なぜ多読には記録が大切なのか
多読の効果は、1日や1週間ではなかなか実感できません。単語テストのように点数が出るわけでもないので、「やっている意味があるのかな」と感じやすい学習法です。
記録には、そんな不安を和らげる効果があります。
- 積み上がりが見える:冊数や語数が増えていくのを見ると、努力が形になって見える
- レベル選びに役立つ:どのレベルの本がスラスラ読めたか、どこでつまずいたかがわかる
- 成長を確認できる:数か月前と比べて、読む速度や読める本のレベルが上がったことを実感できる
- 習慣の見える化:読んだ日と読まなかった日がはっきりする
ポイント:記録は「自分を評価するため」ではなく「自分を励ますため」につけるものです。完璧さより、続けることを優先しましょう。
記録する項目:基本の5つ+α
基本の5項目
- 日付:読み終えた日(または読んだ日)
- タイトル:本の名前
- レベル:シリーズのレベルや、読みやすさの目安(YLなど)
- 語数:その本の総語数
- ひとこと感想:◎○△の評価と、一言メモ
余裕があれば追加する項目
- 読んだ時間:読書速度(WPM)を出すのに使う
- 累計語数:これまでの合計
- 難しさの体感:「やさしい・ちょうどいい・難しい」の3段階
- 気に入った表現:1冊につき1つだけ
最初から全部書こうとすると続きません。まずは基本の5項目から始めて、慣れてきたら増やしていきましょう。
語数の調べ方と概算の方法
語数が公開されている本
学習者向けの段階別読み物(Graded Readers)には、本の裏表紙や出版社のサイトに語数が書かれていることがあります。また、多読用の書籍リストや図書館の多読コーナーで、語数を紹介していることもあります。
語数がわからない本は概算でOK
一般の洋書など、語数がわからない場合は次の手順で概算できます。
- 標準的なページを1つ選び、1行の語数を3行分数えて平均を出す
- 1ページの行数を数える
- 「1行の語数 × 1ページの行数 × ページ数」で計算する
- 挿絵や章の区切りの空白を考えて、1〜2割ほど引く
例:1行10語 × 1ページ25行 × 120ページ = 30,000語。挿絵や空白を考えて約25,000語、という具合です。
正確な数字である必要はありません。大切なのは、同じ方法で数え続けて、自分の中での積み上がりを見ることです。
読書速度(WPM)の出し方
本を読み始めるときと読み終えたときに時刻をメモしておき、「語数 ÷ 読んだ分数」で1分あたりの語数(WPM)を出します。
例:5,000語の本を50分で読んだら、5,000 ÷ 50 = 100 WPM。
記録フォーマットの例
手書きノート派
見開き1ページに10冊分の表を作るのがおすすめです。
左から「日付」「タイトル」「レベル」「語数」「累計」「感想」の6列を作り、1冊1行で書いていきます。
手書きは面倒な反面、書くこと自体が振り返りになり、ページが埋まっていく満足感があります。
表計算ソフト派
スプレッドシートを使うと、累計語数や平均WPMを自動で計算できます。列は「日付・タイトル・シリーズ・レベル・語数・読書時間・WPM・評価・メモ」がおすすめです。グラフ機能で、月ごとの語数の推移を見ることもできます。
アプリ派
読書記録用のアプリや、スマホのメモアプリでも構いません。読み終えた直後にその場で記録できるのが最大の利点です。
どの方法でも、「読み終えたら30秒以内に記録する」のがコツです。後でまとめて書こうとすると、忘れたり面倒になったりします。
記録を振り返って本選びに生かす
記録は、書いて終わりではありません。月に1回、次の視点で振り返ってみましょう。
- 評価◎の本の共通点は?:ジャンル、シリーズ、長さなど、自分が楽しめる本の傾向がわかる
- 評価△の本の共通点は?:レベルが高すぎたのか、ジャンルが合わなかったのか
- WPMの変化は?:同じレベルの本で速度が上がっていれば、レベルを上げるサイン
- 読んだ日数は?:読まない日が続いた時期に何があったかを振り返る
たとえば「ミステリーは◎が多いのに、名作の書き直し版は△が多い」とわかれば、次はミステリーを中心に選べばいい、と判断できます。
記録の実例
実際の記録のイメージは、たとえばこんな形です(本のタイトルは架空の例です)。
- 9/1|The Lost Key|レベル1|約6,000語|累計6,000|◎ 犯人が意外。会話が多くて読みやすい
- 9/4|A Summer by the Sea|レベル1|約7,500語|累計13,500|○ 風景描写が少し長かった
- 9/9|Space Station 7|レベル2|約10,000語|累計23,500|△ 専門用語が多く、途中で2回止まった
3冊だけでも、「会話の多い話は楽しめる」「レベル2は内容によってはまだ難しい」ということが見えてきます。次は、レベル1の会話が多い本をもう数冊読んでからレベル2に戻る、という判断ができます。
感想は短く、具体的に
感想欄は「面白かった」だけでも構いませんが、何が良かったか・どこで止まったかを一言添えると、振り返りのときに役立ちます。「会話が多い」「章が短い」「専門用語が多い」のようなメモは、次の本選びの基準そのものになります。
英語で感想を書くのもおすすめ
慣れてきたら、感想を英語で1文書いてみましょう。
- I liked the ending because it was a surprise.
- The main character was brave and kind.
読んだ本の中の表現を借りて書くと、インプットした英語をアウトプットする練習にもなります。
1週間の記録ルーティン
- 毎日:読み終えた本をその場で記録(30秒)
- 日曜:1週間の語数を合計して、先週と比べる(3分)
- 月末:評価とWPMを見て、来月の本選びの方針を1行で書く(5分)
よくある失敗
語数を増やすことが目的になる
記録をつけていると、「語数を稼ぎたい」気持ちから、合わない本を無理に読み切ろうとしてしまうことがあります。楽しめない本は途中でやめてOK。途中までの語数を記録しても構いません。
他人の記録と比べて落ち込む
SNSなどで他の人の読書量を見ると、自分が遅れているように感じるかもしれません。でも、多読は他人との競争ではありません。比べる相手は、1か月前の自分です。
記録に凝りすぎて読む時間が減る
グラフや表を作り込むのは楽しいですが、それで読む時間が削られては本末転倒です。記録は1冊あたり1分以内で終わる形にしましょう。
まとめ:記録は未来の自分への応援メッセージ
多読の記録のポイントをまとめます。
- まずは日付・タイトル・レベル・語数・感想の5項目から
- 語数は概算でOK。同じ方法で続けることが大切
- 月1回振り返って、本選びとレベル調整に生かす
今日は、最近読んだ英語の本や記事を1つ、記録ノートの1行目に書いてみてください。そこから、あなたの多読の歴史が始まります。



