小学校英語の歌とチャンツの使い方|ねらい別の活用法と手順
歌やチャンツは、小学校英語の授業で欠かせない活動です。でも「毎回流しているだけで、ねらいがよくわからない」という声もよく聞きます。この記事では、歌とチャンツをなぜ使うのか、どう育てていけば子どもの口から英語が出てくるのかを、そのまま使えるオリジナルのチャンツ例とあわせて紹介します。

01歌とチャンツを使う3つのねらい
文部科学省の学習指導要領解説では、歌やチャンツを通して英語特有のリズムやイントネーションを体得し、日本語と英語の音の違いに気づくことが例として挙げられています。現場でのねらいは、大きく次の3つに整理できます。
- 英語のリズムに慣れる:英語は強く読む部分と弱く読む部分の差がはっきりしています。手拍子に合わせると、その感覚が自然に身につきます。
- 表現を何度も口に出す:同じ文を10回言わせると退屈ですが、リズムに乗せれば楽しく繰り返せます。
- クラスの雰囲気をつくる:授業の最初に歌うことで「英語の時間が始まる」スイッチが入ります。
ポイント:歌は「雰囲気づくり」、チャンツは「表現の口慣らし」と役割を分けて考えると使いやすくなります。
歌とチャンツの違い
- 歌:メロディーがあり、楽しく覚えやすい。ただし、メロディーに合わせて音が伸びたり、実際の会話とリズムが変わったりすることがあります。
- チャンツ:メロディーがなく、一定のリズムに乗せて言葉を言う。会話に近いリズムで練習できるのが強みです。
例えば What do you want? という表現は、歌よりもチャンツのほうが、実際に話すときのリズムに近い形で練習できます。単元の表現を「使える」ようにしたいときは、チャンツを中心にしましょう。
使い方:チャンツ・ライム・輪唱を授業に取り入れる方法を紹介する先生向けの動画です。この節の3つのねらいのうち「英語のリズムに慣れる」を意識して、手拍子の入れ方を確かめます。
021曲を1単元で育てる5ステップ
歌やチャンツは、1回で完璧に言えることを目指しません。単元全体を通して少しずつ育てていきます。
- 聞くだけ(1時間目):Just listen. と言って、まずは聞かせます。聞こえた単語を指で数えるなど、聞き方にお題を出すと集中します。
- 一部だけ言う(2時間目):繰り返し出てくるフレーズだけ、子どもが言います。
- 動作をつける(3時間目):意味に合わせたジェスチャーをつけると、意味と音が結びつきます。
- 全部言う(4時間目):音声に合わせて全体を言います。
- 替え歌・替えチャンツ(5時間目以降):自分の好きなものに言葉を入れ替えて言います。
最後の「替える」段階が特に大切です。決まった歌詞を言うだけでなく、自分のことを言う表現に変わった瞬間、歌が「使える英語」になります。
使い方:チャンツを使った指導の研修映像で、3分ほどです。リズムに乗せて表現をくり返す進め方を見て、この節の「一部だけ言う」「全部言う」段階の練習に使います。
03すぐ使えるオリジナルチャンツ例
手拍子(パン・パン)に合わせて言う、原田英語オリジナルのチャンツです。
好きなものを言うチャンツ(3・4年向け)
- Do you like apples? (パン・パン)
- Yes, I do! Yes, I do! (パン・パン)
- Do you like carrots? (パン・パン)
- No, I don't! No, I don't! (パン・パン)
慣れたら apples と carrots を子どもが好きな食べ物に入れ替えます。
時間割のチャンツ(5・6年向け)
- What do you have on Monday?
- I have math, I have P.E., I have English on Monday!
曜日と教科を入れ替えれば、何度でも使えます。
作り方のコツ
- 1行は4拍に収まる長さにする
- 質問と答えをセットにする
- 入れ替える部分を1か所に絞る
チャンツは先生の手作りでも十分です。完璧なリズムより、子どもが言いやすいことを優先しましょう。
使い方:オリジナルの語彙チャンツの作り方を紹介する短い動画です。この節の作り方のコツ(4拍・質問と答え・入れ替え1か所)と合わせて、今の単元のチャンツを1つ作ります。
04歌とチャンツの素材サイトと、先生用の「教え方動画」の使い方
単元の表現に合う歌を探すときは、子ども向けに作られた歌のサイトから選ぶと、テンポや語数がちょうどよいものが見つかりやすくなります。
| サイト | 特徴 | 使い方 |
|---|---|---|
| Super Simple Songs | 英語の先生が作った、くり返しの多い子ども向けの歌。公式チャンネルには先生向けの教え方動画もある | あいさつ・天気・曜日の歌を「毎時間の歌」に。教え方動画でジェスチャーを確かめてから授業で使う |
| Maple Leaf Learning | 日本の英語教室発の、体を動かして覚える子どもの歌。先生用のビデオもある | 3年生の歌の時間を長めにとるときに。動作つきで表現を口慣らしする |
| Dream English Kids | 英語の先生が作った、英語を学ぶ子どものための歌 | 単元の表現(Do you like ...? など)が入った歌を探す |
| Genki English | 日本の小学校から生まれた英語の歌とゲーム。教材の多くは先生向けの有料会員向け | 無料で見られる歌から、単元に合うものを1つ選ぶ |
歌を選ぶ3つのチェック
- 単元の表現が3回以上くり返し出てくるか
- 1回目に聞いたとき、先生が無理なく口ずさめる速さか
- 替え歌にできる「入れ替え部分」が1か所あるか
授業で動画を映すときは、事前に最後まで見て、広告や関連動画が出ない形で再生しましょう。音声だけで流す日を作ると、文字や映像に頼らず音に集中する時間になります。
使い方:Super Simple Learning公式による、あいさつの歌「Hello Hello!」の教え方の実演です。導入とジェスチャーの入れ方を見て、この節の5ステップの1〜3時間目の進め方に当てはめます。
05学期ごとのレパートリー計画を立てる
歌やチャンツは、行き当たりばったりに選ぶより、学期ごとに「レパートリー」を決めておくと、子どもの口にしっかり残ります。
1学期
- あいさつの歌(毎時間)
- 単元の表現のチャンツ(単元ごとに1つ)
2学期
- 1学期の歌の中から、子どもに人気の曲を「帯」で続ける
- 季節の行事(ハロウィンなど)の歌を1曲追加
3学期
- 1年間で扱ったチャンツを「メドレー」にして振り返る
- 替えチャンツの発表会をする
同じ曲を長く使うのは、決して手抜きではありません。何度も言ったことのある表現は、子どもにとって「自分の英語」になっていきます。
ポイント:新しい曲を増やすより、慣れた曲の「替える部分」を増やしていくほうが、使える表現が広がります。
使い方:曜日の歌を教室で教える方法の紹介です。1学期の「毎時間の歌」の候補として見て、この節のレパートリー計画に、あいさつの後の帯活動として書き入れます。
06よくある失敗と改善策
- 毎回流すだけ:聞き方のお題(「何回 like が聞こえた?」など)を1つ出すだけで、聞く質が上がります。
- 難しすぎる歌を選ぶ:スピードが速い、語数が多い歌は、子どもが口を動かせません。単元の表現が繰り返し出てくる、ゆっくりめの曲を選びましょう。
- 高学年が恥ずかしがる:大きな声を求めず、ささやき声やリズムだけ手でたたくなど、参加の仕方を選べるようにします。
- 歌詞を読ませる:3・4年では文字を見せずに音で覚えるのが基本です。5・6年でも、まず音で十分に慣れてから文字を見せましょう。
ポイント:高学年には「かっこいい」リズムのチャンツが好評です。手拍子をボイスパーカッション風にするだけでも雰囲気が変わります。
07歌とチャンツを振り返りや評価にどうつなげるか
歌やチャンツは楽しい活動ですが、ねらいがあいまいだと「やっただけ」で終わってしまいます。単元の中で次のようにつなげましょう。
- 単元のはじめ:チャンツで表現に慣れる
- 単元の中盤:チャンツの一部を、自分の答えに入れ替えてペアで言い合う
- 単元の終わり:チャンツで練習した表現を使って、インタビューや発表をする
振り返りでは、「チャンツの中で言えるようになったフレーズは?」と聞き、1つ書かせるとよいでしょう。先生にとっても、どの表現が子どもの口に残っているかを知る手がかりになります。
なお、歌を上手に歌えるかどうかそのものを評価の中心にするのは避けましょう。大切なのは、歌やチャンツで慣れた表現を、実際のやり取りで使えるかどうかです。
チャンツからやり取りへつなぐ一言
チャンツの直後に、先生がそのまま子どもに質問を投げかけると、「言う」が「使う」に変わります。
- T: (チャンツの後で) Do you like carrots, Yuki?
- S: No, I don't!
- T: Oh, really? Me, neither. What vegetable do you like?
- S: I like corn.
このように、チャンツで何度も言った形がそのまま会話に出てくると、子どもは「チャンツで言ったのと同じだ」と気づき、自信をもって答えられます。毎時間の最初に、チャンツ→先生からの質問2〜3人、という流れを定番にしてみましょう。慣れてきたら、子ども同士でペアになり、チャンツの質問をお互いにたずね合う時間を1分だけとるのもおすすめです。
08家庭で歌を楽しむときのコツ(保護者向け)
家庭では、学校で歌っている歌を一緒に口ずさむのがいちばんです。「その歌、教えて」と子どもを先生役にすると、子どもは得意になって何度も歌ってくれます。
市販の英語の歌やYouTubeの子ども向け音楽を使う場合は、次の点を意識しましょう。
- 同じ曲を何度も聞く(新しい曲を次々に増やさない)
- 車の中や朝の支度の時間など、「ながら」で流す
- 歌詞の意味を全部説明しなくてよい
まずは今週、授業(または家庭)で使う歌を1曲に決め、5ステップの「聞くだけ」から始めてみましょう。
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よくある質問
歌の選び方で気をつけることは何ですか?
単元の表現が繰り返し出てくること、スピードがゆっくりめであること、子どもが口を動かせる長さであることの3つを基準にしましょう。教科書やデジタル教材に付属している歌は、この点がよく考えられています。
チャンツの音源がないときはどうすればいいですか?
手拍子やタンバリンで十分です。先生が一定のリズムをたたき、それに合わせて言うだけでチャンツになります。
高学年が歌わなくなってきました。
声の大きさを求めず、ささやき声、リズムだけ、グループごとの掛け合いなど、参加の形を選べるようにしましょう。チャンツ中心に切り替えるのも効果的です。
読了ボーナス


