結論:寝る前の暗記は「効きやすい」。ただし条件つき
先に結論をまとめます。
- 覚えたあとに眠ることは、記憶の定着を助けると考えられている(多くの研究で支持されている定説)
- だから、暗記ものを寝る前に軽く確認するのは理にかなっている
- ただし、睡眠時間を削ってまで詰め込むと逆効果になりやすい
- 寝ている間に音声を流して新しい単語を覚える「睡眠学習」は、効果が確かめられていない
つまり、ポイントは「寝る前の勉強」そのものより、勉強のあとにしっかり眠ることにあります。寝る前の時間は、その日に覚えたことを眠りに引き渡す「最後のひと押し」と考えるとよいでしょう。
なお、朝型・夜型のどちらが向いているかといった1日全体のスケジュールについては、当サイトの別の記事でも扱っています。この記事では、「寝る前の30分をどう使うか」に絞って話を進めます。
ポイント:寝る前の暗記は、睡眠時間を確保してこそ効く。「夜ふかしして暗記」は本末転倒です。
睡眠中に記憶に何が起きているのか
眠ると「じゃまが入らない」
睡眠と記憶の研究は古く、1924年にはアメリカのJenkinsとDallenbachが、覚えたあとに眠った場合と起きていた場合で、記憶の残り方を比べています。結果は、眠ったあとのほうがよく覚えていました。当時は、起きているあいだに入ってくる新しい情報が記憶をじゃまする(干渉)のに対し、眠っているとそれが少ないから、と説明されました。
眠っている間に記憶が「整理」される
その後の研究で、睡眠はただ「じゃまが入らない時間」なだけではなく、記憶を積極的に安定させる時間でもあると考えられるようになりました。これを記憶の固定化(consolidation)と呼びます。
特に深いノンレム睡眠(徐波睡眠)の間に、日中に覚えた情報にかかわる脳の活動がくり返され、記憶がより安定した形に整理されていく、という説明が有力です。レム睡眠の役割については、研究者のあいだでもまだ議論があります。
睡眠不足は「覚える力」も下げる
睡眠は、覚えたことを定着させるだけでなく、次の日に新しいことを覚える準備にも関係すると考えられています。徹夜明けに単語がまったく頭に入らなかった経験がある人も多いのではないでしょうか。
ポイント:睡眠は「覚えたことを固める時間」であり、「明日覚えるための準備時間」でもあります。
寝る前に向く勉強・向かない勉強
寝る前の時間は、どんな勉強にも万能というわけではありません。
向いている勉強
- 英単語・熟語の確認:その日に覚えた単語を、訳を隠して思い出す
- 英文法の例文の音読・暗唱:短い例文を2〜3回、声に出して言う
- その日の学習内容の「思い出し」:今日やったことを3行で書き出す
共通点は、短時間で終わること、そして新しいことを大量に入れるのではなく、今日の内容を整理することです。
向いていない勉強
- 重い長文読解や難問演習:頭がさえて寝つきが悪くなりやすい
- 大量の新出単語の詰め込み:寝る直前に100語を初めて見ても、処理しきれない
- スマホでの長時間学習:就寝前の画面は寝つきに影響しうるとされ、ついSNSや動画に流れがち
画面を使うなら
単語アプリを寝る前に使う場合は、「10分だけ」と時間を決め、終わったらすぐ画面を閉じましょう。紙の単語帳やノートに切り替えられるなら、そのほうが安心です。
ポイント:寝る前は「新しく覚える時間」ではなく、「今日のまとめをする時間」と割り切るのがコツです。
夜の30分ルーティン+翌朝の10分
英単語と英文法を組み合わせた、寝る前のルーティン例です。寝る1時間前〜30分前くらいに始めるのが目安です。
夜(寝る前の30分)
- 今日の英単語を思い出す(10分):訳を隠して英→日、あやしいものは日→英も
- ×の単語だけもう一度(5分):思い出せなかった単語を声に出して2回言い、例文を1つ読む
- 英文法の例文を音読(10分):今日学んだ文法の例文を3つ、見ないで言えるまで
- 3行ふり返り(5分):今日覚えたことを何も見ずに3行で書く
文法の例文は、たとえばこんな短いもので十分です。
- If I had more time, I would study abroad.(もっと時間があれば留学するのに)
- I have been learning English for three years.(3年間ずっと英語を学んでいる)
翌朝(10分)
- 昨夜の×の単語を、訳を隠してテストする
- 昨夜の例文を、日本語を見て英語で言ってみる
夜に覚えて、眠って、朝に思い出す。この流れで、睡眠による定着と想起練習をセットにできます。フランスの研究チームが外国語の単語を使って行った研究でも、夜に学んで睡眠をはさみ、翌朝に覚え直す流れの効果が報告されています。
覚えにくい単語には手がかりを
何度も×になる単語は、夜のうちに覚え方を変えておくと、朝の確認がぐっと楽になります。当サイトの『超絶ゴロ暗記 大学入試英単語500』(/studyhack/goro/)のゴロや、『語源で覚える』(/studyhack/gogen/)の語根・接頭辞は、寝る前の短い時間にも使いやすい方法です。
寝る前暗記の1週間メニュー
日中にメインの勉強をして、夜は仕上げに使う前提の1週間メニューです。
- 月:日中に新出単語20語 → 夜:その20語の想起+文法例文3つ → 翌朝:×だけ確認
- 火:日中に新出20語 → 夜:今日の20語+昨日の×の単語 → 翌朝:×だけ確認
- 水:日中に新出20語+文法1単元 → 夜:単語の想起+文法例文3つ
- 木:日中に新出20語 → 夜:今日の20語+月曜分の3日後チェック
- 金:日中に新出20語 → 夜:今日の20語+火曜分の3日後チェック
- 土:日中に今週の総復習 → 夜:今週いちばん苦手な単語10個だけ
- 日:夜は勉強なし。いつもより少し早めに寝る
睡眠時間を先に決める
このメニューでいちばん大事なのは、実は勉強の中身ではなく寝る時刻です。先に「◯時には布団に入る」と決め、そこから逆算して夜のルーティンの開始時刻を決めましょう。勉強が終わらなくても、時間が来たら切り上げるのがルールです。
試験前日も同じ
試験の前日こそ、新しいことを詰め込むより、これまでの×の単語と大事な例文を確認して、いつもどおり眠るほうが、本番で力を出しやすくなります。
よくある誤解と失敗
誤解1:「寝ている間に音声を流せば単語を覚えられる」
睡眠中の音声で、新しい外国語の単語を意味まで覚えられるという確かな根拠はありません。むしろ音で眠りが浅くなれば逆効果になりかねません。英語の音声を聞くなら、起きている時間にしましょう。
誤解2:「寝る直前に覚えれば、勉強量は少なくていい」
睡眠は記憶を助けてくれますが、覚えていないものを覚えさせてくれるわけではありません。日中の勉強と、間隔をあけた復習が土台です。
失敗1:徹夜・夜ふかしで詰め込む
睡眠を削ると、その日の記憶が定着しにくくなるうえ、翌日の集中力や覚える力も落ちやすくなります。テスト前の徹夜は、効率の面から見てもおすすめできません。
失敗2:布団の中でスマホ学習を続ける
「単語アプリだけ」のつもりが、気づけば動画を見ていた……というのはよくある話です。寝る前の勉強は机で終わらせ、布団にはスマホを持ち込まないのが理想です。
失敗3:夜のルーティンが長すぎる
1時間も2時間もかかるルーティンは続きません。30分以内、疲れている日は10分の「思い出すだけ」でも十分です。
今夜やることは1つ。寝る前に、今日覚えた英単語を5つ、何も見ずに書き出してみてください。そして、いつもより15分早く布団に入りましょう。



