CLILとは|内容と言語を統合する英語授業の考え方と実践例
CLIL(Content and Language Integrated Learning)は、理科や社会、環境問題などの「内容」を学びながら、同時に英語も学ぶ授業の考え方です。ヨーロッパを中心に広がり、日本の中学・高校でも取り入れる先生が増えています。「英語で理科を教えるなんて無理」と思わなくても大丈夫。教科書の題材から始められる、小さなCLILの作り方を紹介します。

01CLILの基本:4つのC
CLILを説明するときによく使われるのが「4つのC」です。
- Content(内容):その授業で学ぶ教科的な内容。例:水の循環、プラスチックごみ、世界の気候
- Communication(言語):内容を理解・表現するための英語。専門語彙や、説明・比較・原因と結果を表す表現
- Cognition(思考):分類する、比べる、理由を考える、評価するなどの思考活動
- Culture / Community(文化・協学):他者や異文化との関わり、クラスメイトとの協働
ポイントは、英語を「学ぶ対象」だけでなく「学ぶための道具」として使うことです。生徒は内容に興味を持つことで、英語を使う必然性を感じやすくなります。
CLILには、授業の多くを英語で教科内容に使う「ハードCLIL」と、英語の授業の中で教科的な題材を扱う「ソフトCLIL」があるとよく説明されます。日本の英語の授業で取り入れやすいのは、後者のソフトCLILです。
使い方:CLILとは何か、何がCLILではないのかを整理する入門動画です。この節の4つのCとソフトCLILの説明と照らし合わせ、自分の授業で目指す形を決めます。
02教科書から始めるソフトCLIL
最近の中学・高校の英語教科書には、環境、科学、歴史、国際協力などの題材がたくさん入っています。それを「読んで訳す」だけで終わらせず、内容について考える活動を1つ足せば、それがソフトCLILの入口になります。
例:プラスチックごみの題材の場合
教科書本文を読んだあと、次の活動を加えます。
- 自分の1日で使ったプラスチック製品を英語でリストにする(a plastic bottle, a lunch box, a bag...)
- グループで「減らせるもの」「減らしにくいもの」に分類する(Cognition:分類)
- 減らすアイデアを1つ選び、理由を添えて発表する
使う英語の例です。
- We can bring our own bottles because it's easy.
- It is difficult to stop using plastic bags because shops give them to us.
ポイント:新しい教材を一から作らなくても、「分類する」「比べる」「理由を考える」活動を足すだけでCLILらしい授業になります。
使い方:CLILを授業に取り入れる方法と始めるときのポイントを紹介する動画です。教科書の環境・科学の単元を1つ選び、この節の「分類する」活動を足す計画を立てます。
03授業例:中学3年「世界の気候とくらし」
社会科の地理と連携しやすいテーマの例です。
ゴール:3つの都市の気温・降水量グラフを読み取り、そこに住む人の家や服装を予想して英語で説明する。
流れ(50分)
- ウォームアップ(5分):先生が写真を見せて質問。Is it hot or cold here? What are the people wearing?
- インプット(10分):簡単な英文で、グラフの読み方を示す。It is hot all year. / It rains a lot in July.
- グループ活動(20分):3都市のグラフを配り、各都市について「気候」「家」「服」を予想して表にまとめる
- 共有(10分):各グループが1都市を担当して発表。Our city is hot and dry. So people wear long clothes to protect themselves from the sun.
- 振り返り(5分):新しく知った英単語と、内容で驚いたことを1つずつ書く
グラフや写真といった視覚的な手がかりがあると、英語が苦手な生徒も内容に参加できます。社会科の先生に、事前にどの単元を学んだか聞いておくと、生徒の既有知識を活かせます。
使い方:年少の学習者向けのCLIL授業がどう進むかを示す授業デモです。対象は小学生ですが、視覚資料の使い方と指示の出し方を、この節の50分の流れに取り入れます。
04足場かけ(スキャフォールディング)の工夫
CLILで一番大事なのは、内容も英語も少し難しい課題に対して、足場かけ(スキャフォールディング)を用意することです。
- 語彙リスト:その日のキーワード8〜10語を、写真付きで示す
- 文の型(センテンス・スターター):I think... because... / It is similar to... / The main reason is...
- グラフィック・オーガナイザー:ベン図、表、原因→結果の矢印図などのワークシート
- 日本語の使用を段階的に:考えを整理する段階では日本語も認め、発表は英語で、と場面で分ける
- 視覚資料:写真、図、実物、短い動画(動画を使う場合は著作権のルールを確認)
生徒への指示の例です。
- Look at the graph. Which month is the hottest?
- Use this chart to compare the two cities.
- Talk with your group. You can use Japanese to think, but please present in English.
足場は、生徒が慣れてきたら少しずつ外していきます。
使い方:学びを支える足場かけの方法を5つ紹介する3分ほどの動画です。この節の足場かけの一覧と比べ、次のCLILの授業で使うものを2つ選びます。
05CLILの題材探しと足場かけに使える英語サイト
CLILの準備で時間がかかるのは、「生徒のレベルに合う英語の題材」と「視覚資料」を探す作業です。学習者や子ども向けに書かれた英語のサイトを使うと、語彙リストや文の型を作る手間が減ります。
| 目的 | 使うサイト | 使い方 |
|---|---|---|
| やさしい英語の題材 | National Geographic Kids | 動物・自然・宇宙の話を写真つきの英語で読める。題材の記事からキーワード8〜10語を選び、写真つきの語彙リストを作る |
| 先生の下調べ | National Geographic Education | 地理・生き物・環境の記事を学年別に読める。気候や生態系の基本的な説明を英語で確かめる |
| 視覚資料の動画 | PBS LearningMedia | アメリカの公共放送の教育動画を学年別に見られる(地域によって見られない動画もある)。授業で使う前に利用条件を確かめる |
| グラフの題材 | Our World in Data | 世界のデータを英語のグラフで公開している。気候や人口のグラフを、比べる・原因を考える活動の材料にする |
「世界の気候とくらし」の準備を英語サイトで進める手順(40分)
- National Geographic Education で、扱う気候の基本的な説明を読み、生徒に必要な語を10語選ぶ(15分)
- National Geographic Kids の写真つきの記事から、生徒に見せる写真の候補を探す(10分)
- 3都市の気温・降水量のグラフの元になるデータを用意し、It is hot all year. のような文の型を3つ決める(10分)
- 語彙リスト・文の型・表のワークシートを1枚にまとめる(5分)
写真や動画を授業で使うときは、各サイトの利用条件と、授業での著作物の利用のルールを確かめてからにしましょう。
0640人クラスでの進め方とよくある失敗
40人での工夫
- 4人×10グループにして、グループごとに担当テーマ(都市、国、生き物など)を変えると、発表のときに情報の差が生まれます
- 発表は全体でなく、グループ同士の交換発表にすると時間が節約できます
- 内容のまとめはワークシート1枚に統一し、提出させて評価の材料にします
よくある失敗
- 内容が難しすぎて英語どころではない:教科の先生と相談し、すでに学んだ内容を扱うと英語に集中できます
- 英語が簡単すぎて内容の学びがない:Why? How? の質問を入れて思考を深めます
- 先生の準備が大変すぎる:学期に1回、教科書の題材から1時間だけCLILにする、くらいの頻度から始めましょう
評価は「内容を理解したか」と「英語で説明できたか」を分けて見ると、どちらが課題かが分かりやすくなります。
07CLILで使える英語の「思考の型」一覧
CLILでは、内容について考えるための英語表現(学習言語)を意識して教えることが大切です。思考の種類ごとに、よく使う表現を整理しておくと便利です。
分類する
- These animals are mammals. Those are reptiles.
- We can divide them into two groups.
比べる
- City A is hotter than City B.
- Both cities have a lot of rain in summer.
- Unlike Tokyo, this city has no winter.
原因と結果を説明する
- Because the ice is melting, the sea level is rising.
- As a result, some islands may disappear.
意見と根拠を述べる
- I think we should reduce plastic because it hurts sea animals.
- According to the graph, ...
これらを1枚の「Thinking Phrases」シートにして、ノートの見返しに貼らせておくと、単元が変わっても繰り返し使えます。
指示の英語例です。
- Use at least one "comparing" phrase in your presentation.
- Check your Thinking Phrases sheet before you write.
内容が変わっても思考の型は共通なので、生徒は回数を重ねるごとに説明が上手になっていきます。
使い方:生徒同士の学びの対話を支える3つの方法を紹介する動画です。この節の Thinking Phrases シートを使った話し合いの進め方を考える材料にします。
08始めるための1か月プラン
- 1週目:次の学期の教科書で、理科・社会・環境などにつながる題材を1つ選ぶ
- 2週目:関連する教科の先生に、生徒がどこまで学んでいるかを聞く
- 3週目:キーワード10語、文の型3つ、ワークシート1枚を用意する
- 4週目:1時間だけ実施し、生徒の振り返りを読んで次に活かす
CLILは「英語の授業なのに内容が面白い」という体験を生徒に届けられる方法です。完璧を目指さず、1時間から試してみてください。
このコラムで使うサイト・アプリ
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よくある質問
CLILをするには教科の専門知識が必要ですか?
ソフトCLILであれば、教科書の題材や中学生向けの一般的な知識の範囲で十分に始められます。不安な内容は、その教科の先生に確認するのがおすすめです。
英語が苦手な生徒には難しすぎませんか?
写真やグラフなどの視覚資料、語彙リスト、文の型といった足場かけを用意すれば参加しやすくなります。考える段階では日本語も認めるなど、段階的に英語の割合を増やしましょう。
CLILとTBLTは同時に取り入れられますか?
はい。CLILの題材でタスク(例:環境にやさしい学校のルールを提案する)を設定するなど、組み合わせて使われることもよくあります。
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