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第13章|素材と道具の使いこなしコラム2026-09-282026-10-10 更新

英語授業の導入のコツ|最初の5分で「今日の授業」に引き込む方法

チャイムが鳴ってから教科書が開くまでの5分間。ここがぼんやりすると、残りの45分もなんとなく流れてしまいます。この記事では、歌やスモールトークのような「ウォームアップ」とは別に、**本時の学習内容へ生徒を連れていくための導入**に絞って、明日から使える型を紹介します。

01導入の5分は「助走」ではなく「地図を渡す時間」

授業の導入というと、「まず雰囲気を温める」ことに目が向きがちです。もちろん大切ですが、それだけだと生徒は「楽しかったけど、今日は何を学ぶんだっけ?」という状態のまま本題に入ります。

導入の役割は、大きく3つに整理できます。

  1. 前の授業とのつなぎ:前回の学びを思い出させ、今日の内容と結びつける
  2. 本時のゴール提示:授業の終わりに何ができるようになるのかを示す
  3. 問い(フック)の投げかけ:今日の内容を「知りたい」「使いたい」と思わせる

この3つが5分に収まっていると、生徒は授業の地図を手に持った状態で本題に入れます。逆に、どれかが抜けると「今どこにいるのか」が分からなくなる生徒が増えます。

ポイント:ウォームアップは「英語モードへの切り替え」、導入は「今日の学習内容への橋渡し」。役割を分けて考えると、5分の使い方がはっきりします。

授業の見通しを示すEdutopia|60-Second Strategy: Framing the Lesson

使い方:授業の始めに見通しを示す方法の1分動画です。この節の3つの役割のうち「本時のゴール提示」の伝え方を、明日の授業の板書計画に書き込みます。

02最初の5分の時間配分モデル

ここでは50分授業を想定した、導入5分の配分例を紹介します。

  • 0:00〜1:00 着席・あいさつ・ルーティン:板書済みのゴールを指し、全員の視線を前に集める
  • 1:00〜2:30 前時の振り返り(想起):前回の文や単語を思い出させる短い問い
  • 2:30〜3:30 本時のゴール提示:Can-Doの形で1文、板書またはスライドで示す
  • 3:30〜5:00 フックの問い:今日の文法や本文に関わる問いを投げ、ペアで10秒だけ話す

たとえば中学2年で比較級を扱う日なら、流れはこうなります。

前時の振り返り(1分半)

前回学んだ形容詞を黒板に3つだけ書き、次のように聞きます。

  • "Look at these words: tall, fast, old. Make one sentence about your family. You have 20 seconds."
  • "OK, tell your partner. Go!"

ゴール提示(1分)

  • "Today's goal: You can compare two things. For example, you can say, 'My brother is taller than me.'"

フックの問い(1分半)

教師の自作写真や簡単なイラストで、2匹の犬を見せます。

  • "Which dog is bigger? How do you say that in English? Guess!"

答えを言わせきらず、「その言い方を今日学びます」で本題に入るのがコツです。答えを最初に教えてしまうと、フックが効きません。

導入にSmall Talkを取り入れる授業準備TV_by SPRIX|【英語の授業】導入にお悩みの先生必見の実践「Small Talk」

使い方:授業の導入にSmall Talkを取り入れる3分ほどの実践紹介です。この節の配分モデルのどこにSmall Talkを入れるか、入れるなら何秒にするかを決めます。

03ゴール提示は「生徒の言葉」で書く

本時のゴールを板書するとき、「比較級の用法を理解する」と書く先生は少なくありません。しかし、これは教師側の言葉です。生徒にとっては、何ができればOKなのかが見えにくくなります。

おすすめは、「〜できる」+具体的な英文例の組み合わせです。

  • ×「比較級を理解する」
  • ○「2つのものを比べて言える(例:Tokyo is bigger than Osaka.)」
  • ×「本文の内容を理解する」
  • ○「主人公が悩んだ理由を、本文の言葉を使って2文で説明できる」

英語で書く場合も、短く具体的にします。

  • "Goal: I can explain why Ken changed his mind in two sentences."
  • "Goal: I can ask my friend three questions about the weekend."

このゴールは、授業の最後の振り返りでもう一度使います。導入と終わりで同じ文を指すと、生徒は「今日はこれができるようになった」と自分で確かめられます。

ポイント:ゴールの板書は授業中ずっと消さない位置に。黒板の左上など、定位置を決めておくと毎回探さずに済みます。

04導入5分を見直すための動画と資料:授業研究に使える4本と見方

導入の型は、ほかの先生の授業を見るといちばん早く身につきます。次の素材は、短い時間で「導入の設計」を確かめられるものです。

素材内容授業準備での使い方
文部科学省の授業実践動画(下に掲載)中学校で新しい言語材料を導入する実際の授業先生の最初の発話を書き取り、前時とのつなぎ・ゴール提示・問いのどれに当たるかを分類する
Edutopia「Framing the Lesson」(下に掲載)その時間の見通しを生徒と共有する1分ほどの紹介ゴールの板書の位置と、授業の最後に指す場面までを自分の授業で決める
TeachingEnglish(British Council)ブリティッシュ・カウンシルの授業プランが集まる先生向けサイトlead-in(導入)の部分だけを読み、フックの問いの作り方を比べる
国立教育政策研究所:指導資料・事例集学習評価の参考資料などがまとまったページ単元の評価規準を確かめ、本時のゴールの文と言葉をそろえる

授業動画の見方(20分)

  1. 動画の最初の5分だけを見る
  2. 先生の発話を「前時とのつなぎ」「ゴール提示」「問い(フック)」の3つに色分けしてメモする
  3. 生徒が口を動かしている時間を数える(秒単位のおおよそでよい)
  4. 自分の明日の導入と比べ、いちばん足りない要素を1つだけ取り入れる

他校の実践は、学年や生徒の状態が違います。そのまままねるより、「何をねらってこの順番にしているか」を読み取るつもりで見ましょう。

新しい言語材料の導入例文部科学省/mextchannel|新しい言語材料の導入の仕方例 大分県中津市立中津中学校 吉永 早紀子先生

使い方:中学校で新しい言語材料を導入する実際の授業です。最初の5分の先生の発話を書き取り、前時とのつなぎ・ゴール提示・フックの問いに分類します。

0540人クラスで導入を崩さない工夫

人数が多いクラスほど、導入の数分で「聞いていない層」が生まれやすくなります。以下の工夫で、全員を巻き込みやすくなります。

始まり方を毎回同じにする

「チャイム→起立・あいさつ→黒板のゴールを全員で音読」という流れを固定すると、生徒は迷わず動けます。ルーティンは退屈に見えて、実は大人数の授業を支える土台です。

問いは「全員が答えを持てる」形に

"Who knows the answer?" と聞くと、手を挙げるのはいつも同じ数人です。代わりに次のような指示にします。

  • "Write your answer in your notebook. One word is OK."
  • "Show me with your fingers. One, two, or three?"
  • "Tell your partner first. Then I'll ask some pairs."

指名は「ペアで話した後」に

いきなり個人を指名すると緊張が走ります。ペアで一度口に出してから指名すると、答えのハードルが大きく下がります。指名は座席表を見ながら列ごとにランダムに行うと、偏りを防げます。

板書は事前に

導入の5分で黒板に長く書いていると、その間に教室がざわつきます。ゴールと振り返り用の単語は、休み時間のうちに書いておくのが安全です。

授業の最初の5分を変えるBritish Council | TeachingEnglish|How to start your lesson in the right way (Classroom Management part 6/6)

使い方:授業の始め方をテーマにしたクラス運営シリーズの回です。チャイム直後の切り替えの工夫を1つ選び、この節の「始まり方を毎回同じにする」ルーティンに加えます。

ルーティンで授業を安定させるEdutopia|Building Strong Foundations With Classroom Routines

使い方:教室のルーティンで学びの土台を固める短い動画です。40人クラスで毎回固定する手順を3つに絞り、生徒に示す掲示を作ります。

06中学と高校で変えたい導入のポイント

同じ「最初の5分」でも、中学と高校では生徒が求めるものが少し違います。

中学:見通しと安心感を重視

中学生、特に1年生は「今日は何をするのか」が分からないと不安になりやすい時期です。ゴールに加えて、今日の活動の順番を3つほど板書しておくと安心して授業に入れます。

  • "Today: ① Review ② New grammar ③ Pair talk"

高校:目的と必然性を重視

高校生は「なぜこれを学ぶのか」に納得すると動きやすくなります。本文のテーマに関わる問いや、実際の場面でどう使えるかを示すと効果的です。

  • "Have you ever read a news article about food waste? Today's text will give you a new idea about it."
  • "In this lesson, you'll learn an expression you can use in an interview or a presentation."

どちらの場合も、導入の最後の一言を「では、教科書を開いて」ではなく "Let's find out."(確かめてみよう) のように、問いの答えを探しに行く言葉にすると、本題への移り方がなめらかになります。

07よくある失敗と立て直し方

導入でつまずくパターンは、だいたい決まっています。

  1. 導入が長すぎる:盛り上がって10分以上かかり、本題の時間が足りなくなる。→タイマーを見える位置に置き、5分で切る習慣をつける。
  2. フックが本時とつながっていない:面白い話題でも、今日の文法や本文と関係がないと効果は薄い。→「この問いの答えは今日の授業の中にあるか?」を事前に確認する。
  3. ゴールを読むだけで終わる:板書を読み上げただけでは記憶に残らない。→全員で音読し、隣の人に「今日のゴールは何?」と英語か日本語で言わせる。
  4. 前時の振り返りがテストになってしまう:答えられない生徒が萎縮する。→振り返りは「思い出せなくてもOK、隣と相談してよい」とはっきり伝える。

もし導入がうまくいかなかった日も、焦る必要はありません。本題の途中で「さっきのゴール、ここで使うよ」と黒板を指すだけで、軌道修正できます。

授業の始め方でつまずかないJo Gakonga - ELT Training|CELTA TP Potholes - Starting a lesson well

使い方:授業の冒頭でありがちな落とし穴を扱う、教育実習生向けの解説です。この節の4つの失敗と重なる点に印をつけ、次の授業でまず1つを直します。

081週間で導入を変えるための練習メニュー

いきなり全部を完璧にしようとすると続きません。1週間でひとつずつ試してみましょう。

  • 月曜:全クラスで本時のゴールを「〜できる+例文」で板書する
  • 火曜:前時の振り返りを「ペアで20秒」に変えてみる
  • 水曜:フックの問いを1つ用意し、答えを言わずに本題へ入る
  • 木曜:導入にタイマーを使い、5分以内に収める
  • 金曜:授業の最後に、導入のゴールをもう一度指して振り返る

週末に、どのクラスで一番スムーズだったかをメモしておくと、翌週の改善点が見えてきます。

導入を整えるのは、授業全体の設計を見直すきっかけにもなります。「今日のゴールを1文で言えるか」を授業準備の最初に確認するだけでも、授業の芯がぶれにくくなります。

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今日やること

よくある質問

ウォームアップと導入は両方必要ですか?

時間に余裕があれば両方あると理想的ですが、短い授業では、前時の振り返りの中で英語を話す活動を入れることで、ウォームアップの役割も兼ねられます。大切なのは、本時のゴールにつながる流れになっているかどうかです。

ゴールは英語と日本語のどちらで書くべきですか?

生徒の実態に合わせてかまいません。中学1年の前半なら日本語中心に英語の例文を添え、慣れてきたら英語のゴールに移行する、という段階的な方法もおすすめです。

フックの問いが思いつかない日はどうすればいいですか?

本文の挿絵や題名を見せて「何の話だと思う?」と予想させるだけでも十分なフックになります。凝った教材を毎回作る必要はありません。

読了ボーナス

最後まで読んだあなたに、目から鱗をもう1枚

ホント?ウソ?10問チャレンジ目から鱗をぜんぶ見る

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