グループ活動は時間のむだって本当? ペア・グループワークを論文で判定
「グループにすると日本語でおしゃべり」「できる子だけが働く」。英語の先生なら一度は感じる不安です。でも研究を見ると、よく設計されたペア・グループ活動は、先生が一人で話す授業よりも英語を使う量を大きく増やし、正確さや流暢さも伸ばします。むだになるのは、グループにすることではなく「設計なしのグループ」です。
エビデンスの強さ:学習者どうしのやり取りや協働で、流暢さ・正確さ・語彙・読み書きが伸びた研究やメタ分析があり、日本の大学生の研究もある。一方、効果は課題の設計や個人の責任の有無で大きく変わり、日本の中高の教室で比べた研究は少ない。

- 「グループ活動は時間のむだ」はほぼウソ。よく設計されたペア・グループ活動は、英語を使う量を増やし、流暢さ・正確さ・語彙を伸ばした研究が複数あります。
- ただし、集団になると努力が減る「社会的手抜き」は本当に起こります。先生の不安には根拠があるのです。
- むだにしないカギは、役割と個人の責任、英語でのやり取りを達成条件にした課題、やり取りの型、最後の個人チェックです。
日本の大学の英語クラス4つ(167人)を1学期間比べた研究では、授業に組みこまれたペア活動を続けたグループでも、その活動をしなかった対照グループより話す流暢さが伸びました。さらに、ペアの相手の誤りを指摘し合う方法を教わったグループは、流暢さと正確さの両方が伸びました 1。英語学習者を対象にした28研究のメタ分析でも、協同学習やピア・チュータリングなど仲間を介した学習は、個別学習や先生中心の授業より読み書きの力を伸ばし、効果量は g = 0.486(中くらい)でした 2。
「ほぼ」とつけたのは、むだになる条件が実際にあるからです。集団で作業すると一人ひとりの努力が減る社会的手抜き(social loafing)は、78研究のメタ分析で、課題や対象をこえて安定して見られる現象だと報告されています 3。「できる子だけが働く」という先生の実感は、研究でも裏づけのある心配です。
そもそも「グループ活動は時間のむだ」って?
ひとことで言うと、この説は「ペアやグループにすると、雑談になったり一部の子しか働かなかったりするので、先生が前で教えた方が効率がよい」というものです。
まず計算してみましょう:先生が話す授業の「英語を話す時間」
40人学級で、50分の授業のうち20分を先生と生徒の一問一答にあてたとします。先生の発話や待ち時間を引いて、生徒が答える時間が仮に半分の10分あったとしても、生徒一人あたりの発話時間は15秒です。同じ20分のうち10分をペア活動にすれば、ペアの片方が話す時間は単純計算で一人約5分になります。
もちろん、先生の英語を聞くことにも大切な意味があります。でも、話す力を育てるには、一人ひとりが実際に話す時間が必要です。グループ活動の第一の理由は、この量の問題です。第二言語習得研究の立場から小グループ活動を支持した古典的な論文も、学習者どうしの意味のやり取り(意味交渉)が、先生中心の話し合いに代わる有力な選択肢になると論じました 4。
水泳の授業で、先生が一人ずつ順番にプールに入れて指導したら、一人が泳げるのは50分で1〜2分です。だから実際の水泳の授業では、全員が同時にコースに入って泳ぎます。もちろん、ただ「自由に泳いで」と言うだけでは、ふざける子も、プールの端で休む子も出ます。泳ぐ距離・泳ぎ方・タイムの記録を決めるから、全員がちゃんと泳ぐのです。英語のグループ活動も、同じ発想で設計します。
「ただグループにする」と「設計したグループ活動」のちがい
| ただグループにする | 設計したグループ活動 | |
|---|---|---|
| 課題 | 「話し合って答えを出す」だけ(日本語で済んでしまう) | 英語で情報をやり取りすることを達成条件にする(インフォメーション・ギャップ、ジグソーなど) |
| 一人ひとりの責任 | 見えない(できる子だけが働きやすい) | 役割を決め、最後に全員が一人で答える |
| やり取りの英語 | その場まかせ | 話し合いを英語で進める表現を先に練習しておく |
集団になると一人ひとりの努力が減る現象は社会的手抜き(social loafing)と呼ばれ、その強さは、個人の貢献が評価されるかどうか、課題に意味を感じられるかなどで変わります 3。右の列の工夫は、この2点を英語の授業に当てはめたものです(くわしくは「じゃあ授業ではどうする?」)。
判定の理由を3つで
- ペアのやり取りを続けると流暢さが伸びた:日本の大学生の研究で、授業に組みこまれたペア活動を続けた群は対照群より流暢さが伸び、訂正の返し方を教わった群は正確さも伸びました 1。
- 仲間と学ぶ形は、平均して中くらいの効果:英語学習者の28研究のメタ分析で、仲間を介した学習は個別学習や先生中心の授業より読み書きの力を伸ばしました(g = 0.486)2。
- グループの話し合いで、正確さや語彙も伸びた:4人グループで書いた文章が最も正確だった研究や、発言の機会が少なくても仲間の話し合いを聞いて語彙を学んでいた研究があります 56。
「ほぼ」とつけたのは、社会的手抜きが課題や対象をこえて実際に起こるからです 3。先生の心配には根拠があり、だからこそ設計が大切です。
どこから広まった?
「グループ活動はむだ」という考えには、いくつかの出どころがあります。一つは、先生が実際に見る光景です。グループにしたとたんに日本語の雑談が始まる、一人だけが作業して残りは見ている、時間が足りなくなって発表が中途半端に終わる――こうした経験が、「結局、先生が教えた方が早い」という実感になります。
もう一つは、「学習者どうしで話すと、お互いのまちがった英語がうつる」という心配です。これに対して1985年の古典的な論文は、学習者どうしの英語でのやり取りを調べた研究をふり返り、それらがおおむねグループ活動を支持していると論じました 4。
一方、学習指導要領の解説は、ペア・ワークやグループ・ワークを「友達に質問をしたり質問に答えたりする力」を育てるうえで有用だとしながら、活動の目的に応じて、全体学習・個人学習・ペア・グループを柔軟に選ぶことを求めています 7。グループ活動は、いつでも使う万能薬ではなく、目的に合わせて選ぶ道具の一つという位置づけです。
研究ではどうなってる?
- ペアのやり取りを続けると流暢さが伸びた:日本の大学生167人の研究では、1学期間ペア活動を続けた群(訂正の方法は教わっていない)は流暢さで対照群を上回り、相手に訂正を返す方法を教わった群は正確さと流暢さの両方が伸びました 1。
- 4人グループの作文は、ペアや個人より正確だった:米国の大学でスペイン語を学ぶ学生に、同じ作文課題を4人グループ・ペア・個人で行わせた研究では、グループは言語について話し合う場面がペアより多く、正しく解決できた割合も高く、その結果、グループで書いた文章が最も正確でした 5。
- グループで話し合った語彙は、よく身についた:4人グループ(60人)とペア(50人)で協働の作文をさせた研究では、グループの方が語彙についての話し合いが多く、一人ひとりが話す機会は減っても、身についた語彙はグループの方が多くなりました。自分が発言しなくても、仲間の話し合いを聞いていたことで学んでいたのです 6。
- 母語の使用は思ったより少なく、課題しだい:英語を外国語として学ぶ15組のペア活動を分析した研究では、母語の使用は全体として控えめで、その量はペアの組み合わせよりも課題の種類に左右されていました。母語は主に、作業の進め方の確認と、単語の相談に使われていました 8。
- 大事なのは英語力の差より「協力のしかた」:英語力が上・下の相手と組ませた研究では、協力的にやり取りしたときに、相手の英語力にかかわらず事後テストの成績が高い傾向がありました 9。
- 社会的手抜きは本当に起こる:78研究のメタ分析では、集団で作業すると一人ひとりの努力が減る現象が、課題や対象をこえて見られました。その強さは、個人の貢献が評価されるかどうか、課題に意味を感じられるか、仲間への期待などで変わりました 3。
発言が少ない生徒も学んでいることがある
グループ活動で先生が気になるのは、発言しない生徒です。ところが、ペアと4人グループを比べた研究では、グループの方が一人あたりの発言の機会は少ないのに、身についた語彙は多くなりました。学習者は、自分が言い出したり解決したりした話し合いだけでなく、仲間が問題を解決していく様子を見聞きすることからも学んでいました 6。
もちろん、「聞いているだけでいい」という意味ではありません。大事なのは、グループの中で英語について考える話し合いが起こるように課題を作ることです。そうすれば、発言の少ない生徒にも学びが届きます。
効果の大きさは「設計」で変わる
メタ分析では、中学生の伸びは小学生や高校生よりかなり小さく、仲間を介した学習をほかの要素としっかり組み合わせた指導の効果は、それだけを行った場合の約2倍だったという傾向も報告されています 2。グループにすれば自動的に伸びるわけではありません。何と組み合わせ、どう設計するかで、結果は大きく変わるのです(この研究は英語圏の学校で英語を学ぶ児童生徒(ELL)が対象で、日本の教室とは環境がちがう点に注意が必要です)。
じゃあ授業ではどうする?
社会的手抜きの強さは、一人ひとりの貢献が評価されうるか、課題に意味を感じられるかなどで変わります 3。この2点を英語の授業で実現するには、次のようにします。
- 英語でのやり取りを達成条件にする:インフォメーション・ギャップ(相手しか持っていない情報を英語で聞き出す)、ジグソー(パートごとに読んだ内容を英語で伝え合う)など。ただし課題の形だけでは日本語でも済んでしまうので、聞き取った情報を英語でメモさせる、途中で先生が英語で確認するなど、英語を使ったことが見える仕組みを入れます。
- 役割と個人の責任をつける:司会・記録・時間係・発表者を決め、最後は全員が一人で答える小テストや1文の振り返りを書きます。だれが何をしたかが見える形にします(くわしくは 協同学習)。
- やり取りの「型」を先に練習する:Can you say that again? / How do you spell it? / I think ... because ... など、話し合いを英語で進めるための表現を、毎回の授業のはじめの数分(帯活動)などでくり返し練習しておきます。
- 日本語の使いどころを決める:母語は主に進め方の確認と単語の相談に使われていました 8。「手順の確認だけは日本語OK、内容は英語で」など、ルールを先に示します。
- グループは4人まで、短く区切る:最初は3〜5分の短い活動から。タイマーで区切り、終わったら必ず全体で1〜2組に発表させて、内容を確かめます。
- 小学校:「好きな給食ランキング」。4人で好きなメニューを What do you like? で聞き合い、表にまとめ、代表が We like curry. と発表。全員が一度は質問する役になるよう、質問カードを配ります。
- 中学校:教科書本文を4つに分け、各自が1パートを読んで英語の3文メモにまとめ、グループで伝え合って全体の流れを再構成するジグソー。最後に個人で本文の要約を2文書きます。
- 高校:「論理・表現」で、4人グループの協働ライティング。意見文の構成を話し合い、文法や語の選び方を相談しながら1本の文章を書きます。そのあと、同じテーマで一人ずつ短い文章を書かせ、個人の力も確かめます。
❓ よくある質問
Q. 英語のグループ活動は時間のむだですか?
ほぼウソです。日本の大学生167人の研究では、授業に組みこまれたペア活動を1学期間続けたグループでも、その活動をしなかった対照グループより話す流暢さが伸びました 1。英語学習者を対象にした28研究のメタ分析でも、仲間を介した学習は読み書きの力を伸ばし、効果量は g = 0.486(中くらい)でした 2。
Q. できる生徒だけが働いて、ほかの生徒はさぼりませんか?
その心配には根拠があります。集団で作業すると一人ひとりの努力が減る社会的手抜きは、78研究のメタ分析で課題や対象をこえて見られ、その強さは個人の貢献が評価されうるか、課題に意味を感じられるかなどで変わりました 3。役割をつけ、最後に全員が一人で答える確認を入れます。
Q. グループにすると日本語ばかりになりませんか?
課題しだいです。英語を外国語として学ぶ15組のペア活動の分析では、母語の使用は全体として控えめで、その量はペアの組み合わせより課題の種類に左右され、主に作業の進め方の確認と単語の相談に使われていました 8。英語でのやり取りを達成条件にし(聞き取った情報を英語でメモさせるなど)、日本語の使いどころを先に決めます。
Q. 発言しない生徒は何も学んでいないのでは?
聞いているだけでも学んでいることがあります。4人グループとペアの協働作文を比べた研究では、グループの方が一人あたりの発言の機会は少ないのに、身についた語彙は多くなりました。仲間が問題を解決していく様子を見聞きすることからも学んでいたのです 6。
Q. 英語のグループ活動をむだにしないコツは?
英語でのやり取りを達成条件にした課題(インフォメーション・ギャップやジグソー)、司会・記録などの役割と最後の個人チェック、Can you say that again? などやり取りの型の事前練習、日本語の使いどころのルール、4人までの短い活動、の5つです。協力的にやり取りしたときに成績が高い傾向も報告されています 9。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モード「ピア・インタラクション」は何を育てるのか
第二言語習得研究者の Masatoshi Sato 氏と Roy Lyster 氏は、ペアでのやり取りがくり返し話す練習の機会となって手続き化(自動化)を進め、相手に訂正を返す訓練が自他の発話をモニターする力を鋭くした、とスキル習得理論と発話産出のモニタリングの観点から解釈しています 1。ここで注目したいのは、やり取りだけの群は流暢さしか伸びず、正確さまで伸びたのは訂正の方法を教わった群だったことです。ペア活動は流暢さの練習にはなるが、正確さには「相手の英語に注意を向ける仕組み」が必要だ、という示唆です。
協働ライティングの研究では、話し合いの中で言語について考える場面(language-related episodes:LREs)の数と、それが正しく解決されたかが、学習を説明する鍵とされてきました。協働ライティングを研究する Ana Fernández Dobao 氏の研究では、4人グループがペアより多くの LRE を生み、正しく解決した割合も高く、文章の正確さと語彙の学習で上回りました 56。人数が増えると知識の「持ち寄り」が増える一方、一人あたりの発言は減るというトレードオフがあり、課題の性質によって最適な人数は変わりうると考えられます。
🎓院生モード研究の限界と、日本の中高への当てはめ
メタ分析は、研究の質にかかわる変数が効果の大きさを左右していたこと、学年によって効果が大きく異なることを報告しています 2。また、協力的なやり取りが成果を左右したという研究は、少人数の学習者を詳しく分析した事例研究です 9。日本の大学生の研究 1 は大規模でも、中学・高校の40人学級で、グループ活動の有無を厳密に比べた研究は多くありません。
社会的手抜きのメタ分析は、評価の可能性、仲間への期待、課題の意味づけ、文化が効果を左右することを示しており 3、これは協同学習の研究が重視してきた「個人の責任」や「互いに頼り合う関係」の設計と重なります(協同学習 を参照)。グループ活動の効果を問うときは、「グループにしたか」ではなく、「どんな課題・役割・評価の仕組みで行ったか」を記述し、比べることが求められます。
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📑 出典(9件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Sato, M., & Lyster, R. (2012). Peer interaction and corrective feedback for accuracy and fluency development: Monitoring, practice, and proceduralization. Studies in Second Language Acquisition, 34(4), 591-626. doi:10.1017/S0272263112000356 ✔ DOI照合済日本の大学生に、ペアで互いに訂正し合う方法を教えた実験
- Cole, M. W. (2014). Speaking to read: Meta-analysis of peer-mediated learning for English language learners. Journal of Literacy Research, 46(3), 358-382. doi:10.1177/1086296X14552179 ✔ DOI照合済英語学習者(ELL)の読み書きに対する、協同学習・ピア・チュータリングなど仲間を介した学習のメタ分析(28研究、g = 0.486)
- Karau, S. J., & Williams, K. D. (1993). Social loafing: A meta-analytic review and theoretical integration. Journal of Personality and Social Psychology, 65(4), 681-706. doi:10.1037/0022-3514.65.4.681 ✔ DOI照合済集団で作業すると一人ひとりの努力が減る「社会的手抜き」の78研究のメタ分析。評価の可能性・課題の意味・仲間への期待などで変わる
- Long, M. H., & Porter, P. A. (1985). Group work, interlanguage talk, and second language acquisition. TESOL Quarterly, 19(2), 207-228. doi:10.2307/3586827 ✔ DOI照合済学習者どうしのグループワークを、第二言語習得研究の立場から支持した古典的論文
- Fernández Dobao, A. (2012). Collaborative writing tasks in the L2 classroom: Comparing group, pair, and individual work. Journal of Second Language Writing, 21(1), 40-58. doi:10.1016/j.jslw.2011.12.002 ✔ DOI照合済同じ作文課題を4人グループ・ペア・個人で行わせ、グループの文章がもっとも正確だった研究
- Fernández Dobao, A. (2014). Vocabulary learning in collaborative tasks: A comparison of pair and small group work. Language Teaching Research, 18(4), 497-520. doi:10.1177/1362168813519730 ✔ DOI照合済4人グループ(60人)とペア(50人)で協働作文をさせ、グループの方が語彙についての話し合いが多く、語彙の学習も多かった研究
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語科の目標(5領域)・言語材料(語数・文法事項)・指導計画の作成(授業は英語で行うことを基本とする等)を説明した公式の解説
- Storch, N., & Aldosari, A. (2010). Learners' use of first language (Arabic) in pair work in an EFL class. Language Teaching Research, 14(4), 355-375. doi:10.1177/1362168810375362 ✔ DOI照合済ペア活動での母語使用は全体として控えめで、量は組み合わせより課題の種類に左右され、主に進行の確認や語彙の相談に使われていた研究
- Watanabe, Y., & Swain, M. (2007). Effects of proficiency differences and patterns of pair interaction on second language learning: Collaborative dialogue between adult ESL learners. Language Teaching Research, 11(2), 121-142. doi:10.1177/136216880607074599 ✔ DOI照合済ペアの英語力の差よりも、協力的にやり取りするかどうかの方が、学びの量を左右したと報告した研究
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら








