英語授業の導入のコツ|最初の5分で「今日の授業」に引き込む方法
チャイムが鳴ってから教科書が開くまでの5分間。ここがぼんやりすると、残りの45分もなんとなく流れてしまいます。この記事では、歌やスモールトークのような「ウォームアップ」とは別に、**本時の学習内容へ生徒を連れていくための導入**に絞って、明日から使える型を紹介します。

01導入の5分は「助走」ではなく「地図を渡す時間」
授業の導入というと、「まず雰囲気を温める」ことに目が向きがちです。もちろん大切ですが、それだけだと生徒は「楽しかったけど、今日は何を学ぶんだっけ?」という状態のまま本題に入ります。
導入の役割は、大きく3つに整理できます。
- 前の授業とのつなぎ:前回の学びを思い出させ、今日の内容と結びつける
- 本時のゴール提示:授業の終わりに何ができるようになるのかを示す
- 問い(フック)の投げかけ:今日の内容を「知りたい」「使いたい」と思わせる
この3つが5分に収まっていると、生徒は授業の地図を手に持った状態で本題に入れます。逆に、どれかが抜けると「今どこにいるのか」が分からなくなる生徒が増えます。
ポイント:ウォームアップは「英語モードへの切り替え」、導入は「今日の学習内容への橋渡し」。役割を分けて考えると、5分の使い方がはっきりします。
使い方:授業の始めに見通しを示す方法の1分動画です。この節の3つの役割のうち「本時のゴール提示」の伝え方を、明日の授業の板書計画に書き込みます。
02最初の5分の時間配分モデル
ここでは50分授業を想定した、導入5分の配分例を紹介します。
- 0:00〜1:00 着席・あいさつ・ルーティン:板書済みのゴールを指し、全員の視線を前に集める
- 1:00〜2:30 前時の振り返り(想起):前回の文や単語を思い出させる短い問い
- 2:30〜3:30 本時のゴール提示:Can-Doの形で1文、板書またはスライドで示す
- 3:30〜5:00 フックの問い:今日の文法や本文に関わる問いを投げ、ペアで10秒だけ話す
たとえば中学2年で比較級を扱う日なら、流れはこうなります。
前時の振り返り(1分半)
前回学んだ形容詞を黒板に3つだけ書き、次のように聞きます。
- "Look at these words: tall, fast, old. Make one sentence about your family. You have 20 seconds."
- "OK, tell your partner. Go!"
ゴール提示(1分)
- "Today's goal: You can compare two things. For example, you can say, 'My brother is taller than me.'"
フックの問い(1分半)
教師の自作写真や簡単なイラストで、2匹の犬を見せます。
- "Which dog is bigger? How do you say that in English? Guess!"
答えを言わせきらず、「その言い方を今日学びます」で本題に入るのがコツです。答えを最初に教えてしまうと、フックが効きません。
使い方:授業の導入にSmall Talkを取り入れる3分ほどの実践紹介です。この節の配分モデルのどこにSmall Talkを入れるか、入れるなら何秒にするかを決めます。
03ゴール提示は「生徒の言葉」で書く
本時のゴールを板書するとき、「比較級の用法を理解する」と書く先生は少なくありません。しかし、これは教師側の言葉です。生徒にとっては、何ができればOKなのかが見えにくくなります。
おすすめは、「〜できる」+具体的な英文例の組み合わせです。
- ×「比較級を理解する」
- ○「2つのものを比べて言える(例:Tokyo is bigger than Osaka.)」
- ×「本文の内容を理解する」
- ○「主人公が悩んだ理由を、本文の言葉を使って2文で説明できる」
英語で書く場合も、短く具体的にします。
- "Goal: I can explain why Ken changed his mind in two sentences."
- "Goal: I can ask my friend three questions about the weekend."
このゴールは、授業の最後の振り返りでもう一度使います。導入と終わりで同じ文を指すと、生徒は「今日はこれができるようになった」と自分で確かめられます。
ポイント:ゴールの板書は授業中ずっと消さない位置に。黒板の左上など、定位置を決めておくと毎回探さずに済みます。
04導入5分を見直すための動画と資料:授業研究に使える4本と見方
導入の型は、ほかの先生の授業を見るといちばん早く身につきます。次の素材は、短い時間で「導入の設計」を確かめられるものです。
| 素材 | 内容 | 授業準備での使い方 |
|---|---|---|
| 文部科学省の授業実践動画(下に掲載) | 中学校で新しい言語材料を導入する実際の授業 | 先生の最初の発話を書き取り、前時とのつなぎ・ゴール提示・問いのどれに当たるかを分類する |
| Edutopia「Framing the Lesson」(下に掲載) | その時間の見通しを生徒と共有する1分ほどの紹介 | ゴールの板書の位置と、授業の最後に指す場面までを自分の授業で決める |
| TeachingEnglish(British Council) | ブリティッシュ・カウンシルの授業プランが集まる先生向けサイト | lead-in(導入)の部分だけを読み、フックの問いの作り方を比べる |
| 国立教育政策研究所:指導資料・事例集 | 学習評価の参考資料などがまとまったページ | 単元の評価規準を確かめ、本時のゴールの文と言葉をそろえる |
授業動画の見方(20分)
- 動画の最初の5分だけを見る
- 先生の発話を「前時とのつなぎ」「ゴール提示」「問い(フック)」の3つに色分けしてメモする
- 生徒が口を動かしている時間を数える(秒単位のおおよそでよい)
- 自分の明日の導入と比べ、いちばん足りない要素を1つだけ取り入れる
他校の実践は、学年や生徒の状態が違います。そのまままねるより、「何をねらってこの順番にしているか」を読み取るつもりで見ましょう。
使い方:中学校で新しい言語材料を導入する実際の授業です。最初の5分の先生の発話を書き取り、前時とのつなぎ・ゴール提示・フックの問いに分類します。
0540人クラスで導入を崩さない工夫
人数が多いクラスほど、導入の数分で「聞いていない層」が生まれやすくなります。以下の工夫で、全員を巻き込みやすくなります。
始まり方を毎回同じにする
「チャイム→起立・あいさつ→黒板のゴールを全員で音読」という流れを固定すると、生徒は迷わず動けます。ルーティンは退屈に見えて、実は大人数の授業を支える土台です。
問いは「全員が答えを持てる」形に
"Who knows the answer?" と聞くと、手を挙げるのはいつも同じ数人です。代わりに次のような指示にします。
- "Write your answer in your notebook. One word is OK."
- "Show me with your fingers. One, two, or three?"
- "Tell your partner first. Then I'll ask some pairs."
指名は「ペアで話した後」に
いきなり個人を指名すると緊張が走ります。ペアで一度口に出してから指名すると、答えのハードルが大きく下がります。指名は座席表を見ながら列ごとにランダムに行うと、偏りを防げます。
板書は事前に
導入の5分で黒板に長く書いていると、その間に教室がざわつきます。ゴールと振り返り用の単語は、休み時間のうちに書いておくのが安全です。
使い方:授業の始め方をテーマにしたクラス運営シリーズの回です。チャイム直後の切り替えの工夫を1つ選び、この節の「始まり方を毎回同じにする」ルーティンに加えます。
使い方:教室のルーティンで学びの土台を固める短い動画です。40人クラスで毎回固定する手順を3つに絞り、生徒に示す掲示を作ります。
06中学と高校で変えたい導入のポイント
同じ「最初の5分」でも、中学と高校では生徒が求めるものが少し違います。
中学:見通しと安心感を重視
中学生、特に1年生は「今日は何をするのか」が分からないと不安になりやすい時期です。ゴールに加えて、今日の活動の順番を3つほど板書しておくと安心して授業に入れます。
- "Today: ① Review ② New grammar ③ Pair talk"
高校:目的と必然性を重視
高校生は「なぜこれを学ぶのか」に納得すると動きやすくなります。本文のテーマに関わる問いや、実際の場面でどう使えるかを示すと効果的です。
- "Have you ever read a news article about food waste? Today's text will give you a new idea about it."
- "In this lesson, you'll learn an expression you can use in an interview or a presentation."
どちらの場合も、導入の最後の一言を「では、教科書を開いて」ではなく "Let's find out."(確かめてみよう) のように、問いの答えを探しに行く言葉にすると、本題への移り方がなめらかになります。
07よくある失敗と立て直し方
導入でつまずくパターンは、だいたい決まっています。
- 導入が長すぎる:盛り上がって10分以上かかり、本題の時間が足りなくなる。→タイマーを見える位置に置き、5分で切る習慣をつける。
- フックが本時とつながっていない:面白い話題でも、今日の文法や本文と関係がないと効果は薄い。→「この問いの答えは今日の授業の中にあるか?」を事前に確認する。
- ゴールを読むだけで終わる:板書を読み上げただけでは記憶に残らない。→全員で音読し、隣の人に「今日のゴールは何?」と英語か日本語で言わせる。
- 前時の振り返りがテストになってしまう:答えられない生徒が萎縮する。→振り返りは「思い出せなくてもOK、隣と相談してよい」とはっきり伝える。
もし導入がうまくいかなかった日も、焦る必要はありません。本題の途中で「さっきのゴール、ここで使うよ」と黒板を指すだけで、軌道修正できます。
使い方:授業の冒頭でありがちな落とし穴を扱う、教育実習生向けの解説です。この節の4つの失敗と重なる点に印をつけ、次の授業でまず1つを直します。
081週間で導入を変えるための練習メニュー
いきなり全部を完璧にしようとすると続きません。1週間でひとつずつ試してみましょう。
- 月曜:全クラスで本時のゴールを「〜できる+例文」で板書する
- 火曜:前時の振り返りを「ペアで20秒」に変えてみる
- 水曜:フックの問いを1つ用意し、答えを言わずに本題へ入る
- 木曜:導入にタイマーを使い、5分以内に収める
- 金曜:授業の最後に、導入のゴールをもう一度指して振り返る
週末に、どのクラスで一番スムーズだったかをメモしておくと、翌週の改善点が見えてきます。
導入を整えるのは、授業全体の設計を見直すきっかけにもなります。「今日のゴールを1文で言えるか」を授業準備の最初に確認するだけでも、授業の芯がぶれにくくなります。
このコラムで使うサイト・アプリ
もっと見たい人へ
今日やること
よくある質問
ウォームアップと導入は両方必要ですか?
時間に余裕があれば両方あると理想的ですが、短い授業では、前時の振り返りの中で英語を話す活動を入れることで、ウォームアップの役割も兼ねられます。大切なのは、本時のゴールにつながる流れになっているかどうかです。
ゴールは英語と日本語のどちらで書くべきですか?
生徒の実態に合わせてかまいません。中学1年の前半なら日本語中心に英語の例文を添え、慣れてきたら英語のゴールに移行する、という段階的な方法もおすすめです。
フックの問いが思いつかない日はどうすればいいですか?
本文の挿絵や題名を見せて「何の話だと思う?」と予想させるだけでも十分なフックになります。凝った教材を毎回作る必要はありません。
読了ボーナス


