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第13章|素材と道具の使いこなしコラム2026-09-282026-10-09 更新

英語教師の研修・研究会・学会の活用法|選び方と参加のコツ

「研修に行っても、翌週には元の授業に戻っている」――そんな経験はありませんか。研修・研究会・学会は、選び方と参加の仕方しだいで、授業を変えるきっかけにも、ただの出張にもなります。この記事では、英語の先生が学びの場を上手に使うための考え方と具体的な手順をまとめます。

01学びの場は大きく4種類

英語の先生が参加できる学びの場は、おおまかに次の4つに分けられます。

  1. 校内研修・教科会:同じ学校の先生と、目の前の生徒について話せる
  2. 自治体の研修:教育委員会や教育センターが行う研修。初任者研修や中堅教諭等資質向上研修など、職務として受けるものもある
  3. 地域・有志の研究会:地域の英語教育研究会や、先生たちが自主的に開く勉強会
  4. 学会・全国規模の大会:研究発表や実践報告が集まる場

それぞれ得意分野が違います。明日の授業のヒントがほしいなら研究会、授業の背景にある理論や研究を知りたいなら学会、同僚と方向性をそろえたいなら校内研修、というように目的で選ぶのが基本です。

ポイント:「どこに行くか」より「何を持ち帰りたいか」を先に決める。これだけで研修の満足度は大きく変わります。

02実在する主な団体と大会を知っておく

英語教育に関わる団体はたくさんありますが、ここでは原田英語が公式サイトなどで存在を確認できた代表的なものだけを紹介します。詳細や日程は必ず各団体の公式情報で確認してください。

  • 全国英語教育学会(JASELE):小学校から大学までの英語教育を扱う学会。地区の学会で構成され、毎年夏に全国規模の研究大会を開いています。
  • 全国英語教育研究団体連合会(全英連):中学・高校の英語の先生を中心とした研究団体の連合会。毎年全国英語教育研究大会を開き、授業公開や分科会があります。
  • 大学英語教育学会(JACET):主に大学の英語教育を扱う学会ですが、高校の先生にとっても接続の視点で参考になります。
  • 全国語学教育学会(JALT):日本で活動する語学教育者の団体で、英語での発表や交流が多いのが特徴です。

このほか、都道府県や市町村単位の英語教育研究会、教科書会社が開くセミナーなど、身近な場も多くあります。まずは自分の地域の研究会に顔を出してみるのが、一番ハードルの低い入り口です。

03公式サイトと、移動なしで参加できる学びの場

記事で紹介した団体のうち、公式サイトを開いて確かめられたものをまとめます。大会の日程やプログラム、参加の条件は毎年変わるので、必ず公式の最新情報で確かめてください。

団体公式サイト見るところ
大学英語教育学会(JACET)jacet.org大会や支部の研究会の案内
全国語学教育学会(JALT)jalt.org年次大会の案内。英語での発表が多い
IATEFL(国際英語教育学会)iatefl.orgイギリスを拠点にした国際的な英語教育の団体。大会の講演の一部は動画で見られる
教職員支援機構(NITS)nits.go.jp教員向けの研修。講義動画も公開されている

移動なしで参加できる学びの場

場使い方
TeachingEnglish(British Council)先生向けの記事とウェビナー。授業の悩みのキーワードで探す
Class Central世界の無料オンライン講座をまとめて探せる。teaching English などで検索し、提供元のサイトで受講する
学会の公式YouTubeチャンネル大会の基調講演が公開されていることがある(下の動画)

公式の動画やウェビナーは、「参加前の10分」の準備にも使えます。気になる講演を1本見てから大会のプログラムを読むと、印をつける発表が選びやすくなります。

JALT2019基調講演:中村麻里氏JALT Japan Association for Language Teaching|JALT2019 Conference Plenary Mari Nakamura: Collaboration Across Borders Is "Nothing?"

使い方:全国語学教育学会(JALT)の大会で行われた基調講演です。英語で行われる学会の雰囲気を知る入口として、最初の15分だけ聞き、要点を日本語で1文メモします。

04目的別の選び方

明日の授業を変えたい

地域の研究会や全英連の授業公開がおすすめです。実際の生徒を相手にした授業を見ると、発問の仕方や活動の切り替えなど、真似できる具体的な技が見つかります。

授業の理由づけを強くしたい

学会の発表は、「なぜその指導が効果的なのか」をデータや先行研究で説明しています。すべてを理解する必要はありません。自分の関心に近い発表を2〜3本聞くだけで、授業を説明する言葉が増えます。

仲間がほしい

小規模な勉強会や、オンラインの自主研修会が向いています。同じ悩みを持つ先生と定期的に話せる関係は、長く教師を続けるうえで大きな支えになります。

英語で学びたい

英語で発表や議論が行われる場に参加すると、教育の話題を英語で理解・発信する練習にもなります。

迷ったときの選び方の目安

「どれに行けばいいか分からない」ときは、次の順番で考えるとスムーズです。

  1. 今年度の自分の課題を1つ決める(例:スピーキング指導、評価、ICT活用)
  2. その課題を扱う分科会や発表があるかをプログラムで確認する
  3. 日程・費用・移動の負担が現実的かを確認する
  4. 参加後に同僚と共有できる内容かを考える

課題がはっきりしていれば、大会の規模や知名度に振り回されずにすみます。

05参加前・当日・参加後にやること

研修の効果は、当日よりも前後の準備で決まります。

参加前(10分)

  • 自分のクラスで今困っていることを1行で書く(例:「音読はするが、内容理解につながっていない」)
  • プログラムを見て、その悩みに関係しそうな発表や分科会に印をつける

当日

  • メモは「使えそうなこと」「疑問」「自分なら」の3つに分けて書く
  • 質疑応答で1つ質問する。難しければ終了後に個別に話しかけるだけでもOK

参加後(翌週まで)

  1. メモを見返して、来週試すことを1つだけ決める
  2. 実際に授業で試す
  3. うまくいったこと・いかなかったことを2行でまとめる
  4. 教科会や同僚との雑談で共有する

ポイント:「全部取り入れる」は失敗のもと。1つだけ試して、自分の生徒に合わせて調整するのが一番の学びです。

研修の資料は、持ち帰ったら1つのフォルダにまとめて保存しましょう。紙の資料はスキャンするか、表紙に「試したこと」「結果」を書き込んでから綴じておくと、数年後に見返したときにも役立ちます。

06発表する側に回ってみる

何度か参加したら、自分が発表することも考えてみましょう。「研究」と聞くと身構えるかもしれませんが、地域の研究会なら、日々の実践の報告から始められます。

発表の準備は、次のような流れで進めると取り組みやすくなります。

  1. 1学期間続けた実践を1つ選ぶ(例:帯活動のスモールトーク)
  2. 始める前と後の生徒の様子を、ワークシートや振り返りの記述から集める
  3. 「何をしたか」「生徒はどう変わったか」「課題は何か」の3点でまとめる
  4. 同僚に一度聞いてもらい、分かりにくいところを直す

発表すると、自分の実践を言葉にする過程で授業の目的がはっきりします。質疑応答で思いがけない視点をもらえるのも大きな収穫です。なお、生徒の作品や記述を使う場合は、学校のルールに沿って個人が特定されないよう十分に配慮してください。

JALT大会の発表要旨の書き方JALT Japan Association for Language Teaching|How to write a better abstract for the JALT2024 Conference call for presentation proposals

使い方:JALT公式による、大会発表の応募要旨の書き方の解説です。地域の研究会で発表する場合でも、「何をしたか・どう変わったか・課題」の3点を要旨にまとめる練習に使えます。

07オンライン研修と書籍・論文の上手な組み合わせ方

会場に足を運ぶ研修だけが学びの場ではありません。オンラインの研修会や、書籍・論文を組み合わせると、忙しい時期でも学びを途切れさせずにすみます。

オンライン研修のよいところ

  • 移動時間がなく、夜や休日でも参加しやすい
  • 録画を後から見られる場合もある
  • 遠方の先生の実践に触れられる

一方で、「ながら視聴」になりやすいのが弱点です。参加するときは、カメラをオフにしていても、紙のメモを手元に置いて「自分のクラスならどうするか」を書き込みながら聞くと、集中が続きます。

書籍・論文との組み合わせ方

研修で気になったテーマがあれば、関連する書籍を1冊読んでみましょう。学会の発表で紹介された研究は、学会誌や紀要に論文として掲載されていることもあります。すべてを読む必要はなく、要旨(アブストラクト)と結論だけを読むだけでも、発表の背景が理解しやすくなります。

おすすめの流れは次のとおりです。

  1. 研修やオンライン講座で興味を持つ
  2. 関連する本や記事を1本読む
  3. 授業で1つ試す
  4. また研修で質問する

この循環ができると、研修が「単発のイベント」ではなく、学び続けるための仕組みになります。

教室の会話を本物の交流へBritish Council | TeachingEnglish|Transforming classroom speaking into real communication

使い方:教室のスピーキングを本物の交流に近づける1時間ほどのウェビナーです。紙のメモに「自分のクラスならどうするか」を書き込みながら、週末に見ます。

08よくある失敗と今日からできること

  • 有名な講師の話を聞いて満足する:感動しても、自分の授業で試さなければ変化は起きません。
  • 遠方の大会ばかり狙う:費用や日程の負担が大きくなりがちです。地域の研究会とオンラインを組み合わせると続けやすくなります。
  • 1人で参加して誰とも話さない:懇親会や休憩時間の会話で得られる情報は意外と多いものです。
  • 職場に共有しない:学んだことを同僚と話すと、自分の理解も深まり、学校全体の授業改善につながります。

まずは、自分の地域の英語教育研究会の次回予定を調べてみましょう。そして手帳に「今困っていること」を1行だけ書いておく。それだけで、次の研修の見え方が変わります。

最新の教授法って何?Cambridge University Press ELT|Scott Thornbury – What's the latest teaching method?

使い方:「最新の教授法とは何か」を問う講演です。有名な講師の話を聞いて満足しないために、見終わったら来週試すことを1つだけ手帳に書きます。

このコラムで使うサイト・アプリ

もっと見たい人へ

英語教育のこれからを考えるIATEFL Online|Closing plenary - Future directions in ELT: where are we headed

今日やること

よくある質問

学会は大学の先生向けで、中高の先生には難しくないですか?

発表には理論寄りのものも実践寄りのものもあります。中高の先生の実践報告も多いので、プログラムのタイトルを見て身近なテーマから聞いてみるのがおすすめです。

参加費や旅費はどうすればいいですか?

職務として出張扱いになるかは、自治体や学校の規定によります。管理職に早めに相談しましょう。自費の場合は、オンライン参加や近隣開催の大会を選ぶと負担を抑えられます。

初めての発表で気をつけることは?

欲張らず、1つの実践に絞ることです。生徒の個人情報に配慮し、うまくいかなかった点も正直に伝えると、質疑で有益な助言をもらいやすくなります。

読了ボーナス

最後まで読んだあなたに、目から鱗をもう1枚

ホント?ウソ?10問チャレンジ目から鱗をぜんぶ見る

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