結論:大事なのは「朝か夜か」より「睡眠を削らないこと」
最初に結論からお伝えします。
- 朝型と夜型のどちらが勉強に向いているかは、人によって違う
- どちらのタイプでも、睡眠を削って勉強時間を増やすのは逆効果になりやすい
- 作業の種類によって、向いている時間帯を使い分けるとよい
「夜型は怠け者」「朝型が正しい」といったイメージを持っている人もいるかもしれません。でも、人が朝型か夜型かという傾向(クロノタイプ)には、体内時計の個人差や年齢が関わっていることがわかっています。特に10代は、体内時計が夜型の方向にずれやすい時期だとされています。
つまり、夜型の中高生が「朝5時に起きて勉強しよう」と無理をしても、うまくいかないのは意志が弱いからとは限りません。自分のタイプを知ったうえで、睡眠をしっかり確保できるスケジュールを組むことが、結局はいちばん効率的です。
ポイント:勉強時間を増やすために削っていいのは、スマホの時間。睡眠ではありません。
睡眠中、脳は記憶を整理している
眠っている間、脳は休んでいるだけではありません。学習研究では、睡眠が記憶の定着(固定化)に関わっていることが、多くの研究で示されてきました。
眠ることで記憶が安定する
昼間に学んだことは、覚えた直後はまだ不安定な状態です。睡眠中には、その日に学んだ情報が脳の中で整理され、長く残る記憶へと安定していくと考えられています。特に、深い眠り(徐波睡眠)が、単語や事実のような記憶の定着と関係していることを示す研究が多くあります。
寝る前に覚えたことは残りやすい?
単語を覚えたあとに「睡眠をはさんだグループ」と「起きたまま同じ時間を過ごしたグループ」を比べると、睡眠をはさんだほうが記憶がよく保たれていた、という研究結果が報告されています。寝る前の学習が有利になりうる理由の一つは、覚えてから眠るまでの間に、ほかの情報が入ってきて記憶がかき乱されにくいことだと考えられています。
寝不足は「覚える力」も下げる
睡眠は、学んだあとだけでなく、学ぶ前にも大切です。徹夜などで睡眠が不足した状態では、新しいことを覚える力そのものが落ちてしまうことを示す研究があります。「徹夜で詰め込む」のは、覚える力が落ちた状態で勉強し、しかも定着のための睡眠も取らない、という二重に損なやり方なのです。
ポイント:睡眠は「勉強していない時間」ではなく、「勉強の仕上げの時間」です。
どれくらい眠ればいい? 睡眠の目安と整え方
睡眠時間の目安
必要な睡眠時間には個人差がありますが、一般的な目安として、アメリカ睡眠医学会などは、13〜18歳で8〜10時間、成人で7時間以上の睡眠を推奨しています。
実際には、部活や塾、仕事などで、この時間を確保するのは簡単ではないかもしれません。それでも、「平日は5時間、休日に10時間寝だめ」のような大きな乱れは避け、毎日なるべく同じ時間に寝て起きることを意識しましょう。
眠りの質を上げる工夫
- 起きる時間をそろえる:休日も平日との差を小さくする
- 朝に光を浴びる:朝の光は体内時計を整える手がかりになる
- 寝る前のスマホ・動画をひかえる:刺激で目がさえ、寝る時間が遅れがち
- カフェインは夕方以降ひかえる:コーヒーやエナジードリンクの影響は、数時間以上続くことがある
- ベッドは眠る場所にする:ベッドで長時間勉強やスマホをしない
昼寝の活用
どうしても眠いときは、20分程度の短い昼寝も選択肢です。長く寝すぎると、起きたあとにぼんやりしたり、夜に眠れなくなったりすることがあるので、短めを心がけましょう。
英語学習の作業を「時間帯」に割り振る
睡眠と記憶の関係、そして時間帯による調子の違いをふまえると、英語学習の作業は次のように割り振るのがおすすめです。
頭がいちばん冴えている時間:思考力を使う作業
- 長文読解
- 文法の新しい単元の理解
- 英作文・自由英作文
- 過去問・模試
人によって「冴えている時間」は違います。朝型の人は午前中、夜型の人は夕方〜夜のはじめが、そうした時間になりやすいでしょう。
寝る前の時間:覚える作業と軽い復習
- 英単語・熟語の暗記
- その日に学んだ表現の想起(思い出して書く)
- 翌日の計画を立てる
寝る前の15〜30分を「覚える時間」にすると、そのあとの睡眠を記憶の定着に生かせます。ただし、ここで難しい問題に取り組むと、頭がさえて眠れなくなることもあるので、軽めの内容にしましょう。
朝起きてすぐ:前の晩の想起
- 前の晩に覚えた単語を、見ないで書き出す
- 短いリスニングやシャドーイング
「寝る前に覚えて、朝に思い出す」。これは、睡眠による定着と、想起練習を組み合わせたシンプルで強力なサイクルです。
ポイント:夜は「入れる」、朝は「取り出す」。この往復が、記憶をしっかり育てます。
タイプ別・英語学習スケジュール例
ここでは、朝型・夜型それぞれのスケジュール例を紹介します。部活や仕事の時間に合わせて、アレンジしてください。
朝型さんの平日(高校生の例)
- 6:00 起床。前の晩の単語を想起テスト(5分)
- 6:10 長文読解または文法(25分)
- 通学中:単語アプリの復習、リスニング
- 放課後〜夜:学校の課題、ほかの教科
- 21:30 単語・熟語の暗記(20分)
- 22:30 就寝
朝型の人は、頭が冴えている朝の時間に、思考力を使う英語学習を入れるのがポイントです。
夜型さんの平日(高校生の例)
- 7:00 起床。前の晩の単語を想起テスト(5分)
- 通学中:単語アプリの復習、リスニング
- 19:30 長文読解または英作文(50分)
- 21:00 ほかの教科
- 22:40 単語・熟語の暗記(20分)
- 23:15 就寝
夜型の人は、朝に無理をせず、夕方〜夜のはじめに集中する作業を置きます。ただし、就寝時間が遅くなりすぎないよう、「寝る時刻」を先に決めてから逆算しましょう。
社会人の場合
仕事前の朝30分、昼休みの10分、帰宅後の20分のように、細かく分けるのが現実的です。朝に長文やリスニング、夜に単語暗記という基本の組み合わせは同じです。
自分のタイプを知る方法と、テスト前の注意点
自分のタイプを知る
自分が朝型か夜型かを知るには、次のような点を振り返ってみましょう。
- 予定のない休日、自然に目が覚めるのは何時ごろ?
- 一日のうちで、頭がいちばんスッキリしているのはいつ?
- 夜遅くまで起きていても、次の日の朝がつらくない?
1〜2週間、「時間帯」「やった内容」「集中度(5段階)」を記録してみると、自分の調子がいい時間帯が見えてきます。
テスト前の注意点
多くの試験は午前中から始まります。夜型の人は、ふだんの勉強時間は夜でかまいませんが、本番の1〜2週間前からは、少しずつ起きる時間を早めて、朝から頭が働く状態に慣らしておくのがおすすめです。
また、試験前夜の徹夜は避けましょう。前の晩に詰め込むより、しっかり眠って、それまでに覚えたことを定着させるほうが、本番で力を出しやすくなります。
「朝活」をしたい夜型さんへ
どうしても朝の時間を使いたい場合は、いきなり1〜2時間早起きするのではなく、15分ずつ起床時間を前にずらしていきましょう。同時に、寝る時間も早めることを忘れずに。睡眠時間を削った朝活は長続きしません。
忙しい人のための「睡眠を守る」英語学習術
部活、塾、アルバイト、仕事……。忙しい毎日の中で、睡眠も英語学習もあきらめたくない人のための工夫を紹介します。
「すきま時間」を英語の時間に
睡眠時間を削らずに勉強時間を増やすには、すきま時間の活用がカギです。
- 通学・通勤の電車:単語アプリの復習、リスニング
- 休み時間の5分:昨日の単語を3つ思い出す
- 待ち時間:英語の短い動画を1本
- お風呂の中:今日覚えたフレーズをつぶやく
5分のすきま時間も、1日に4回あれば20分になります。
夜の「だらだらスマホ」を英語に置きかえる
寝る前にSNSや動画を何となく見ている時間があれば、その一部を英語に置きかえてみましょう。ただし、刺激の強い動画を見続けると目がさえてしまうので、寝る直前は単語カードや英語の本など、画面を使わない学習がおすすめです。
週末の寝だめより、平日の少しの早寝
平日の睡眠不足を週末にまとめて取り戻そうとすると、生活リズムが乱れて月曜日がつらくなります。平日に15〜30分早く寝るほうが、体内時計を大きく乱さずにすみます。
「今日はもう寝る」も立派な判断
眠くて頭に入らないときは、無理に続けるより、寝てしまって翌朝に回すほうが効率的なこともあります。「眠い中で30分」より「すっきりした朝の15分」のほうが、頭に入ることは少なくありません。
まとめ:自分のリズムを味方にしよう
朝型・夜型のどちらが勉強に向いているかは、人によって違います。大切なのは次の3つです。
- 睡眠は記憶を定着させる大切な時間。削らない
- 頭が冴えている時間に思考力を使う作業、寝る前に暗記
- 夜に覚えて、朝に思い出すサイクルを作る
誰かのスケジュールをそのまままねするより、自分のリズムを知って、それに合わせて英語学習を組み立てるほうが、ずっと長続きします。まずは今夜、寝る前の15分を「単語の時間」にしてみましょう。そして明日の朝、何個思い出せるか試してみてください。



