なぜ先生の英語力は「止まりやすい」のか
英語の先生は毎日英語に触れています。それでも伸び悩みを感じやすいのには、はっきりした理由があります。
- 授業で使う英語が教科書レベルに固定されやすい
- 同じ指示表現(Open your textbooks. など)を繰り返すので、新しい表現を使う必要がない
- 読む英語は多くても、自分の考えを英語で長く話す・書く機会がほとんどない
- 「先生なのだから間違えられない」という気持ちが、新しい挑戦をためらわせる
つまり、英語に触れる量は多いのに、負荷のかかる使い方が少ないのです。筋トレにたとえると、毎日軽いダンベルを持っているけれど、重さを上げていない状態。伸ばすには「少しだけ難しい英語」を意図的に日課に入れる必要があります。
ポイント:先生の英語力アップの鍵は「量」より「負荷」。自分にとって少し難しい使い方を、毎日少しずつ入れることです。
授業準備を「自分の練習」に変える3つの工夫
新しく時間を作るのが難しいなら、すでにある授業準備の時間を二重に使いましょう。
1. 教科書本文を「自分用」に音読する
生徒に聞かせるモデル音読を練習するとき、ただ読むだけでなく、音声教材とずらさずに読むオーバーラッピングを3回入れます。リズムや弱形の癖に気づけて、授業での範読の質も上がります。
2. オーラル・イントロダクションを台本なしで言ってみる
新しい課の導入を、メモを見ずに1分で話してみます。スマホで録音して聞き返すと、同じ単語の繰り返しや日本語的な語順に気づけます。例えば次のような導入です。
- Have you ever thought about where your T-shirt comes from? Today's story is about a small town that makes cotton clothes.
3. 本文の内容について自分の意見を書く
生徒に書かせる意見文のテーマで、先生も80〜100語の模範解答を書きます。これはそのまま授業の配布資料にもなるので、一石二鳥です。
ポイント:「生徒のためにやること」を、先生自身の練習として一段だけ難しくする。これが時間を増やさずに伸ばすコツです。
1日15分の基本メニュー(平日用)
平日は欲張らず、15分を3つに分けます。
- インプット5分:英語ニュースや学習者向けポッドキャストを1本聞く(通勤中でOK)
- アウトプット5分:聞いた内容について、英語で30秒〜1分の独り言を言う
- 振り返り5分:言えなかった表現を調べ、ノートやスマホのメモに1〜2個だけ書く
大切なのは3番目です。「言いたかったのに言えなかった表現」こそが、自分にとって一番効く単語帳になります。例えば、
- 「予算が削られた」→ The budget was cut.
- 「負担が大きい」→ It puts a heavy burden on us.
- 「一長一短だ」→ It has both pros and cons.
こうした表現は授業のスモールトークでもすぐ使えます。
1週間の組み立て例
- 月:ニュース1本+要約を口頭で
- 火:教科書の次の課の導入を録音
- 水:英語の教育系記事を1本読んで感想を3文
- 木:ALTや同僚との雑談で昨日のメモ表現を1つ使う
- 金:意見文を1本書く(生徒の課題と同じテーマ)
- 土:少し長めの動画やポッドキャストを楽しむ
- 日:お休み、または1週間のメモを見返すだけ
話す力を伸ばす:「説明できない」を減らす練習
先生の英語で特に伸ばしたいのは、抽象的なことを説明する力です。授業では「なぜこの答えになるのか」「この表現のニュアンスは」といった説明が求められます。
おすすめは、次のようなお題で1分間話す練習です。
- 「現在完了と過去形の違い」を中学生向けにやさしい英語で説明する
- 「部活動と勉強の両立」について自分の考えを話す
- 「自分の学校のよいところ」を初めて来た人に紹介する
コツは、難しい単語を使わず、言い換えで乗り切ること。「ニュアンス」をうまく言えなければ It's a small difference in feeling. と言えば十分です。この言い換え力は、そのまま生徒に英語で説明する力になります。
オンライン英会話を使うなら、フリートークより「教育について話したい」とテーマを伝えるほうが練習になります。日本の学校制度を英語で説明するだけでも、意外なほど言葉に詰まるはずです。
書く力を伸ばす:添削を受ける仕組みを作る
書く力は、自分だけでは伸びを実感しにくい技能です。何らかの形でフィードバックを受ける仕組みを作りましょう。
- ALTに月1回、短い英文を見てもらう(お願いの仕方は丁寧に、負担にならない量で)
- 生成AIに文法・自然さのチェックを頼み、指摘の理由も説明させる
- 英語の先生仲間と、お互いの模範解答を読み合う
AIを使う場合は、「直した文だけ」をもらうのではなく、「なぜ直したのか」を必ず確認します。例えば I'm looking forward to see you. が to seeing に直されたら、to の後に動名詞が来るパターンとして自分のメモに残します。
ポイント:添削は「直してもらう」ではなく「自分のクセを知る」ためのもの。同じ指摘が3回来たら、それがあなたの重点課題です。
長期休業・学期ごとの目標の立て方
平日の15分に加えて、学期や長期休業ごとに少し大きめの目標を1つ置くと、成長の手応えが得やすくなります。ポイントは、「英語力を上げる」ではなく、行動で確認できる目標にすることです。
- 1学期:教科書の各課の導入を、メモなしで1分間英語で話せるようにする
- 夏休み:英語の教育書や記事を1冊分(または10本)読み、授業に使えるアイデアを3つメモする
- 2学期:生徒への英語の指示を録音し、長すぎる指示を短く言い換えたリストを作る
- 冬休み:英語で書かれたニュースを使い、自分の意見を200語で3本書く
- 3学期:1年間の「言えなかった表現」メモを見返し、授業で使えるものを整理する
資格試験を受けるのも、目標を具体的にする方法の一つです。試験日が決まると、忙しい時期でも勉強の優先順位が上がります。ただし、スコアを取ること自体が目的にならないよう、「この試験の準備で何の力を伸ばしたいか」を先に決めておきましょう。
ポイント:目標は「授業で使える形」に落とし込むと、自分の学びと生徒への還元が同時に進みます。
よくある失敗と続けるコツ
最後に、先生たちが陥りやすい失敗を挙げておきます。
- 資格試験の勉強だけになる:スコアは上がっても、授業で使う英語が変わらないことがあります。試験対策と「使う練習」は両方入れましょう。
- 完璧な計画を立てて3日で終わる:最初の2週間は「5分でもやれば合格」にします。
- 自分の英語を録音しない:自分の声を聞くのは恥ずかしいですが、一番効果の見えやすい方法です。
- 夏休みにまとめてやろうとする:長期休業は研修や部活で意外と埋まります。平日の小さな習慣が土台です。
記録はシンプルに、カレンダーに○をつけるだけで構いません。1か月続いたら、最初の週の録音と聞き比べてみてください。変化に気づけるはずです。
今日の帰り道、英語のポッドキャストを1本だけ再生してみましょう。そして家に着いたら、聞いた内容を30秒だけ英語で言ってみる。それが最初の一歩です。



