却し、振り返りの材料にさせましょう。
- One thing I liked: ...
- One question I have: ...
各観点を3〜4段階にして事前にLMSで公開し、リハーサルでも同じ表を使います。本番と練習で同じ基準を使うことで、評価の根拠を説明しやすくなり、学生も何を改善すればよいかがわかります。
使い方:大学が学生向けに作った効果的なプレゼンのシリーズ第1部です。ルーブリックの観点を学生に説明する回で見せ、期待する水準を共有します。
074回で仕上げる指導スケジュールとよくある失敗
プレゼン単元のスケジュール例(4回)
- 第1回:モデル発表を見て構成を分析、テーマ決め、アウトライン作成
- 第2回:サインポスティング表現の練習、スライドの原則、スライド作成
- 第3回:録画リハーサル、ペア練習、予想質問づくり
- 第4回:グループ別の本番発表、相互評価、振り返り
授業外の課題として、第2回と第3回の間にスライドの下書きをLMSに提出させると、第3回を練習に集中させられます。
よくある失敗
- 原稿を全文書かせ、暗記させる:棒読みになり、質問に対応できなくなります
- スライドの指導をせず、文字だらけのスライドが並ぶ
- 本番だけを評価し、準備の過程が評価に入っていない
- 聞き手が何もしない時間が長く、教室の集中が途切れる
- 質疑応答を「時間があれば」扱いにして、練習しない
ポイント:聞き手にも「質問を1つする」「評価シートを書く」という役割を与えると、発表の時間が全員の学びの時間になります。
このコラムで使うサイト・アプリ
もっと見たい人へ
今日やること
よくある質問
原稿を見ながら発表するのは認めるべきですか?
最初から全面禁止にすると不安が大きくなるため、キーワードだけを書いたメモカードは認め、文章の原稿は認めないという中間の形がおすすめです。回を重ねるごとにメモを減らしていけます。
発音の指導はどこまでするべきですか?
プレゼンでは、細かい発音より、聞き取りやすさに大きく影響する点を優先します。キーワードの強勢、文の区切り、話す速さの3点に絞って指導すると、短い時間でも効果が見えやすくなります。
質問が一つも出ず、質疑応答が成り立ちません。
聞き手全員に「1人1つ質問を用意する」役割を与え、質問の文型(Could you tell me more about ...? など)を配布しておくと、質問が出やすくなります。グループ内の少人数で行うことも効果的です。
読了ボーナス


