間違いオークション(Error Auction)― 正しい英文を「競り落とす」ゲームで、自分たちの誤りを直す
班に1,000ポイントずつ。黒板の10文のうち、正しいと思う文に入札して競り落とす。まちがった文を高値で買ってしまった班は大損! 自信をもって選んだ文がまちがいだとわかる答え合わせは、どこがおかしかったかに目を向けるきっかけになります。
- ⏱ 時間
- 15-20分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 班(4人)
- 🎯 技能
- 文法・ライティング・復習・ゲーム
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 自分たちの作文によく出るまちがい(三単現、be 動詞と一般動詞の混同、動名詞と不定詞など)を、ゲームの中で見つけて直す。
- 「なぜ正しい/まちがいか」を班で説明し合い、ルールを言葉にする。
- 誤りを恥ずかしいものではなく、みんなで学ぶ材料として扱う雰囲気をつくる。
英作文を返却するとき、同じまちがいに何十回も赤ペンを入れていませんか。Error Auction は、そのよくあるまちがいを集めて、正しい文と混ぜて「競り」にかけるゲームです。生徒は、ある文が正しいかどうかを班で議論し、自信の度合いをポイントで表します。自信満々で買った文がまちがいだったとき、教室は悲鳴とともに盛り上がり、「どこがおかしかったの?」と直し方に注意が向くきっかけになります。
間違いオークションってなに?
ひとことで言うと、正しい英文とまちがった英文が混ざった10文を、班で「正しい」と思う文だけポイントで競り落とすゲームです。最後に、まちがった文をみんなで直します。
骨董品のオークションで、本物とにせ物が混ざった品物に値段をつけて買うようなものです。本物だと思えば高く買い、あやしいと思えば手を出さない。だから、買う前に「本当に正しい?どこがおかしい?」とよく見ることになります。高く買った品がにせ物だったら、「どこを見落としたのか」を確かめたくなります。
ふつうの誤文訂正とのちがい
| ふつうの誤文訂正(プリント) | 間違いオークション | |
|---|---|---|
| 文の出どころ | 問題集などの文 | 自分たちの作文によく出るまちがい(だれの文かわからないように変える) |
| 判断のしかた | 1人で〇×をつける | 班で話し合い、どれくらい自信があるかをポイントで表す |
| 正解のあと | 答え合わせで終わりがち | まちがった文を班で直し、理由を確かめる |
やり方を3ステップで
- 検討する:班で10文を読み、正しいか・まちがいかを話し合ってメモする。
- 競る:先生が1文ずつ競りにかけ、班は「正しい」と思う文にポイントで入札する。
- 直す:正解発表のあと、まちがった文を班で直し、なぜまちがいかを確かめる。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 活動 | 先生の動き |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | ルール説明(1,000ポイント・入札のしかた) | 1文で入札の実演 |
| 2:00〜6:00 | 班で全10文を検討(正しい?まちがい?) | 机の間を回って班の議論を聞く(答えは言わない) |
| 6:00〜13:00 | オークション(1文ずつ競り) | 競りの司会、落札額をスコアボードに記録 |
| 13:00〜18:00 | 1文ずつ正誤を発表し、まちがった文はその場で班で直す | 1文ずつ答えと理由を確認 |
| 18:00〜20:00 | まとめ・振り返り | よくあるまちがいを3つにまとめて板書 |

- 文を集める(事前):生徒の作文・小テストから、よくあるまちがいを含む文を5つ、正しい文を5つ選ぶ。名前がわからないよう内容を少し変える。教科書の文法事項に合わせて選ぶ。
- 班とポイント:4人班をつくり、各班1,000ポイント(架空のお金)を持つ。ワークシート(班のオークション記録用)を1班1枚、一人ひとりのメモ用に小さな紙を1人1枚配る(ノートでもよい)。
- 検討タイム(4分):まず1分、一人ひとりが10文の正誤と「自信(1〜3)」を自分のメモ用紙にメモする。そのあと班で全10文を読み、正しい・まちがいを判断して印をつける。まちがいと思う文はどこがまちがいかメモする。
- オークション(7分):先生が1文ずつ読み上げ、「Starting price is 50 points!」と競りを始める。班は「100!」「150!」と入札し、一番高い班が落札する。1文の最高額は300ポイントまで、などの上限を決めておく。
- 正解発表と直し(5分):全文の競りが終わったら、1文ずつ正しいか・まちがいかを発表する。落札した班は、文が正しくてもまちがっていても、落札額を残りポイントから引く(払ったポイントは返ってこない)。正しい文を落札した班は、その文を1文「手に入れた」ことになり、まちがった文を落札した班は何も手に入らない。最終的に正しい文をいちばん多く持っている班が優勝(同数なら残りポイントが多い班)。まちがった文は、発表したその場で、まず落札した班(落札がなければ全班)に直し方を考えさせ、各班がワークシートに直した文を書く。そのあと先生が答えと理由を説明する。
- まとめ(2分):「今日のよくあるまちがいトップ3」を板書し、ノートに写させる。次の英作文で同じまちがいをしていないか、自分で確かめる観点にする。
中学で使える文(まちがった文と正しい文を半々に混ぜて10文に)
- I went to Kyoto last summer.(正)
- She don't like natto.(誤 → doesn't)
- There are many people in the park.(正)
- I am interesting in music.(誤 → interested)
- He can plays the guitar very well.(誤 → can play)
- My brother is taller than me.(正)
- I have been to Okinawa two times.(正。twice も可)
- We enjoyed to swim in the river.(誤 → enjoyed swimming)
- Do you know where is the station?(誤 → where the station is)
- The book which I bought yesterday is exciting.(正)
- Are you like dogs?(誤 → Do you like)
- I'm going to go shopping tomorrow.(正)
- I was very tired yesterday, so I went to bed early.(正)
- My mother is a teacher of English.(正。an English teacher がより自然)
高校で使える文 15. If I were you, I would talk to her.(正) 16. I look forward to see you soon.(誤 → seeing) 17. He suggested me to take a rest.(誤 → suggested that I take a rest) 18. The number of students are increasing.(誤 → is) 19. Although it was raining, but we went out.(誤 → although か but のどちらか) 20. Not only Ken but also his sisters are coming.(正)
作文からの集め方:「三単現の s 抜け」「be 動詞+一般動詞(I am play)」「-ed / -ing の形容詞」「前置詞」など、クラスでよく出る型ごとに1つずつ選ぶ。
- 小学校:文字の文ではなく、絵と英語の組み合わせ(ライオンの絵に「This is a cat.」)で、正しい組み合わせを買うゲームにする。ポイントは小さな数で。
- 中学:単元末の文法の復習に。1文に1つの文法事項だけを含め、何の文法かを板書で示しておくと議論しやすい。
- 高校:生徒の意見文からの文で、語法・コロケーション(make / do、say / tell)まで扱う。まちがいの理由を英語で説明させてもよい。
- 大人数クラス:班を8つにすると競りに時間がかかるので、オークションは「紙に入札額を書いて同時に出す」封筒式にすると速い。
- 苦手な生徒が多いクラス:文を6文にしぼり、まちがいの場所に下線を引いておく(下線部は正しいか?だけを判断)。
- オンライン・タブレット:入札額をフォームで同時に送信し、結果を一覧で見せる。まちがいの直しは共有スライドに書き込む。
ゲーム中は記録に残す評価をせず、まちがいの判断と直しを通じて文法の理解を確かめる「指導に生かす評価」に使います。この活動で主に見るのは「知識・技能」です。終わったあと、同じタイプの誤文訂正を小テストに出すと、定着を確認できます。
| 観点 | 見るところ | 様子の目安(次の指導に生かす) | C への手立て |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 正誤の判断・直し・理由 | まちがいの場所を特定し、文法のルールにふれて理由を言いながら正しく直せる | まちがいの場所に下線をつけて判断させ、理由の言い方(主語が三人称だから)を示す |
| 思考・判断・表現 | (この活動では見ない) | 後日の英作文で、伝えたい内容に合わせて学んだ文法を選んで使えているかを、別の課題で見る | 作文の前に「今日の3つのまちがい」を確認させる |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 振り返りと次の作文 | 振り返りで自分のよくあるまちがいを特定し、次の英作文で自分なりの確かめ方(動詞に下線を引くなど)を試して直そうとしている | 自分の作文で同じまちがいを探させる |
班の議論に参加したかどうかだけでは評価しません。「主体的に学習に取り組む態度」は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見る観点です 1。記録に残す評価は、単元全体を見通して場面をしぼって行います 2。
- 自分のまちがいだと気づいて恥ずかしがる→ 文は内容を少し変え、だれの文かわからないようにする。「まちがいはクラスの宝」と最初に伝える。
- 競りが盛り上がりすぎて文法がおろそかになる→ 検討タイムで必ず理由をメモさせる。正解発表では落札額より「理由」を先に聞く。
- まちがいを見つけられず全部買う班が出る→ 「まちがいは半分ある」と最初に伝える。入札額の上限を決めて、大損しすぎないようにする。
- 説明が先生の一方通行になる→ まちがった文を落札した班に、まず直し方を考えさせてから説明する。
- ポイント計算でもめる→ スコアボードを全員に見えるように表示し、先生が記録する。
記憶の研究では、「自信をもって答えたまちがい」ほど、正しい答えを教えてもらったあとの再テストで直りやすいことが報告されています。研究者たちは、自信の強いまちがいほど直りにくいと予想していたのですが、結果は逆でした 3。この現象はハイパーコレクション効果(hypercorrection effect)と呼ばれます。まちがいから学ぶことについての研究をまとめた総説でも、まちがえること自体は、正しいフィードバックがあれば学習の妨げにならず、むしろ助けになりうること、そして学習の場では誤りを避けるより、低いリスクの場面でまちがえて直す機会をつくることに価値があると論じられています 4。
Error Auction の入札額は、班の自信をある程度表すように促せます。ただし、研究で使われたのは一人ひとりが自分の答えにつけた自信の評定で、班の入札額は残りのポイントや他の班の動き、勝つための作戦にも左右されます。そのため、この活動でハイパーコレクション効果が起きるかは確かめられていません。研究に近づけたいときは、手順3のように、競りの前に一人ひとりが正誤と自信を記録しておくとよいでしょう。また、これらは心理学の実験室での研究が中心で、英文法の誤りで同じことが起きるかも直接確かめられていません。
また、ポイント・競争などゲームの要素を学習に取り入れる「ゲーミフィケーション」のメタ分析では、認知的な学習成果に小さいながら有意な効果(g = .49)が見られ(動機づけは g = .36、行動面は g = .25)、競争と協力を組み合わせた形が行動面でとくに効果的でした 5。班で協力しながら他の班と競う Error Auction は、この組み合わせにあたります。ただし同じメタ分析では、方法のしっかりした研究だけにしぼると、認知面の効果は安定していた一方、動機づけ・行動面の効果は安定性が低くなりました 5。また、これはゲーム要素一般の分析で、この活動の効果を直接示すものではありません。
❓ よくある質問
Q. 間違いオークションのルールは?
4人班が1,000ポイントずつ持ちます。正しい文5つ・まちがいを含む文5つを班で検討したあと、1文ずつ競りにかけます(1文の上限は300ポイントなど)。落札額は文の正誤にかかわらず残りポイントから引き、正しい文を落札したときだけ1文獲得します。正しい文をいちばん多く持つ班が優勝です。
Q. 競りにかける文はどう集めますか?
生徒の作文や小テストから、よくあるまちがいを含む文を5つ、正しい文を5つ選びます。だれの文かわからないよう内容を少し変え、教科書の文法事項に合わせて選びます。「まちがいはクラスの宝」と最初に伝えておきます。
Q. 競りが盛り上がりすぎて、文法がおろそかになったら?
検討タイムで必ず理由をメモさせ、正解発表では落札額より「理由」を先に聞きます。まちがった文を落札した班には、先生が説明する前に、まず直し方を考えさせます。最後に「よくあるまちがいトップ3」を板書します。
Q. 自信をもって選んだまちがいは、なぜ印象に残るのですか?
記憶の研究では、自信をもって答えたまちがいほど、正しい答えを教わったあとの再テストで直りやすいことが報告されています(ハイパーコレクション効果)3。ただし心理学の実験室での研究が中心で、英文法の誤りで同じことが起きるかは直接確かめられていません。
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📑 出典(5件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の3観点の評価規準の作り方・単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- Butterfield, B., & Metcalfe, J. (2001). Errors committed with high confidence are hypercorrected. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 27(6), 1491-1494. doi:10.1037/0278-7393.27.6.1491 ✔ DOI照合済自信満々で答えた間違いほど、正解を教わったあとに直りやすい(ハイパーコレクション効果)ことを示した実験
- Metcalfe, J. (2017). Learning from errors. Annual Review of Psychology, 68, 465-489. doi:10.1146/annurev-psych-010416-044022 ✔ DOI照合済間違えることは、正しいフィードバックがあれば学習を助けうる、という研究を整理した総説
- Sailer, M., & Homner, L. (2020). The gamification of learning: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 32(1), 77-112. doi:10.1007/s10648-019-09498-w ✔ DOI照合済ゲーミフィケーション(ポイント・バッジなどゲームの要素)の学習効果をまとめた教育全般のメタ分析
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






