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第13章|素材と道具の使いこなしコラム2026-09-282026-10-09 更新

CLT(コミュニカティブ・アプローチ)とは|英語授業での始め方と実例

「コミュニケーション重視の授業に」と言われても、具体的に何を変えればいいのか迷う先生は多いはずです。CLT(Communicative Language Teaching)は、特定の手順というより「言葉は意味を伝え合うために使うもの」という考え方の束です。この記事では、その考え方を中学・高校の50分授業に落とし込み、40人クラスでも回せる具体的な活動例とセットで紹介します。

01CLTとは何か:「練習」から「伝え合い」へ

CLT(コミュニカティブ・アプローチ)は、1970年代ごろから広がった外国語教育の考え方です。それまで主流だった文型の反復練習(パターン・プラクティス)に対して、「実際に意味をやり取りする中でこそ言葉は身につく」という立場をとります。

特定の教科書や手順が決まっているわけではなく、いくつかの共通する特徴でとらえると分かりやすくなります。

  • 意味のやり取りがある:相手が知らない情報を伝える、意見を交換するなど、話す「必然性」がある
  • 目的・場面・状況がある:誰に、何のために話すのかがはっきりしている
  • 流暢さも大事にする:正確さだけでなく、止まらずに伝え続ける力も育てる
  • 学習者が主役:教師の説明時間より、生徒が英語を使う時間を増やす

日本の学習指導要領でも、コミュニケーションを行う目的・場面・状況を明確に設定した言語活動が重視されています。CLTはその考え方と相性のよい土台だと言えます。

ポイント:CLTは「文法を教えない授業」ではありません。文法を「使うための道具」として位置づけ直す考え方です。

「言語活動を通して学ぶ」とは文部科学省/mextchannel|中学校の外国語教育はこう変わる!②「言語活動を通して、言語材料を学ぶ」

使い方:文部科学省による「言語活動を通して言語材料を学ぶ」考え方の解説です。校内研修の冒頭で見て、この節のCLTの4つの特徴と重なる点を確かめます。

02「伝え合い」の必然性を作るインフォメーション・ギャップ

CLTの授業づくりで一番使いやすいのがインフォメーション・ギャップです。ペアの2人が別々の情報を持ち、英語で聞き合わないと課題が完成しない状態を作ります。

授業例:中2「過去形」で週末の予定表を埋める

  1. Aさんには「Kenの週末」、Bさんには「Yukiの週末」の表を配る(土日の午前・午後に何をしたか)
  2. 相手の表の空欄を、質問して埋める
  3. 最後に「2人の共通点」を1文で書く

生徒が使う英語の例です。

  • What did Yuki do on Saturday morning?
  • She played tennis with her sister.
  • Really? Ken played tennis, too!

教師の指示は短く、英語でモデルを見せます。

  • Work in pairs. A, don't show your sheet to B.
  • Ask questions and fill in the blanks.
  • You have three minutes. Ready, go!

ポイントは、答えが教科書に書いていないことです。相手に聞かないと分からない状況が、自然な質問を生みます。

タスク例:間違い探しAmerican English|Task-Based Teaching: Spot the Difference

使い方:情報の差を使ってペアで話す「間違い探し」の活動例です。この節の予定表の活動と同じ構造で、教科書の絵を2枚に分けた間違い探しを1つ作ります。

03活動づくりに使える公式資料と教材サイト、ワークシートを作る手順

インフォメーション・ギャップのワークシートは、一から考えると時間がかかります。公式の授業映像で「目的・場面・状況」の示し方を確かめ、教材サイトの型を借りて、教科書の文型に合わせて作り直すのが近道です。

目的使うページ・サイト使い方
授業のイメージをつかむ外国語活動・外国語科授業を観る(文部科学省)学校段階ごとの授業動画が掲載されている。中学校の「やり取り」の授業を1本見て、教師が場面をどう示しているかをメモする
言語活動の考え方を確かめる中学校学習指導要領解説(文部科学省)外国語編の言語活動の説明を読み、自分の活動に目的・場面・状況があるかを確かめる
ワークシートの型を借りるiSLCollective世界の先生が作ったプリントを検索できる(ダウンロードは無料登録が必要)。information gap や find someone who で検索し、形だけを参考にする
Practiceを短いゲームにWordwall先生が作った英語ゲームが使える。新出文法の言い換えドリルを、2分のゲームにして帯活動に入れる

教科書の文型からA/Bシートを作る手順(20分)

  1. 教科書の新出文型を1つ選ぶ(例:過去形の疑問文)
  2. 表を1つ作り、空欄を半分ずつAとBに分ける(Aが持つ情報はBの空欄、Bが持つ情報はAの空欄)
  3. 表の下に、生徒が使う質問の型を1つだけ書く(What did ___ do on ___?)
  4. 最後に「2人の共通点を1文で書く」欄をつけ、活動のゴールにする

他の先生が作ったプリントは、作者の利用条件を確かめたうえで、自分の教室用に作り直して使いましょう。

04文法指導とどう両立させるか:PPPとの組み合わせ

「CLTだと文法が定着しないのでは」という心配はもっともです。実際の授業では、文法の明示的な説明とコミュニケーション活動を組み合わせるのが現実的です。

よく使われる流れがPPP(Presentation → Practice → Production)です。

  1. Presentation(5〜8分):場面の中で新出文法を見せる。例:先生の週末の写真を見せながら I went to Kyoto. I ate yudofu. と話す
  2. Practice(10分):口頭ドリルやペアでの短い言い換え練習
  3. Production(15〜20分):インフォメーション・ギャップや、自分のことを話す活動

CLTの考え方を取り入れるなら、Practiceの段階から少しずつ「意味」を入れていくのがコツです。たとえば、ただ動詞を過去形に変えるドリルではなく、「本当のことを言う」ルールにするだけで、生徒は内容を考え始めます。

  • Did you watch TV last night? — Yes, I did. I watched a baseball game.

同じ文型でも、自分の本当の情報を言うだけで意味のやり取りになる。これが一番手軽な第一歩です。

新しい言語材料の導入例文部科学省/mextchannel|新しい言語材料の導入の仕方例 大分県中津市立中津中学校 吉永 早紀子先生

使い方:中学校での新しい言語材料の導入の仕方を示した実践例です。この節のPresentationの5〜8分で、場面の中で文法を見せる流れの参考にします。

0540人クラスで回すための工夫

40人のクラスでペア活動をすると、「うるさくなる」「日本語になる」「誰が話したか分からない」という悩みが出てきます。次の工夫で、かなり回しやすくなります。

  • 時間を短く区切る:最初は90秒。タイマーをスクリーンに映すと集中が続きます
  • 役割を明確に:「窓側がA、廊下側がB」と座席で決めておけば、毎回説明する必要がありません
  • ペアを変える:Change partners! の合図で、前後や斜めの人と組み直す。3回繰り返すと同じ英語を3回言うことになり、自然に練習量が増えます
  • 日本語OKの言葉を決める:分からない単語だけは「How do you say ○○ in English?」と聞く、というルールにする
  • 最後に2〜3ペアだけ発表:全員の前で話すのが苦手な生徒には、先生が近くで聞いた良い例を紹介する形にします

机間指導のときは、全部を直そうとせず、よく出ている間違いを1つだけメモしておき、活動後に全体で扱います。

活動をスムーズに始める段取りCambridge University Press ELT|Cambridge Secondary: Tips for Setting Up Classroom Tasks

使い方:教室でのタスクの始め方、つまり活動をスムーズに始める段取りを扱う動画です。この節の座席でのA/B固定と合わせ、指示の順番を自分のクラス用に書き出します。

06よくある失敗と、その立て直し方

CLT型の活動を入れ始めたときによくある失敗を3つ挙げます。

1. 活動の目的が生徒に伝わっていない

「なぜこれをするのか」が分からないと、生徒は作業として済ませてしまいます。活動前に「ゴール」を1文で示しましょう。例:By the end of this activity, you can talk about your weekend for 30 seconds.

2. 準備なしでいきなり話させる

即興は大事ですが、使う表現を持たないまま話させると沈黙が続きます。黒板に「使えそうな表現」を3〜5個書いておくだけで、話し出しやすくなります。

3. 活動後の振り返りがない

楽しかったけれど何も残らない、を避けるために、最後の3分で「言いたかったけど言えなかった英語」を書かせます。次の授業の最初にそれを取り上げると、学びがつながります。

ポイント:CLTは一度で完成しません。1単元に1つ、意味のやり取りがある活動を入れるところから始めましょう。

07教科書1ページをCLT型に変える3つのアレンジ

新しい教材を作らなくても、いつもの教科書の1ページを少しアレンジするだけでCLTらしい活動になります。

1. 本文を「質問し合う材料」にする

本文を読んだあと、生徒に答えが本文に書いてある質問を1つ、書いていない質問を1つ作らせます。

  • 本文にある質問:Where did Emma go last summer?
  • 本文にない質問:If you were Emma, what would you do there?

後者は正解がないので、ペアで意見を交換する自然なきっかけになります。

2. 登場人物になりきって話す

対話文の登場人物の「その後」を想像して、ペアで30秒の会話を作ります。Continue the conversation. What will they say next? と指示するだけで、既習表現を使った創造的なやり取りが生まれます。

3. 新出文法の「本当の使い道」を探す

たとえば現在完了を学んだら、Have you ever...? を使ってクラスの中で「一番珍しい経験をした人」を探す活動にします。Find someone who... 形式のワークシートは準備も簡単で、教室を歩き回るので大人数でも盛り上がります。

  • Have you ever eaten kusaya?
  • No, I haven't. Have you?

どれも「生徒が自分のことを言う」「相手の答えが予想できない」という共通点があります。この2つがそろえば、教科書の練習もコミュニケーションに変わります。

文法と語彙をコミュニカティブにBritish Council | TeachingEnglish|How can we teach vocabulary and grammar more communicatively?

使い方:語彙や文法をよりコミュニカティブに教える方法を考えるウェビナーです。この節の3つのアレンジに加えられるアイデアを1つ見つけ、次の単元で試します。

08明日から使える1週間の導入プラン

いきなり授業全体を変える必要はありません。1週間で少しずつ試すプランです。

  • 月曜:帯活動に「本当のことを言うQ&A」を2分入れる(例:What time did you get up today?)
  • 火曜:教科書本文の内容について、ペアで1つずつ質問を作って聞き合う
  • 水曜:インフォメーション・ギャップのワークシートを1枚作って試す
  • 木曜:活動のあとに「言えなかった英語」を回収
  • 金曜:回収した表現を全体で共有し、もう一度同じ活動をペアを変えてやる

同じ活動を「もう一度」やると、1回目よりずっと英語が出るようになります。生徒自身が上達を実感できる瞬間を、ぜひ作ってみてください。

このコラムで使うサイト・アプリ

もっと見たい人へ

ハーマー&ソーンベリーのCLT対談The New School|Communicative Language Teaching: Jeremy Harmer and Scott Thornbury | The New School
コミュニカティブ活動50のヒントEnglish with Cambridge|50 communicative activities and skills for language teachers | Cambridge Handbooks Pocket Books

今日やること

よくある質問

CLTを取り入れると、テストの点数が下がりませんか?

文法の説明や練習をやめるわけではないので、必ずしも下がるとは限りません。説明・練習・活用のバランスを取り、活用の場面でも既習文法を使う設計にすると、知識と運用がつながりやすくなります。

英語が苦手な生徒が多いクラスでもできますか?

できます。話す内容の型(モデル文)と使える表現を先に示し、時間を短く区切るのがコツです。単語1つで答えてもOKという段階から始め、徐々に文で話せるようにしていきましょう。

CLTとTBLTはどう違うのですか?

CLTはコミュニケーションを重視する広い考え方で、TBLT(タスク中心の指導)はその流れの中で「タスク」を授業の中心に置く具体的な指導法の一つと考えると分かりやすいです。

読了ボーナス

最後まで読んだあなたに、目から鱗をもう1枚

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